∽移り行く風のように∽   作:アクア=イスタロス

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第31話

―――――【第31話 英雄達】―――――

 

フェイトから連絡が入った。

無事、主要陣を助け出して孤児院に避難できたようだ。

アルと戦っていたデュナミスも無事のようだ。

 

『それでリュラン様。今後、我々はどうすればよいのでしょうか?』

 

「あー、そうだな……。とりあえず、孤児院の荷物を全部まとめてヘスカトーレ(オスティアより北、ヘラス帝国方面)に行け。急げよ」

 

『……は?い、いきなり何を?』

 

「機密事項だが…まぁすぐ分かるからいいか。……よく聞け。今から22時間後、オスティアは全島墜落する」

 

『――ッ!?ば、バカな!?何故、オスティアが墜落するのですか!?』

 

「冷静になれ、フェイト。オスティア全域の島を浮遊させている物質は?」

 

『島を浮遊させているもの……それは、魔力――ッ!』

 

「気が付いたようだな。そう、魔力だ。だが今回、儀式を止めたとはいえ広域魔力減衰現象は確認されている。しかも、今までとは比べ物にならない規模で、だ」

 

『…既に、オスティア周辺の魔力は皆無なのですね。分かりました、すぐに皆と荷物をまとめてヘスカトーレへと向かいます。リュラン様は?』

 

「……俺は、王国騎士団団長の最後の責務を果たす。行け、現地で会おう」

 

『…御武運を』

 

さて、これでフェイト達は問題ない。

あとは王国騎士団の連中を引っ張って避難させるとするか。

 

「やれやれ…まずはトールとミチェルに連絡して、そのあと避難経路の確認…」

 

おそらく式典には参加しなければならない。

それまでには騎士団全体に最後の任務を伝えて行動させねばならない。

……必ず、全員を救って見せよう。

 

 

 

 

「トール、ミチェル。居るか?」

 

「ハッ、団長殿!」

 

「何か事件でしょうか!」

 

「……これは第1級機密事項だ。このあと俺が全体に説明するまで誰にも話すな。いいな?」

 

「「…了解しました」」

 

2人が頷くのを見て、声を小さくする。

どこだ誰が聞いてるか分からん上、外に知らされれば混乱が生じる。

それだけは避けねば。

 

「よし。……冷静に、心して聞け。これから21時間後、この離宮を含むオスティア全域の島が墜落する。お前らは魔法が使えない状態の中、国民を速やかに避難誘導しろ。いいな?」

 

「……本当ですか?」

 

「冗談で言えるか。続けるぞ。よって俺達、王国騎士団は避難経路に従って国民の避難を行う。特に心配なのがスラム街のような国の地図に載っていない島だ。長年、街の区画整理や職の斡旋を行ってきたがこれだけは残り続けてしまったからな。スラム街へはお前達のどちらかを先頭に1個団体で頼む予定だ。何か質問は?」

 

「…避難に関しては。しかし…この国はどうなってしまうのでしょうか?」

 

「……これから指示を与える。騎士団を全員集合させろ。連絡は緊急指示を使え」

 

「……ハッ!」

 

トールが先に部屋を出ていく。

残ったのは不安そうな顔をするミチェル。

 

「…団長……」

 

言いたいことは分かる。

だが、俺は……。

 

「…………俺は、最後まで王国騎士団団長としての責務を果たすだけだ。今は、それだけだ」

 

「……ッ。失礼しました!」

 

敬礼をし、ミチェルも部屋を出ていく。

……さて、気が重いが、人の命の方が優先だ。

最後まで、騎士として、団長として、そして…英雄として頑張るとしよう。

 

 

 

 

「団長。各隊、全員揃いました!」

 

「御苦労」

 

目の前に騎士団全隊が揃う。

計20もの隊が綺麗に揃っている姿は圧巻の一言。

……この姿を見られるのも、これで最後か。

 

「全員、よく集まってくれた。俺が今から言う任務は第1級機密事項に触れる。騒ぐな、慌てるな。心を保ち、冷静に聞け」

 

さすがに第1級機密事項と聞いて皆の表情が強張る。

だが、ここから先はさらにきついぞ。

 

「これより20時間後。オスティア全域の島が墜落する。各隊は日頃の鍛錬を活かし、全国民の避難誘導を行え。これは訓練ではない。……騎士団として、最後の任務だ」

 

『……』

 

「…返事はどうした!」

 

『り、了解しました!』

 

