説明不足に感じる部分は、のちの伏線となりますので、必ず回収いたします。
では、最後までお付き合いよろしくお願いします!
”奇跡”の始まり
4月。桜が満開のある日。
春は出会いと別れの季節なんていうけど、
俺に出会いなんて待っているのだろうか…
そんなことを考える俺、朝日優真は今日から高校生になる。
入学するのは、去年から共学になった国立音ノ木坂学院。
つまりは男子は同級生しかいないわけで…
じゃあどうして音ノ木坂を受験したかっていうと、一つは親の勧め、そしてもう一つは…
「優兄ィ─────────!!」
玄関から出て入学式に向かおうとした俺の後ろから、元気な声が聞こえた。
いや、いささか元気すぎるような…
「優兄ィ、入学おめでとうだにゃ!」
そう、こいつだ。こいつが原因。
「よぉ、凛。朝から元気だなお前は」
「だってだって!今日は優兄ィの記念すべき入学式なんだよ!逆にどうしてそんなにテンション低いの!?」
こいつは星空凛。小6の時にこの町に引っ越して来た俺の幼馴染で、妹のような存在だ。
「凛ちゃん、優真お兄ちゃんが疲れた顔してるよぉ…」
「花陽は優しいな。凛も元気があるのはいいことなんだけど、時と場合を考えような…」
そして凛の幼馴染、小泉花陽。俺のことをお兄ちゃんと呼んでくれるのは嬉しいけど、少し恥ずかしくもある。いっつも凛に振り回されてるように見えるけど、なんだかんだ仲のいい二人だ。
「考えてるよ!だからこそだにゃ!今日は祝うべき日!だから凛のテンションも上がるにゃー!」
「何に向かって叫んでんだよ…。絶対朝っぱらから迷惑だって」
「……ねぇ、優兄ィ」
「突然大人しくなったな…。どした?」
「本当に学校、行くんだねっ」
やや不自然な笑顔でそう尋ねる凛。
何を聞いてるん………あぁ、そうか。
「ああ。大丈夫。心配するな。お前が気にすることじゃないよ」
俺は笑顔でそう答えた。
「そっか…… うん!わかった!今日は帰ってきたらパーティーだからね!かよちんとまってるから早く帰ってくるにゃ!」
「やっぱり大袈裟なんだって……」
「いっ、いってらっしゃい優真お兄ちゃん!頑張ってくださいねっ!」
「いや、たかが入学式だぞお前たち…」
二人に見送られ、俺は徒歩15分ほどの音ノ木坂へ向けて歩き出した。
▼
入学式の後、クラスでホームルームが行われ軽い連絡が終わると、その日は下校となった。
クラスにいる男子は俺を含めて、5人。
しかし、残りの4人の二人ずつが同じ中学出身のようで、それぞれのペアと話している。
話しかけて友達になろうかとも思ったが、初日にそれをするのはハードルが高い。
「今日は帰るか……」
凛たちも待ってるだろうし、それがいい。
俺はそう思うと教室を出て下駄箱へと向かった。
▼
下駄箱へ続く階段に向かいながら、俺は考えていた。
これから3年間の身の振り方を。
人との関わり方を。
凛と入学前に交わした会話を思い出す。
『優兄ィに、変わってほしいの!』
“変わる”、か。
あいつも難しいことを…
そんなことを考えながら、階段を降りていたその時
一人の少女とすれ違い
何気なく通り過ぎようとして
気づく
もう会えないはずの
会うことがなかったはずの
俺の心に深く残った様々な記憶と共に
忘れたいのに、忘れられなかった
俺の大切“だった”人────
「のぞ…み…?」
その声に、少女は振り返る。
俺は見上げる形で。
彼女は見下ろす形で。
目が合う。
「優真くん……?」
これが、俺の音ノ木坂での“奇跡”の始まり────
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