∽移り行く風のように∽   作:アクア=イスタロス

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疲れたので、連続投稿は一旦終了


第36話

―――――【第36話 主従】―――――

 

【side エヴァンジェリン】

 

突然だった。

まさかこの極東の島国に来るとは思ってもいなかった。

だが、これは嘆くことではない。

喜ぶことだ。

 

 

 

私はいつも通り、新学期にもかかわらず寝ていた。

なぜならば、私は赤毛の英雄、ナギ・スプリングフィールドによってアホな呪い――投稿地獄の呪いを掛けられてしまったからだ。

全く…何時考えても腹ただしい。

そもそも、真祖である私に対して登校地獄とはなんだ!

しかも、強引に力任せで掛けた為、私の力をもってしても解けん。

それに奴は――

 

「お前が卒業する頃にはまた帰って来てやるからさ。光に生きてみろ。そしたらその時、お前の呪いも解いてやる」

 

といってそのまま行方不明となった。

…しかし、まだ一筋とはいえ希望はある。

――リュランだ。

まさかあいつまでもがいつの間にかナギと共に英雄などに祭り上げられていることには驚いたが、ナギはこう言っていた。

 

「もし、俺が来なかったらリュランの奴に頼んどくからそのつもり待ってろ。…まぁ、あいつならお前のことも分かってくれるだろ」

 

と、私とリュランの関係も聞かず、笑いながらそう言い切った。

お調子者だったが…その辺の感覚は優れていたのだろう。

とはいえ、結局、リュランとは少しの間共に居ただけだったため、連絡も取れんし、そのまま13年が経った。

このまま中学生を続けるのは、もう我慢が出来ん。

卒業する直前にあの爺の首を取ってやるとしよう。

 

 

 

――と、色々と考えているうちにまた寝てしまった事に気づく。

何やら周りが騒がしい。

寝たふりをしながら聞いていると、どうやら今年の担任は去年受け持ったタカミチではなく、新任の教師がなるらしい。

ふん、誰がなろうと知ったことではない。

だが少しぐらいは顔を見ても…そう思って姿を見る為に顔を上げる。

そしてそこには…13年求めたあいつの姿があった。

 

 

 

 

麻帆良のパパラッチと称される女――朝倉がリュランに対して質問をしていく。

ほとんどはどうでも良い話だ。

しかし――

 

「ふむふむ…じゃあ、最後にこのクラスで気になる人は?」

 

な、その質問は…!

――いや、待てよ。

これであいつの好みの傾向とやらが分かるかもしれん。

そもそも、数年とはいえこのクラスには私という知り合いがいる!

ふっふっふ…ならば何も恐れる心配はない!

 

「…このクラスは容姿が優れた者が多いからな。外見だけで言えば全員…という答えでは駄目なのだろう。とりあえず、名簿や今会った印象で大河内、絡繰、桜咲、龍宮……ということにしておこう」

 

『おおおおぉぉぉぉっ!!!』

 

――と、言い出した。

なぜだ!

なぜ、そこに私が入っていない!

まさか、私の事を忘れてしまったとでも言うのか!?

 

愕然とした私は八つ当たりとして前に居る茶々丸――私の従者――の頭を揺さぶる。

 

「マ、マスター。揺れます。きゅ、急にどうしたのですか?」

 

「えぇい!何でもないわ!急にむしゃくしゃしただけだ!!」

 

そういいながら茶々丸の頭を揺らす揺らす…。

結局、いくら揺らしても私の腹の虫は治まらず、放課後にでもあいつに直接確かめることにした。

幸い、放課後は新任の先生の歓迎会をやるらしい。

その時にでも聞くとしよう。

 

 

 

 

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――――――――――

 

 

 

 

「リュラン!貴様、今までどこをほっつき歩いていた!!」

 

「久しいな、エヴァンジェリン。元気そうで何よりだ。しかし、言葉遣いがかなり……」

 

「うぐっ、いや、それはどうでもいい!約束はどうした約束は!」

 

「…約束?」

 

まさか、忘れたとでも言うのか!?

あれほど信じていたというのに!

