∽移り行く風のように∽   作:アクア=イスタロス

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第9話

―――――【第9話 再開】―――――

 

旅を始めて23年。

ようやく終着地点らしき場所に到達した。

オスティアに建ちし人類初の王国、その名もウェスペルタティア。

街の中央には城も建っているほど本格的なところだ。

城下町も他とは比べるまでもないほど賑わっており、ここだけ時代が違うようにも感じたほどだ。

とりあえず、街に着いたら情報収集をするべきだ。

 

「マスター。コーヒーを1つ」

 

「あいよ」

 

塗装をせず、木本来の色合いを生かした外見の喫茶店。

内装も同じで、全体的に落ち着いた雰囲気を楽しめる。

それほど広くはないが、俺はこれぐらいがちょうどいい。

 

「コーヒーだ」

 

「ああ。……美味いな」

 

「それは良かった」

 

独特の苦みが口に広がる。

しかし、後味はさっぱりとしており、飲みやすい。

素晴らしいな。

 

「あんた、旅人か?」

 

「ああ。噂の国なるものを見にな」

 

「なるほどな。それで、どう思った」

 

「人の賑わいが他と全く違うな。品の種類も豊富だ。ここだけ異次元に見えるよ」

 

「やはりそうなのか」

 

「ああ。旅をして長いが、ここ以上の街はない」

 

俺の言葉を聞いて嬉しそうに頷くマスター。

よほどこの国を誇りに思っているのだろう。

 

「まぁ、そうだろうな。国王、アマテル様は魔獣に襲われる民を嘆き、民を守る力を得るために自ら国を建てられた。国が生まれ、騎士団が立ち、人々の目に安全が見えたからこそこの国は栄えてるってわけだ」

 

「アマテル…その者はどこから現れたんだ?街1つとはいえ、大きな組織を作り上げたんだ。さぞ、この辺では有名なのだろう?」

 

「いや、現れた当初は全く知らぬ御仁だったらしいぞ。多くの市民は否定的な意見を持っていたからな。ま、そこらへんを上手くまとめたのもアマテル様のお力ってわけよ」

 

無名の人物が1から作り上げた王国…。

協力も得られず、よくぞここまで築いたものだと褒めたいが…妖しさ満点だな。

 

「もちろん、アマテル様だけで全てが動いたわけじゃない。国を建てるために街の長達や商人たち、腕に覚えのある冒険者や魔法使いが多数協力したのよ。その中でも有名なのが『始まりの魔法使い』様さ!」

 

「!ここにいるのか、始まりの魔法使いが」

 

――レイナ。

23年間会うことはなかったが、ここに居るのか。

この街のどこかに…。

 

「さぁね。普段は王宮の奥深くにいるって話だから私たち民はほとんどその姿を見ることはないから」

 

…城か。

 

「…面白い話を聞けた。お代と礼だ」

 

「おぉう?こんな話ならいくらでも聞かせてやるよ。また来な」

 

喫茶店を出て城を見つめる。

正攻法ではすぐには無理だ。

ならば――

 

 

 

 

その夜。

明かりも落ち、昼間の光景とは打って変わって静けさだけが残る街を動く影があった。

足音をたてず、まっすぐ城へと向かう。

城門付近の明かりに照らされ、その人物が闇の中に浮かび上がる。

――リュランだ。

 

「さて、見張りの兵は……いないな。ならば魔法か結界か…」

 

一度目を閉じ、再び目を開ける。

闇に浮かぶ魔力の線がくっきりと見えた。

その魔力に触れ、効果を確認する。

 

「…入った瞬間、この城から出ようとする意識が働く結界か。なかなか面白い。だが…俺には無意味だ」

 

自身の体をこの魔力と同じ魔力で覆い、効力を防ぐ。

他人の魔力に合わせるのはかなり難しい話だが、問題はない。

ただ少しだけ魔力を消費するだけだ。

 

「さて、城に入ることはできたが…レイナはどこかな」

 

情報は城の一番奥、ただそれだけ。

最も、一番奥というのであれば最上階か最下層かのどちらかだろう。

 

「まずは…地下にでも行くか。上は王様がいるだろうし」

 

かなり安易な考えだが、間違ってないはず。

自分の考えを信じ、リュランは地下への階段を探しに歩き出した。

 

 

 

 

「…見つけて降りたはいいが、この階段はどこまで続くんだ?」

 

迷路のような城内歩きまわり、ようやく見つけた地下への階段だったが、1つ降りるどころか終わる兆しさえ見えない。

降り始めて既に5分。

まだ続くかと思った矢先、ガラスの内に秘めた光に照らされた扉が見えた。

扉に手を当て、妨害はないか確認する。

何もないと確認できたところで扉を軽く叩く。

中から小さく両省の声が聞こえてきたため、扉を開け中へと入る。

中にはこちらに背を向けたローブ姿の者がいた。

 

「こんな時間に珍しいわね。もうすぐ終わるからそこで待っててちょうだい」

 

