ラブライブ! ─ 背中合わせの2人。─   作:またたね

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なんとか間に合いました!
では後編もどうぞお楽しみください!


Venus of AquaBlue 〜ユキドケ ♯2

33話 Venus of AquaBlue 〜 ユキドケ(後)

 

 

 

 

あれから……希から逃げ出した後、私は空き教室の窓際の一番後ろの席に座り、外の景色を眺めながら黄昏ていた。

 

本当に最低だ。

身勝手な思いで希を傷つけて、そんな希を見て自分が傷ついて……。本当に……自分勝手だ。

 

そんなとき、教室のドアが開いた。

 

 

 

「──────ここにいたのかよ」

 

 

 

「……優真くん」

 

「結構探したんだからな…っと」

 

愚痴を零しながら、優真くんは私の前の席に、壁にもたれかかるように座った。

 

 

「……久しぶりだな、お前と話すのは」

 

「……そう、かしらね」

 

「……あの日はごめんな、絢瀬」

 

「……何が?」

 

「あの日……東條が倒れたあの日…俺は絶対にやっちゃいけなかったことをした。

一番側で支えなくちゃいけなかった君を、俺は突き放した。本当にごめん」

 

優真くんが、机に頭がつきそうなほど頭を下げる。

 

「そんな……顔上げてよ、優真くん…!

悪いのは私なんだから……」

 

「……もう一回チャンスをくれないか。

俺と東條のこと、ちゃんと話したい。

……怖かったんだ、これを知られることで俺たちの関係が変わってしまうんじゃないか、って。

だから俺は絢瀬があえて聞いてこなかった優しさに甘えて、ずっと隠そうとしてた……。

─────でもそれももうやめる。

絢瀬と本当の意味で向き合いたいから。

だから……聞いてくれるか?」

 

優真くんが────私を初めて友達と呼んでくれた彼が、私のために全てを話そうとしてくれている。

 

私の答えは……決まっている。

 

私は彼の言葉に、強く頷いた。

 

 

「ありがとう。……俺と東條は──────」

 

 

それから彼の話を聞いた。

 

中1の頃、2人は仲良しだったこと。

“彼女”が、“彼”の前から何も言わずに姿を消したこと。

 

“彼”が“彼女”を─────好きだったこと。

 

そして“彼”は自分を変えるために─────

 

“彼女”への思いを捨てたこと。

 

「……“東條”と“希”は違う。だから、俺にとって“希”は、大切“だった”人なんだ」

 

「……そんなことがあったのね…」

 

「……でも、“東條”も俺にとって…大切な人になっちゃったよ。

2人と過ごす時間が、楽しすぎて……

もう深く関わるつもりはなかったのに……

 

……こんな気持ちになんか、なりたくなかったのに」

 

その言葉で、何となく察した。

……きっと優真くんは戻り始めているんだ。

 

 

“昔の希”への気持ちが、“今の希”へと重なり始めている──────────。

 

 

そのことが、優真くんを苦しめている。

 

 

でもそれはきっと─────希も同じ。

 

 

何の根拠もないけど、そう思う。

きっと希も優真くんと同じように優真くんを愛して、同じように考えて、同じように思いを捨てて……

同じように、自分の思いに気付き始めてるはず。

だって私が知ってる2人は、自分よりも相手を大切にする、優しい2人だから。

 

そして2人は、互いのそんな思いにも気付き始めている。

 

2年前、再会して互いに思いを捨てた2人が、今また互いに惹かれあっている。

そしてそんなお互いの思いに気付きながらも決して互いに向き合おうとはしない。

それがお互いにとって最良だと知ってるから。

 

周りから見ればいびつで、歪んだ2人の関係。

 

 

 

───────まさに“背中合わせの2人”。

 

 

 

「─────これが俺たちの過去の話だよ」

 

「……話してくれてありがとう」

 

「こちらこそ、聞いてくれてありがとな。少しスッキリしたよ」

 

「……私ずっと勘違いしてた。てっきり2人は付き合ってるんだって…。だから私は邪魔だと思って、2人と距離を……」

 

「ていっ」

 

「あでっ」

 

優真くんが私の頭をコツンと小突く。

 

「────お前バカか。賢いくせに本当バカだな」

 

「な……!そこまで言う必要ある!?」

 

「あのな、わかってないみたいだから言ってやる。

 

─────俺にとって、君は希と同じくらい大切な人だから」

 

「え……?」

 

 

「君は俺が高校に入って一番最初に出来た友達。

 

 

孤独だった俺に自分を変えるきっかけをくれた人

 

 

だから君は─────俺にとって大切な友達だよ」

 

 

「優真、くん……」

 

「……だいたいな、もし仮にアイツと俺が恋人関係だったとしても、2年間ずっと一緒にいるんだぞ?お前が邪魔になんてなるわけないだろ?

