∽移り行く風のように∽   作:アクア=イスタロス

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第3話

―――――【第3話 魔獣】―――――

 

【side レイナ】

 

少女、フェイトを生み、彼と出会った次の日。

結局捕まえられなかった彼は、いつの間にか私がフェイトと暮らすために作り上げた住まいに当然のように座っていた。

…いや、もはや何も言うまい。

 

「そういえば、あなたの名前は?さすがに名前が無いだなんて言わないでしょう?」

 

「ふむ、名前か。……この世界に降り立つ前の名であればあるが、それは過去の俺だ。現在の俺には新しい名が必要だろう」

 

私の問いに対し、顎に手を当て考え始めた彼を見つめる。

立つ姿はピシッとしており、どこぞの考える人と比べるまでもなく凛々しく感じた。

正体不明の人物ではあるが、何故だか1つの芸術を垣間見た気がした。

 

「そうだな…リュラン…『リュラン・アルタメシア』。そう名乗るとしよう」

 

「あら、私はレイナだけなのに?」

 

「俺の妻となるのなら性は同じだろう」

 

はっきりと言ってくれる。

完全に不意を突かれたからか、心臓がドキドキして、顔に血液が集まるのがよくわかる。

まったく、彼――リュランに会ってから調子が狂いっぱなしね。

何時の間にここまで考えてしまうようになったのかわからないけど、これはこれで心地よいものだ。

 

「フェイト。これを読むといい」

 

はっとして振り返ればリュランがフェイトに何種類もの紙の束を与えていた。

あれは…本?

 

「…?」

 

「お前に足りないのは知識だ。本来ならば知識より前に言葉を覚えてほしかったが欲を言ってしまえば際限がないしそれほど時間は取れん。とりあえず、今は言葉と並行して表現を身につけてくれ」

 

「……ん」

 

「よし、ではいい子にして待っているんだぞ」

 

フェイトが頷いたことを確認してリュランは私の手を握り扉へと歩き出す。

 

「――って、どこに行くの!?」

 

「ん、とりあえず住まいを拡張して俺たちの従者かそれに近い存在を増やさなければならない。そして、その者たちに言葉と知識を与え、形になった段階で生態系に影響がない範囲内で人間の数を増やし、従者たちを先頭に村の形態を作り出す。現状ではこれぐらいか」

 

「ま、待って!家を大きくすることはいいわ。けど、従者を生み出す必要はあるのかしら?先に人の数を増やして村の形を整えて、その中でも能力の高い人たちに知識を教えればいいんじゃないの?」

 

「それでは少々時間が足りない。この世界を“世界”にするにはかなり急ぐ必要がある。時間をかけ過ぎると余計なモノが生まれるからな」

 

「余計なモノ…?」

 

「そう、余計な――チッ、早速来たか。飛ぶぞ」

 

「ちょ、きゃッ!?」

 

飛ぶぞと言われるや否や腕を引っ張られ、彼に抱きかかえられる。

あわわ、か、顔が…

咄嗟に彼の胸に顔を隠すが、これはこれで対応を間違えた気が……。

 

「――っと、着いたぞ。アレが余計なモノだ」

 

「あうあう…。えっと……何かしら、アレ」

 

私の目の先にあるモノ。

それは光が乱反射し目に痛いほど光り輝く湖。

そして、その側で動く木のようなもの。

あれはいったい…。

 

「アレが余計なモノ――湖のようなものはこの世界から湧き出た魔力の塊であり、隣のものは大量な魔力の影響を受け魔獣と化した木の成れの果てだ」

 

「魔獣?それはどういった存在なの?」

 

「…簡単にいえば、害のない生物――動物だけに限らず、昆虫や魚類、さらには草木などが長い年月をかけて体内に大量の魔力を蓄えた結果だな。今回の場合は近くに巨大な魔力溜まりが発生したために急速に成長した例外だが」

 

「そう、なの…あの子は救えないの?」

 

「……好きにやってみるといい。無理だと判断したら俺が止めを刺す」

 

「……(コクン)」

 

彼から離れ、魔獣とやらになってしまった木に近づく。

近づく私に気がつかないのか、私に背を向けて大量の枝を揺らしていた。

これなら――

 

「…!来るぞ!」

 

「えっ――きゃあ!?」

 

突然、地面が揺れたかと思うと大地を突き破って何かが私目がけて飛び出してきた。

リュランの声がなければ危なかったかもしれない。

 

「な、何が…――!こ、これって…」

 

目の前に生えたもの。

それは、木自身の根であった。

つまり、気がついていない振りをして奇襲したのだ。

私はまんまと騙されたわけだ。

 

「気をつけろよ。奴らが欲するのはより濃度の高い魔力。お前は格好の餌だぞ」

 

「…それでも、私はやってみたい」

 

立ちあがって土を払う。

魔獣の正面に立ち、右手を前に構える。

魔獣が枝を伸ばし、勢い良く振り回してくるのが見えるけど、私は逃げない。

 

「お願い。私に力を貸して」

 

右手に力を込めて木にそっと触れる。

するとどうしたことか、暴れていた魔獣は大人しくなり、太かった幹は細くなり、何本もあった枝は2つに集まってゆく。

そして、変化が止まったそこには――

 

「レイナ様。私に命を吹き込んでいただき、ありがとうございます」

 

緑の長い髪に尖がった長めの耳。

ほっそりとした手足と体。

私やリュランと似て非なる存在。

私の中にある知識が正しければこの子は――

 

「…エルフ。それも、高い魔力を持ち、一族でも屈指の長寿を誇るハイエルフ」

 

「その通りです。レイナ様のお力を頂き、魔獣として覚醒した私めは知恵のある存在へと生まれ変わることができました。誠にありがとうございます!!」

 

深々と頭を下げられたけど、私はどうしたらよいのだろうか…。

慌ててリュランの方に顔を向けると、ため息をついてやってきてくれた。

 

「レイナに救われしハイエルフよ。そなたはレイナに忠誠を誓えるか?」

 

「はい。世界を創造せし神よ」

 

「…ならばよい。救われたことを常日頃から感謝し、レイナの力となれ。俺からはこれだけだ」

 

「はい!」

 

…あれ、なんか思ったより違った方向に行った気が…。

そしてハイエルフのあなた。

そんなにキラキラした目をされても困るんだけど、私。

 

「とりあえずお前の従者を一人確保したわけだ。彼女とフェイトを軸に生態系の構築を基本に人の増加、および文明の開化、さらにどんな文明に導くか考えることだ」

 

「…どういうこと?」

 

「帰ってからレクチャーしてやる。行くぞ」

 

「はい!」

 

リュランが歩き出し、その後ろをハイエルフの子が付き添っていく。

って、貴女は私の従者じゃないの!?

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!!」

 

二人に追いつくために走る。

この先どうなるのかわからないけど何とか行けるような気がした瞬間だった。

 

 

 

 

∽to be continue∽

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