「それでいい。なお、これは先ほど話した通り、第1級機密事項だ。混乱を防ぐため誰にも話すな。さらに、避難中は魔法の使用が出来ない恐れがある。それを念頭に置いた上で行動しろ。また、各隊の隊長は副団長よりどの島の避難経路を使うのか確認しろ。……最後に1つ」

 

呼吸を整える。

誰も取り乱していない。

頭が追い付いていないだけかも知れんが……それでも、俺の自慢の戦友たちだ。

 

「俺たちはウェスペルタティア王国騎士団だ!それを誇りに思い!必ずや!生きて、再会を誓え!以上だ!!」

 

『了解!!』

 

乱れぬ全員の敬礼を見て、心から騎士団団長としてお前らを誇りに思える。

……さぁ、ここからは地獄だ。

生きて、必ずまた会おうぞ。

 

 

 

 

――――――――――

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――――――――――

 

 

 

 

その日はお祭り騒ぎだった。

遂に戦争が終わり、悪の巣窟(とされた)は壊滅。

人々の表情には笑顔が取り戻された。

 

そして、中央にある離宮では、今まさに連合と帝国の停戦合意による握手がアリアドネー立ち会いの下、人々の目の前及びテレビ中継で知れ渡り、完全に戦争は終結したことを理解した。。

和やかに話すヘラス帝国代表、テオドラ皇女とメセンブリーナ連合代表リカード艦長。

人々の盛り上がりは最高潮にまで上がった。

そして、最後はお待ちかねの――

 

「これより、勲章授与に移りたいと思います」

 

『わあああぁぁぁぁぁぁ!』

 

「しっかし、飽きないのかねぇ?」

 

「うぅ…」

 

「むふふ。詠春は緊張のせいでガッチガチみてーだな」

 

「…慣れているお前達が普通じゃないんだろ」

 

「なんだそりゃ?お前が生真面目過ぎるんだっての。リュランを見ろって、この堂々たる態度!」

 

「…一応、俺は王国騎士団の団長だ。この程度は慣れている」

 

「あー、そういやそうだったな。忘れてたわ」

 

「これ終わったら勝負しねーか?俺様、お前とは戦ってないからよ」

 

「断る。この後も忙しいんだ。――そろそろ静かにしろよ。始まるぞ」

 

「それでは!オスティア王女、アリカ様から勲章が授与されます!大きな拍手をお願いします。」

 

『わあああぁぁぁぁぁぁ!』

 

 

 

 

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「なんでもない」

 

「んだよ、ったく…」

 

ナギに抱きつき、ナギのアホな発言を殴り、ナギのカッコイイ姿に少しだけ惚れ、無理やり自分の気持ちにケリを付けようとしたアリカがナギを最後に叩いて帰ろうとする。

一部始終を見ていたが、あれはどう見ても気があるよな……。

 

「いいのか。自分の心を伝えなくて」

 

「よいのだ。あやつにも話したが、妾はこれより1人で生きてゆくこととなる。……母も、祖母も通った道だ」

 

「…少しぐらい、例外があってもいいとは思うがな」

 

「…珍しいな。騎士たるそなたがそのような戯言を言うとは」

 

「……心配しちゃ悪いか?俺からすればお前は娘同然だ。娘が自分の気持ちよりも国とともに命運を共にする姿は見てられん」

 

「……だが、そなたは騎士の長。妾の指示には従ってもらう」

 

「…ったく」

 

通り過ぎようとするアリカを掴まえ、抱きしめてやる。

突然の出来事に呆然となっていたが、意識がはっきりするとジタバタと動き出すが、逃がさない。

 

「ッ!?何をする!!離さんか!」

 

「少しは肩から力を抜け。そして、本当に冷静になって周りを見てみろ。そうすりゃ、今までに見えてこなかった世界が見えてくる」

 

「…妾は常に冷静だ。これ以上の心配は無用。そなたも持ち場に戻るがよい」

 

王家の魔力を纏った掌で叩かれた。

これだけはいつまで経っても痛いものだな…。

 

「……既に騎士団全員の配置は完了した。事情も説明してあるし、奴らも己の使命を果たすだろう。問題はない」

 

「…何を言っておる」

 

「…残り、4時間か」

 

「――ッ」

 

