さて、何から処理していこうか。
まず始めに、僕の名前は衛宮 士郎だ。
冗談でもボケでもツッコミ待ちでもない純然たる事実として、僕は衛宮 士郎としてこの世界に居る。
経緯としては、前の世界で幼女(推定年齢5歳)が車に轢かれそうになっていたのを助け、変わりに轢かれてしまい、現世での記憶を引き継いで転生したといったところだ。
そして僕の名前からも分かって貰える人には分かって貰えると思うが、僕が転生した世界はFate/staynightという二次元作品の世界なのである。
そのFate/staynightには衛宮 士郎という主人公が居るわけなのだが、お察しの通りに僕はその主人公として転生した。
ここまでは、まぁ在り来たりな異世界転生モノとして成り立っているだろう。
だが何故こうなったのだろうか。
原作を知る僕にとっては見過ごせない、原作からかけ離れた毎日を送っていた。
まず、僕は産まれながらに衛宮士郎だった。
冬木の大災害で生き残り、正義の味方に成りたかった男に拾われた訳でもなく、最初から衛宮士郎だったのだ。
父は衛宮切嗣、母はアイリスフィール・フォン・アインツベルン。
これが僕の産まれながらににしての親だ。
更にはアインツベルン家など無く、アイリスフィール・フォン・アインツベルンはただの一般家庭に産まれた娘なのだ。
父の衛宮切嗣は、本来なら魔術師殺しとして認知されていなければいけないところだが、此処ではただのサラリーマンだった。
他にも原作をぶち壊している要因を説明しなければならないのは重々承知しているが、敢えて結これらを纏めた結果だけを言うならば…
僕が高校生の時に、聖杯戦争は起こらなかった。
そんな予感はしていた。
原作から乖離し過ぎたこの世界では、聖杯戦争なんてものは起こらない。
確かにこの世界には魔術師が居り、日々研鑽を重ているのだろう。
だがそれは、僕の人生にはなんの関係もない裏の出来事なのだ。
そう思っていたのだがなぁ………
「問おう、君が私のマスターかね?」
高校を卒業し、ピカピカの大学一年生となり一人暮らしを始めた僕の前に現れたのは、鉄色の髪をした赤い男だった。
原作の衛宮士郎の成れの果て。
理想を追い求め、理想に溺れ溺死した存在。
正義の味方の成り損ないにしてただの殺戮者。
そんな存在が僕の前に立ち、お決まりの台詞を吐いたのだ。
僕の廻りには魔術師は居ないし聖杯戦争も無い。
だが確かに、この世界はFate/staynightの世界であり、聖杯戦争は時を変え、場所を変えて実現していたのだ。