∽移り行く風のように∽   作:アクア=イスタロス

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第40話

―――――【第40話 迫るモノ】―――――

 

目玉イベントである体育祭も終わり、麻帆良は通常通りの生活へと戻りつつある。

…まぁ、格闘大会で優勝したせいか、ただでさえ多かった弟子やら挑戦状やらが益々多くなったのが悩みの種か。

その中でもダントツなのが古である。

毎朝会う度に挑戦を叩きつけている。

……その情熱を勉強の方にも向けて欲しいものだ。

 

――今度俺が勝ったら補習させるか。

 

それはともかく、体育祭が終わっても大半の教師と1部の生徒に平穏は訪れない。

今回はその話…俺の仕事の1つでもある警備について話そうか。

勿論、表の仕事である広域指導員ではなく、裏の仕事である夜間警備のことだ。

 

基本、俺は待機が多い。

現場には他の警備担当者が向かっており、その担当者が手に負えないと判断した場合のみ、あの妖怪から緊急出動要請が入り、さっさと殲滅するのがほとんどだ。

稀に都合で警備を外れる者のために、代わりに見廻りをすることもある。

 

夜間警備の内容もかなり色々あるのだが、基本は学園に侵入しようとする裏関係の不審者や不審物の撃退、捕縛、及び殲滅だ。

それに伴って危険も生じるわけだが…俺には関係ない話だ。

 

しかし、いくらこの学園の生徒が優秀だからと言って、夜間警備をその優秀な生徒にも任せようと考えた、その甘さはどうかと思う。

例え出撃手当として高額収入が入るとはいえ、教え子を戦場に向かわせるのだ。

…そういったことを無くすように活動する俺からすれば、あまり肯定できない。

例えば、真名のように戦場を生きる者、もしくは刹那みたいに己の修行を兼ねてであれば、本当に…本当にッ色々な感情を無視して許容範囲だと考える。

だが、他の…メガロ程度が作った教育方針で育てる魔法学校を卒業して麻帆良学園に来た生徒では、対処不可能な戦闘も起こるだろう。

例えば今回話すような…経費度外視の超物量戦法などは。

 

 

 

 

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【side 桜咲】

 

皆さん、お久しぶりです。

神鳴流剣士、桜咲刹那です。

今日は私が、夜間警備の様子について説明させていただきます。

今回の私の配置は学園南側、配属は私と真名の2人となってます。

最近は襲撃も小物が多く、今夜もそれほど危険ではないと考えられます。

そのため、普段はもう数チームが同じ区域に配属されますが、今夜は打ち合わせによって他の地域に行っています。

己の修行として夜間警備に名乗りを上げたので、小物ばかりでは修行にならないのですが…平和なのは良いことであると思います。

そんな甘い考えをしていたからでしょうか。

私も、今夜ばかりは少々油断していたようです。

 

 

 

 

「くっ!なんという数の多さだ!」

 

周りを取り囲むのは物の怪と呼ばれる異形の者達。

陰陽道という宗派でよく使われる召喚魔の1種です。

その数、およそ30体。

しかしながら、その遥か後方を見れば次から次へと召喚されていることを示す光が煌々としています。

他の区域のチームと連絡を取り合ったのですが、どこも同じような状況らしく、考えただけで4か所も連続召喚がなされているわけです。

つまり…その召喚自体を何とかしなけらば…私達に勝ち目はありません。

私は正面から、相方である真名は後方から射撃でそれぞれ撃退してますが、効果があるのかと思うほど、次から次へと攻めてきます。

 

「刹那、大丈夫かッ!?」

 

「なんとか!…くっ、はぁぁ!斬岩剣!!」

 

神鳴流における物理奥義、斬岩剣。

攻撃範囲こそ自らの得物に比例するので、私の場合は野太刀なのである程度広く、またそれほど溜めを必要としないのが特徴です。

今日召喚された鬼達は数こそ多いですが、耐久力はそこまで大した事が無いようで…なっ!

 

「ぐぅ!!」

 

「刹那!」

 

突然、空からの繰り出された攻撃に怯んでしまう。

油断した…まさか、烏族がいるとは…。

 

「刹那、さっき学園長に緊急要請をした!もう一踏ん張りだ!!」

 

「そうか、分かった!!」

 

とは言え、応援が来るまで耐えれるかどうか…。

いや、この程度で弱気になるな!

私はこのちゃんを護るという使命がある!

その過程で倒れてはいけない!!

