PSAO=Phantasy Star/Sword Art Online 作:Noah/Deal
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もう どこかに逃げ出したい。
…そう思うけど、ふと気が付く。
帰るとこなんて、無いんだってことを。
このメッセージだって、
受け取る人なんて、
誰も いないのかもしれない。
後から来るパイオニア2だって、
この惑星が 危険と判れば
降りてきやしないだろう。
それでもパイオニア2の誰かが
降りてきてくれるだろうか。
…それは わからない。
でも あたしは、これを残す。
これは 証なんだ。
あたしが、今 ここにいる…
――遺跡内部 リコのメッセージログより
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――それは、まさに熾烈の一言を極めた。
ただ、ナニカに突き動かされるかのように半透明の大剣を振るう少年。
それに対峙する、闇の意志の精神体とも言うべき存在。
二つの存在の死闘は、もはや時を刻むことすら忘れる程長きに及んでいた。
「――ァあャッ――ク、■ァッ―!!」
もはや叫びとも言えぬ咆哮。
それを放つ少年は、疲労、痛み、消耗など知らぬが如く再び闇に突貫する。
――しかし、中らない。斬れようが無い。
どうやら、ダークファルスは状況に応じて実体/精神体を切り替える事が可能らしい。
そして、現在のダークファルスは精神体。
その幾何学的に輝く躯体は、一部のテクニックを除いて全ての攻撃を無効化する。
そして、次はこちらだと言わんばかりの猛烈な闇の攻勢。
放たれた光弾を必死の思いで避ける少年だが、その表情には未だに憤怒が映っている。
「……ハ、ァ――、くそ、どうしたら……」
――もはや、勝機は無いのだろうか
そう諦めてしまいそうになる己を食い止め、彼は眼前の敵を見据える。
幾度と無く剣を振り回してきた影響か、腕は痺れ、柄を握る力すら殆ど残っていない。
回復用にと所持していた薬品の類も、これまでの激戦にてほぼ使い切ってしまっている。
テクニックを使用できたのならば、或いは異なったのだろうか……
彼は、同期の人間の中では絶望的にフォトン適性が低く、上級テクニック習得に必要な精神力を保有していなかった。
辛うじて回復用テクニック"レスタ"は習得してはいるが、これもLv.2のディスクが習得の限界であった。
彼のクラス――"ハンター"で使用可能である最大レベルのLv.15ならばある程度の効果は見込めるのだが、Lv.2では他人の回復すらままならない。
――更に、テクニックの詠唱は大きな隙を生む。
通常のエネミー相手では、さして脅威となり得ない程の小さな隙ではある。
だが、ダークファルスとの戦闘においては致命的――
――故に、回復薬を全て消費しきった時がイコール己の死に直結するのだ。
「……くッ、でも、こうする、しか……?」
少年は、倒れ伏した少女を横目に見ながら呟く。
彼が懐から取り出した蘇生薬、"ムーンアトマイザー"。
これを使用すれば、少なくとも致命的なダメージを負っていない少女にならば蘇生は可能だ。
だが、少女の精神は先程までの様子を見る限り――非常に消耗しているだろう。
その精神状態で、彼女が無事テクニックを行使出来るのか。
錯乱の余り、無謀な行動を取らないだろうか。
思考、試行する。その指向性は己の内面に深く。
――だが、そう思考している合間にも放たれる、非情なる攻撃。
突如、少年の体を包み込むような光が現れ。
気付いた彼はバックステップにて回避を試みるも、少年を追尾するように光が付きまといなかなか離れることが出来ない。
やがて、一瞬輝きが強くなったかと思えば――
「――ッ!? ク、ァああぁっ――!!」
その体を襲う強烈な痛みと焦熱。
弾けるように飛散した残光は、少年に大きなダメージを残した。
少年の背に浮遊する防具、"マグ"が主の危機に一際激しく光を放つ。
"マグ"――、自立思考し、自己進化する防具。
それは、"深淵の闇"に相反する存在たる"大いなる光"の一部にして、その細胞"ライトファルス"を基にして創られたモノである。それが故なのだろうか。
マグは、ダークファルスの攻撃に対して普段よりも更に早く行動を始める。
発生させた、主を包む暖かい輝きは――あらゆる敵性を無効化する光の防壁。
「――ッ、う、おぉぉぉォァッ!!」
……少年は、先程の傷を最後のトリメイト――回復剤で癒す。
これで、ラスト。少年に後は無くなった。
それ故、自然と覚悟も決まっていた。
彼は"ムーンアトマイザー"を少女に向かって投げ放つと、大剣を構えダークファルスへ相対する。
そして、裂帛の気勢と共に駆け抜け。
ようやく接近する彼に気付き、ダークファルスが振り向いたとき――
「――こいつで、最後―――ッ!!」
――貫く一撃。
残心を終え、少年はダークファルスを見やる。
しかし、彼が渾身の力を込めて解き放った至高の一撃は、しかしダークファルスにとっては取るに足らぬ一撃だったのか。
最期に彼が見たものは、断罪の斬撃にして終焉。
「――、ぁ。」
ぐじゅり、と。
――自身を貫く、ダークファルスの腕。
マグの補助なんて役にすら立たない、もはや暴力的な一撃。
即ち、マグ程度が起こせる現象なんて限られていて、その効果時間がとっくに過ぎていたってだけのハナシ。
「――ッグ、ァ、ぁ、ぁ、ッぁ、あ゛、ア゛。」
――ゴリゴリ、ガリゴリ、ガリガリ、ゴリガリ。
己が身を削る、ダークファルスの剣状の腕による斬撃。
同時に彼は、
自分が自分でなくなっていく。やめてこれ以上は――
その願いも空しく。闇はただその腕を更に押し込み――
――変質。自身が別のナニカニ新生するかの如く。
周囲の悪意が心地よくなっテくル。
次第に、使命感は喪失していき――
これは、遺伝子レベルでの同化――否、進化。
傷口から、グジュ、ウジュ、■゛ュリ、ブジャ、と響く水音?
