群青月歩   作:綿苗

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黒崎一護の開示目録。

暗い暗い深淵、

それは、心の奥に沈みこんだ澱

 

少年の奥深くには いまだ血を滴らせる”罪”が雨を降らせていた。

 

 

黒崎一護、十五歳。髪色オレンジ、瞳の色ブラウン。

家に足りないもの、姉と母親。

 

 

 

__黒崎一護の罪、自分のせいで二人を失くした。

 

 

 

 

 

そう何もかも俺が悪かった。

あの頃は、まだ生者とそうでないものの区別が曖昧で増水した川の近くで女の子の影を見つけたのが、全ての始まりだった。

 

”グランドフィッシャー”そいつの擬似餌にまんまと騙された俺は、母親と姉を同時に失った。

 

俺は学校を休んで何日も何日も母親の姿を、そして片割れの姿を探した。霊でいい、何でもよかった話がしたかった、謝りたかった、いつもの優しい顔で慰めてくれなくてもよかった。お前のせいだと責められたかった。ただそばにいたかった…杏に至っては、身体が流されて死んでいるのかもわからなかった。

 

家族の誰も俺を責めてくれなかった…俺がお袋を杏を守ると言ったのにまだ四つの妹たちから、親父からも母と姉を奪ってしまった。

 

 

それから、杏と再会したのはブルーシートに覆われた杏の抜け殻だった。

 

信じたくなかった、ブルーシートの小さな膨らみからはみ出ていた膨張した手は、何度も何度も繰り返し夢に見ることとなるほど一護の幼い心を傷つけた。

 

駆け出したかった、駆け寄って手を握ってごめんなさいを言いたかった。いつだって俺は杏に口喧嘩で勝てず、泣かされて甘やかされて少しだけ早く生まれただけの杏は生まれながらに姉で、そんな杏にいつもその場しのぎのごめんねを言ってきた。でも、その時は本心から全部投げ出したいくらいだったのに、親父が杏を抱き上げたので俺は泣くことすらできなかった。

 

俺に与えられた言葉は、全て怨嗟の声に聞こえた。

 

 

ルキアと出会って、死神代行となって仇のグランドフィッシャーと戦い…それで、一区切り付けたつもりでいた。

 

なのに、ルキアの言ったリビングに張られた遺影代わりのポスターを見て、杏は死神になったという言葉が心を乱し続けていた。

 

恋次と白哉に連れて行かれたルキアを助けに、尸魂界に行ったとき空鶴さんに初めて会ったときは、杏の存在を強く意識した。少しだけ顔立ちが似ていたからかもしれない。

 

きっと、会えるんじゃないか。

少しだけそんな思いを片隅に置いて、あの小さな姿を探しながら目の前に立ちはだかる敵を倒した。

 

それなのに、杏は俺と何ら変わらない成長した姿で、いつの間にかそばに居てなにも言わなくて…全てが収束しやっと落ち着いてきた時に十一番隊を探しまくり、一角を訪ねてみれば今まで一緒にいた“三席“と名乗っていた女が杏だということを知った。

 

訳がわからない。

 

 

頭がぐちゃぐちゃで嬉しいのと怒りが混ざって涙が出そうになるのを堪え、すぐに駆け出した。あてはない。だが。勘に任せて道を進んだ。

昔からそうだった、隠れんぼなんかの遊びをしたときに勘に任せて探せば自ずと、その先に杏はいた。自然と体は杏の居場所を知っているのだ。

 

そしたら、やっぱり…すぐに見つけた。

 

 

学校の別館に繋がる廊下みたいな特徴のない長い廊下に、顔を俯かせて立っていた。

 

目の前に立っても、本当にこの人が杏なのかと半信半疑だった。

顔が見たくて、顔を隠す伸びた前髪を避けると少しお袋に雰囲気が似ている気がした。

 

何もかもあの頃と変わっていた。でも、目は変わってなかった。

 

「がんばったね一護」

 

緩められた濃い色の青い瞳。優しい声。

 

怪我は酷いのか、手は包帯で固められてあの日見た杏の手を思い出して苦しい。

 

抱きしめられてあいつの肩を濡らして、あやすように背を叩かれて

 

泣いた分だけ心が軽く、黒崎一護の降り続いた雨は少しだけ弱まった。

 

 

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