∽移り行く風のように∽   作:アクア=イスタロス

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第38話

―――――【第38話 現状】―――――

 

フェイトの報告と疑問を答えてから数日後。

俺とフェイト、そしてニィとセクス、キャトルの5人で旧ウェスペルタティア王国王都オスティアへと足を運んだ。

そう簡単に入れる場所ではないが……ま、そこは置いといて。

 

「ここが元王都…」

 

「ふむ。あの時の美しさは影もないな」

 

「仕方ありませんね。墜落こそ阻止したとはいえ、この20年で劣化もしたでしょうし」

 

「感想はともかく行きましょう。若干ではありますが、魔力消失現象の影響下にある大地も残ってます。長居は危険です」

 

「キャトルの言う通りだ。全員、例の装飾品を身につけろ。1日しか持たんが、それで防げる」

 

全員が出発前に渡した装飾品を身につけたことを確認し、足を進める。

すると、どこからともなく天を羽ばたく音と大地を駆ける足音が響く。

感覚からして…ドラゴン種とウルフ種か。

 

「2時の方向と8時の方向です」

 

「2時の奴はドラゴンじゃな。…この状況下でも侵入できることを考えるとおそらく黒竜じゃろう」

 

「8時の方はグランドウルフね。数は5。おそらく餌でも捜しに来たのでしょう」

 

「…ドラゴンはフェイトとニィ。ウルフはセクスとキャトルだ。殺す必要もない。適度に追い払え」

 

『はっ』

 

動きだした姿をまたもや見送り、俺は1人奥へと足を進める。

今回の目的は墜落現場の奥に眠る墓守り人の宮殿だ。

足を止める必要はない。

 

 

 

 

「ご苦労。怪我はないか?」

 

「もちろんじゃ」

 

「角を折るだけに留めましたから。これが戦利品です」

 

胸を張るニィと戦利品である角を持ち運ぶフェイト。

中々の大きさだ。

おそらく成竜だろう。

 

「終わりました」

 

「あら、立派な角ね」

 

「そちらも終わったようだな。では、探索を続けるぞ」

 

全員無事に集合し、再び奥へ目指す。

スラム街、中央街、王宮と、懐かしい風景が無残に壊れている様を見て、少しばかり寂しくなるが、今は止めよう。

歩くこと2時間。

ようやく目的地である墓守り人の宮殿の真下に来た。

 

「相変わらず浮いておるのう」

 

「あれだけはレイナ様のお力で作り上げたものですし、干渉されなかったのでは?」

 

「それでも疑問を覚えずにはいられんがな」

 

20年前の攻防で破損した部分はあれど、今も堂々と天空に浮かぶ墓守り人の宮殿。

ようやく終着地点か。

 

「『転移』」

 

転移魔法で宮殿の最下層に跳ぶ。

掃除してなかったためか、埃が溜まっている。

 

「お任せを。『大海原』」

 

セクスを中心に水が広がり、埃を洗い流していく。

少しすれば、掃除済みの床と壁が輝いた。

セクスの魔法『大海原』は、本来であれば自身を中心に海を展開し、何十メートルもの大津波を引き起こす。

今回は魔力消費を最低限にして威力ではなく、全方位を流すことに力を使ったのだろう。

……ちなみに、この魔法は粘着性を持たせることもできる。

それが壁を掃除できた理由だ。

 

「では、ここから別れて捜索だ。1時間後に何もなくともここに集合。何かあれば装飾品に魔力を流せ。俺が探知してそちらに向かう。…では、散」

 

最下層の捜索開始。

俺自身は北側へ向かう。

たしか、この辺は兵士の寝室だったはず。

……何もないだろうよ。

 

 

 

 

1時間探しても何も見つからず、次々に上の階へ移っては探すものの、何も見つからない。

しかし、中腹に来てようやくニィがそれらしき扉を見つけたと連絡してきた。

 

「これじゃ、主」

 

「……確かに、この扉に入れたな」

 

扉に取っ手はなく、入れるような場所ではない。

しかし、リュランは扉に指を当て、何かを描くように指を動かしてゆく。

すると、何かを書き終えたように指を離した瞬間、扉が淡く光り始め、ゆっくりと景色と同化してゆき、まるで何もなかったかのように消え去ってしまった。

リュランを先頭に中へと入ると、中にあったのは宙に浮かぶ1つの杖。

 

「主、これが…?」

 

「ああ。『造物主の掟』だ」

 

続けて、8つ作った内の7つの1つだと付け加えた。

ともかく、ようやく探しものに出会え、少しだけ安心する面々。

しかし、これを残り6つは探さなければならないため、安心したのもつかの間、すぐに探索へと戻っていく。

 

中腹階にはかなりしまって置いたようで、あれからさらに5つ見つかった。

さすがに最後の1つだけは俺も覚えている。

途中の階を全てすっ飛ばし、最上階へと向かう。

最上階へ着いたらすぐさま部屋に入るための扉に指を当て、封印を解くための文字を書く。

焦らず、慎重に書き進め……。

 