……仮にアイツがそんな奴だったなら、俺はそもアイツと付き合ってねぇよ」

 

笑いながら、私の顔を覗く優真くん。

その笑顔を見て、私も自然と笑顔になった。

 

「……そうよね…。ふふっ、あはは……」

 

2人の笑い声が、教室に響く。

そしてだんだん、その笑い声の中に別の声が混じり出す。

 

 

「ははは……うっ…ぐすん……あ、れ……?」

 

 

笑いながら、涙が溢れ出した。

 

「おかしいな……なんで、だろ…ふふっ」

 

拭っても拭っても、涙は止まらない。

その涙とともに、私の中の気持ちも自然と声になって溢れ出した。

 

 

 

「私……ぐすっ……2人に、たくさん…ひどいことして…自分勝手で……ほんと……」

 

 

 

優真くんは、単語だけで綴られた私の中の思いを、無言で聞いてくれていた。

 

そして不意に私の頭の上に優しく手が乗せられた。

 

 

「──────俺は嬉しいよ、絢瀬」

 

 

「嬉……しい……?」

 

「……初めて俺と会った日のこと、覚えてる?」

 

「初めて…会った、日……」

 

「あの時君は、自分の気持ちが相手に伝えられないって言ってたよな?

……そんな君が、今日東條と何をした?

 

 

──────本音をぶつけあえたじゃないか」

 

 

「……!」

 

「いいか絢瀬。君は“変われた”んだ。

あの日俺に言った通り、自分を変えられたんだよ。

現に君は今日東條と…友達と人生で初めて、“ケンカ“をしたんだ」

 

「ケンカ…?」

 

「そう、ケンカ。友達だからこそ、ケンカができるんだ。友達以外とケンカなんてしない。

……それに、初めてなんだ。アイツが俺以外に本当の自分を見せたのは。

……今日初めて、俺たち3人はやっと“本当の友達”になれたんだ。

だから──────もう遠慮なんてしないでくれ。

もっと甘えていいんだよ、俺たちに。

 

 

何回でも言ってやる

 

 

お前は一人じゃねぇよ」

 

 

最後だけ力を込めて、優真くんは私に言う。

その瞳は、私が彼から目を背けることを許さない。

 

 

「……でも私は2人に……」

 

「……なぁ絢瀬。友達とケンカして、自分が悪かったって思う時に、どうにかなる魔法の言葉知ってるか?」

 

「…魔法の……言葉……?」

 

 

 

「─────“ごめんなさい”だ」

 

 

 

「……からかってるの?」

 

「本気だよ。

 

……間違えたら、謝ればいいんだよ。

何回だって、謝ればいいんだ。

 

それで許し合えるのが──────

 

────────“友達”なんだから」

 

 

すると彼は突然────────

 

私の体を優しく抱き寄せ、自分の胸に私の顔を当てる。

 

「ちょっと……優真、くん!?」

 

その突然の行動で、私の頬が一気に紅潮する。

そして私は、一つの違和感に気づく。

 

「これは……?」

 

彼の右胸は、僅かに……しかし確かに湿っていた。

 

「──────ここには希のごめんなさいと、本音と……思いが込もってる。

……希が、君を思って流した涙だ」

 

希が……私のために。

 

 

 

「うぅ……」

 

 

こんなに

 

 

「ううぅっ…………」

 

 

こんなに優しい人たちを

 

 

「うわぁぁ……」

 

 

私は今まで

 

 

 

「──────ごめんなさい……優真くん…希……本当にごめんなさぁい……うわぁぁん……」

 

 

 

涙が止まらない。

2人の優しさが、私の雪で凍った心を溶かしていく。

溶けていく雪が、涙となって私の瞳から溢れ出していく。

 

「……泣いたままでいいから聞いてくれ、絢瀬。

────────改めて約束するよ。

 

君が辛い時俺は絶対君の力になる

 

そのために、俺にできることならなんだってしてやるよ────────────

 

 

────────友達、だからな」

 

 

「……うん…ぐすっ…うん、ありがとぅ……」

 

