―――――【第49話 激闘】―――――
【side other】
結果から言えば、リュランは無事だった。
彼は神と同義の創造主であり、この世界に居続けることを定められた呪いを受けている。
そのため、呪いの存在意義と真っ向から対立する『死』の概念からは確実に復活することが出来る。
無論、どんな怪我でも再生できる回復力もある。
最も、創造主である事は知らなくとも、自身のマスターと遥か昔にあったと聞いているため、不老不死の可能性も情報には載っていた筈である。
それでも茶々丸は『死』を予感させた。
彼が一般人を装っていたからでもあるが、否定したい現実が目の前にあると、感情を持つ生物はそれを否定するべく余計な情報を全て忘れてしまうという。
茶々丸は人ではないが、人に近い存在として生きているので、仕方がないだろう。
その後、完全再生を果たしたリュランは、彼が寝ていたベッドの側で泣き続ける茶々丸を慰め、エヴァンジェリンから真っ赤に目を腫らしながらの文句のような泣き事を聞き、どこからか事情を聞いた刹那、真名などの裏の関係者からの見舞いを受けた。
怒涛ともいえる見舞いラッシュがようやく一段落し、ベットに倒れ込むリュラン。
瀕死の怪我など、彼の記憶ではほとんどなかったため、身体が過剰に反応したらしい。
また、見舞いで発生した様々な事件が彼の精神を少しずつ削っていた。
エヴァンジェリンの野菜惨殺計画や、茶々丸の幼児化現象、刹那や真名の大泣き抱きつき攻撃などが主として挙げられる。
多くの者が見舞いに訪れた時、瀕死の怪我を負った真実を聞きたがっていたが、リュランはこれに関しては一言も語ることなく、見舞い客も無理をさせるべきではないと考えていたため、それほど深くは追求せずに帰って行った。
…見舞い客が帰っていく背中を見ていた彼の怖いぐらいの無表情が、その理由を物語っていたのかもしれないが…。
そして、その夜。
怪我から5時間しか経っていないのだが、彼の身体に怪我の跡はなく、本当に怪我していたのかどうかさえ怪しい。
ただ、その事実を彼が着ていたスーツだけが知っている。
世話になったと断りを入れるリュランに対し、茶々丸は怪我させてしまった者として、また、大切な人に無理をしてほしくないため、明日1日ぐらいは休んだらどうかと提案したが、仕事を休むわけにはいかないとやんわり否定されて落ち込んだ。
エヴァンジェリンはどうしたのかと聞けば、既に寝ていると茶々丸は言うだろう。
所謂、泣き疲れというやつだ。
そして、エヴァンジェリンの家を出ようとしたリュランの前にその動きを遮る影。
「落ち着くのじゃ、リュラン殿」
「…妖怪か。何の用だ?」
急にエヴァ宅へ赴いてきた妖怪によって、家の扉は塞がれた。
そして、目の前の妖怪は早く帰りたい彼を追い打ちするかのような発言を発した。
「君に2日の休息を与えることを学園上層部での緊急会議で可決した」
「断る。俺が休めば他の者…昼間は新田先生、夜はタカミチが忙しくなるだろう。俺の身体は問題ない。そこをどけ」
「…これはわしの意見ではなく、学校側の…引いては君を慕っておる者たちからの意見じゃ。おとなしく寝ていなさい」
「…フン」
妖怪だけの決定であれば、リュランは無視しただろう。
いくら妖怪が雇い主で自分が雇われている身だとしても、実際の彼の立場は妖怪より遥か上だ。
彼自身がその立場をそれほど好んでいるわけではないので、その権力を振りかざすと言ったことはないとは思うが、やろうと思えばできたのだ。
しかし、自分の事を想っていてくれる人たちからの好意を無下には出来ないと考えた彼はそのまま引き下がった。
だが、妖怪如きに説得された事についてイライラしたリュランは、そのまま妖怪を家の外へと連れて行くと久しぶりに見せた百式観音でボコボコにし、そのまま放置した。
