でも安心してください、きっとその予想、裏切られますよ。
久々に、あの方が登場します!
では、今回もよろしくお願いします!
28話 やりたいことは。
最近、何もうまくいかない。
私、絢瀬絵里はそんなことを考えながら窓の外を眺めていた。
片付けなければならない書類はたくさんあるのだが、どうにもやる気が起きない。
理事長はどうして自分を認めてくれないのか。
ずっと考えている。何度も何度も交渉に行って、その度に否定されて。辛くないわけがない。でも、私はやらなくちゃならない。
──私は、生徒会長なんだから。
今の私を動かすのは、その義務感。
それを自覚するたびに、あの言葉を思い出す。
『やりたいんです─────!』
『やりたい』。私とは正反対の、彼女たちを動かす原動力。それを心のどこかで認めながらも、認められないと言い張る自分がいて。だって私は一学院の長。そんな自分がやりたいことだけやればいいなんて思えるはずがない。それを認めることは、今の自分の在り方を否定することにも繋がってしまう。だから……そんな考え方は、今の私にはできない。私は、今の自分にできることを──。
──これでいいの?
今の私の在り方で、廃校を阻止できるの?
──────五月蝿い。
こんなことを続けても現状を打破なんてできない
──────五月蝿い。
自分自身が何をすればいいのかわかってないくせに
──────五月蝿い…!
そんなんじゃいつまでたっても指をくわえて見てるままね
「──五月蝿い!!」
思わず叫んでいた。繰り返された自問自答、私が出来たのはそれをうるさいと否定することだけ。
──わかってはいるのだ。
このままでは何も変えられないと。
じゃあどうすればいいのよ
このまま大人しく廃校になるのを待っていろっていうの?
そんなの、絶対に嫌
不意に、涙がこぼれそうになる。
私はそれを無理やり拭い、気丈に振る舞う。
───私が涙を流すのは廃校を阻止できた時だけ。
そう誓ったんだから。
そして目の前の書類の処理に戻ろうとした時。
生徒会室のドアが開いた。
▼
俺が生徒会室のドアを開けると、絢瀬はいつもの場所で書類整理をやっていた。
「よっ」
「優真くん……貴方、アイドル研究部は?」
「今日は抜け出してきた。最近全然顔出せてなかったし、俺の分の仕事も溜まってると思ってな」
東條が言ったことがどこまで本当かわからなかったので、とりあえず当たり障りのない理由を述べる。
「そう……。なら、久しぶりにしっかりと働いてもらおうかしら」
笑顔を浮かべた絢瀬を見て、少し安心する。
「はいよ、お手柔らかにな」
そして俺たちは仕事を始めた。
一時間ほど経過しただろうか。
東條の言ったことは本当だったようで、確かにこの量を2人で処理するのは荷が重かっただろう。とりあえず俺は自分の分の処理すべき書類は片付け、恩返しも兼ねて東條の分の書類も少し片付けた。
「ふぅ……こんなもんかなー」
「お疲れ様。やっぱり貴方がいると早いわね」
「お褒めに預かり光栄ですよっと」
お互いに休憩モードへと入った。
さて……本題を切り出すのは今かな。
「……最近調子はどうだ?」
「……何が?」
「聞かなくてもわかるだろ?」
「……そうね。正直、辛いわね」
「何が?」
「それこそ、聞かなくてもわかるでしょ。っていうか、貴方が言い出したんじゃない」
俺の言葉を聞いた絢瀬が、ジト目で俺を睨んでくる。その可愛らしい仕草を見て、極限まで追い込まれたわけではないと俺は内心安堵を浮かべた。
「ははは、ごめんごめん。
───生徒会活動、ずっと認められてないんだな」
「……ええ。何回いっても、ずっと断られ続けてる」
「原因に心当たりは?」
「………………ある、わ」
「聞いてもいいか?」
「……確証はない、けど」
一息ついて、絢瀬は恐る恐る口を開く。
「──私が“生徒会長”だから?」
「…どういう意味?」
「穂乃果達と私の違い……それは、心の持ち方。それはもう、痛いほどわかったわ。今日だって、理事長はあの子達を認めて、私達を認めなかったから。そう考えるとやっぱり、私が“生徒会長として”行動を起こそうとしてるからとしか考えられない」
……ほとんど正解に近い。
ここまでわかっていて何故……?
「……で?そこまでわかってどうするんだ?」
「……わからないの」
絢瀬はそう言って俯いた。
「……どうすればいいのか、わからない……私は穂乃果たちみたいに、やりたいことをやりたいようにやっていい立場なの…?私は生徒会長。この学校を守る義務が───」
それ以上は─────言わせない。
俺は絢瀬の肩に自分の手を置く。
絢瀬は驚いたような表情を浮かべている。
「優真、くん……?」
「──肩の力抜けよ。
一人で色々考えすぎだ。
そんなに考え込んでるなら、何で今まで俺に相談しなかった?
