∽移り行く風のように∽   作:アクア=イスタロス

35 / 61
第34話

―――――【第34話 異名】―――――

 

「もうすぐ22時か…」

 

腕時計を見て良き頃合いと考える。

そろそろ待ち合わせの場へと向かうとしよう。

…ああ、良い子の皆はそろそろ寝る準備をしろよ。

 

とりあえず、昨日言われた場所……世界樹の広場と向かう。

予想通りであれば、もれなく実力試しもついてくるはずなので、戦闘用の装備に着替える。

普段通り、鎧に籠手に脛当てをはめ、ローブを纏う。

傍から見れば深夜に差し掛かる時間帯に見慣れぬ変質者だろう。

…まぁ、日本では仕方ないだろう。

さて、行くか。

 

 

 

 

天に月が浮かぶ春の闇夜…。

本来であれば、誰もいるはずのない深夜の広場に10数人の人影が見える。

おそらく、そこにいるのが今夜顔合わせするメンバーなのだろう。

さすがにこれだけしかいないはずがないが、順々にだろう。

 

「フォフォフォ。来てくれたようじゃの。紹介しよう。皆には言わずとも伝わってるじゃろうが、元ウェスペルタティア王国騎士団団長であり、紅き翼において『千の腕を持つ男』として知られたリュラン殿じゃ。今日より中等部の教師、及び夜の警備を担当してもらう予定じゃ」

 

「……」

 

「……何か挨拶はないかのう?」

 

「ないな。今夜の用事はタカミチとの戦闘だけだ、妖怪」

 

「フォッ!?ワシは妖怪ではないぞ!!」

 

『妖怪……』

 

妖怪の背後で周りから同意するかのような頷きが見られた。

至極当たり前だろう。

これほど頭部が長い人間は普通いないだろう。

 

「貴様には聞いてない。…では、さっさとやるぞ、タカミチ」

 

「そうだね。ただ、せめて学園長に審判だけは…」

 

タカミチが遠慮がちにそう言ってきた。

 

「…まぁいいだろう」

 

審判が必要となるほど接戦にしないつもりだが…まぁ、形式は必要だろう。

そもそも審判が妖怪であることに関しては文句の1つや2つあるのだが……面倒だ。

 

「よかったよかった。それでは諸君。大戦を勝ち残りし英雄の戦いをしっかりと見るのじゃ!」

 

 

 

 

俺の前にタカミチが立つ。

昔と変わらないスーツ姿で両腕はスーツのポケットに入っている。

この構え……居合い拳か。

様にはなっているが…はてさて中身はどうかな…?

 

「全力で来いよ、タカミチ」

 

「もちろんです。…左手に魔力、右手に気!」

 

居合い拳の構えから身体の中心で合掌するかのように手を構える。

何をするかと思えば…久しぶりに見たが、感卦法か。

…なるほど、昔よりはできるようだ。

だが、それだけであれば俺には届かん。

 

「来い」

 

「…行きます。ハァッ!」

 

再び構えた拳から高速の拳圧が唸る。

この攻撃の最大の利点は攻撃速度。

今回は感卦法によって威力も上がっているが、この戦法における攻め方は何といっても手数だ。

開始から僅か数秒で5発。

昔は5秒かかって2発だったというのに…成長したな。

しかし、それでも俺には届かない。

狙いは良いが、軌道が直線しかないからな。

全ての攻撃を紙一重で避け続ける。

そんな光景に一瞬周りが沸いた。

 

…確か、タカミチはこの学園でもトップ3だったか。

それだけ信頼されている人間が、有名人とはいえぽっと出の俺に一撃も当てられないのは信じられないのだろう。

だが、この程度の攻撃速度、威力、弾幕であれば大戦では日常茶飯事だ。

タカミチも後方支援が基本だったとはいえ、これぐらいは知ってる筈だがな…。

 

それから避け続けること1分、ひたすらタカミチが攻め続けていたが……この程度か。

どれだけ成長したのか期待したのだが……どうやら期待外れだったようだな。

 

