∽移り行く風のように∽   作:アクア=イスタロス

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第2章 青年は唯、憂いを持って英雄と成る
第18話


―――――【第18話 未来】―――――

 

図書館。

多岐に渡る知識の倉庫であり、まだ見ぬ英知を秘める神秘の場である。

無料で使用できると聞いて、とりあえずここでこの街の歴史と現在の年号を抑えに来た。

 

「ふむ…皇歴908年……いつか分からん」

 

考えてみればあの国で年号なんて使わなかったしな…だが、少なくとも900年近い歳月が経過しているわけだ。

何が起きたのか知らんが、俺が今いる場所も『オスティア』だし、初代国王も『アマテル』だし、間違いねぇだろう。

とりあえず、元の時間に戻らなきゃならんのだが……どうにも魔法陣の調子が悪い。

魔力を込めても反応しないため、現状戻るのは不可能のようだ。

もしかしたら魔法陣の書き間違えがあったのかもしれないが…もう一度構想を練り直すとしよう。

それにしても、900年も経ってちゃ、知りあいなんてほとんどいねぇし…とりあえず、休息の宮殿にでも行くか。

少なくともレイナぐらいはいるだろう。

 

「さて、休息の宮殿は……あっちか」

 

そこらじゅうで魔法使いが空を飛ぶ光景が見られるので安心して飛ぶ。

オスティア中央図書館から約15キロの道のり。

だが、下手に近づくのを見つかって妙な騒ぎを起こしたくもない。

なので、光の向きと反射を利用した魔法で姿だけは隠して接近する。

 

「っと、無事に到着。えーっと、レイナの居室は……こっちか?」

 

休息の宮殿自体もかなり様変わりしていた。

規模がでかくなり、いくつか外装も増えていた。

あとは……かなり縦長になっていたぐらいか。

 

「にしても…迷路みてぇだな。……!」

 

気配を感じ、咄嗟に姿を隠す。

前から2名、近づいてきた。

魔法で姿を消しているとはいえ、靴音や匂いなどは残ってしまう。

近くに来たら即バレる危険もある。

故に、接近されたら身を隠すのがこの魔法の使い方だ。

 

「――!――――!」

 

「―――。――」

 

「――だ!我ら―――だろ!」

 

「ふ。――だな」

 

「いいだろう、外にでろや!」

 

「お断りするよ。これから任務だからね。――むっ」

 

「あん?どうかしたのかよ」

 

「これは……いや、何でもなかったようだ。行くよ」

 

「ちっ、仕方ねぇなぁ」

 

コツコツと歩く靴音が遠ざかる。

完全に音が消えてから、周囲の様子を窺う。

 

「さて、とりあえず奥に行くか」

 

再び歩き出す。

どこにいるかも分からぬレイナを探して。

 

 

 

 

「ん~中々見つからないな」

 

探すこと数時間。

全く手がかりも見つからず、時間だけが過ぎていく。

あれから人にも出くわさないので見つかる危険性がない半面、情報収集が出来ずにいた。

フラフラ色々な部屋を覗いたが、ほとんどは使われていない部屋か、資料庫のような場所だった。

資料を見ても現状を知るための情報は置かれていない。

はてさて、どうするか……。

 

「…お、また来た」

 

再び隠れる。

しかし、今回は情報収集を優先するため、風の魔法で会話近くの空気をこちらにも届くようにする。

 

「ようやく任務が終わったな」

 

「ああ。これで戦争も終息するだろうぜ!」

 

「へへっ、ちがいねぇ!しゃ、終戦を記念して酒でも飲むか!」

 

「まだ早いけどな。けど、俺も付き合うぜ」

 

笑いながら遠ざかる声を聞きながら、少ない情報から1つだけ嫌な響きの言葉を口にする。

 

「戦争、か。魔法世界で…戦争……」

 

脳裏に浮かぶのは『紅き翼』の活躍した魔法大戦。

北のメガロメセンブリア共和国率いる連合対南のヘラス帝国の戦争だ。

確か、この戦争の裏には――

 

「!まさか、今のここって……」

 

敵本拠地真っ只中なんじゃ――

 

「おい、侵入者はどこだ!?」

 

「こっちだ!反応が近いぜ!」

 

ざわめく声が聞こえる。

それと同時に多数の足音も。

 

「まさか、バレたのか?とりあえず、姿を隠すか」

 