 

「3年経ったらナギかお前が解いてくれる約束だろう!!!」

 

「…何の話だ?俺は初耳だ」

 

「なん…だと…」

 

ということはナギは本人に言いもせず、姿を消したのか…。

…さすが、アホだな。

 

「というか、大戦が終わって数年後に全員で京巡りした後から会ってないな」

 

「…そうか」

 

「…ま、あのバカの約束だ。守ってやろう。今後お前の家へ尋ねよう。その時にでも構わないか」

 

「わかった。…しかし、お前が先生とは…昔、教わった身とはいえ、変な気分だな」

 

「タカミチにも言ったが慣れろ」

 

「ふん、わかっている」

 

わかっている。

いくら時間が過ぎようと、私の中ではお前以上の師など存在しない。

今後、教わる事はないかもしれんが、な。

 

そのままあいつは生徒の酒騒ぎの鎮静化を図るため各テーブルを忙しそうに動き回り、私はその姿を横目にワインを飲む。

隣には、いつの間にかタカミチがグラスに入ったジュースを持って来ていた。

 

「それにしても、彼が此処に来てくれるとは夢にも思わなかったよ」

 

「なんだ、お前がそう頼みこんでいたのだろう?」

 

「そうだけどね。けど、あの墜落事件後、そして紅き翼が解散した後も、単独で各地を飛び回っていたんだ。かの有名な元老院の反乱事件の証拠集めとかでね。…それに、彼は魔法世界では元々超有名人だからね。何しろ、ウェスペルタティア王国が消えなければ彼はそこの王国騎士団団長だ。そんな役職を持つ彼が来てくれるとは思わないからね」

 

「…王国騎士団…団長?」

 

なん…だと…。

私が世界各地で賞金首狩りと暇つぶしの隠遁生活を送っているときにもあいつはオスティアで暮らしてたのか。

……けしからん。

いくら私が賞金首で世間に疎かったとはいえ、少しぐらい探そうとするべきだ。

そうとも、探すべきだ…ッ!

 

「…?エヴァ、どうかしたのかい?」

 

「なに、世の中の理不尽さに憤りと不満を感じていただけだ」

 

「そ、そう(それにしては黒いオーラが漂ってるけどね…)」

 

そのあと、二人が座るテーブルの側には誰も近寄らなかったのは余談である。

 

 

 

 

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【side 茶々丸】

 

初めまして、皆さん。

出席番号10番、絡繰茶々丸と申します。

私の役割はマスターの剣となり盾となる事を目的とした『魔法使いの従者(ミニステル・マギ)』です。

そのマスターというのが…遥か昔、闇の福音として世界中から恐れられた魔法使い、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルです。

マスターは普段、魔力を動力とする魔法人形を使用しますが、この地、麻帆良に封印されてから魔力を極端に抑えられ、現在は一般人と同じような生活を送っていました。

そのため、魔力で動く人形ではなく、私のような電力で動くロボット――ガイノイドといいます――を従者としてお側においています。

私は現在、1歳ではありますが、生みの親の創り上げた人工頭脳、AIシステム内に搭載された超高速検索により、世界中表裏を問わず検索することでマスターのお手伝いができます。

故に、年の割には多くの知識を蓄えております。

 

…ところで、私は――

 

「なぜ、このような場所で座っているのでしょうか?」

 

紹介をしながら歩いたせいかもしれません。

…?

紹介とは、誰に紹介していたのでしょうか?

 

「おい、茶々丸。なぜ、こんなとこで座っている。探したぞ」

 

「あぁ、マスター。すみません、私もわからないうちにここで座っていまして…」

 

「ふむ…まぁいい。それよりも大事な話がある。さっさと家に帰るぞ」

 

「はい。了解しました」

 

大事な話とは何のことでしょうか?

今朝、私の頭を揺らした原因に関してのことでしょうか?

マスターの後ろを歩きながら、今朝の会話より、原因となるであろう単語を抜粋開始。

 

 

 

 

抜粋完了。

結果…新任の先生――リュラン先生のおっしゃった「気になる子」に私が入っていた、というのが1番の要因であることと判断。

しかし、ここで新たな疑問が浮上します。

リュラン先生と我がマスターはどこかで知り合ったのでしょうか?