「…タカミチ。お前の本気とはその程度なのか?」

 

瞬時に左手に右手を添えて疑似居合い拳を発動し、相殺させる。

これにはタカミチも少し驚いていた。

そういえば本格的なやつも疑似的なやつも使ったところは見せてないな。

 

「…なんだ。そんなに俺が居合い拳を使えることが驚きか?」

 

「いつ覚えたんです?」

 

「…少なくとも、お前よりは年季が入ってるさ」

 

「…ッ!くっ!」

 

一瞬にして攻防が逆転する。

タカミチより僅かに多い程度に居合い拳を放つ。

全てを相殺しきれないタカミチは当たることこそ回避するも、徐々に押し込まれてゆく。

だが――

 

「…僕だって、貴方達を目指して努力を重ねた!これが…その結果です!」

 

――豪殺居合い拳か!

瞬時に落下地域を計算し、縮地で避ける。

先ほどまで俺がいた場所は大砲が直撃したかのように陥没していた。

 

「…いいぞ、タカミチ。ガトウと比べれば多少狙いが甘いが…良い一撃だ」

 

「…まだまだですよ」

 

「くくくっ…謙遜するな。今、お前は確かに英雄の域に足を踏み入れていた。認めてやる。お前は強くなった」

 

おおっ、という驚嘆の声が響く。

そうだろう。

自分達の仲間が英雄に認められたのだから。

だが…いや、だからこそ手加減しない。

全力ではないが……本気で行く。

 

「タカミチ。お前のその努力に敬意を称して俺も見せてやる。異名を得た力を」

 

手を合わせ、ただ一言告げる。

 

「顕著せよ。『百式観音』」

 

俺の背後に千手観音が現れたことを感覚で確認する。

タカミチの奥を見れば妖怪や数名の知り合いを除いて大半がこの光景に目を奪われていた。

今までの感覚で分かる。

 

――これが英雄の力なのだ、と。

 

至極、普通の反応に飽き、目の前のタカミチに視線を合わせる。

…怯えはある。

だが、それでも逃げる気配を見せず、こちらに立ち向かおうとするその姿勢。

……お前は本当に成長したよ、タカミチ。

 

――ガトウ。

お前の弟子は、想像を超えて大きく成長しているぞ。

 

少しだけ天を仰ぎ、タカミチが師、ガトウにこの事を伝える。

……ふ、時が経つのは早いものだ。

 

――勝手に俺を殺すな!

 

おや、どこからともなくガトウの怒った声が聞こえたが……まぁ、気のせいか。

感傷に浸りすぎたということか…。

くくっ、昔は常在戦場だったのに…平和になったものだ。

 

「さぁ、いくぞタカミチ。『千の腕を持つ男』とまで言われた我が力。その身で受けてみよ!」

 

千もあると噂される千手観音の腕が上と左右に広く構えられる。

長年の経験か、それとも勘か…。

咄嗟の判断で腕を前に出してガードしたようだが…次が行くぞ。

 

「ほぅ。中々避けるじゃないか。では、少し上げようか」

 

千手観音の腕の動きが比率1.5倍になる。

高速化した張り手を必死に避け続ける。

…当たらん、よく動くな。

……ふむ、仕方ない。

 

「…予想以上だ」

 

「…何がですか?」

 

「お前の成長だ。……ふ、まさか『百式観音』が避けられるとは思ってもいなかった。……強く、なったな」

 

「……ありがとうございます」

 

「ふふ…。それでは魅せよう。まだ紅き翼でも見せたことのない、究極の力を」

 

腕を身体の前で交差するように構える。

魔力と気を練り上げ、千手観音に喰らわせる。

 

「慈愛の賢者よ。我が力を喰らいて憤怒の修羅と化せ。『百式阿修羅』」

 

 

 

 

――――――――――

――――――――――

――――――――――

 

 

 

 

【side 龍宮】

 

