∽移り行く風のように∽   作:アクア=イスタロス

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第3章 青年は己を過し、火とならん
第32話


―――――【第32話 その後】―――――

 

【side タカミチ】

 

これで、ようやく会える…ッ!

机に置かれた手紙を読み、ようやく積年の願いが叶ったことに喜びを感じる。

何を隠そう、あの大戦期の英雄『リュラン・アルタメシア』がこの麻帆良学園に来ることが決まったのだ。

今は亡き、ウェスペルタティア王国騎士団の団長として、また、赤き翼の一角を担ったその姿は今でも鮮明に覚えている。

そんな彼や師匠達と共に魔法世界を転戦し、情報収集に明け暮れていた頃を思い出すと、昔感じた辛さよりも懐かしさが出てくる。

っと、思い出に浸っている場合じゃない!

このことを、京都の詠春さんにも伝えなければ…!

 

書きながら当時の事を思い出す。

 

『紅き翼』はあのオスティア崩壊より1カ月後、それぞれの道を進むために解散した。

アルさんはどこかへ隠居し、ラカンさんは再び魔法世界を放浪し、詠春さんは旧世界――僕らの暮らす世界の極東、日本の京都にある実家へと戻った。

最近は会っていないが、詠春さんは健康で、アルさん、ラカンさんの2人は行方知れずらしい。

ま、2人ともそう簡単にくたばる様な人じゃないから、今もどこかで元気にやっているのだろう。

残る僕と師匠、ナギさんは魔法世界で起きる紛争地域へ行っては傷ついた人たちを助ける旅を行っていた。

旅を始めて1ヶ月後…それはクルトの報によって舞い込んだ。

メガロメセンブリア元老院による策謀により、アリカ女王陛下が危険に陥ったと。

そして、リュランさんが救いだしたと――

 

 

 

 

――――――――――

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【メガロメセンブリア 元老院議事堂】

 

「ですから!このように、我が民の窮乏を訴えているのです!!彼らの多くは難民となり貧苦に喘いでいます。彼らの犠牲あってこその現在の平和!!せめてもの援助を…!」

 

「フフ…おっしゃることはよく判りますが、国を亡ぼし、彼らを現在の状況に追い込んだのは陛下御自身ではありませんかな?…さらに言わせていただければ…彼らはもはや、貴女の民ではありませんな」

 

「……ッ」

 

そこへ突然、アリカを囲うようにメガロメセンブリアの重歩兵が姿を現す。

迫る兵たちに臆することなく、その姿を見下す。

 

「恐れながらアリカ陛下」

 

「何じゃ主らは?」

 

「陛下を逮捕いたします」

 

「…何故じゃ」

 

「母王殺し。及び『完全なる世界』との関与の疑い。また、オスティア周辺の状況報告について、虚偽改竄の疑いが持ち上がっています」

 

兵が告げる罪状に、周りに座っていた元老院議員達が慄く。

しかし、すぐさま是、是とばかりに声を上げ、アリカに非難を浴びせる。

 

「なんと、母殺し…」

 

「恐ろしい…いや、しかしこれで説明はつく。全てはこの女が…」

 

「そうじゃそうじゃ。あの賢王と称えられた前オスティア王が乱心するのはオカシイと前から…」

 

そして、アリカの対面に居る元老院議員が妖しく笑う。

我が策、ここに成りとばかりに。

 

「フフフ…浅はかなことをされましたな、陛下。我らの情報機関の力を甘く見られたようだ」

 

「主ら、どこまで…恥を知れ」

 

アリカの怒りが頂点に達し、兵たちがアリカの身柄を抑えようとした瞬間、その声は響き渡った。

 

「その通り、恥を知れ」

 

「だ、誰だ!?」

 

館内の照明が落ちる。

突然響く声と、視界が真っ暗になったことで辺りが騒然となる。

 

「ええい、静まれ静まれ!兵たちは何をしておる!さっさと明かりを付けぬか!!」

 

先ほどまで笑っていた顔は既に恐怖に怯え、明かりをつけろと怒鳴り散らすことしかできない。

ようやく明かりが付き、ホッとしたのもつかの間、中央の審問台を見た者から驚きの声が上がる。

 