言っただろ、俺はお前の味方だって。なんだってしてやるって。
もう少し友達を頼れよ。東條や俺が、お前を見てどれだけ心配してると思ってる」
俺の言葉に、絢瀬は気まずそうに目を逸らす。
「……ごめん、なさ」
「謝罪なんていらない。いいか絢瀬、お前は一人じゃない。俺や東條はもちろん、μ'sのみんなだってお前の味方なんだ。誰一人お前のことを敵だなんて思ったりしてない。穂乃果たちは、いつもお前を心配してる。だから穂乃果はお前をあの日カラオケに誘ったんだ。……あの日、お前どう思った?μ'sのみんなを見て、どう思った」
「っ……」
絢瀬は、答えない。
沈黙は許さないとばかりに俺は絢瀬の答えを待つ。
そして、絢瀬はゆっくりと口を開く。
「……楽し、かったわ……。
みんなと毎日笑って、あんな風にいられたら。
……ずっとそう思ってた」
絢瀬の意思を──“聴いた”。
だったら後は。
俺はその背中を押してやるだけ。
「だったら、言えばいいよ、穂乃果に。きっと喜んでお前を歓迎してくれるさ」
「……でも、私みんなに……」
「さっきも言っただろ?みんなお前を心配してるって。気にすることはないさ」
「……」
「まだ何か、迷ってる?」
「……ううん、なんでもないわ」
「じゃあ、μ'sに……」
「──ごめんなさい。やっぱり今はまだ……」
「絢瀬……?」
「……確かに、μ'sには憧れてるわ。でも、やっぱり私、もう少し頑張ってみたいの。自分にできることを探して、自分で解決してみたい…!これは“生徒会長”としてじゃないわ。
──私、“絢瀬絵里”の意思よ」
「絢瀬……」
変わらない、頑固な意思。
でも今の絢瀬が浮かべる笑みは、さっきまでの悩みにふけっていた顔とは違う。
──吹っ切れた、かな?
なら、もう少し待とう。
今は無理して加入させるときじゃない。
「……そっか。わかった、それなら俺もお前を応援するよ」
「ありがと、優真くん。大切なものが何か、わかった気がする」
そう言って笑った絢瀬。
俺もその笑顔を見て、つられて笑った。
▼
「ゆーまっち、えりち」
生徒会の仕事を終え、俺と絢瀬が学校を出ようとしたら、そこには東條と海未とことりちゃんが立っていた。
「お疲れ様、優真くん♪」
「おつかれ、ゆーまっち」
「ありがとね、ことりちゃん。東條も、奴らの面倒見てくれてありがとな」
「いやいや、お互い様や」
「……あれ?穂乃果と一年生組と矢澤は?」
「今日は真姫の家で、勉強合宿をするそうで先に帰りました」
「……やる気があるのは結構だけど……誰が教えるんだよ、穂乃果と矢澤……」
思わずため息を吐く。やっぱりあいつらはアホだ。
「そゆこと!じゃ、久しぶりにみんなで帰ろっか!」
「ん……。確かに久しぶりね」
「絢瀬が最近俺を避けてたからな」
「ちょっ……!違うわよ!」
「ゆーまっち、昼休み一人で教室で泣いてたもんな〜」
「……そうなの?優真くん」
「なわけねーだろが」
そんなバカみたいなやり取りを楽しみつつ、帰路を歩く。久しぶりで、ひどく懐かしく感じる。
絢瀬とことりちゃんと海未が3人で会話しだしたのを見て、東條が俺に声を掛けてきた。
「上手くいったみたいやねっ」
「いや。勧誘はしたけど、参加はしてくれなかった。もう少し自分でやれることを探したいんだと」
「そっか……なら、もう少しやんな」
「あぁ……あと少し、待っててくれ」
「ふふっ、ありがと」
──あぁ、楽しい。そして、心地よくて……暖かい。
そんな快楽に浸かっていた。
そんな日常をぶち壊した
もう二度と聞きたくなかった
あの声
「あれー?朝日クン?」
─────────────!
あまりの驚きに、体が硬直する。
それは横にいた東條も同じだったようで。
「あ!もしかして希ちゃん!?」
なんで、こんなところに
「──中西…………」
「ひかり、ちゃん………………?」
「あはっ♪久しぶりだね、2人とも」
その笑顔は、ドス黒く、歪に見えた。
ここから数話、しばらくオリジナルの話が続きます。あと、この物語の核をなすオリジナルキャラが1人登場します。
そして、この作品の中で1、2を争うほどシリアスな話がやってきます。
そしてこれからの話を読む上で、注目して欲しいところは、登場人物たちの心の動きです。
メンバーの心の葛藤を、できるだけわかりやすく描いていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします。
今回もありがとうございました!
感想評価アドバイス等お待ちしております!