∽移り行く風のように∽   作:アクア=イスタロス

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第10話

―――――【第10話 対面】―――――

 

「そなたが我が友の師であると申す者か」

 

「ああ」

 

「貴様!王の御前であるぞ!!」

 

「よいのだ。我が許す」

 

俺は今、王宮の中で最も空気の悪い場所に来ている。

国を守る騎士、そして国の政治を動かす官僚。

彼らに囲まれて王と対面する場所――名を、謁見の間という。

いくつもの思惑が交差する場所で、俺は国王、アマテルと向き合った。

何故この場に居るのか…俺は2日前のことを思い返していた。

 

 

 

 

――――――――――

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――――――――――

 

 

 

 

「な、アマテルと会いたいだと?」

 

「ああ。始まりの魔法使いであるお前であればそれくらい容易だろう」

 

「も、もちろん可能だが…会って何とする」

 

「…ま、暇つぶしがほとんどだな。そろそろ旅に飽きたともいう」

 

はぁ、とため息をつくレイナにイラっとする。

頭をどつきたいが、今の格好では動くことすらままならない。

右手にはフェイト、左手にはシエラがくっついており、正直暑い。

 

「…話はしておこう。肩書きを私の師ということにすれば問題ないはずだ。しかし…暇つぶしで王と会おうとは…はぁ」

 

「…人類史初の国だぞ。名も無き存在が作り上げた王国だから尚更な」

 

「……」

 

ほんの一瞬。

レイナの表情が強張った。

傍から見れば優雅に紅茶を飲んでいるように見えるが俺は騙されんぞ。

さて、マスターから聞いた話の疑問点、答えてもらうぞ。

 

「正直に話せ。アマテル…そいつは何者だ」

 

「…の…だ」

 

「はっきりと言え。お仕置きするぞ、おい」

 

「だから、私の娘だと言っているのだ!!」

 

「……」

 

「……」

 

沈黙の幕が下りた。

こいつは何と言った。

娘?

誰の。

私の、娘?

 

「…な、何とか言わぬかリュラン」

 

「…いや、色々聞きたいことはあるがまず1つだけはっきりと言おう」

 

「な、なんだ」

 

「お前――バカだろ」

 

「バ、バカとはなんだ!?はっきりとか言うから構えたのにものの見事に直球で貶したわね!」

 

「当たり前だ。お前は何がしたい。自分の娘とやらを王座に就かせ、政り事でもやってみたかったのか?」

 

「ち、違う。私は、そんなつもりであの子を…」

 

「ならばはっきりと言え。だんまりは俺が許さん。というか娘などにやらせずとも自分でやればいいだろう」

 

言い終えると左右から思いっきり引っ張られた。

全く動じる必要もない力である上、左右同時に引っ張るものだから腕が抜けない限りどちらかに飛ぶこともない。

つまり、何もせずとも均衡は保たれる。

 

「レイナ様は何も悪くありません!私たちが提案したのです!」

 

「何かを世の中に広めるために一番手っ取り早いのは、国の代表者がその存在を認め、公言すること。しかし、広める者が提案者では人々は信じません。故に、私たちは魔法を広めるためにレイナ様にお子を生んでいただき、アマテル様を王へと導いたのです」

 

「……するとなんだ。アマテルってのはお前たちが魔法を広げたいがために生まれた人形だというのか?」

 

気を放ち、2人を吹き飛ばす。

壁に叩きつけられて呻く声がするが、今は無視だ。

机の反対側に座るレイナへと近づき、その際に怒りによって気と魔力が混じり合い、反発し合う。

今の俺はさながら小さな核兵器。

そんな状況で、俺は問うた。

 

「答えよ、レイナ。そなたは自身が私欲のために罪なき命の人生を狂わせたというのか」

 

「……そうです」

 

「…………はぁ」

 

曇りのないまっすぐな目。

己を恥じていない証拠だ。

…ま、後悔していないのならばいいか。

責任の取り方もわかっているだろうし。

 

「何かあればお前が解決しろ。俺は見ているだけだ」

 

「ええ。もちろんです」

 

「ならいい。会う約束をしておけ、俺は寝る」

 

「はい。……あ、そうそう。アマテルの事なんですけど…」

 

「…そいつがどうした」

 

「私の娘であることは話したと思いますけど、実はあなたの娘でもあるのですよ」

 

「……魔法で作ったんじゃないのか?」

 

「いえ、お腹を痛めて生んだ実子です♪」

 

「…い、何時の間に」

 

「うふふ♪」

 

口元が痙攣する。

初めてレイナが恐ろしいと感じた瞬間だった。

 