そして、2日間の休息を貰ったのである。
ついでにエヴァと茶々丸も休むと言ったのは仕方ない事実だろう。
その夜、リュランの眠るベッドにとある誰かが潜り込み、その翌朝、同じベッドで仲良く3人が川の字を描いて寝ていたのは彼らだけの秘密だ。
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あの日、一時的に死にかけた俺だったが、すぐに復活。
妖怪を死に逝く二歩手前まで追い込むことに成功した。
後日、裏関係の教員内で会議が行われた。
議題は無論、野菜坊主の魔法という兵器の危険認識度についてだ。
まず、各教員から野菜坊主が魔法を使った時の状況とそれに対応するためにどんな魔法を使ったのかが発表された。
まとめると、約8割が自分に関係する事…つまり、魔法バレを防ぐために何かしようとしたり、魔力を暴発させて武装解除を発動したりと魔法を秘匿するつもりがあるのか本気で考えさせられる状況であった。
逆に、残りの2割は主に生徒に関係する事…報告に上がった内容によると、生徒の眠気をリフレッシュさせたり、怪我をしそうだった生徒を助けるために風を操ったりと良い報告も残っている。
ただし、どちらも生徒の目の前で発動しているので、魔法の秘匿を意識しているか、と聞かれると微妙としか答えられないというのが教員内での見解である。
また、俺を殺しかけた件についても話し合いが行われた。
現場検証を行った数名の魔法事故処理班の報告によれば、野菜坊主は周囲に対し、魔法バレを防ぐための処置を何も取っておらず、下手をすれば音を聞きつけてさらに多くの一般人がこの件を見ていたかもしれないとのことだ。
また、魔法バレを防ぐための処置をしていないということは、もしかすれば、茶々丸を助けるために一般人があの場に乱入していたかもしれないという危険性だ。
今回は俺だからこそ死なずに済んだが、もし……――という、いわば殺しの危険性について示唆する報告となった。
殺しの危険性はこれから注意すればという意見もあったが、起きてしまってからでは遅いと封殺された。
あとは…状況がまずかった。
いくら狙われたからといって、裏の事情を知らぬ自分の生徒を応援に呼んで不意打ちしたのは真の魔法使いを目指す者としてどうなのかという意見だ。
数名の事情を知っている者は神楽坂が黄昏の姫御子であると分かっているが、大半の者は神楽坂は一般人という認識である。
そんな生徒を自分の不意打ちに参加させたのは如何なモノか。
生徒を護る教員として、こればかりは見過ごすわけにはいかず、野菜坊主肯定側も首を縦に振るぐらいしかできなかった。
約5時間にもおよぶ議論の末、野菜坊主に関する教員側の見解が文書として妖怪に手渡された。
その内容は肯定する部分もあるが、基本的には魔法の秘匿や危険性についての認識が甘いなどといった否定的な結論が多かった。
なお、俺やタカミチを含めた数名の教員が見ている中で手渡されたため、妖怪がこの文書をなかった事にはできない。
今後、これを踏まえて野菜坊主の再教育をどうするか検討されていくことになる。
ついで…と言っていいのか分からないが、2日間の休み中に神楽坂と野菜坊主が見舞いに来た。
野菜坊主は謝罪も兼ねていたが、今回の件に関してある程度は話そうと決意したらしい。
さすがに一般人である俺に魔法の事を話そうとはしてないが、自分の行動が相手の命を奪う可能性があったということ話し、それについて謝罪した。
現状の俺から言える事は何もないため、謝罪を受け入れて適当に対応した後、野菜坊主だけ追い返した。
何故野菜坊主だけかといえば、神楽坂は何やら個人的に話したい事があるらしい。
聞けば、今回の事で、自分がどれだけ無知であったか自覚したらしい。
