群青月歩   作:綿苗

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05、血の筋を見た

 ___道場で木刀を構え向き合った少女と身の丈が倍近く違う青年。

見た目だけで捉えれば不利なのは少女で、面白みも何もなく只一方的な攻めで終わる、と思われた__

 

◆◆◆◆

 

 八番隊隊長京楽 春水(きょうらく しゅんすい)は今回、共に院を偵察に訪れた昔馴染み十三番隊隊長浮竹 十四郎(うきたけ じゅうしろう)と懐かしさにかまけて院が用意した簡易的な待合室から飛び出しうろうろと出歩いていた。ざわざわと乱れる若い霊圧に思わず浮竹は喜色を含んだ声を漏らす。

「...イヤだねぇ…本当ジジ臭いんだから浮竹は」

「ははは!!まァそう言うなよ京楽。いいじゃないか京楽だってこの空気まんざらでもないんだろ」

そらそうだ、初々しい少女たちに院特有の喧騒は浮竹に言っといてはなんだがジジ臭くもしみじみ懐かしさと少しばかり年を感じる。

かつて過ごした、今と変わらず女人の尻を追いかけた日々であったが、あの時は兄も義姉もいた。なんとなしに笠で隠れたかんざしに手をやり弄ぶと、前を歩いていた浮竹が立ち止まる、

 

「騒がしいな、道場の方からか?」

好奇心が旺盛というか首を突っ込みたがりというか、くるりと方向転換し道場の方へ向かう浮竹の白い髪を追う...まあ好奇心に振り回されるのは長年の付き合いで慣れているのでふらりと付いていく。

何百年も前に通っていた建物だが意外に覚えていたらしく二人は迷うことなく道場の一般的に現世ではギャラリーと呼ばれる場所に出た。

するとそこに木刀を構えた青年と少女がいた。浮竹は慌てて止めさせようと動こうとしたが、一足遅く、開始の合図と共に青年が駆け出した。ガンッ...耳に届いた音は少女が倒れた音にしては重く、目に入った光景はそれを裏付けるように青年が床に沈むのを写していた。

 

◆◆◆◆

 

青年の名は、円城寺 村房

兄に八番隊三席であり「崩山」という斬魄刀を持った死神を持つ、

 

体躯もよく、成績もそこそこ良い、卒業してすぐに八番隊への入隊が決まっており、末席に座るのも時間の問題と言われていた。

青年は三席という座にいる兄を尊敬し、正義感を持っていた。暑苦しいと言われようが、自身の正義を貫き兄と同じ男気の八番隊に入ることを望んでいた。その中で、真央霊術院に目立つ少女が現れた。良くも悪くも目立っていた。

優秀すぎたのだ、遠目から時折見る少女の顔色は思わしくなく、生き生きとするべき幼子の目は陰り、孤立していた。

 

だから、守らねばならないと思ったのだ。この院にいる間だけでも後ろ盾になれればと、できるだけ目撃者を作り友情の瞬間を目の当たりにさせようとした。飛び級した少女ならば多少打ち合いもできるだろうと思っての行動だ。

 

なのにどうしてだ...地面に伏したのは自分で、気絶しかけで霞む目は少女の小さな足を写していた。

 

◆◆◆◆

 

「おい何ぼーっとしてる試合は終わった!!七回生は担架!!黒崎は早く特待生側に戻れ!…おっ...これは浮竹隊長に京楽隊長ではないですか、どうしてこちらに」

後ろから入ってきた教師だろう小柄ながら筋肉質な男はこちらに気づき愛想を振りまくように話しかけてきた。

下では指示に従い七回生らしい青年たちが気絶した青年を連れていくのを見送り、そしてこちらを向いたままの教師に面倒くさく感じつつもボクが申し訳程度の言葉を交わした。のだが、浮竹の方に目線を移すと、分け隔てなく接する浮竹には珍しく教師の方を振り向かずに、呆然と生徒らを見下ろしている。いつもしている微笑みがなかった。

ふと、目線の先を追いかけてみると先ほどの少女に行き着く。なるほど浮竹が目を離せないはずだ、先ほどはよく顔を見られなかったが少女の顔は志波家の顔だった。

 

「あの黒崎って子は...」

どうゆう子なんだい、くねっと癖になっているかわい子ぶって首をかしげて聞く体勢はするたびに副官の七緒ちゃんに叱られているのだが、やはり癖というのはなかなか抜けないし、怒る七緒ちゃんも可愛らしいのでやめる気もない。