アリカが驚いてこちらを見るが、俺は目線を合わせない。

見る先は街の真ん中で戦友達が地図を確認し、話し合う姿。

抜かりはない、だが、それでも気にせずにはいられない。

長く生きた人生のほんの少しの時間を同じくした連中だが、俺からすれば全員俺の子供同然だ。

だから、いつまで経っても心配しちまうんだろうな…。

 

「…リュラン。どこまで気が付いておるのだ」

 

「……儀式を止めても、既に発動していた分の影響は避けられない。これより4時間後、オスティア全域の島は墜落し、多くの死者が出るだろう。俺達騎士団はそれを止めるべく、スラム街の住人を含む国民全員を脱出させられるように避難経路を確認、移動手順を覚えさせて配置につかせてある。兆しが見えればすぐにでも動けるぞ」

 

「……済まぬ」

 

「気にするな。王国に危機に先頭に立つのが俺だ。『王都の守護者』の名は伊達じゃねぇ」

 

「…リュランよ、王として最後の命を告げる。妾に従い、地獄まで付き添って見せよ」

 

「ああ。だが、地獄に行く必要はねぇ。無事にお前をナギと結婚させてやる」

 

「ふふ、楽しみにしておるぞ」

 

誓いは成された。

これより、俺は守護者として、民を護るのみ。

 

 

 

 

――――――――――

――――――――――

――――――――――

 

 

 

 

「陛下!」

 

ガトウがクルトとともに現れた。

つまり、この時が来たのか。

 

「時間か」

 

「はい。まもなく崩落の第一段階が」

 

「ガトウ。進捗状況と真っ先に落ちる地区は?」

 

「現在25%。おそらく現場に一番近かったB-1地区とB-8地区だ!」

 

「…」

 

「陛下のお考え通り、式典と称し騎士団を先頭にこの離宮島に全市民を誘導しております。情報統制と騎士団の態度により混乱もこれまでのところありませんが―――崩落が始まればその限りでは…全市民の救出は困難を極めるかと……!!」

 

「…ッ!わかった。妾も直接指揮に当たる!リュラン、行くぞ!」

 

「了解。ガトウは引き続きクルトと一緒に救出を。急いでくれ」

 

「あぁ。行くぞ、クルト!」

 

「はい!」

 

アリカに付き添い、船に乗り込む。

行先は最初に崩落すると予想されたB地区周辺。

既に予兆が始まっており、船の走行が困難になり始める。

何とか対抗呪紋塗装装甲によって魔力がなくとも墜ちることはないが…時間がないことに変わりはない。

 

「く、魔力の減少が激しくなってきた。もう持たないぞ!」

 

「急げ!市民を犠牲にするな!」

 

船員の悲鳴と指揮官の怒声があちらこちらで飛び交う。

そんな中、ついにその時はやってきた。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

 

「!!崩落が始まったのか!」

 

「隣艦より緊急連絡!空中王都の崩落拡大中!!周辺から強力な魔力消失現象確認!即席の対抗呪紋塗装装甲が何時まで持つか…ッ」

 

「泣き言はいらぬ!!あと数時間持てば十分じゃ!最も的確に市民を救えるよう、最大効率で全艦隊を回せ!ただし!捨てて良い命はない!!1人も救いもらすな、これは厳命じゃ!!」

 

アリカの命が中継をつないで全艦隊へと通達される。

だが、無情にも崩落は止まらない。

徐々に端や酷いものは全部が崩落し始め、辺りは落ちゆく浮遊岩で埋め尽くされる。

その間を縫って次々に市民の救出を果たすが……。

 

「これ以上は厳しい。……やるしかない、か」

 

 

 

 

「貧民島の避難作業が難航しています!このままでは!!」

 

「理由は!」

 

「街の構造が複雑な上…不法移民が多く、全住民の把握が間に合いません!!既に2師団もの王国騎士を向かわせていますが間に合いません!」

 

さらに数を増やして事に当たらせているが、思いの他移民の数が多かったようだ。

…少しだけ待ってろ、今助けてやるぞ、戦友達よ。

ローブの下で見えないよう、施した大量の封印を解く。

 

俺にしか出来ない最終手段。

それが、施していた封印をすべて外し、全魔力を解放すること。

長き鍛錬を経て、俺の魔力は無限にも等しい。

…それを、瞬間的に全魔力を放出すればどうなるのか。

…簡単なことだ。

この一帯に魔力が満ち溢れ、普通の人間であれば魔力酔いを起こす。

だが、今は魔力が消失しているので問題はない。

魔力が消えたことで墜ちるのであれば、違うところから魔力を補充してやれば一時的にではあるが、浮遊を取り戻せる。

 