現在、私は深夜の世界樹の広場に居る。

どうやら、今夜、新しい仕事仲間の紹介をするらしい。

…おそらく『彼』だろう。

隣にいる刹那と話す事数分。

…どうやら来たようだ。

街灯に照らされて白いローブが闇夜に浮かび上がる。

そして、闇夜から現れた白いローブが広場の街灯によって照らさ、その顔が明らかとなる。

その顔を見た瞬間、周りが一時的に身動きを止め、その人物の動きに注目した。

最も、私には予想済みの顔であったが……。

 

「…やはり、リュランさんか…」

 

リュラン・アルタメシア。

昨日の突然の新任と挨拶。

武を嗜んでいる古や楓が関心を持つほどの強者。

そして……――

 

私の…命の恩人だ。

 

 

 

 

――――――――――

――――――――――

――――――――――

 

 

 

 

マナ・アルカナ。

これが私の本当の名前だ。

 

私が生まれたのは魔法世界のとある紛争地域。

いつも盗賊による窃盗や爆弾、魔法の閃光が飛び交う中、私は生きた。

元々、私の地域は比較的被害が少なかったと後々リュランさんに聞いた。

だが、それでもそれは起きた。

 

私が4歳の時の話だ。

私の周りでは毎日怪我人や死亡者が相次いでいた。

だが、夜は比較的静かな日が多かった。

昼間の戦闘による反動か、それとも予め夜間の戦闘は控えていたのかは分からない。

もしくは、周辺では魔法より銃撃による戦闘が多かった、そして争っている人数そのものが少なかっただけかもしれない。

だからこそかもしれない。

続く静かな時を信じて、気を抜いてしまったのは……。

 

その日は曇った夜だった。

いつもならばベッドに入り、寝ようとする時間であった。

だが、今日に限ってはそんな気分になれなかった。

いつまで経っても眠れず、気分転換に私は森へと向かった。

 

 

 

 

森に入った私を襲ったのは盗賊。

それが3人。

まず、身体を取り押さえられた。

次に口を塞がれ、地面へと叩きつけられた。

唯一自由のきく目から、前に居た相手の手に刃物が握られている姿が見えた。

 

「(私……死んじゃうのかな…)」

 

目の前で死んでいった隣の家の友達やおばさん達の顔が浮かんでくる。

刺されて、苦しんで……――

振り被る姿が見えた。

もう駄目だと思い、せめて苦しまずに死ねるように祈って目を閉じた。

 

 

 

 

……?

痛く、ない。

おそるおそる目を開けると……

 

そこには雲から顔を出した月の光を浴びて光り輝く――

 

1人の男が、いた。

 

 

 

 

結局、その人は一瞬で盗賊達を追い払い、私はその人に背負われて怒られながら家へと帰った。

 

次の日。

私達は互いに自己紹介をした。

そこで彼が大戦を勝ち残った英雄、『千の腕を持つ男』であることを知った。

風の噂で聞いた人物像からは少なくとも大柄な人を思い浮かべたけど、実際は違った。

ずっと冷静で、話していてもあまり表情が変わらないけど、怖い思いをした私をそれとなく気遣ってくれて、優しい一面も見ることが出来た。

私はそれを間近で見て思った。

 

「(この人の様に強く、それでいて優しい人になりたい)」

 

そして、私は駄目もとで戦える力が欲しいと頼んだ。

彼は何も言わず、黙って私の目を見ていた。

その目に対して、私は見つめ返す。

 

……何秒経っただろうか。

不意に彼が私から目を外し、ゴソゴソとポケットから何かを探り始めた。

その何かを見つけたのか、再びこちらを向いてポケットから取りだした物…それは『小刀』と『銃』だった。

そして彼は私にある言葉を告げた。

その言葉は今でも忘れてはいない、いや、忘れるわけがない。

 

「…君にこれを渡そう。だが、勘違いするな。これを使うのは誰かを殺すためじゃない。自分の大切な人を護るためにだ。それを忘れるな」

 

