―――――【第17話 別れ】―――――
時が流れるのは早い。
あれから5年。
学校が完成し、1期生が入学し、そして卒業していった。
大半の生徒はウェスペルタティア王国騎士団・魔法師団への入団を決め、少数の生徒は故郷を護るため、旅だった。
学校の運営も軌道に乗り、今では俺やレイナの指示を仰がなくとも行ける程度になった。
レイナは本格的に引きこもるため、王都オスティアより10数キロ先。
そこにあらゆる魔法を駆使した宮殿を完成させた。
名を――休息の宮殿という。
ネームセンスは賛同しかねるが、まぁ、置いておこう。
そして、レイナのように威厳のある名を持たない(とされる)俺は相変わらず王都オスティアの王宮で娘の無茶を適度に流しながら生活している。
大型魔獣――名を猿王と付けられた――を討伐した直後からここ、オスティアへは大小多くの魔獣がそれまで以上に姿を見せるようになった。
原因はわからないが、高濃度の魔力が満ち溢れているからだと推理している。
現に、オスティアの周辺数キロには大量の魔力溜まりが存在し、これを考えるに地下に魔力溜まりの層があるのではないかと思われる。
下手に触って暴発しても困るので何もしてないが。
騎士団育成と同時に討伐遠征も兼ねて出撃し続けていたせいか、いつの間にか俺の肩書きは上から1番目――騎士団団長へとなっていた。
最も、肩書きが変動しただけで、俺の両脇をクリフとガイアスが埋めていることに違いはない。
……ま、これだけで終わってくれればよかったのだが、1年前の魔獣大量侵攻によってまた肩書きが増えることとなる。
大地を埋め尽くさんばかりの魔獣の群れが王都北西より侵攻してくる姿を訓練中であった騎士団人が発見。
数の報告を受けた国のお偉いさんは1日意見を出し合うも中々まとまらず、結局騎士団・魔法師団だけでは対応できないと判断したアマテルは再び英雄の出撃を要請。
騎士団団長の俺、魔法師団名誉顧問のフェイトとシエルはすぐさま行けたのだが、引きこもりのレイナを呼んでくることに時間がかかったが、第一陣が到着する直前に城壁上へと来ることが出来た。
最も、その後は夥しい量の魔獣を4年前と変わらない対軍魔法の嵐と持ち前の刀でバッサバッサと斬り捨てて行った。
数日続きの戦闘の果てに、おおよそ数万体の魔獣群の討伐を終え、面倒そうな肩書き『王都の守護者』という名を手に入れた。
英雄だけでも面倒だというのに、王都の守護者ってなんだよ…。
面倒な立場と大きな重責。
一応、役職的には王国に危機が迫った時の最終砦というわけだ。
基本はアマテルの護衛をしていれば問題ない。
まぁ、親衛隊もいるからほとんど意味ないが。
その親衛隊を直々に鍛え直したし、問題はなかろう。
そして今、俺は膨大な理論と魔力の下に完成させたとある魔法のお披露目を騎士団演習場にて行っていた。
…いや、俺から言ったわけじゃなく、偶然レイナに見つかったためだ。
観客はレイナとフェイト、シエルにアマテル、予想外の事態に備えてクリフとガイアス、興味本位で来たヴェレスの7人だ。
「…とりあえず、理論は完ぺきだ。魔力も申し分ない。残りは成功するか否か、だ」
「…大丈夫よね?」
「予想通りに行けば、な。なにしろ時間跳躍など誰も成したことのないからな」
「……私じゃ作れないからね、そういった魔法は」
「悪用される要素が高いからな。お前を信頼してないわけじゃないが、こればかりはすまん」
「ううん。気にしないで。――それじゃ」
「ああ」
発動後は数時間先に跳躍する予定だ。
これが出来れば、昔、ネギまで読んだ戦闘における時間跳躍行動に一歩近づくこととなる。
転移があるが、転移防止をつけられるとどうしようもないからな。
「ではリュラン。油断するでないぞ」
「ふっ、問題ない。それに、もし数時間先に跳躍できずとも、理論的には戻ることも可能だ。心配するな」
「……そうだな」
「では、そろそろ始める。離れてくれ」
皆が十二分に離れたことを確認し、紙に描いた魔法陣に魔力を込める。
描かれた魔法の線が輝きだし、次の瞬間――
「――っと。……ここは、どこだ?」
瓦礫に埋もれた建物。
辺りの地面には草が自由に伸び、最近誰も来ていないことが分かる。
だが、この光景にどこか見覚えがあった。
「……まさか」
辺りを見渡し、出来る限り高い場所へと駆け上がる。
そこで見えた景色……それは俺の予想の斜め上を超える状況であった。
「空に…島?」
大地に都市らしき都市はなく、空には巨大な島の姿。
どうなっているのか分からないが、すくなくとも先ほどいた時代にこんな状況の場所は1つしか無かった。
唯一、レイナの作り上げた墓守の宮殿を除いては。
「…まずは情報収集と行くか」
空を飛び、島を目指す。
何が待ち受けるか、全く分からない。
それでも、俺には面白い予感がしていた。
∽to be continue∽