その音を心地よく感じる――視線を落とせば傷口は異形。
手にした大剣が、少しづつ異形に覆われていく。
それが、自らの正義が侵されていくかのようでタマラナク心地良い。
視界が少しづつ暗くなっていく。
もはや自身の半分は異形。
でも、それでいい。それでこそ。
「――、あ、れ? 私、は――」
……どうやら、少女が目を覚ましたようだ。
"ムーンアトマイザー"はどうやらしっかりと効果を発揮したらしい。
うんうん、それでいい。それでこそその悲鳴を聞きながらゆっくりと■■せるって事――
「……ッぁ、オれはいマ何を……!?」
変質しつつある自身の無意識に、今、初めて、気が付いた。
視線を落とすと、ダークファルスの剣を中心に異形と化している己が体。
今にも、首に達するかというその侵食を、ようやく自覚したというその事実こそが異常。
手にした大剣は半ばまで侵食され、もはや元の面影すら感じられない。
それを目にして、やっと理解したのか――
「そウか。おレはもう…… トんだハナシだ、"魂"なんテ信じてはいなカったが、今は信じラれる――」
――そう、自らがダークファルスの因子によって侵食されている事実に。
よくよく見れば、空中に佇むダークファルスの胸部には、侵食前の己が姿が鏡のように映し出されている。
思考形態の変貌も、魂レベルでの侵食によるものだろうか。
胸部に映し出されている姿は恐らく、闇に囚われた己が魂であろう、と。
そこまで理解してよウやく彼は、自身がもはや戻れない領域に来てしまった事実を把握した。
――でも、大丈夫。
「――い、嫌ぁぁぁぁああ!? あなた……、あなた、
「……なニを言っテいるんデす?オれは俺でスよ――」
どうやら、少女が直ぐに狂乱するようなことは無かったよウだ。
心配事の一つが消えてほっとすると同時に、少女の言葉に疑問を抱く。
――俺ハ俺だ、他の何者でもない――
「う、嘘よっ!! あなた、その体…… バケモノじゃない!!」
「バケモノ……? そンナ■トはナイ、至っテ普■うでしょウ?」
不思議と、言葉が詰まってシまう。何故だろう?別に変わったことは無いのに。
そんなことよりも、どのようにしてダークファルスを封印すルかを考えないト――
「嘘、嘘、うそよ、こんなの…… みんな、死んじゃったじゃない……嫌、ぁァァァァあああっ!!」
途端、少女の手から放たれた火球。
――それは少年が辛うじて残していた、心の鎖を壊した――
それを右腕の剣で受け止める。あれ、熱いナぁ。
どうしテだろうか、味方なのに。
あれ、攻撃してきたならテきか。ならいいかな。
――少年は変質しきった内面に気付かず。それが正気と愚かに信じ――
そウそうその表情、その苦悶が美味シィんだよね。
キモちイイなぁ、コれをタべれバどんナにオイシいんだろウ。
「――ぁ、やめて、ぃ、―――」
イタダキマス。
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―― AUW3084. Pioneer2 the government‐general ――
「セントラルドーム地下のダークファルス。海底プラント、実験体γ119――否、オルガ=フロウ。彼らの共鳴によって、あの爆発は発生したのか……」
「過ぎてしまった事を悔やむ暇があれば、先のことを考えましょう。リコ=タイレル、並びにヒースクリフ=フロウウェン。私たちは偉大な英雄を失ったのですから……」
「……そうだな。遺跡の最深部で見つかった
「ラボの解析装置でもダメですね。D因子の侵食の過程に何かしらの干渉が有ったと見るべきでしょうけど…」
「……そうか。ならば、厳重封印を執り行った上で外宇宙へ転送する。これ以上、リコのような人間を出すわけにはいかん……」
「……分かりました、総督。あれにはオル=ガと、カルのコピーも搭載しておきました。 ……彼らが、きっと安全な惑星に封印してくれる筈です」
「……頼むぞ」
―――"英雄"の手により、ハンターズはダークファルスを無事消滅させる事に成功した。
――だが、その歴史の影に葬られた
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一つの終わりと、新たなハジマリ。
次話よりSAO主体となります。
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