「……わかった。ここの指揮は任せる」

 

「陛下!!どちらへ!?」

 

「貧民島は妾が直接赴き、島ごと不時着させる!」

 

「し、しかし!」

 

「妾の魔法ならこの魔力消失現象の中でも無効化されぬ!」

 

「いけません!女王陛下ッ!」

 

「そうだ、アリカ。お前が指示を出さず、誰が出すというのだ」

 

「しかし!」

 

「少し待ってろ。30分だけ崩落を食い止めてやる。その間に民を救いだせ」

 

「な、何を言っておるのだ…?」

 

「見ていろ。…ぐぅぅうううあああああああアアアアアアッ!」

 

膨大な魔力に耐え切れず、血管が切れ、血が吹き出るのが分かる。

だが、辞めるわけにはいかない。

我ガ、子供達ヲ、護ルたメニも……ッ!

 

 

 

 

【side アリカ】

 

バカな…ありえない。

元々魔力は多い方だと知っていた。

だが、紅き翼のリーダーであるナギや妾の方が量は多いと考えていた。

しかし、妾の認識は間違っていたのだ。

彼から溢れんばかりの――既に洪水のように流れる魔力の量を見て考え、恐怖を覚えた。

だが、立ち止まるわけにはいかぬ。

あまりの魔力に彼の身体は耐え切れず、あちらこちらから血が噴き出し、止まる様子はない。

その血を止めようとして――手を止めた。

彼は命を掛けて市民を救おうとしている。

ならば、妾がすべきことは1つ。

動けぬ彼の代わりに先頭に立ち、指示を与えること。

 

「な、崩落が止まっているだと!?」

 

「陛下!!どういうことですか!?」

 

「皆に急ぎ伝えよ!現在、王国騎士団長リュランが命を掛けて崩落を止めている!だが、止められる時間はわずか30分だ!!速やかに救出作業を続行せよ!」

 

リュランが頑張っているのだ。

私も頑張らなければならない。

やらねば、ならないのだ!

 

 

 

 

――――――――――

――――――――――

――――――――――

 

 

 

 

こうして、魔法世界全土を巻き込んだ戦争は終わりを告げた。

しかし、爪痕は深く、かつては千塔の都と称えられた空中都市オスティアは魔力消失現象の影響を受けて崩落し、地図から姿を消した。

それと同時に王国としての存続は不可能となり、ウェスペルタティア王国は事実上滅亡した。

 

「犠牲者数は人口のわずか0.1%を下回ったそうです。これは状況を考えれば奇跡的な数字…」

 

「数が少ないからって割り切れる女じゃねぇだろ。何よりマジで大変なのはこれからだろうしな…」

 

「リュランも騎士団長としてさまざまな対応に追われるだろう。何より、多くの民が避難民と化したのだ。つらいだろうな…」

 

オスティア女王アリカは世界を救うため、世界を滅ぼす黄昏の姫御子の『反魔法場(アンチ・マジックフィールド)』を姫御子ごと封印することで世界を救った。

しかし、その代償は大きく、王都を中心とする直径50キロ圏内は魔法を使えぬ不毛の大地と化した。

なお、直径50キロ圏を己の魔力だけで30分間も保たせたリュランの保持魔力はすさまじいものがあるだろう。

これを知っている者は、目の前で見ていたアリカとガトウ、そしてクルトを含む数名である。

 

「……」

 

「…ナギ」

 

「…なんだ」

 

「リュランからの伝言です。『アリカはお前の力を必要としていないわけじゃない。大切な人だからこそ傷ついて欲しくないだけだ』と」

 

「んなのわかってるさ。…だが、本当に必要な時に頼りにされないなんて…なんのための力なんだ…」

 

ナギの苦しみをここにいる紅き翼の面々は誰もが気が付いていた。

冷静そうに語るアルやラカンにしても、己の力不足を悔やみ、手を握り締めて血が垂れていた。

だが、そこにフラリと現れる人物がいた。

 

「…いつまで悩み続けているつもりだ、バカ野郎」

 

「―――ッ、てえなぁ!誰だ…って、リュラン!」

 

「ちょ、おまっ!大丈夫か、その姿!」

 

現れたのは恐ろしいほどにまで痩せ細り、あたかも骨と皮しかないのではと思わせる状態のリュランであった。

いつも羽織っていたローブは内側から滲み出た血が染みて赤々としており、フードから見える顔からは生気がない。

少し突けばすぐにでも死んでしまいそうであった。

 