既に私の両親は紛争に巻き込まれて既にいない。

だから、その大切な者というのが私には曖昧にしか受け取れなかった。

でも、いつかは私にも出来るはず。

その時の為にも、私は大切な者を護れるように頑張らないと。

 

数日後、周りのおばさんやおじさん、友達に別れを済ませ、私は彼と共に故郷を後にした。

その旅の途中、彼は私に色々なことを教えてくれた。

料理、銃や小刀の使い方、手入れ、戦闘においての考え方、戦術などだ。

彼の知識は豊富だ。

彼との旅は幼い私に現実と楽しさを教えてくれた。

 

――2年。

長くて短いような2年が過ぎた。

 

彼は私を悠久の風に預けるとそのまま消えてしまった。

私にリュラン・アルタメシアという名と生きる術(すべ)を残して。

 

 

 

 

――――――――――

――――――――――

――――――――――

 

 

 

 

過去の出会いに浸っているうちにどうやら次の段階までいっていたようだ。

リュランさんと高畑先生の模擬戦のようだ。

高畑先生はこの学園内においてナンバー2の実力を持っているとはいえ、噂によればリュランさんは英雄としての実力が紅き翼内でも1、2を争うほどらしい。

昔、私が見た力もほんの僅かでしかないが、そもそもリュランさんが負ける姿が想像できない。

高畑先生には悪いが、この勝負、リュランさんの勝ちだろう。

…まぁ、元々この勝負の結果にはさほど興味はない。

私が思うことはただ1つ。

…もう1度、あの人の戦う姿が見える。

ただ、それだけだ。

 

最初に仕掛けたのは高畑先生。

究極技法(アルテマアート)と呼ばれる感卦法を使い、スーツのポケットに手を入れた。

そして、数秒後に空気が切れる音が聞こえた。

それを見たリュランさんは「紙一重」で高畑先生の何かを避け続ける。

たしか、あの攻撃は居合い拳と聞いた気がする。

その高速の拳撃をリュランさんは攻撃範囲を見極め、完璧に避ける。

だが、未だ攻撃をしない。

このやり取りが1分ほど続いた直後、急にリュランさんが同じものを打って相殺する。

その光景に他の先生方が呆気にとられていた。

対戦相手である高畑先生は少しだけ驚いた様子を見せていたが、警戒を解かない。

少しばかり会話を挟んだ後、再び戦闘が始まった。

今回はリュランさんも攻撃していた。

しかも、その攻撃密度は高畑先生のそれを上回っている。

迎撃が間に合わず、今度は高畑先生が避け始める。

このまま押し切るかと思われた矢先、リュランさんが急に目の前から消える。

そして、そこに巨大なクレーターが出来上がる。

いつの間にか高畑先生が宙に跳んでおり、そこから撃ち出したようだ。

――豪殺居合い拳。

こちらも大戦の英雄、ガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグが使用したと聞く必殺技だ。

高畑先生はガトウの弟子であったと伝わっているが、さすがとしか言えない。

これには私もだが、リュランさんも驚いたようだ。

再び2人が言葉を交わし、リュランさんが距離を取り、身体の中央で手を合わせ、何かを呟く。

そして――

 

リュランさんの背後に千手観音が現れた。

 

「これはまた…リュランさんは凄いものを持っているね」

 

これこそ、彼の代名詞である力。

ただの幻想(イリュージョン)ではなく、実体が存在する。

だが、魔法を使った気配はなかった。

そこで自らの魔眼で正体を見極めようとする。

だが――

 

「止めておけ。…あれはおそらくただの技術。魔眼で見極められるような代物じゃないさ」

 

闇の福音と呼ばれる真祖の吸血鬼、うちのクラスのエヴァンジェリンさんが従者である茶々丸さんと共に居た。

しかし……

 

「ただの、技術?…これが、ただの技術だというのですか…!」

 