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

目の前の鬼を還す。

さらに後ろから来た烏族も斬岩剣で何とか還す。

しかし――

 

「刹那!後ろだ!!」

 

「しまっ――」

 

後ろから迫る巨大な鬼に不意を突かれ、何とか防御するも、得物が弾かれてしまった。

上を見上げれば、その巨大な鬼の太い腕が掲げられ、次の攻撃が間近であることが分かった。

…私はもう駄目かもしれない。

咄嗟に目を瞑ってしまい、次に来るであろう、強烈な痛みに対して身構えた。

しかし、いつまで経っても私の身体に痛みではなく、それどころか周辺には連続して響く何かの落下音。

何が起きたのか…前にいたあの巨大な鬼はどうなったのか…。

恐る恐る目を開ける。

そこには――

 

「よく耐えた。後は任せろ」

 

私が尊敬し、憧れる背中がそこに居た。

 

 

 

 

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気づいたときは遅かった。

 

こちらへと向かってくる烏族を撃ち抜いて還した後、刹那は大丈夫かと先程まで居た場所を探した。

結論から言えば、すぐに見つかった。

その後ろから迫る巨大な鬼と共に。

声を張り上げ、叫んだが刹那も気づくのが遅れた。

すぐさま銃を構えるが間に合わない。

どうするかと悩む私の耳に、急に空から妙な音が聞こえ始めた。

何かが飛んでくるような…そんな音だ。

そして――

 

ドドドドドドドドドッ

 

後ろを取られ身構えた刹那を除き、周辺に居た鬼は降り注ぐ何かにより、一瞬で還っていった。

何が起きたか。

その何かが降り注いだ方向へと顔を向ける。

そこには、輝く黄金の千手観音が暗闇を明るく照らしていた。

つまり、応援に来てくれたのだ。

近くにいるだろう、その姿を探す。

そして、刹那のすぐ近く、刹那を護る様に…私が尊敬してやまない師匠の姿が居た。

 

 

 

 

リュランさんが応援に来てから状況は一瞬で逆転した。

前に、高畑先生との手合わせで見たあの千手観音からは光り輝く拳が何十、何百という数で降り注ぎ、周辺の大地を鬼諸共粉砕する。

土が舞い、木片が舞い、鬼の還る直前の肉体が舞い…その全てを再び粉砕するかのように千手観音の拳が降り注ぐ。

 

もはや殲滅。

 

リュランさんは何もしていない筈なのに、目の前の景色が次々に壊れていく。

ここまでいくと、もはや清々しいの一言に尽きる。

ここまで一方的だと、味方より敵の心配をしてしまうぐらいだ。

 

前に、闇の福音と呼ばれるエヴァンジェリンに言われたが、無駄だと分かっていても魔眼で見てしまいたくなるが、その気持ちを無理やり抑え込む。

理由はリュランさんから使用を禁じられているため。

もちろん、状況が状況の場合は許されているが、むやみやたらには使うなとのことだ。

その大本の理由を説明するには私の過去を語る必要がある。

 

 

 

 

私が人と魔族のハーフであることは、リュランさんと出会った時に知った。

私自身が知らない事を、何故知り得たのかは分からない。

でも、リュランさんはその血筋を見抜いて、忌み子として扱うことなくその力の使い方を教えてくれた。

その時に、できれば魔眼は使わないようにと教わった…まぁ、あまり守れなかったが。

また、つい最近、部屋へとお邪魔するついでにその理由に尋ねた事がある。

昔にも聞いたことがあったが、その時は時期尚早と言われて教えてくれなかった。

今回も早いと言われるかと考えていたが、すんなりと教えてくれた。

…聞けば、どうやら魔の力とは使い過ぎると人間を外れ、そちら側へと堕ちてしまうらしい。

…いや、堕ちるという表現は違うのかもしれない。

魔族という、人間より上位に位置する生物への転換とリュランさんは言った。

最も、半分は魔族である自分がこれ以上魔族に近づいたところで何も意味はないと思ったのだが…リュランさんにはリュランさんの考えがあるのだろう。

また、なぜそんなことまで知っているのか不思議で仕方がなかったが…その後、エヴァンジェリンにも同じことを言われたので真実だと思う。

まぁ、疑問は減るどころか増える一方だし、これからも増え続けるのだろうが。

 

 

 

 

…そろそろ私の話は止めようか。

今は鬼の迎撃をしなければならない時間だ。

まぁ…リュランさんが来た時点で私達は必要ないんじゃないかと思うが。

 

「相変わらず、すごいな…」

 

「あぁ。ここまで一方的に殲滅する姿を見ると心震えるよ」

 

「これが…言葉でしか知らない英雄の姿」

 

「そして、私達の師匠だ」

 

落ち込むことなど何もない。

これほどの人が私達のために時間を割いてくれるのだ。

むしろ、誇るべきだろう。

…ま、だからと言って、傲慢になってはいけないが。

 

「…なぁ、真名」

 

「ん?」

 

「…私達は、この境地へと辿り着けるのだろうか…」

 

隣にいる刹那の顔は不安そのもの。

らしくないと言えばらしくないが…これはこれで人間臭いというのかな。

さて、私の答えだが…言えるのはこれだけだ。

 

「…辿り着けるのかじゃない、辿り着いてみせる。…私は、ずっと傍に居たいから」

 