魔法に関する事や、野菜坊主自身に関する事、あとは自分のクラスメイトの命を奪ったかもしれないという事。
裏の事情は知らずとも仕方ないとは思うが、神楽坂はそうは思わないらしい。
野菜坊主が何度も魔法を使う姿を見て、魔法が身近な存在である事を知り、魔法を使う事がどんな結果を引き起こすのかを楽観視していたと話した。
…それを話しながら、途中からは今回の件を止められなかった自分に対する馬鹿らしさを泣き、俺を助けなければならないのに動けなかった事を泣いていた。
目の前で泣き続ける神楽坂の頭を撫で、これ以上自分を責めるのは必要ないと話すことにした。
……まぁ、その対応が残念な方向に転び、今の部屋の空気を作り出しているのだが。
ベッドの上で俺は寝転び、傍では神楽坂が俺の手を握り締めて同じく寝転んでいる。
その様子を羨ましそうに見つめるエヴァンジェリンと茶々丸。
……どうしてこうなった。
やんわり諭していた筈が、いつの間にか神楽坂が責任を取るなどと発言する事態に発展し、意味が分からんと騒ぐうちに、少しの間だけ一緒に寝るという事で落ちついた。
…結局意味が分からんのは同じだった。
また、共に寝転んでいる最中に、神楽坂から色々と嫌な事実を突き付けられた。
例えば、エヴァンジェリンや茶々丸が裏の事情を知る側だという認識は良いとして、俺までもが裏の事情を知る側ではないかと言われ、今回の件は学園全体で何者かが意図して起こされたのではないかと言われた。
…昔から鋭い子だとは思っていたが、どう考えたらそんな考えに辿りつくのだろう。
真剣の眼差しにどこまで話すか悩み、結局エヴァンジェリンがやってきて、かなり深いところまで話してしまった。
それを聞いた神楽坂が、自分が何もできないのは嫌だと主張してエヴァンジェリンが例の訓練の参加を提案し、神楽坂が受け入れてしまったとなれば、今の俺はどうすることもできなかった。
…やるからにはちゃんと面倒を見てやらねばな。
…武器はどうしようか。
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そして、悩んだり、焦ったり、寝てたりしているうちに停電当日。
俺は大鉄橋全体を見渡せる付近の山頂へと来ていた。
今日の警備の主な内容は、エヴァンジェリンたちの勝負の行方を見守る事、そして邪魔が入らないように監視することだ。
だが、警備とは関係なしに別の理由もある。
「やぁ、リュランさん。今夜は星が綺麗だね」
「真名…よく、そんな悠長なことを言ってられるな」
「真名から聞いたでござるよ。…拙者の力がどこまで通用するか、試させてもらうでござる」
「アイヤー、去年のリベンジアルネ!」
俺の目の前には真名、刹那、長瀬、古の4人が構えている。
何故なら、3-Aが誇る彼女たち四天王からの挑戦状を受けたからだ。
普段から稽古のため戦っている刹那と真名に加え、忍者の楓と中武研部長である古。
各人が常人以上の力を持っているが故に、普段から全力で戦う事は少ない。
真名と刹那は機会があるため、まだマシな方だが、長瀬と古は自己鍛錬ぐらいしか機会がない。
だからこそ、こんな日にでも挑戦しなければ全力で戦えないのである。
本来ならここへは誰も来れない筈なのだが…真名か刹那が妖怪に許可を貰ったのだろう。
そして、許可した妖怪の魂胆は、あまり見られない俺の力を見るためだろう。
……簡単に手の内を明かすつもりはないが。
「…最初から本気で来い。少しでも力を抜けば、一瞬で仕留めてやる」
「勿論、そのつもりさ」
「師匠。全力で行かせてもらいます」
「ニンニン」
「絶対勝ってみせるネ!」
「合図は…次の爆発だ」
4人は彼の動きを注視する。
気を抜けば、すぐにでもやられると分かっているから。
動きを止め、合図が出るのを待つ。
そして――
ドゴォン!