…謎はありますが、マスターの話を聞いてから考えることにしましょう。

 

 

 

 

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――――――――――

 

 

 

 

話を聞いて分かった事柄は……――

 

「つまり、マスターは新任の先生、リュラン先生が好きなんですね?」

 

「えぇい!どういう解釈をすればそうなるんだ!!」

 

話を聞いてすぐに考えた解釈ですが……。

そもそも、長々と1時間、リュラン先生との惚気話を聞かされれば、おのずと出てくる答えでしょう。

ここで、この愚痴の中で出てきた新たな検索単語を登録。

マスターとの関係は分かりませんが、おそらく古くからの知り合いなのでしょう。

新たに見つかった単語数個と「リュラン・アルタメシア」を元に検索を開始します。

 

 

 

 

検索ヒット数、40万。

今まで多くの事柄について検索してきましたが、これほど多いヒットを見たのは初めてです。

とりあえず、彼の経歴を見てみましょう。

 

名前 

リュラン・アルタメシア。

 

特徴 

輝く銀髪と高い背丈。

 

服装 

主に白いローブか王国騎士団装備。

 

経歴 

出生、出身は不明。

長き時間をウェスペルタティア王国騎士団団長として生きる。

いつから王国騎士団団長に就任したのかについては

また、大戦初期より悠久の風から登場した少数部隊、『紅き翼』と活動を共にする。

数々の激戦において自身の力、および存在感を示した。

終戦後、それまでの功績が英雄に値すると認められ、受賞。

さらにウェスペルタティア王国元王女、アリカと共に元老院の悪事を暴くことに成功。→詳細は『元老院の反乱』を参照。

紅き翼の解散後、単独で紛争地域へと赴き、解決、または復興に協力する。

 

異名 

王国騎士団団長、王都の守護者、千の腕を持つ男など。

 

功績 

抜粋…王都オスティア攻防戦、グレート=ブリッジ奪還戦、墓守り人の宮殿侵攻戦、元老院の悪事解明、各地の紛争の終結など。

 

…一言、英雄ですね。

出生、出身が不明なのは魔法世界においてよくある話だとマスターは話しますが、英雄である者までもがそうなんですね…。

しかし、このような英雄といつ知り合ったのでしょうか?

 

「マスター」

 

「ん?どうした茶々丸」

 

「なぜ、英雄と呼ばれるリュラン先生とお知り合いなのですか?」

 

「…そもそも、あいつと知り合ったのは今から900年も前の話だ。当時、私は吸血鬼にされた直後でな。両親を殺され、吸血鬼にされ、絶望に沈み、私をこんな状態にした奴を殺そうとした時だった。屋敷に入ってきたあいつと会った。最初は殺そうともしたさ。私の不幸を知らず、綺麗事をほざく偽善者としてな。だが、あいつの話を聞き、あいつの優しさに触れて、徐々にだが傍に居たいと思ってな。どうせ私の居場所は奪われたんだ。孤独の身となった私はあいつの旅について行くことにした」

 

「…900年前、ですか。…見た目は青年ですが、彼もマスターと同じ、吸血鬼なのですか?」

 

「…わからん。だが、あいつもまた不老不死であることは間違いない。…そして、その当時からあいつは既に最強と呼ぶに相応しい力を持っていてな。吸血鬼としての弱点を持っていた私は彼に修行を付けてもらった。最初は苦痛や苦労もありはしたが、今では感謝してもしきれないな」

 

「…なるほど、ありがとうございます、マスター。」

 

「ん、そうか。もし聞きたいことがあるならあいつは此処へ来る。その時にでも聞くんだな」

 

英雄と呼ばれる不老不死、リュラン・アルタメシア。

魔法世界においてその名を知らない人はいないであろう超有名人。

そんな彼が何故この麻帆良に来たかはわからないが、少なくともマスターに危害を加えに来たのではないことは分かった。

今後、マスターは積極的に彼と関わろうとするだろう。

その時、私はどうしたらよいのだろうか……。

 

 

 

 

その後、例の話を思い出したマスターに小1時間、頭を揺らされ、他事を考える余裕がなくなる私でした。

 

 

 

 

∽to be continue∽

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