 

 

 

――――――――――

――――――――――

――――――――――

 

 

 

 

目の前に座る成人前後の女。

レイナの娘であり、俺の娘。

正体を明かすのは容易いが、したところで要らぬ混乱を招くだけ。

…実感はないが、妙に心苦しいものだな。

まぁ、下手に馴れ馴れしく扱っても面倒だし、最後まで初対面でいいだろう。

 

「名を述べよ」

 

「リュランだ。それ以上は言うつもりはない」

 

「き、貴様!どこまで王をコケにすれば…ッ!」

 

「よいと言っておるだろう。…リュランよ。我が名はアマテル。アマテル・ウェスペリア・レアーナ・エンテオフュシアだ。まずは今回、何用で我が前へと参ったのだ」

 

「……」

 

念のために辺りを見渡す。

ふむ、問題ないな。

 

「?どうかしたのか。構わぬ。本心を述べよ」

 

「…暇だったからだ」

 

ブチッ

 

あ、誰かがキレた。

見れば向かって右側の手前から2番目の鎧を着た青年がアマテルに向かって叫んでいた。

 

「これ以上の狼藉、もはや見て居れませぬ!!王よ!この不届き者の処刑許可を!!」

 

「落ち着かぬか、グリゴール。この者は我が友の師と申して居るのだぞ。我が友にも確認を取ったが本物とのこと。ならば丁重に迎えるが常」

 

「しかし!王の丁寧なお言葉を蔑ろにするかのような言動!王が許すとも私が許せませぬ!!」

 

「くどい!これ以上騒ぐようであれば――」

 

「私からもよろしいでしょうかな、王よ」

 

今度は反対の左側。

一番奥にいる文官服を着た老人が静かに王の前に進み出てきた。

 

「むっ、ヴェレスか。いいだろう。発言を許す」

 

「有難き幸せ。…さて、リュランとやらよ。我が名はヴェレス。しがない文官だ」

 

「…俺にはそうは見えんがな」

 

「ふふっ。1つ聞きたき事がある。よろしいかな?」

 

「ああ」

 

「では聞こう。そなたにとって、国とはなんだ」

 

…国とは何か、か。

この老人――ヴェレスが聞きたいのは辞書に載るような言葉ではなく、俺自身の国に対する想いだろう。

この発言によってどう扱うか見極めるのだろうが…甘い。

 

「国とは、民から血肉を奪い人形へと変える悪魔であり、死人に生命を与え人へと生まれ返す天使である」

 

「……なるほど。王よ、老いぼれに貴重なお時間を頂き、感謝致します」

 

「あ、ああ。そなたの気は治まったのか?」

 

「ほっほ。それはもう、十二分に」

 

笑いながら老人は列へと戻る。

残されたのは呆気に取られた王と意味がわからぬと首を振る青年、隣の者と今の言葉について話し合う者たちだけであった。

 

「あー、んんっ。それではリュランよ。そなたを王宮で働くことを許可する。しいてはそなたに職を与えねばならぬが…そなたは何がやれる?」

 

「…献策、護衛、討伐…そなたが望む力へと成ろう」

 

「…難しいことを言う。では、職については追って伝えよう。これにて謁見を終了とする。皆の者、持ち場に戻るがよい」

 

アマテルの言葉で整列していた者たちが次々にこの場を離れる。

半分程度が立ち去り、今もなおゾロゾロと扉から出てゆく者たちがいる中、その言葉は謁見の間に響いた。

 

「決闘だ!!」

 

扉から出て行こうとした者は声を聞き振り返る。

皆の視線の先には件の青年、リュランと剣を抜き、リュランに突き付ける青年、グリゴール。

その姿を見た瞬間、この場にいる者たちは一斉にため息をついた。

 

「――グリゴール」

 

「王よ。こればかりは譲れませぬ。私とて王を護る騎士。このような不届き者を王の目の範囲に居させる訳にはまいりませぬ」

 

「…はぁ。というわけだが、リュランよ。そなたはよいのか?」

 

「…構わない」

 

「賜った。それでは、騎士グリゴールとリュランの決闘を取り行う!場所は演習場。日時はこれより30分後とする。双方、よろしいか!」

 

「構わない」

 

「願ってもいないお言葉、感謝致します」

 

叩きつけられた挑戦状。

リュランが考えたことは1つ。

売られた喧嘩を買ったからにはただ叩き潰すのみ。

 

30分後、王宮は震撼する。

人の可能性の限界を極めし青年を。

神を喰らいし青年は全力に非ず、ただ理を持って善を成すだけである、と。

 

 

 

 

∽to be continue∽

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