「ど、どこだ!?母王殺しの罪人はどこへ消えた!?」

 

その声を聞いた者達は皆、中央を見てから周囲を見渡す。

そして、中央から頭上高くより、その声は再び響いた。

 

「元老院議員どもよ。浅はかなのはどちらかな」

 

「ま、まさか……」

 

「あ、あの者は……」

 

「…ッ、『英雄』…リュラン」

 

審問台の遥か頭上、誰もが届かぬその場所で、彼はアリカを抱きかかえ、冷徹に下で慌てふためく元老院議員達を見降ろしていた。

 

「何用かな、英雄殿。貴方様がその腕に抱えている人物は、貴方様が忠誠を誓う王を殺害した罪に問われているのですぞ。他にも多数の罪状が伝わっています。英雄である貴方様を我々としても敵に回したくありません。どうか、冷静な判断を…」

 

「俺は常に冷静だ。戦争が始まった時も。オスティアを攻めるべく襲来した連合の戦艦を見たときも。そして……アスリアが己の運命を感じ、アリカの凶刃を受け入れた時も」

 

「!!」

 

「まさか、貴方様自身がその目で見たというのですか!?王を殺す、陛下の姿を!」

 

「仕方あるまい。アレは意志を持たぬ人形と化していた。周りのハイエナどもにただただ頷く戦犯に墜ちたのだ」

 

兵たちは震えた。

彼の――リュランの目を見た瞬間、自分達の心臓を握られているかのような…そんな感覚に。

 

「暫しの間、そこで固まっていろ、メガロの重歩兵よ。すぐに俺の用事は終わる。……メガロメセンブリア元老院の悪事を公に示してな」

 

「我らの…悪事だと?」

 

「な、何をバカな、狂言だ!」

 

「へへ、兵たちよ!さっさとその戦犯を捕えろ!!」

 

告げられた言葉に動揺する議員達。

すぐさま口を塞ぐために兵へ指示を与えるが、兵たちは動こうとしない。

彼らは分かっていた。

動けば――死ぬと。

 

「言われる前に口を塞ごうとするのは正しいが……貴様ら程度の力でこの俺をどうにかできるとでも考えたのか?この戦争を利用して世界を我が物にせんと企んでいた諸君」

 

一言。

また一言。

リュランの口から言が発せられる度に追い詰められていく議員達。

止められぬ、逃げられぬ。

彼らに残されたのはただ1つ。

裁きを受けることだけ。

 

「証拠ならいくらでもあるぞ。奴らの資料保管室、そして幹部の連中の証言だ。虚言防止を使用してあるから嘘は無い。さぁ、どうする戦犯共よ」

 

「…おのれ…ッ」

 

「さて、引導を下してやろうか。『俺の情報機関の力を甘く見た』元老院議員諸君」

 

「…くそっ!残り僅かで帝国を制圧で来たものを…ッ!それも、貴様ら紅き翼が全て…!」

 

「悪が栄えた試しはない。過去も、今も、そして未来も」

 

「言わせておけば…ッ!重歩兵!魔法を放て!こやつらを此処で生かしてはおけぬ!さぁ!放て!!」

 

「……」

 

しかし、彼らは動かない。

扉を固め、誰も入らせぬように堅牢に守るのみ。

 

「どうした!なぜ動かない!」

 

「…残念ながら犯罪者の戯言を聞くようには言われておりませぬ故…」

 

「ぐっ、だが!此処にはこれだけ魔法使いがいるのだ!貴様だけでは止められぬぞ!!」

 

「ふむ…『元』元老院の爺さんたちは既にボケたらしい。ここには『俺』がいるんだぜ?」

 

「それがどう――し…しま――」

 

「今さら気づいても遅い。『紫電』」

 

『ぐわあああぁぁぁぁぁああああ…(バタバタッ)』

 

リュランの放った紫に輝く雷が地面を伝わり、戦犯たちの意識を刈り取る。

その間僅か数秒、たったそれだけの時間で『元』元老院議員全員を鎮圧したのであった。

 

