∽移り行く風のように∽   作:アクア=イスタロス

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第20話

―――――【第20話 平行世界】―――――

 

ワアアアアアアッ!

 

街に市民の喜びの声が響く。

 

「終わった!これで戦争は終わったんだ!」

 

「良かったね…。これで怯えずに済むんだよ!」

 

「万歳!ヘラス帝国万歳!メセンブリーナ連合万歳!」

 

無理もない。

2年もの長きに渡り続いた戦争が終わりを告げたのだ。

ま、市民に知らされてはいないが、この魔法大戦の調停役となったとある組織が壊滅したと両国首脳陣に伝わっており、そこに繋がりのある者や組織そのものを怪しんでいた者は捜査に乗り出したらしい。

終戦の裏で秘密裏に動く各国の動きに終わりはない。

 

「しかし…紅き翼は本当に壊滅したのだろうか…」

 

市民の口から紅き翼の言葉が出ることはなかった。

詳しく調べてみれば、フェイトの策略によって連合からお尋ね者になった後、各地を転戦していたらしいが、夜の迷宮と呼ばれるダンジョンにて囚われの身となっていたウェスペルタティア王国アリカ・アナルキア・エンテオフュシア王女とヘラス帝国第3皇女テオドラ姫の救出を行うも、とある組織と遭遇、交戦した後、上記両殿下の救出は成功したが、元メガロ捜査官、カトウ・カグラ・ヴァンデンバーグが行方不明に。

その後、エオス奪還戦にて旧世界のサムライ、近衛詠春が離脱。

ヴァルカン砦の攻防にて魔法使い、アルビレオ・イマが行方不明に。

そして、グレート=ブリッジ攻防戦にて敵の主将格と戦闘後、主格、ナギ・スプリングフィールド、傭兵、ジャック・ラカン、魔法使い、フィリウス・ゼクトの3人が行方不明となり、事実上、紅き翼は壊滅したとされている。

……俺が言うのもなんだが、バグキャラ達が揃いも揃ってこうも簡単に消える気がしないんだがな……。

だが、行方が知れずに早5ヶ月。

この世界に来たばかりの俺が集められる情報もこれぐらいだろう。

 

さて、本来であればこの後、広域魔法現象の影響でここオスティアは墜落するのだが、何の因果か俺の攻撃が儀式を完全に吹き飛ばしてしまい、儀式そのものが発動しなかった。

ついでとばかりに黄昏の姫御子の救出も果たしたが、この後どうするか全く考えていない。

やるべきことはあるが終わりが見えないため、とりあえずこの世界で何かする必要がある。

姫巫女連れて旅してもいいが……

 

「やれやれ、どうするべきか」

 

「……何か、困った?」

 

俺の問いに答える人物こそ、例の姫御子であるアスナ嬢。

知らない人ばかりで怯えているのか、ずっと足にしがみ付いたまま離れない。

 

「んー、アスナ嬢が気にするまでもない事だ。まぁ、言ってしまえばこれから先どうするか悩んでいるだけだ」

 

「……?」

 

可愛らしく首を傾けて悩んでいた。

まぁ、年齢的には百を超えるらしいが、人らしい生活をしてなかったせいか常識に疎い。

ま、それぐらいはこれからの生活で何ともなる。

 

「えっとだな、アスナ嬢は何かしたいことはあるか?」

 

「……(フルフル)……リュランと一緒に居れれば…いい」

 

「あ、あはは…」

 

とにもかくにもアスナ嬢が無事に生活できるようになるまで面倒は見なければならん。

それがアスナ嬢を救った俺の義務だろう。

候補としては原作通り麻帆良ぐらいか。

近衛詠春が生きていれば近衛家に預けることもできたが…いや、何も言うまい。

 

「んー、じゃあとりあえず旧世界にでも行くか」

 

「旧…世界?」

 

「そうだ。まぁ、俺としては旧世界なんて呼び方よりも地球と呼びたいんだがな」

 

「…そこは、旅できる?」

 

「……ま、こっちよりは危険がないな」

 

アスナ嬢を肩に乗せ、歩き始める。

目指すのはオスティアにあるゲート。

パスポートは適当に偽造する予定だ。

…いや、仕方ないだろう。

俺は出身なんて書けないし、アスナ嬢に至ってはオスティアの姫だし。

ともかく、元の世界に戻るまでの間、気ままに観光できればいいかと思う。

戦争を忘れ、普通の人の生活というものをアスナ嬢に見せたいし。

出来れば、耐えがたい記憶を忘れて――

 

 

 

 

――――――――――

――――――――――

――――――――――

 

 

 

 

「……で、何故俺はここにいるのだろう」

 

「あははー、せっちゃーん!あーちゃーん!こっちやでー」

 

「待ってーこのちゃーん!」

 

「…侮れない」

 