物陰に隠れ、様子を窺う。

痕跡を消すために風を巻き起こし、空気を循環させる。

一通りの事が終わり、ギリギリで隠れた。

 

「この辺だな」

 

「おいおい、もっと細かい位置どりはわかんねーのかよ」

 

「無理を言うな。これでも我々が使える中では最高のものだ」

 

「ちぃ。おいテメーら!侵入者を見つけ次第捕獲しろ!腕の一本ぐらいは奪ってもかまわねーぞ!!」

 

ぞくぞくと現れる敵兵を見て、少しマズイと思う。

撤退までの時間を考えると戦闘は極力避けたい。

しかし、これだけ敵がいるとなると戦闘は免れない。

……一撃で決めるか。

 

「…むっ。巨大な反応を確認!何か来ごふっ!?」

 

「な、クライス!ガッ!?」

 

探査装置を持った男と、その男と話していた男の意識を奪う。

このまま一気に殲滅する!

 

「顕著せよ、『百式観音』よ!」

 

鍛錬に次鍛錬の末、ワンフレーズと合掌の構えで瞬間的に発動するようになった拳撃の極み、百式観音。

元はある漫画の某会長が使用していたソレだ。

最も、その会長が使うにあった能力に掛けた制約は一切ない。

基本的に手動で動かすが、無差別殲滅であればフルオートも可能だ。

なので今回、フルオートによる殲滅を決行し、ものの数秒で決着はついた。

…が、辺り一面がかなり酷いことになっているのでさっさと退散せねば。

 

「いたぞ!こっちだ!!」

 

「ちっ。面倒だ」

 

巨大な百式観音を解き、廊下を駆ける。

とりあえず外に出なければならないため、適当に廊下を曲がったりして走り続ける。

すると、着き当たった場所は大きな広間。

…どうやら中央に向かって走ってたらしい。

 

「追いつめたぞ!囲め!!」

 

通路自体は四方へと延びているのだが、全てから敵兵がワラワラ…。

ふむ…正面突破しかないか。

 

「ようやく止まったな。手間を掛けさせやがって!」

 

「煩いぞ、雑魚」

 

「なにゲベラ!?」

 

とりあえず煩い奴を殴って黙らせる。

残った周りの奴は個々の戦力差を意識してか、無暗に近づくのではなく、じりじりと間合いを狭めてきた。

先ほどの奴よりこいつらの方が優秀だな。

 

「だが、そう簡単には詰めさせぬ。ハァッ!」

 

全身に大量の魔力を纏い、一気に放出する荒業。

膨大な魔力を活かした力技だが、対軍戦では一掃できるため重宝する。

今回は殺害のではなく戦闘不能を意識しているので、ただ魔力の塊を当てただけだが、本来ならば魔法の塊ではなく刃をぶつけ、縦横無尽に切り刻むように使う。

 

「やれやれ。ようやく仕事が終わると思った最中に侵入者とは…。ついてないな」

 

「……フェイト・アーウェルンクス」

 

「おや、僕の名前を知っているのかい?生憎、僕は君の名前を知らない。よければ教えてくれないかな」

 

「悪いな。1(プリームム)のような幹部に答えられる名は持ち合わせていない」

 

「!!その名をどこで…」

 

「さあて、な!!」

 

魔法ではなく、ただの魔力をぶつける。

シンプル故に、避けるのには相当な技量が必要だ。

しかし…ここはどこなんだ?

 

「この魔力…我らが兵士を圧倒する力…にも関わらず名が分からぬとは…貴様、何者だ?」

 

問いには答えない。

逆に、こちらが質問を返す。

 

「造物主(ライフメーカー)はどこだ」

 

「ふっ、貴様に教えると思うか?」

 

「ならば…無理やり知るだけだ」

 

「何ッ?ぐっ!?」

 

瞬動で距離を詰め、初代フェイトの頭を掴み、無理やり記憶を読み取っていく。

数秒でほとんどの記憶を見えたため、放り捨てる。

 

「き、さま…ッ。どうやって、僕の多重魔法障壁を軽々と突破した…!」

 

「悪いな。この程度ならば俺には造作もない」

 

見えた景色は最上階。

瞬動を繰り返し、一気に最上階へ。

そして、そこには……

 

「お前は…誰だ?」

 

「そうだな…。誰だろうな?」

 

黒いローブを羽織り、優雅に構える何かがそこにはいた。

 

 

 

 

∽to be continue∽

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