「メガロメセンブリアの兵たちよ。こいつら戦犯を牢へブチ込め。こいつらの罪状は既に問い終えた。もはや弁護の余地も無い。処刑はケルベラス渓谷。処刑日は一月後だ」

 

『は、はっ!』

 

慌てて動きだし、気絶した戦犯たちを運び出す姿を見て、ようやく安心できた。

その様子を見て、今まで事の流れを見守っていたアリカがようやく動く。

 

「リュラン…お主…」

 

「情報は揃っていた。だが、全員を捕らえるにはこの時を除いてなかった。…それだけだ」

 

「…そうか。礼を言おう。そなたが来てくれねば妾は囚われの身として民を裏切ることとなった」

 

「…フフ、アリカが最後の王でよかったと心から思うよ」

 

「…そ、そうか」

 

兵が退出し、静かになった議事堂に沈黙が流れる。

気まずい、でも心地よかった。

そう、アリカは感じた。

 

「伝言だ」

 

「…誰のだ?」

 

「…前王、アスリア」

 

「!!」

 

「『娘のそなたの手を汚して済まない』それと『運命に従わずとも良い。そなたの気持ちを優先せよ』だ」

 

「……リュランは…どう思う」

 

「昔、言った筈だ。好きにしろ、と」

 

リュランが微笑み、アリカも微笑む。

心は、決まった。

 

「リュラン。…ナギの元へ」

 

「…承知した、我が王よ」

 

転移魔法が光り、彼らの姿は消える。

残された薄暗き議事堂。

悪が裁かれた以上、ここには光が灯るだろう。

新しき民を指導する、良き者達の手によって。

 

 

 

 

――――――――――

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――――――――――

 

 

 

 

元老院の反乱――

 

この事件は結局、世界を自らの手に入れようとする老人達が各地の現体制を批判する者達と結託して起きたものとして世間に公表された。

その際に使用された資料は全てリュランさんが手に入れてきたものだ。

リュランさんが集めた資料は物凄かった。

僕らが戦時中、各地に飛び回って集めた資料をさらに超えるものだった。

どうやってここまで集められたのか不思議だが、戦時中も時折ふらりと消えては情報を持ち帰って来たこともあった。

王国騎士団である彼独自の情報網でもあるのだろう。

 

…あれ?

よく考えたら目から汗が……。

 

と、とにかく!

こうして戦争は終了し、悪を働いた元老院は全員処刑され、世の中は平和が訪れたかに見えた。

しかし、実際はオスティア難民の受け入れと各地で戦争被害による貧困を切っ掛けに紛争が勃発し、各国や悠久の風が慌ただしく事後処理に追われていた。

さらに元老院がいなくなるという異例の事態のため急遽、各国から王や政務官が集まり対応を協議していた。

今回のような事件が起こらないよう、検査に重点を置きながら新たな元老院議員を任命していくらしい。

 

元老院議員の処刑終了後、アリカ陛下は英雄、ナギさんと結婚。

アリカ陛下――いや、アリカさんはナギさんとの後、王国の建国はしないと宣言した。

元オスティアの人たちは寂しく感じたのだろうけど、幸せそうなアリカさんの姿に喜んでいたとメガロメセンブリアに1人、世界を変えるために旅立ったクルトが伝えてくれた。

 

 

あれから10年……。

あの人たちに近づくために…僕は強くなった。

再び、僕は彼と出会う……。

 

 

 

 

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――――――――――

 

 

 

 

【麻帆良学園】

 

俺は今、日本のとある県にある巨大都市、麻帆良学園にいる。

何故と聞かれると……ぶっちゃければ、ここの学園長である近衛の爺さんが教師として来てくれとかほざいたからだ。

その後、俺はあの妖怪人間を半殺しにした筈なんだが、妖怪らしく凄まじい生命力を持っているようで、1週間もすれば復活したらしい。

 

さて、面倒な話は無視して置くとして、現状を確認しておこう。

現在は原作の約1年前。

つまり、あの野菜坊主が来るまであと1年しかないというわけだ。

 