目の前には3人の子供が元気に走り回っている。

1人は御存じアスナ嬢。

もう2人は名前からして分かると思うが、近衛木乃香、桜咲刹那である。

旧世界――地球に降り立った俺達2人は京都に訪れた。

そこで寺院巡りをする最中、何の因果か2人の子供を連れた近衛詠春とその妻、近衛木乃芽に出会う。

当初、その姿を確認した俺はアスナ嬢を隠して逃走を図ったが、目ざとくアスナ嬢を隠した瞬間だけを目撃した近衛詠春に追いかけられる。

街中で魔法を使うわけにもいかず、ぐるぐると逃げ回っているうちに元の場所に戻ってきてしまったようで、目の前に現れた2人の娘である木乃香嬢に――怒られた。

何故だろう、数たる強敵を倒してきた俺であったが、5歳の子供に負けた。

その後、追いつかれた近衛詠春に交換条件を持ち出して追及を免れた。

その間に子供達は仲良くなったのか、今に至るというわけだ。

 

「しかし…あのナギが行方不明とは…信じられん」

 

「俺も詳しく聞いたわけじゃない。ただ、公式記録ではそうなっていた」

 

「……そうか。色々とすまないな。てっきり私は誘拐犯かと勘違いして…」

 

「……まぁ、幼い子供を隠すように逃げた俺も悪かった」

 

お互いの勘違いもある程度の情報交換で解決し、俺は近衛詠春が離脱後の紅き翼について話したわけだ。

もちろん、アスナ嬢は街で彷徨っているところを保護したとしている。

 

「ふむ…リュラン。このあとどこかに行く予定はあるのか?」

 

「いや、世界中を適当に旅しようかとでも思っているだけだ。行く宛てはない。それがどうかしたか」

 

「何、アスナ嬢は我々紅き翼の忘れ形見とも言える。君さえよければ近衛家に住んで欲しいと思う。あの子は……家族を知らないからな」

 

「……何やら深い事情があるようだな。聞かないが」

 

「…悪いな」

 

全部知っているが、ここはただの旅人を演出しなければ。

しかし……近衛家か。

現状では最高の案だ。

近衛詠春であれば下手を打たないだろう。

アスナ嬢を大切に育ててくれるはずだ。

 

「…そうだな。全く事情を知らない俺よりも少しでも知っているそっちの方がアスナ嬢もいいだろう。ああして友達もできたわけだし」

 

「…そうか」

 

俺の見る先には乏しいながらも嬉しそうに笑うアスナ嬢の姿。

ま、俺1人よりかは友達といた方が楽しいだろうな。

 

「では、俺はさっさと消えるとしようか。下手にあの子といると離れがたくなるかもしれんしな」

 

「おいおい、1泊ぐらいしていけばいいんだぞ?」

 

「ふっ、俺は渡り鳥。旅がお似合いってな」

 

近衛詠春にそう断ると、未だに遊んでいる3人に近づく。

 

「木乃香嬢、刹那嬢」

 

「ほぇ?」

 

「どうかしんですか?」

 

「ふふ、君たちはアスナ嬢のことをどう思ってるのかな?」

 

「えへへ、友達やでー」

 

「は、はいです」

 

ヒマワリを思い浮かべる木乃香嬢の笑顔と桜を思い浮かべる刹那嬢のどもりながらの返事。

2人の言葉に一安心。

 

「…そうか。アスナ嬢もそう思うか?」

 

「……ん」

 

少しの時間ではあったが、どうやらしっかりと仲良くなれたようだ。

 

「そうか。…なら、安心して行けるな」

 

「どこか、行くの?」

 

「ああ。初めはもう少しいる予定だったが、アスナ嬢を知る人物に会えたしな。彼に任せることにしたよ」

 

「いや……いや……ッ」

 

俺の旅立ちを聞いた瞬間、ボロボロと涙を流しながらしがみ付いてきたアスナ嬢に驚きを隠せない。

まさか、ここまで依存されてたのか…。

 

「…分かってくれ、アスナ嬢。俺みたいな旅人といるよりも、ここで木乃香嬢や刹那嬢といたほうが君のためになるんだ」

 

「いや…いや…ッ!せっかく…せっかく……ッ!」

 

「……約束だ。1年後、また会いに来るよ」

 

譲らないアスナ嬢を納得させるための小さな約束。

守れないであろうと大きな嘘をひた隠して笑顔を浮かべる。

 

「……嘘つき」

 

「……あはは。守れるように頑張るよ」

 

普通にバレた。

何時の間に嘘を見抜くようになったことやら。

 

「……嘘付いたら針千本飲ます」

 

いつの間にかお馴染みの約束事を覚えたアスナ嬢に驚いたが、とりあえず安心。

後ろに来ていた詠春に会釈し、ローブをまとってこの場を去る。

さて、どこか落ちつける場所を探すとするか……。

そろそろ…本格的に時間跳躍の魔法陣を直すとしよう。

さて、再び魔法世界にでも戻るとするか。

 

 

 

 

∽to be continue∽

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