「無事なわけがなかろう。全魔力を崩落を止めるために使い果たしたんだ。回復しようにもこのあたりの魔力はゼロ。何とか持っていた魔力パックを飲んでこの状態になったんだ。それに…休む暇などない」

 

「け、けど、これ以上動けばお前……」

 

「ふん。この程度で死ぬ俺ではない。皮と骨があれば何とでもなる」

 

元気そうには見えないが、見えた眼はギラギラと輝き、やる気は十分であることが理解できた。

ホッと一安心していると、リュランは急にふと尋ねた。

 

「そういえば…お前らは今後どうするんだ?よければこの後の復興作業を手伝ってほしいんだが…」

 

「私は隠遁生活に入ろうかと。もちろん、手伝いを終えた後にですが」

 

「俺はここの手伝いを終えた後にまた旅にでも出るぜ」

 

「ふむ…俺は実家に戻ろうと思う。そろそろ家を継がねばな。だが、手伝うのは構わんが、指名手配は大丈夫なのか?」

 

「安心しろ。俺の権限で指名手配は一時的に凍結させた。後でよければ完全に消しといてやる」

 

「…俺は造物主なんかよりもお前が怖いよ」

 

「…そうか?」

 

コクコクと頷く他の者を見て、「はぁ」とため息をつくリュラン。

だが、すぐに顔を上げると紅き翼に指示を出す。

 

「アルはガトウのとこへ向かってくれ。既にタカミチとクルトが手伝ってる。ラカンとナギと詠春は騎士団とともに避難中の護衛を頼んだ。とりあえず、各国の船に乗るとこまででいい」

 

最後に頼んだ、と告げたリュランに頷き、颯爽と去っていくメンバー。

それを見送ったリュランも気合を入れ直すと副団長達を探しに行く。

見つけるたびに身体の事を心配され、ため息をつくのはすぐあとのことであった。

 

 

 

 

――――――――――

――――――――――

――――――――――

 

 

 

 

「済まなかったな。これほど引き止めちまって」

 

「構わんさ。しっかし、お前の身体の復元具合気持ち悪いぞ?」

 

「魔力切れなだけと言っただろう。魔力さえ回復すれば元通りだ」

 

1か月。

たったこれだけでオスティアの避難民の受け入れ先を決定し、送り出すためにリュランは北に南に奔走していたが、ようやく今日で片が付く。

そして、これを機にナギはとある決意を固めていた。

 

「みな、お疲れ様だ。…突然だが、本日を持って悠久の風『紅き翼』は解散だ」

 

誰も反論を返さない。

否定の1つも出なかったことに、少しばかり呆気にとられたナギを全員で小突く。

 

「何を言っている。『紅き翼』は戦闘集団だ。戦争と復旧作業が終わった今、縛る要素は何もなかろうに」

 

「ええ。我々は目標を達しました。これ以上はバラバラの道を歩みましょう」

 

「…寂しくなるな」

 

「おいおい、詠春が泣きそうだぜ?」

 

「な、泣いてなどないわ!」

 

「泣いてんじゃねーかよ。目が赤いぜ?」

 

彼らに笑みが浮かぶ。

分かっていたのだ、道がバラバラに分かれることを。

しかし、分かれても絆は繋がっていることを。

 

「じゃ、次の再開を祈って…。そうだな、落ち着いたら詠春の故郷、京都にでも皆で行くか」

 

「…ああ。ならその時は街を案内しよう」

 

「むふふ。面白そーだな」

 

「その時はのんびりとしたいですね」

 

「姫子ちゃんやアリカも連れて行きてぇな」

 

思い思いに呟く。

その日が来ることを夢見て。

 

「俺ら、『赤き翼』は解散すれど!いつか必ず再開しよう!」

 

こうして数多の英雄を有した部隊『紅き翼』は解散した。

アルはどこかへ隠居。

ラカンは旅へ。

詠春は実家に戻った。

そして、ガトウ、タカミチ、ナギの3人は紛争の続く地域を周り、救える命のために奔走する。

そして…リュランは騎士団をまとめ、舞台を政治の世界へと移してアリカとともに激動の時間を生きることとなる。

 

 

 

 

これは終わりではない。

新たなる物語の始まりである。

物語は20年後…次世代の者達へと移り行くのであった。

 

 

 

 

∽to be continue∽

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