「それが本当なら…これは一般的な技術と一括りにするのは間違いの様な気がするね」

 

刹那が驚きを露わにする。

比較的冷静な刹那がここまで感情を表に出しているのだ。

他の人はさらに驚いていることだろう。

 

「そうだな。しかしだな、桜咲刹那。これは貴様が使う神鳴流と同じようなものだ」

 

「神鳴流と…同じ…?」

 

「そうだ。長い年月を積んで鍛え上げた技術。言い換えれば、木の枝ほどに別れた武における1つの極みとでもいうのだろう。それがアレの正体だ」

 

驚嘆する刹那を尻目に目の前の光景を見る。

金色に光るその姿はまさに美しいの一言。

名前の通り、相手をその存在感で屈服させることができそうな重圧がある。

だが、続く攻撃は恐ろしい。

攻撃手段は張り手オンリーだが、それが千近くある腕から間を置かず放たれ続けるとなるとレベルが違う。

しかし、その攻撃を高畑先生は最初の一撃こそ受けたものの、それ以降は攻撃しない代わりに全て避けきっている。

途中からさらに攻撃速度が上がったようだが、それでも避け続ける。

……高畑先生を見直した。

学園ナンバー2は伊達ではないな。

これにはリュランさんも……?

…驚いたというよりかは喜んだ…?

今後は腕を身体の前で交差して……膨大な魔力と気があの千手観音に吸い込まれていく。

 

「なっ、何だアレは!?」

 

「千手観音が…」

 

「変化していく…?」

 

リュランさんが再び何かを呟いた。

何を呟いたかは戦っていたタカミチ先生しか聞こえなかっただろう。

しかし、その後の状況の変化が異常過ぎた。

リュランさんの背後で光り輝いていた千手観音の眼つきが変わった。

さらにその表情をどんどん変えていく。

最初は慈愛を持つ柔和な観音の頬笑み。

最後は…全てを殺す修羅の怒り。

色も金から赤へと変わっていく。

そして、修羅が動いた。

 

殲滅。

 

それしか言いようがない。

先ほどのような張り手だけではなく、張り手で空中に逃げた高畑先生を次は2つの手で圧殺しに動き、それを避けた瞬間、全方位から拳が迫っていた。

敢え無く、高畑先生は地に落ち、気絶したのか動かなくなった。

…高畑先生は良く動いた。

だが、アレを全て避けるのはここにいる誰一人として無理だろう。

 

あれこそが武の極み…。

そんな極限の世界にリュランさん、あなたはたどり着いているのか…。

 

「…?どうしたんだ、真名。顔が笑っているぞ?」

 

「…私が、笑っている…?…そうか、無意識のうちに笑っていたか」

 

私は笑っていた。

…おそらく、恐怖のあまり笑ってしまったということではない。

ただ純粋に…嬉しかったのだろう。

貴方が、その遥か遠い頂きに君臨するその姿に。

 

そして…出来ることなら、貴方の側で戦いたい。

勿論、この望みは恐れ多いことだとは百も承知だ。

なにしろ、相手はあの英雄だ。

そもそも、英雄に相方が必要だとは思わない。

それでも、私は貴方の側で戦いたい。

……必ず、辿り着いて見せます。

だから、待っていて欲しい。

 

リュランさん……――

 

 

 

 

――――――――――

――――――――――

――――――――――

 

 

 

 

「フォフォフォ。どうじゃ?これで英雄という存在の力を知り得たじゃろう」

 

「…?何を言っている。これは俺の戦い方の1つにすぎない。無論、今回初披露した『百式阿修羅』は殲滅専用だが、本来であれば武器を装備して戦う。攻撃速度もアレ以上になる。さらに『百式観音』と同じように阿修羅専用の奥義も存在する。この程度で俺の力を知った気になって欲しくはないな」

 

「ハハハ…」

 

俺の説明を受けてタカミチが笑いながら絶望に打ち砕かれたようだ。

orzの姿勢のまま暗いオーラを纏う姿は学園ナンバー2にはとても見えない。

…まぁ、俺からしてみればよくやったほうだと思うが。

 