「なんと…」

 

「まさか、部屋の中は中でも入口に仕掛けがあるとは…」

 

封印が解かれた扉は色が変化し、黒であった扉は純白になった。

その扉を開け、俺は部屋の中央に佇む杖に手を伸ばした。

これで、全て揃った。

 

「ここに用はない。帰るぞ」

 

自分の近くに寄せ、転移する。

場所はもちろん、ヘスカトーレの孤児院だ。

 

 

 

 

――――――――――

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――――――――――

 

 

 

 

結局、墓守り人の宮殿の遥か下の大地に突き刺さっていた1つが最後であった。

あまりに堂々と刺さっていたので偽物かと疑ったのだが、普通に能力も使え、解析しても自分で作った物であったので、本物だと断定して、今回の探索は終了した。

とりあえず、敵の手に渡っていないので一安心。

 

「お帰りなさいませ、主。成果の程はいかがでしょうか?」

 

「十全だ。何もなかったとは思うが、変わったことは?」

 

「特に…あ、レイナ様が主を恋しがっていましたわ」

 

「……そうか」

 

一昨日もかなり一緒に居た筈なんだが……。

まぁ、今までの反動だと考えよう。

 

「フェイト。保管は一任する。誰にも触れさせぬよう徹底させろ。使い方を間違えれば聖人にも悪人にもなれる力だ」

 

「はっ。徹底させます」

 

フェイトに任せておけば問題ないだろう。

…くくっ、俺も無意識にフェイトを頼っているらしい。

たまには楽をさせてやらんといかんな。

 

「まずはこちらの姫様のご機嫌を取らんとな…やれやれ、夏休みが終わったらあまり居られないのだけどな…」

 

それでも一緒に居られると分かった時のレイナの顔を思い浮かべ、少しだけ心が温かくなったのであった。

 

 

 

 

「やった。またリュランと一緒~♪」

 

「おいおい。普段はもっと凛々しく過ごすんじゃないのか?」

 

「今は愛しの旦那さまと一緒だからいいの~」

 

可愛く甘えるレイナの頭を右手で撫でながら左手で抱きしめる。

抱きしめられたことが分かったからか、ますます密着してくるレイナ。

……小動物とじゃれる気持ちと可愛い妻を愛しむ気持ちが混ざる。

あー、くそ。

レイナが可愛すぎるのが悪い、これで決まりだ。

 

「わわっ!?撫でるのが早いよ!髪がぐしゃぐしゃ!!」

 

「可愛いお前が悪い!」

 

「え、酷ッ!私が何したって言うのさ!!」

 

最近ほとんど会えなかったせいか、幼児化が進んだ気がするが、これはこれでいい。

今日は仕事も、組織での活動も入れていないので、1日中レイナと過ごすことが出来る。

…平和だなぁ…。

 

まったりとレイナと戯れて過ごした1日であった。

次の日はシエルと料理を作り、装飾品を作る姿を眺めていた。

休暇の5日目にしてようやくフェイトの仕事の目処が付いたので久しぶりに手合わせしてみた。

昔より無詠唱できる魔法の種類と数が増えていたので師として喜ばしかった。

そのため、少しばかりはしゃぎ過ぎたせいかフェイトがぐったりしてしまったので、夕方から夜にかけて看護していた。

起きてこちらを把握した瞬間、跳ね起きて慌てる姿はまさに従者の鏡だと思えたが、今回ばかりは俺が原因なのでゆっくり寝かせた。

…ベッドで顔を隠しながら上目遣いで手を握って欲しいなど、俺を萌え殺す気かと思ったが、大人しく握った。

安心した表情で眠るフェイトを見て眠くなった俺は悪くない。

 

 

 

 

――――――――――

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――――――――――

 

 

 

 

「それではフェイト。後は頼むぞ」

 

「お任せを、我が主」

 

「えー、もう行っちゃうのー?」

 

「レイナ様。我が儘は駄目です」

 

麻帆良に帰る日。

見送りは相変わらずのメンツだった。

フェイトは完璧だし、レイナは駄々っ子だし、シエルはそのお守だし…。

まぁ、フェイトとシエルがいれば問題ないだろう。

 

「次は冬休み…4ヶ月後に帰ってくる。体調に気を付け、無理はするなよ」

 

「無論です。主に御心配をかけぬよう、心身共に無理は致しませぬ」

 

「レイナ様は任せて」

 

「ちょ、その言葉は酷くないッ!?」

 

最後の言葉に笑ってしまったが、仕方ないだろう。

では、行くか。

 

「何かあれば転移陣で俺の部屋に言伝を送れ。すぐに対応しよう」

 

「はい。それでは主、お達者で」

 

「…なんか違う気もするが、まぁいいか」

 

3人に見送られて転移魔法を発動させる。

空間を超え、麻帆良の自分の部屋へと戻る。

ふぅ、部屋は何も変わってないな。

 

……言った側から変わりそうで怖かったが、何もなかったのはお約束。

 

 

 

 

∽to be continue∽

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