「…真名は、変わったな」

 

「…そうか?」

 

「あぁ。…師匠が着てからかつ、師匠限定だが」

 

「ふふっ、当たり前だ。リュランさんは特別だからな」

 

「…私も、辿り着いてみせる。自分の力でこのちゃんをずっと護れるように」

 

刹那の表情が凛々しくなる。

そう、その意気だ。

相方の決意を頼もしく思いながら、目の前の蹂躙を眺めていた。

 

 

 

 

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数分後、敵の召喚魔を全て殲滅してきたリュランさんが戻ってきた。

さすがとしか言えない。

まさか、目の前の森を全て更地にして帰ってくるとは…。

 

「お疲れ様です、師匠」

 

「ん。2人ともお疲れ。ま、今回は運が悪かっただけだ。むしろ、これだけの数を相手によく粘った方だ。他の連中では耐えられなかっただろう」

 

リュランさんから慰めの言葉を聞く。

それを聞いて、自分は仕事を遂行できなかったという思いが沸々と湧いてくる。

…駄目だ、リュランさんに教わって力を磨いたと言うのに、この様では。

 

「…はい」

 

「…ふっ。そこまで落ち込む必要はないぞ、真名。さっきも言ったが今回は敵が悪い。こちらは補給が侭ならず、敵の数は増える一方。応援が来るまで耐えたことを俺は評価する」

 

「…しかし、私は傭兵です。仕事を成功できない傭兵などまるで価値が――」

 

突然、リュランさんは私の口を塞ぎ、頭を撫でる。

――残念ながら手だったが。

はぁ、キスで塞がれたならばなお良かった。

……現金なものだな、私も。

 

「お前は変わらんな。…昔にも言ったがお前はまだ若いんだ。生き急ぐ必要はない。経験なんてもんはゆっくりと確実に積んでいけばいい。今は生きたことを喜べ」

 

昔もこうやって頭を撫でながら言われた言葉だ。

…私はまだ生き急いでいるらしい。

…リュランさんと一緒に戦おうとすると、どうしても焦ってしまうんだけどね。

主に、リュランさんが凄過ぎて。

 

「…はい。ありがとうございます」

 

それにしても、リュランさんに撫でられるとどうしても顔が赤くなる。

やはり、慣れないな。

…あとは、嬉しさのあまり、奇行に走らないよう自制するのが大変だ。

 

「刹那もだ。学園内で起きる戦闘は予行演習と思え。何かあれば必ず助けてやるから命の心配はするな。今はただ、教えられ学んだ事にだけ集中してみろ。演習という名の実戦で自分の持てる力を色々試せ。ここで成功して、初めて会得したと考えろ」

 

「「はい!」」

 

「…今日はもう来ないだろう。少し早いが、報告は俺がしてやるから帰って寝ろ。今度の訓練から今回の事を踏まえ、さらに実戦形式に近い形に変えてやろう。以上だ」

 

こうして私と刹那は生き延びた。

とりあえず、今度の警備からは銃弾を3割増しで持ってこようと思う。

 

――そして、次の日。

宣言通り、リュランさんの訓練は今までのような技術練習と簡単な演習だけではなく、私と刹那対リュランさんという形で本格的に戦うようになった。

明らかに手加減されてはいるが、昔のように私を見ていてくれると感じれられるのが嬉しく思う。

 

 

 

 

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――――――――――

 

 

 

 

…とまぁ、これが俺の警備であり、あの2人の転換期となった話だ。

あれから、何度か本格的に魔法球の中で訓練しているが、2人とも良き成長を遂げている。

真名は銃の連射速度と急所への命中精度が魔眼を使わずともほぼ使用時と同じレベルにまで達し、弾の装填による隙もかなり減った。

そしてもう1人の刹那は…俄か斬魔剣―弐の太刀まで出来るようになった。

…実演して見せたのは俺だ。

大戦中、詠春がガンガン使ってたから見て覚えたわけだが…こんなところで役に立つとは。

ちなみに、その刹那は最初、本家相伝の奥義を教えてもらうことに抵抗を示していたが…色々と吹き込んた結果、抵抗を示していたのが嘘かのように習得に向けて頑張っていた。

…まぁ、特別な技を教わる刹那に嫉妬した真名が少し膨れていたが無視するとしよう。

 

あれ以来、妖怪には絶対油断するなと強く直談判(という名の脅し)をした結果、必ず1つの地区に2チームは巡回ようにした。

その結果かは知らないが、俺への緊急出動要請はほとんどなくなった。

 

暇な時間が増えたのは良いが、することがなくて夜の学園上空でのんびりと星空を見るのが癖になった。

時折、頭に浮かんだ術式効率化を試していたり、新魔法の開発をしたりしているが、基本的に暇つぶしレベルのものだ。

間違っても3属性合成魔法の理論なんて試していないぜ。

……暇だな。

 

 

 

 

∽to be continue∽

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