「落ち込む必要はない、タカミチ。むしろ、お前は誇っていい。何しろ、俺の『百式観音』の攻撃を避けて見せた。それだけで帝国、連合の大半よりは強い」

 

「そ、そうかい?」

 

「無論だ。あの張り手1発が雷の暴風に相当する筈だ。それに耐えただけで十分理解できるだろう」

 

『あ、あの張り手が雷の暴風…』

 

周りは絶句している。

あの張り手にまさか上級魔法である雷の暴風と同程度の威力が込められていたとは思いもよらなかったのだろう。

他の先生たちはこれだけで言葉を失っていたが、唯一妖怪だけは、口を閉じて青ざめていた。

 

『百式観音』が雷の暴風であれば『百式阿修羅』は一体如何程の力を持っているのか、自身の予測に恐怖を覚えたのだろう。

 

だが、これではっきりした。

雷の暴風と同程度の連続攻撃を耐え、避け続けた英雄の従者であったタカミチの実力。

その攻撃を作り上げた見せた英雄、俺の実力。

その全て、もしくは一部をこの模擬戦が証明してみせた。

これが本物だと。

これが大戦を勝ち残った英雄たちだということを……――

 

 

 

 

模擬戦も終わり、タカミチが俺にアドバイスを貰いに詰め寄ってきた。

ま、動き自体は良かった。

あとは豪殺居合い拳の精度を良くすれば問題ないだろう。

話している途中、突然タカミチが会釈をして離れる。

何があったと考えようとしたそこへ――

 

「リュランさん」

 

「……なんだ、真名」

 

2-Aの生徒である龍宮真名が来ていた。

どうやら彼女もこの集りの参加者らしい。

 

「ふふ、久しぶりだね。あれから元気だったかい?」

 

「無論。…その銃。俺が渡したやつだな。大切に使ってくれているのようだな」

 

唯一服の上に装着している銃を見て、昔俺自身が渡した銃であることに気が付いた。

銃は他の武器と同じ、消耗品だ。

余程の事がない限り、10年近く使い続けるのは難しいだろう。

 

「勿論だ。…あの時、私は貴方に救われた。救われなければ、こうして此処にいることは出来なかった。だからこそ今度は私が貴方の力になりたい。…いいかな?」

 

「真名…」

 

突然の言葉に、動揺を隠せない。

あー…、これは…どう答えるべきだ?

 

「ま、真名が…リュラン先生に…告白…!?」

 

「な…せ、刹那!これはそういう意味で言ったわけでは――」

 

まさか、刹那から奇襲援護を受けるとは思っていなかった。

途端に真名の顔が真っ赤になり、即座に自分の言葉を否定していた。

…そこまで否定されると俺も傷つくんだが。

 

「…なんだ、違うのか?」

 

「いや、違いません!違いませんけど、違うんです!」

 

 

 

 

刹那の一言によりそれまでとは一転して慌てふためく真名がその場で真っ赤になりながらリュランに慌てて弁解していた。

そんな姿を見て、突然の真名の告白で絶句していた他の人も途端に笑いだした。

その後、挨拶も終わり、多くの先生がリュラン先生へと話しかけに行っていた。

リュランが話す間も側にいた真名は俯いていたが、見える頬は赤く成りっぱなしであった…。

 

ちなみに、真名と同じクラスであり、詠春と同じ神鳴流を受け継ぐ少女、桜咲刹那が話すために近づいた後、礼を取り、師として仰ぎたいと言っていた。

それを見た真名はずるいとばかりに慌ててこちらも師として仰ぎたいと詰め寄ってきた。

 

剣士は幼馴染を護る為に。

狙撃手は大切な者の側に居たい為に。

目的は違うにしても、誰かのために力を求めるその姿はとても微笑ましかった。

 

 

 

 

∽to be continue∽

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。