「はあ?...黒崎ですか...黒崎は今見たとおり才能ある子でして檜佐木副隊長の推しで院に入り、破道の成績は壊滅的ですが縛道の性能は7回生以上の実績があります。ここまで期待できる生徒を見るのは十番隊隊長の日番谷 冬獅郎殿以来ですな!!」

 

今の試合ではご披露できませんでしたが剣術の筋もよく練習で竹刀がいくつかダメになったもんです!!興奮したように話す教師、

一人でも多くの教え子を席官に据えた実績が欲しいのか、本当に彼女は期待の星というやつなのかを必死になって喋るさまは少し滑稽だ。あーそういえば、ボクの学生の時代にもいたなア…こんな教師。ちらりと同意を求めるように浮竹の方に目を移したが、まだ目を奪われているようでこちらに反応しない。彼は未だに志波 海燕に捕らわれているようだった。

 

錆びた手すりを避けながら寄りかかり少女を見ていると確かに似ていた、戦い方やイラついた時、腹が立った瞬間に襟足を弄る仕草なんかも。円城寺が腕を振り下ろした刹那に横に跳びのき、くるりと前に回転したかと思うと足首を首に掛け、鞭のように体をしならせ体全体を使い重力と硬い床に男を投げつけた。重力を感じさせない跳躍、小さな体がころころとよく動く...その動きは学生の動きを既に超越している、天性の才か努力で成し得たものか...どちらにしろ目立つ。孤立し道場の隅で壁に寄り掛かる少女を年配の男二人が見下ろしている姿は異様だと自覚はしている、が、やはりどうしても志波 海燕の面影を背負う少女は我々の目を奪うのだった。ふうん、と力が抜けた瞬間に鼻から声と息が抜けると、俯いていた少女が顔を向け、ぱちっと目が合う。

 

ああ、やっぱり恐ろしい子供だった。死人の面影を背負った少女の眼差しは、砕かれた藍銅鉱がぬらりと輝く様のような、深淵を覗き込んだ時のようなゾクリとした感覚を湧かせた。

 

◆◆◆◆

 

 円城寺を一発K.O.にし、四回生の固まった場所に近づけば気まずい雰囲気に眉が下がる。どうしてこうも私は、自分から面倒に首を突っ込んでしまうんだろう。どうにも、死んでしまってから体が動く。自分の想像以上に動いてしまうから不思議だった。

 

 

気まずいなあ...衝動的な行動は避けた方が余程理性的であると分かっては、いたのだけれど、そこまで人間ができていない私は試合早々に終わらせてしまった、その結果がこれだ。ずだんッ!!と肉が勢いよく床に叩きつけられる音は痛々しく気絶した円城寺の鼻からは血がたらたらと流れている。その光景は同級生をドン引きさせるのには充分過ぎるものであった。

溝が深まり、壁が高まるばかりか...ここでの身分の不安定さを自覚しているため道場の隅に逃げ出し、息を深く吐いた。そして、軽く吸い込んで気持ちを立て直そうとしたとき、微かな吟醸香が鼻をかすめた。

現世でも一度しか嗅いだことがないような上等な日本酒しか放たないりんごやメロンに似た甘い香りはこの場にはふさわしくない、

なんの匂いだろう。匂いをたどって顔を上げるとぱちっと静電気が弾けるように目線がかち合った。おお、キャラの遭遇率すごい。髭もじゃ胸毛もじゃを目視したが嫌悪感はなく、むしろ全身から漂うアダルティックな雰囲気にちょっと照れた。これがあの京楽春水…照れて歪んだ口元をゆるりと手で隠して浮ついた感情を落ち着かせ、にっこりと惜しみなく色気を含めた笑みは誰に向けたものなのか、前方に固まったお姉様方はきゃあきゃあと色めき立ち私には関係の無いことだなと目線を移すと白い髪を垂らした男性。これは浮竹十四郎殿とお見受けしたが、こちらを見ている。

しかし、その目には力がないような…?なんと言い表したらしっくりとするのかは分からなかったが虚無といった感じで私を見ていた。

 

京楽隊長とは違って誰を見ているかなんか一目瞭然であった。

何人かの鋭い男子生徒は気付いたようでこちらとあちらを見ている…なんでだ…なんかやばかったのだろうか?

 

鬱々としながら…下を向き私はその後の時間を反省をするように縮こまって過ごしたのだった。




久しぶりの投稿で文書があれなことになっていると思いますが和やかな目でお寛ぎください。
※杏ちゃんは身長が少しのびました!双子パワーなのでしょうか…どうやら一護と同様に成長していくようです。
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