∽移り行く風のように∽   作:アクア=イスタロス

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第12話

―――――【第12話 騎士団】―――――

 

「――そして、ここがリュラン様の職場である騎士団詰所です。団長はクリフ様。副団長はガイアス様となります。それでは、私はこれで」

 

「わざわざ済まなかった。礼を言う」

 

「お礼を言われることでもありません。それでは失礼します」

 

先ほどから王宮内を案内していた侍女の方が去って行った。

仕事に徹するというのはああいった者の事を言うのだろう。

さて、まずは挨拶といこうか。

 

「団長殿、及び副団長殿はおいでられるか」

 

「団長殿は奥の部屋に。副団長殿は何処かわかりません」

 

「わかった。奥の部屋だな」

 

入口に居た若い男の騎士から居場所を聞き、向かう。

周りからの視線が気になるが、昨日の決闘を見たのであれば納得する。

態度も実力も残念であったが、一応は騎士なのだ。

それを一蹴した俺が気になるのも当たり前だろう。

それらしき扉が見え、一息入れた後に扉の向こうへと声をかける。

 

「団長殿、居られるだろうか」

 

「ああ。入ってくれ」

 

「失礼する」

 

部屋に入るとまず思ったのは予想外に質素であることだろうか。

部屋には机が3つと本棚が3つ、装備をたてかける置き場ぐらいだ。

もう少し装飾があってもよいと思うが、これはこれで問題あるまい。

 

「リュランだ。今日付けでここの世話になることが決まった」

 

「話は聞いている。クリフ・ローガマイアだ。この騎士団の団長を務めている。昨日の試合は素晴らしかった。まずはおめでとうと言っておこう」

 

「あの程度の勝利では喜ぶに値しないだろう。…さて、団長殿。まずはこの騎士団の日常と仕事を教えて頂きたい」

 

「もちろんだ。シューゼ!入って来い!」

 

「失礼致します、団長殿!」

 

クリフの声で入ってきたのは若い男の騎士だ。

茶色髪のごく普通の体格を持っている。

おそらく仕事を覚えたばかりの新人だろう。

 

「シューゼ。こちらはリュラン。今日から騎士団に加入する者だ。リュラン、こちらはシューゼ。1月ほど前に騎士団に加入した比較的若い騎士だ。仕事は覚えているだろうから彼から聞くといい」

 

「了解した。リュランだ、よろしく」

 

「へへっ。俺はシューゼ。ま、新人同士気楽にやろうぜ」

 

がっちりと手を交わす。

意外に力があるが、あくまで人間の範囲内だ。

……俺が範囲外すぎるだけか。

 

「それでは団長殿、失礼致します」

 

「ああ。リュランも多いに励んでくれ」

 

「了解した」

 

シューゼに連れられて入口付近の休息所らしき場所に向かう。

なんてことはない机と椅子が置いてあるだけだが、座る場所があるというのは大きい。

 

「それじゃ、騎士団の仕事だったな。あんま多くないからのんびり覚えればいいぜ」

 

そういって取りだしたのは何かの本。

表を見ると「騎士団の規則」と書かれており、これを見ればよいのだろうということだけは把握した。

 

「騎士団の決め事とかはこれを見てくれればいいから俺は仕事だけ教えるぜ。騎士団の仕事は大きく分けて3つだ」

 

「3つか。意外と少ないのだな」

 

「大まかに分けたらな。んんっ、1つ目は魔獣の討伐。騎士団創立の理由であり、一番大きい仕事だな。基本的に複数人のチームで行動することになるぜ。2つ目は街の警護。国の民を護るのは我らの誇りってのが団長の口癖だぜ。最後の3つ目は……国王陛下の護衛だな」

 

最後の仕事。

ここで急にシューゼの雰囲気が変わった。

元気の良さが少しだけ消え、何か口に含む思いがあるようだ。

…ま、俺にはどうすることもできんな。

 

「最後の護衛はまだ任されることはないだろう。前者の2つを詳しく聞かせてくれ」

 

「…おう!」

 

ここからはシューゼから聞いたことを簡潔にまとめよう。

 

魔獣の討伐は遠征訓練を兼ねた実戦らしい。

故に、街の者から聞いた魔獣の討伐に行くこともあれば、適当なところまで行軍するだけの時もあるとのこと。

前者は心構えが出来るが、後者は出来ない。

常に緊張感を持って職務に当たれということなのだろう。

その考えには俺も賛成だ。

決められたことしかできない連中は人形にも劣る。

柔軟な考えを持ってこそ、護れるモノもあるだろう。

 

街の警邏は何ら特殊なことはない。

街を2人1組で散策し、困っている者がいないか見て回る。

時間まで回ればそれで終わりだ。

一番面倒なのは盗みらしいが、騎士団の活躍でこの街ではほとんど盗みがないらしい。

嘘か真か…現状では判断できんが、それはおいおいってところか。

 