2年ぶりに立てられた、新たな約束。

それはあの時と同じようで、少し違う。

だって私たちは今日、“本当の友達”になれたから。

今私の瞳から流れるのは───────

“ごめんなさい”と“ありがとう”の涙。

その2つの感情と、2人の優しさが雪で凍った私の心を溶かしてくれた。

 

その涙が止まるまで、優真くんは私の頭を優しく撫でていてくれた。

 

 

 

 

 

 

しばらく時間がたち、私の涙は止まった。

今は壁にもたれかかって座っている優真くんの肩に、私が頭をちょこんと乗せている状態。

そんな状態のまま、ゆっくりと時間が流れていく。

 

今日私たちは、本当の友達になれた。

そして───────自覚した。

 

あの夜のモヤモヤの答えを。

……自分の気持ちを。

 

 

少し───────勇気を出してみようかな

 

 

 

「────────ねぇ、“優真”」

 

 

 

私の呼びかけに、彼の肩がビクっと反応した。

先ほどまでと変わった呼ばれ方に驚いたのだろうか。

ややあって、彼も口を開く。

 

 

 

「────────どうした?“絵里”」

 

 

 

彼も私を名前で呼んでくれた。

その事実が私の頬を赤くさせる。

 

「─────私のやりたいこと、聞いてくれる?」

 

「もちろんだ。

────絵里、君の“本当にやりたいこと”は?」

 

もう迷わない

 

私の…私のやりたいことは

 

そして私は頭を上げ彼と正面から向き合い

 

口を開く

 

 

 

「───────μ'sに入りたい。

 

μ'sに入って……みんなとアイドルをやりたいの。

 

そして、みんなで廃校を阻止したい。

 

 

これが私のやりたいこと……私の夢よ」

 

 

 

言えた……やっと。

優真くん……いや、“優真”は私の夢を聞いて、確かに笑った。

 

「素敵な夢だ。絵里の夢、絶対に叶えよう。

そのために、俺も全力で君を応援する」

 

「うん……!ありがとう」

 

私も彼に笑顔を返す。

 

 

その時、教室のドアが開いた。

 

 

「────────絵里先輩!」

 

「……貴女達…」

 

入ってきたのは、μ'sメンバーと希だった。

 

「絵里先輩…さっきは突然あんなこと言ってごめんなさい。でもやっぱり、私たちには絵里先輩の力が必要なんです!だから……」

 

「……待って、穂乃果」

 

穂乃果の言葉を遮って、私は椅子から立ち上がり、穂乃果と向き合う。

 

「穂乃果……“生徒会長として”お願いがあるの。

……オープンキャンパスでライブを行って、廃校阻止への力になってくれないかしら」

 

「おいっ…!」

 

優真が驚いて静止の声を上げる。

 

……大丈夫、もうさっきまでの私とは違うから。

 

 

 

「─────そして私を……μ'sのメンバーにして欲しいの。

 

私も貴女達と一緒に、アイドルをやりたい……!

 

貴女達と、廃校を阻止したいの…!

 

……これは“絢瀬絵里”としてのお願いよ。

 

……お願いします」

 

 

 

私は頭を下げた。

 

自分がしてきたことはわかってる。

穂乃果はああ言ってくれたけれど、他のメンバーは私を認めてくれないかもしれない。

でも……それでも私は……!

 

 

 

そんな私の目の前に差し出された1つの手

 

 

顔を上げるとそこにはみんなのの笑顔があった

 

 

優真と希も、私に笑顔を向けてくれている。

 

 

 

「……みんな…」

 

「─────こちらこそよろしくお願いします!」

 

穂乃果がさらににぱっとはにかむ。

それはまさに太陽のような笑顔で。

 

私は差し出されたその手を……ゆっくりとった。

 

そして穂乃果は、少しだけ瞳を潤ませて言った。

 

 

「───────ずっと待ってました、絵里先輩。

 

アイドルを始めたあの日から!」

 

「……!」

 

 

 

『スクールアイドルです!』

 

穂乃果が初めてそれを提案してきた日を思い出す。

私はあの日あの子達を認められなくて……

それからずっときつく当たって……

それなのに穂乃果は……ずっと待ってくれていた。

 

 

私の道と、自分たちの道が交わるこの日を。

 

 

「──────────ありがとう」

 

私の頬を、涙が伝った。

さっきあれだけ泣いたのに、まだ泣けるのかと自分でも驚きだ。

そしてそのままの勢いで、私は希へ言いたかったことを告げる。

 