大鉄橋の方より鳴り響いた巨大な爆発音と共に、戦闘は開始された。
まず仕掛けたのは刹那と長瀬。
使いなれた夕凪を手に取り、安易に距離を取らず、最初から接近戦を仕掛け、距離を取ろうとするリュランを強引に追いかけ、絶対に逃がさぬよう連続攻撃をする刹那とクナイや手裏剣を大量に投げ、刹那への攻撃を逸らし、反撃の芽を潰す事に力を注ぐ長瀬。
刹那と対峙していれば、中距離から長瀬の暗器が。
長瀬を捉えようとすれば、死角から斬撃を浴びせようとする刹那が。
互いの動きを理解し、自分にできる事を全力で取り組んでいるからこそ、手ごわい。
この2人の連携であれば、多少格上の相手でも十分相対する事が出来るだろう。
…相手がリュランでなければ。
刹那は神鳴流の奥義こそ使ってはいないものの、最初から全力で斬り合っていた。
格上の相手と戦う際、奥義に頼りがちになる己の未熟さを知っているからこその攻撃だった。
真名や楓と打ち合わせを重ね、攻撃速度も、気の運用も以前より上達したと自信を持って言える。
故に、奥義に頼らずとも、自分の斬撃で戦えるのだと考えていた。
だが、それがリュランに対しては仇となった。
「残念だったな」
突きからの手首を返して逆袈裟切り…刹那が好んで使う連続技だ。
しかし、好んで使うということは…リュランはそれをよく見ることがあるということ。
つまり、反撃されやすい一手となる。
その逆袈裟切りを手で掴むと同時に逆手で襟首を掴んで身体を捻り、柔道の様に地面に叩きつける。
とっさの判断で頭から落ちなかったことが幸いだろうか。
気絶こそ免れたものの、落下の衝撃で得物を手放してしまい、起き上がろうとした瞬間にくないで地面に貼り付けられ、戦闘不能となる。
それを見た長瀬は一旦距離を取ろうとしたが、縮地に入った瞬間を狙われて手首を掴まれ、身体の硬直が解けぬまま刹那の近くへ叩きつけられた。
叩きつけた2人が動かないかどうかを見ていたリュランだったが、後方から気配を感じ、その場で回避行動に移る。
そして、先程まで頭があった場所に銃弾が数発放たれた。
2人がやられた瞬間の気の緩みを反撃の好機と見たか、一気に方をつけるべく、さらに複数弾発射するが、リュランはステップのみで避け、徐々に距離を詰める。
これ以上の遠距離射撃は無駄と判断したか、手に持つ銃を素早く切り替え、小型の小銃を持ちながら自身も距離を詰めて接近戦を挑もうとする真名。
しかし、いくら銃の扱いがうまいからといって、銃を使った接近戦に慣れているわけでも、場を重ねているわけでもない。
片方は足元に撃って牽制し、もう片方で急所を狙うというシンプルな戦闘。
ある程度の敵であれば通用するであろう攻撃パターンであるが、彼には通用しない。
数回の攻撃を避けた後、足元に牽制弾を放つであろう瞬間を見計らって真名の懐にまで詰め寄った。
自分の攻撃を読まれたと気がついた時には完全に詰みであった。
「狙撃手としては上々。あとは接近戦に多少慣れることだな」
腰に右手を構え、高速で振り抜く。
真名が苦痛に顔を歪め、吹き飛ばされるほどの強烈な1撃。
だが、真名は木に叩きつけられる間際に1撃ではなく、複数の攻撃を同時に感じていた。
「これ…は…!」
「ふむ。これを受けて気絶しないか。こいつはな、『多重次元屈折現象』といい、1度に複数の攻撃を放つことで全体の威力を高めたり、逃げ道を塞ぎつつ1撃を当てるために使われる技術だ。有名なのは剣豪、佐々木小次郎の燕返しだな」
「ふふっ…さすが…リュランさん…」
そして…最後に残ったのは、普段なら最初に飛び出して来ているであろう古。
何を思って最後を選んだかは定かではないが…彼女なりに考えるところがあったのだろう。
「…リベンジアル。この半年の功夫の成果を…先生に見せるアル」
「…ならば、俺はその全てを打ち砕くのみ」
ピタッと時が止まった気がした。
遠くで爆発音が鳴り、その空気の振動が木々を揺らす。
枝が揺れたため、木の葉がひらひらと落ち、偶然にも彼らの目の前に1枚の葉が舞っていた。
ゆっくりと舞いながら、落ちて行き、数十秒をかけて地面へとたどり着いた。
それと同時に古が駆け出し、リュランの懐へ潜ろうとする。
なるほど、半年前の速さと比べれば明らかに速くなっている。
だが、リュランはそれを自らも前へ出ることで懐へ入るタイミングをずらそうとする。