「――でよ!我らが団長はこう言うのさ!『我らがいる限り、悪は栄えぬ』ってな!」

 

「そうか。ところで1ついいか」

 

「ん?」

 

「お前、時間はいいのか?」

 

「え?……ゲッ!?もうこんな時間かよ!?やっべーッ!!」

 

シューゼは時計を見るなり走り去って行った。

まぁ、あれだけ話してれば時を忘れるのも無理はないが…もう少し時間感覚を養う必要があるな。

 

「おい、ちょっといいか」

 

「なんだ。新人の俺に何か用か」

 

「そうさ。新人だからこその用だ」

 

振り返れば数人の男がこちらを囲んでいた。

皆が皆、安っぽい悪染みた笑みを浮かべている。

……騎士としてどうかと思うのだが。

ま、悪人感が有り過ぎだな。

 

「ちょっと面貸せよ」

 

「なぁに、そんな手間は取らせねぇからよ」

 

「そうそう!すぐに終わるぜ」

 

「そうか。団長殿が後ろで聞いていても問題ない手間なんだな?」

 

「「「!?」」」

 

慌てて後ろを振り返る3人に呆れつつもさっさと包囲網から抜け出す。

今日は仕事を教えてもらうだけ。

明日から仕事を――って、役回りの話を聞いてないな。

仕方ない、もう1度クリフの部屋に行くか。

 

「って、てめえ待てや!」

 

「こっちが下手に出れば舐めた真似しやがって!」

 

「許さんぞ、オラ!」

 

「貴様らがどう思おうと知ったことではないが、少々不謹慎ではないか?新人いびりも相手を選んだほうがいいぞ」

 

「あ?何言って――」

 

懐に潜り込み、腕を掴んで捻る。

この世界に関節という概念が生まれているか知らないが、どっちにせよ痛いだけだ。

 

「い、いだだだだだだッ!!」

 

「な、て、てめぇ、何してやがる!?」

 

「新人いびりをやろうとしていた者に人誅を下しているだけだ。俺も暇じゃないんでな」

 

掴んでいた手を離し、さっさとクリフの部屋へと向かう。

さすがに団長殿の部屋だ。

やつらも手出しはできん。

 

「団長殿。よろしいか」

 

「ああ。入ってくれ」

 

「再び失礼する」

 

「ん。リュランか。どうかしたのか」

 

「いや、仕事の持ち回りについて聞こうと思ってな」

 

「ああ。君は基本的にシューゼと一緒に行動してもらおうと思っている。普段は街の警護をしてもらい、月に2度、魔獣の討伐に行ってもらう。休みは週に1度。あとは時間外はできればここで待機するか裏の訓練場で体を動かしててくれ」

 

「了解した。…ああ、一応報告しておこう。さきほど3人組の男どもに囲まれてな。騎士として有るまじき行為だと思うのだが?」

 

「あー…やはり行ったか。昨日の試合を見ていればないと思ったのだが、やはり見てなかったか…。分かった。その件は私に任せてくれ。最も、君が昨日戦ったグリゴールより弱い連中だ。君ならば簡単に伸せてしまえるだろうけどね」

 

「では団長殿の采配にお任せしよう。それでは失礼する」

 

クリフの部屋を出る。

外では先ほどの男たちが睨みを利かせていたが大したことはないので無視して外へと向かう。

さて、今後時間を取れなくなりそうだからな。

今日中にやれるだけのことをしようか。

 

 

 

 

――――――――――

――――――――――

――――――――――

 

 

 

 

「…それで、どうだった?」

 

「はっ。目標は我々では到底敵う相手ではありませぬ。一度だけ動きを見ましたが、分からぬままに腕を取られて肩を攻撃されました」

 

「腕を取って肩を…?」

 

「はっ。こう、腕を後ろに回し、こんな感じにです」

 

「ふむ。我々にはわからぬ技術も持っていると…。ご苦労だった。毎度毎度済まないな」

 

「いえ、我々は団長殿の考えに賛同したまで。では、失礼します」

 

3人組が部屋を出ていく。

その姿を目で追いながら今の報告を吟味する。

冷静さ、機転は申し分なさそうだ。

最後の技術に関しては理解できぬが対人で相手に怪我をさせることなく動きを封じる手段があると考えてよいだろう。

……昨日の事を含めて考えても新人とは思えぬ。

…私に抑えきれるのだろうか……?

 

クリフの悩みは続く。

最も、リュランはクリフに迷惑をかけるなどと微塵も思っていないので考えるだけ無駄だとは思うのだが、騎士団の団長として、考えざるを得なかった。

悩む必要はあれど時間は足りぬ。

今度はガイアスの奴をけしかけてもう一度戦闘場面を見ようかと考えるクリフであった。

 

 

 

 

∽to be continue∽

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