「希…さっきはごめんなさい。そしてありがとう。

貴女のおかげで、勇気が出たわ」

 

「ええんよ……ウチらは“友達”なんやから。

……ウチの方こそ、ごめんね?」

 

希と…大切な友達と仲直りできた。

それが嬉しくて、私はまた泣いた。

 

あぁ、今日はたくさん泣いたなぁ……。

今までこんなに我慢してたんだ。

でも、いつまでも泣いてはいられない。

 

私は涙を拭い、皆に向けて言う。

 

 

「─────これからよろしくお願いします!」

 

 

「よーし!これで絵里先輩を入れて、8人!」

 

皆が私の加入を快く受け入れ、盛り上がってくれている。

それを嬉しいような、寂しいような視線で見つめるのは、優真と希の2人。

 

───安心して。このままじゃ終わらせないから。

 

 

「─────いいえ、9人よ」

 

穂乃果達の盛り上がりを遮るように、私は告げる。

 

「え……?9人…?」

 

 

「─────希、貴女も一緒に入るのよ」

 

ええっ!と声が上がる。

何より一番驚いているのは名前を呼ばれた本人だ。

 

「……ウチが?」

 

「そうよ。私を一人にしないんでしょう?

もちろん一緒に入ってくれるわよね?」

 

そう言って私は希にウインクをした。

 

こんな言い方をしたが、私は知っている。

希が、μ'sに参加したがっていること。

だから素直になれない希が、μ'sに入りやすくなるように私はあんな意地悪な言い方をした。

これは私の……希への恩返し。

きっと希は、すぐに気づいてしまうけど。

 

 

「えりち……ありがとね……。

 

───うん。ウチもみんなとアイドルやりたいな!

 

 

だから……ウチもメンバーにしてくれる?」

 

 

希の言葉に、みんなが笑顔になる。

そしてμ'sのみんなは、私と希へ向けて、声を合わせ───────

 

 

 

『─────μ'sへようこそ!』

 

 

 

「やったー!9人だー!揃ったね、揃ったね!」

 

穂乃果を筆頭に、メンバー各々が嬉しそうに声を上げる。

私も希もその中に混じって、一緒に喜んだ。

 

そして彼も、嬉しそうに私たちがはしゃぐ様子を眺めていた。

 

「これでμ'sを作ってくれた人に、恩返しができる!

みんなで伝えよう!ファンに、来てくれた中学生に、私たちの全力を!思いを!」

 

穂乃果の言葉に皆がおおー!と返事を返した。

 

「さぁ、そうと決まれば練習ですよ。時間もあまりありませんし。……絵里先輩、改めて指導宜しくお願いします」

 

「えぇ、もちろんよ。……じゃあ、先に屋上に行って待ってるから」

 

……ちょっと最後に……イタズラしてみようかな。

 

 

 

 

「さっきはイロイロありがとね、優真っ♡」

 

 

 

私の言葉に、教室の空気が一気に冷え上がる。

 

そしてメンバー……特に凛、にこ、ことりの3人が優真に冷ややかな視線を送る。

 

 

 

「─────優兄ィ」

 

「あんた、絵里と─────」

 

「─────何してたんですか?♪」

 

 

 

あまりの威圧感に、優真も震え上がっている。

 

「なになに!?優真先輩何したんですか!?」

 

穂乃果も何故か瞳をキラキラさせて優真に食いつく。

 

そして残りの4人は、その状況を受けて苦笑いを浮かべていた。

 

「ちょ……待て、誤解だ!おい絵里!てめぇ!」

 

助けを求める彼に、私は舌をだして意地悪く応えた。

 

そして私は、一足先に教室の外へと踏みだした。

 

それはまるで今までの自分と決別する一歩のようだった。

 

 

 

ありがとう、優真

 

 

 

 

私の──────────初恋のヒト。

 

 

 

 

 

私は小さく笑みを浮かべると、屋上へ向けて歩きだした。

 

 




ついに……ついに絵里と希が加入しました!
長かったです…作者が今一番安心しています笑
やっと9人揃ったμ'sが描けると思うと、とても嬉しいです!
ここまで付いてきてくれた方、本当にありがとうございます!

……あ、まだこの小説は全然終わりませんよ?笑
三章はあと一話で完結です。
その後はしばらくコメディ調の話が続きます!
今回もありがとうございました!
感想評価アドバイス等お待ちしております!
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