一瞬、顔に焦りが出るものの、古も一般人の中では達人級の熟練者である。
すぐさま、構えを変えて活歩で後ろを取り、浸透剄で内部からの攻撃を試みる。
逆に後ろへ回られたと考えたリュランは、そのまま前方へ転がり、回避する。
避けられた古はその勢いのまま、さらに追撃する。
傍から見ればこれぞ、武術というような一進一退の攻防が続く中、このままではじり貧のまま押し負けると踏んだ古は身体中の気を活性化させて、勝負に出る。
足に気を溜め、一気に爆発させ、左右硬開門で強引に懐へ入り込み、最高の一撃を当てに行く。
しかし――
「俺はソレを待っていた」
目の前に居たリュランが消えた――否、自分が空中を飛んでいる。
下を見れば、足を振り上げた姿勢で動きを止めたリュランの姿。
懐に侵入させたのはカウンターを狙っていたから。
そう理解した時には重力によって落下し続け、そのまま地面へと叩きつけられる。
地面に叩きつけられた痛みで実感のなかった勝敗を理解する。
――自分は再び負けてしまったのだと…。
「…くっ、負けアルか…」
「今回は結構焦ったぞ。…強くなったな、古」
「…また、挑戦するアル」
リュランは息を整え、周りを確認する。
重なる様に倒れる刹那と長瀬。
木にもたれかかったまま動かない真名。
目の前で倒れている古。
…そして、空間の歪み。
歪み目がけて魔力を放ち、その先の人物がどうなったのかを想像し、気分がすっきりした。
その後、気絶したままの彼女たちを寮へ運んだり、散らばる道具類を片付けたり、抉られた地面を修復したりと、苦労するリュランであったが、それは置いておこう。
一方、同時刻に行われていたエヴァンジェリンと野菜の闘いも終わりが見えてきた。
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「ラス・テル マ・スキル マギステル。来れ雷精、風の精!!」
「リク・ラク ラ・ラック ライラック。来れ氷精、闇の精!!」
「えっ」
「フフッ」
「(あ、ありゃ、今の兄貴の精一杯。いっちゃん強い魔法じゃねーか!しかもエヴァンジェリンも同種の魔法!?打ち合う気かよ!!!)」
「雷を纏いて吹きさすべ、南洋の風」
「闇を従え吹雪け、常夜の氷雪。…さぁ、来るがいい、ぼーや!!」
「『闇の吹雪』!!!」「『雷の暴風』!!!」
闇の福音と英雄の息子の真っ向勝負。
互いに上位魔法を炸裂させ、魔力勝負となる。
生まれた時から膨大な魔力を持つネギだったが、年齢もあり、全てを使いこなすことができず、逆に900年の研鑽があるエヴァンジェリンは封印の解除もあり、ほとんどの魔力を効率良く使うことができる。
数秒ほど競り合っていたが、まもなく、勝敗は決した。
「私の勝ちだ、ぼーや」
「うっ…ぐ…」
そのまま正面からの打ち合いを制したエヴァンジェリンの闇の吹雪がネギに直撃し、膝から崩れる野菜坊主。
空を飛んでいたエヴァンジェリンであったが、飛ぶ必要性を感じなくなったため鉄橋に降り、悠然と勝利宣言をする。
結局、英雄の息子という名前だけでは勝つことは出来ず、自らを認めさせることもできない野菜坊主は呆然と膝をついたままどうにもできずに動かない。
そこへ、思わぬ人物が到来する。
「フォフォフォ。よく戦った、ネギ君」
「が、学園長先生!?」
「爺か…何しに来た?」
「なに、わしの思い描いたシナリオとちーと変わってしまったからのう。後始末を兼ねてネギ君を励ましにじゃな」
「…くだらん。私は帰るぞ。行くぞ、茶々丸」
「了解しました、マスター。…では、神楽坂さん。おやすみなさい」
「え、あ、うん。おやすみ」
妖怪の登場で興が冷めたのか、さっさと帰路につくエヴァンジェリンと先程まで神楽坂と戦闘――もとい談笑していたが、帰宅するマスターに従い、律儀に挨拶をして去った茶々丸。
その姿を見て、やっぱり悪い人じゃないんだ、となんだかんだで心配になって野菜坊主の助太刀しに来た神楽坂は思った。
その後、この事件そのものが、自分の実力向上を目的とした試練であったことに驚きと感謝をする野菜坊主。
その感謝を受け入れ高笑いをする妖怪と理由を聞き、さらには高笑いする妖怪に呆れた神楽坂。
…エロイタチはその間、ずっと空気だった。
∽to be continue∽