机に向かって何か行っているのが分かる。

魔力が揺らめいているので、何かの魔法実験だろうか。

辺りを見渡す。

天井まで伸びる本棚にびっしりと本が立ち並び、反対側の壁には机の上に様々な道具や紙が散らばっていた。

奥の方にはベットが3つ並んでおり、そこにはまだ誰もいないようだ。

そこまで確認してようやく件の者がこちらを向いた。

 

「さて、連絡も寄こさずに来たのはどこの誰――」

 

目の前の者が驚いたように口に手を当てた。

名前は言わずとも分かる。

 

「リュラン…なの?」

 

「久しぶりだな、レイナ」

 

フードを取った彼女の顔は記憶と変わらなかった。

不老不死を与えた覚えはなかったが、細かいことは気にしない。

 

「ほ、本当に…リュランなの?」

 

「なんだ、違ってて欲しいのか」

 

「そ、そういうわけじゃないわよ。……何年ぶりかしら」

 

「23年だな。長いようで短い旅だったよ」

 

「そう。もうそんなに経つのね……」

 

しみじみとした表情を浮かべるレイナにものすごく違和感を覚えた俺はどうなんだろう。

俺の記憶にあるレイナはいつも振り回されて慌ててばかりだったからか。

23年の月日は彼女を良い方向に成長させたってわけか。

 

「もう少し待っててね。あの子たちももうすぐ終わると思うから」

 

「2人は何を――いや、集まってからゆっくりと聞こうか」

 

どこからともなく引っ張り出してきた椅子に座り、レイナが入れた飲み物に手を伸ばす。

1口、口に含む。

あっさりとした風味が口に広がり、ホッと気持ちが落ち着いた。

 

「…上手くなったものだな。あの頃とは比べ物にならん」

 

「それはもちろん。練習したからね」

 

「……安心した」

 

そのまま飲み物を飲んでいると、部屋の奥が輝きだした。

輝く魔力を読み取ると、どうやら転移魔法らしい。

誰か、とは聞くまでもないな。

 

「ちょっと待っててね。2人を吃驚させたいから」

 

部屋の奥にへと向かったレイナを見送った後、こちらも驚かすために変装を開始する。

さて、テーマは何にするか……。

考える側から話し声が聞こえる。

とりあえず、無視しよう。

 

「戻りました、レイナ様」

 

「お変わりないでしょうか、レイナ様」

 

「ええ、もちろん。そうそう、2人にもお客さまよ」

 

「私たちにですか」

 

「そうよ。会ったら絶対吃驚するんだから!」

 

「私達が会ったら吃驚するお客様……?」

 

誰かわからず困惑したままの2人の背中を押して部屋へと入れるレイナ。

そして、椅子に座る存在に目をやった瞬間、3人ともバラバラのアクションをした。

 

「…え?」

 

「ひぃっ、きゃあーーーーー!?」

 

「あ、嫌ッーーーーーー!!」

 

椅子に座る白骨死体を見て、フェイトは唖然とし、シエルは悲鳴を上げ、レイナは絶叫したのだった。

さらに、その骸骨がカクカクと笑うかの如く頭を揺らしたのだからさらに混乱する2人。

唯一、唖然としていたフェイトであったが、その正体を見抜くとため息をついて呪文を唱える。

 

「……お悪戯が酷過ぎますよ、リュラン様」

 

「流石だな、フェイト。これでもオリジナルの幻夢魔法だったんだがな」

 

「視覚に訴えて発動することが分かれば対処の仕様はあります」

 

「…賢くなったものだな」

 

「全てリュラン様の教育の賜物です」

 

フェイトが唱えた呪文の効果が発動し、いつの間にか骸骨はリュランへと変わっていた。

魔法をかけられたことに気が付かなかった2人は茫然としていた。

 

 

 

 

「酷い、酷い!!いくら何でも酷いわ!!」

 

「その通りです!部屋にいたのが骸骨とか夢に出そうです!」

 

「2人ともうろたえ過ぎでしょう。普段より冷静にしなければなりません」

 

「そうだぞ。レイナは『始まりの魔法使い』だし、シエラも何らかの要職に就いているのだろう?冷静さが欠けていては威厳が台無しだろう」

 

「普段は問題ありません!こんな非現実的な出来事が私室で起きることの方が異常でしょう!」

 

昔のようにからかわれたレイナがガーッと怒る。

予想以上の驚愕だったため、つい笑ってしまった。

それがフェイトに気がつかせた原因だったらしい。

 

「あー、本当に夢に出てきそうです」

 

「ふむ。今晩は一緒に寝てやろうか?」

 

ピクッ

 

おい、そこの2人。

何故反応した。

 

「ほ、本当ですか!?」

 

おいシエラ。

お前もそこまで反応するんじゃない。

 

「冗談だ」

 

だから3人ともそんなに落胆するんじゃない。

これではまるで俺が悪いみたいじゃないか。

 

「リュランに嘘をつかれた…」

 

「乙女の心を弄ばれた…」

 

「しょせん、私たちはその程度の女だったわけですね…」

 

「おいコラお前ら。そろそろキレるぞ」

 

口元が痙攣してる気がする。

だが、こいつらの本気ともとれる言葉を放置しておくわけにもいかない。

…はぁ、今夜は長くなりそうだ。

 

 

 

 

∽to be continue∽

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