…俺としては野菜坊主を無条件で認めるつもりはない。

原作で描かれているような甘ったるい性格なら俺は容赦しない。

たとえアレがナギとアリカの子供だとしても。

我が血筋であるならば、自らの想いを形にしてもらわねば、な。

 

まぁ、今できることは、今後3-Aになるであろうあのクラスの意識改革だろうか。

それ以外は…おいおいやるとしよう。

 

…さて、生き返った妖怪に会いに行くとするか。

 

そういえば、教員免許とかないが……大丈夫か。

最悪、創造すれば何でも造れる。

住む場所はあの妖怪に出させて終わりだ。

 

 

 

 

――――――――――

――――――――――

――――――――――

 

 

 

 

ここは麻帆良学園の最高責任者である学園長、近衛近右衛門のいる学長室である。

現在、ここには学園長(以下妖怪)とタカミチが彼の到着を待っている。

 

「妖怪ではないわ!」

 

「?どうかしたんですか、学園長?」

 

「う、うむ。どこかでワシの事を妖怪と言われたような気がしてのぅ」

 

フォフォフォと笑う妖怪。

苦笑するタカミチ。

…地味なメンツである。

 

そこへ――

 

「学園長、お呼びしましたか?」

 

「おぉ、しずな先生!お忙しいところをお呼びして申し訳ない!」

 

「構いませんわ。…ところで、その人物はどこに?」

 

「…それが、その…まだ来ておらんのじゃよ」

 

「いや、いるぞ」

 

「「「うわぁ!!(あら?)」」」

 

「全く…衰えたな、タカミチ」

 

「いや、まぁ、はい」

 

「おい、妖怪。来てやったぞ。早く終わらせて俺を帰らせろ」

 

「うむむ…妖怪ではないんじゃがのぅ…」

 

「じゃあ、未確認生物」

 

「それも違うわい!」

 

「学園長先生?(ゴゴゴゴゴッ)」

 

「ひぃ!す、すまんかった!…オッホン!しずな先生、こちらが今回新たにこの学園で働くリュラン殿じゃ。リュラン殿、こちらが指導教員のしずな先生」

 

「初めまして、私はしずなといいます。困ったことがあれば相談してくださいね?」

 

「こちらこそ初めまして。リュラン・アルタメシアといいます。若輩者ではありますが、ご指導ご鞭撻の方をよろしくお願いします」

 

形式だが、とりあえず話さなければならない。

郷に入れば郷に従えというやつだ。

最も、目を見れば、この人が良き人物だということはすぐに分かったが。

 

「さて、挨拶が済んだところで、君には何らかしらの担当教科を持ってもらいたいんじゃが…何が出来るかの?」

 

「そういった事はもっと先に聞いておくべきだと思うんだが…まぁいい。全ての教科に対して研究員レベルまで指導できる。何でも構わない」

 

「では、今空いている体育をお願いしようかの?」

 

「…了解した。話はそれだけか?なければ俺からの要求だ」

 

「なんじゃの?」

 

「住む場所をくれ」

 

「そうじゃな。女子寮「死ぬか?」いやいやいや!しかし、こればかりは譲れんからの!」

 

『……』

 

「な、何じゃ!全員で儂を冷たい目で…」

 

『呆れて何も言えない(な)(です)(ですわ)』

 

「うぅぅ…仕方ないじゃろう。リュラン殿。そなたは武も優れる故、そこら辺の悪漢程度簡単じゃろ?」

 

「…寮の管理職はいらん。一部屋適当に端の方を用意しろ。風呂はどうにかしろ。俺は帰る」

 

「おお!そうかそうか、よかったよかった。そうじゃ、ここにはかの有名な闇の福音、エヴァンジェリンがおる。仲良くしてやってくれ。」

 

「…エヴァンジェリン。…ま、機会があれば、な」

 

こうして大戦の英雄は麻帆良の地へと降り立った。

彼が何を成すのか。

彼は何を考えているのか。

それは…作者にも分からない(待て)

 

 

 

 

∽to be continue∽

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