群青月歩   作:綿苗

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13、カウントダウン

原作が、二年後に差し迫った。

 

大晦日、除夜の鐘が鳴ると隊がごちゃまぜの何次会かもわからない忘年会は、徐々に御開きの雰囲気となりまばらに人は帰り始めた。

 

私は、一人挟んで隣に座る人物に目を向ける。

隣に座る阿散井六席からの紹介で、最近知り合った十三番隊 朽木 ルキアはやはり私に原作を意識させるには十分な存在だった。ルキアちゃんと、呼ぶことを許して貰い良く話す仲になったが度々、目が合うとアーロニーロ戦の際に見せたような顔をするものだからそれから私は、前髪を厚くなるように伸ばして目元を隠すようにした。

 

ああ、やっぱり可愛い。とろりと酒の場の雰囲気に飲まれた目で前髪の御簾越しに、彼女を見つめる。

小さな体躯に、黒檀のような黒髪。こぼれそうな大きな瞳の中の青を含んだ黒目はパワーストーンのブラックラブラドライトに似ている。利発さを醸し出す眉や目。最近は、伸ばし始めた前髪を見るとすまなそうな顔をするので「イメチェンですよ」なんて軽口を勇気を振り絞って叩いてみたが、ノミの心臓はいつもドクドクと跳ねていた。

 

一護の相棒には、いいように見られたいという見栄が先行してしまう。

  

もしちょっとだけ、少しでいいから私の話を一護にしてくれたら、なんて下心と不安で顔が歪むが、暫くはなんとか耐えて接しようと思う。

 

そして、この時期の阿散井六席と朽木さんはそんなに気を許して話す。ということができないみたいでやはり立ち位置が口を重くするらしく、時折言葉を飲み込むような雰囲気で率直な会話は難しいらしい。

早く副隊長に任命されるといいね阿散井さん。

 

さてと、二人に軽く挨拶をして伸びていた影を踏まないように避けて通り、普段寝起きしている社宅のようなものの長屋に戻る。

与えられた部屋に戻るとすぐに布団の中に潜り込み髪を結んでいたゴムを取って布団の外に投げる。お風呂に入らなければならない、と思いつつも体が睡眠を欲していて酷くだるいので、しょうがない。明日の朝にすませよう。深く息を吸って吐いて、深呼吸をすれば布団に染み付いた自身の匂いと宴会で衣服や髪に染み付いた煙管の刻みタバコの匂いや酒に油の匂いがして不愉快だった。

 

 

ああ、どうしよう

すごく嫌だ。感情がぐるぐるぐると渦を巻く。

 

さみしい

 

_______

 

最近出会った中で、黒崎 杏 という女性がいる。

 

それは、秋とも冬とも言えない空気は冷たく、日差しの強い日だった。

山々が燃えるように色づき、早朝は桶の水に薄い氷が張るほどで、氷雪系の斬魄刀を扱う私には修行の面でも日常を送る面でも嬉しい季節だった。

 

恋次が紹介したい奴がいるといい、恋次の背からひょっこり出された顔を見た瞬間に背筋に何か嫌なものが伝ったのがわかった。

 

「かいえんどの…?」と呟きを殺せないほどに、私は驚いてしまった。

 

似ていたのだ。杏殿の所作や目元、細かいところがわたしのよく知る海燕殿とよく似ていた。勿論、似てないところも多い。なんせ別人なのだから…彼女は女性だし、しかも年が幾分も若い。しかし、それでも私の頭は融通が利かず、彼女を見上げた瞬間や笑む時の目元。ぱちりぱちりとパズルのピースを穴にはめ込む作業のようにピタリとわたしの穴が埋まっていく。彼女と海燕殿の似ているところを一つ探しては、はめ込み。一つ探しては、はめ込み。

 

いつのまにか、海燕殿が隣にいるような気までしてくる始末に恐れを抱いた。

 

だが、杏殿はそれをわかっていて私に優しく触れてくる。

違うのだと、海燕殿ではないのだと、それを示し始めた。

 

目元を隠した、

 

私を「ルキアちゃん」と呼ぶのだ、

 

海燕殿とは違った声で。

_______

 

夜に目を覚ますと、すっかり部屋の中は闇に沈んでいた。時計を見れば二時間だけ眠っていたのがわかった。布団から這い出て、温度差に身震いをした後、すっかり臭いの染み付いてしまった布団を掴んで振った。パンっと空気が破裂する、思っていたよりも大きな音がでてしまい、そこからは静々と動いた。

 

淀んだ空気を入れ換えようと、窓の障子を開けた。そうすると、生前に見た烏貝を思わせる夜空が目先に広がる。貝の光沢のように輝くのは、星々で空気はシンシンと冷たく鼻や頬の先をピリピリと刺激する。

「…シリウス、プロキオン、ベテルギウス」

 

冬の大三角形、寝起きの目に染みるシリウスの輝きから視線を落として、伸ばした手でカストルとポルックスをなぞる。

双子座を霊圧も混ぜてなぞると青光りの線が点と点を繋ぎ、空に星座が露わになった。

 

神の血を引き寿命のない弟と人間の兄。

 

そこに悲劇が生まれないわけがなく、ギリシャ神話において兄の死を目にしたポルックスは不死を無くしてくれと神に願うがゼウスが行ったことは、星座として二人を天に残すことだった。

 

寝起きの頭には、それが妙に悲しくて胸のどこかが詰まったようで、

 

さみしい、

 

一護。










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感想に評価本当にありがとうございます!
そして誤字についても指摘ありがたいです…自分では本当に気づけないので…

次回から更新は、月一ぐらいになりそうです。

それにそれに!アンケートのご協力ありがとうございました!
容姿についてもイラストも載せてオッケーとの事だったので、そのうち載せてみようと思います!あくまで作者の中のイメージなので参考程度にご覧ください。
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