続きは近日中に必ず!
44話【Days.2-3】恐怖!夜の肝試し!
「肝試しだぜ!!」
「肝試し……?」
何やらサトシはえらく乗り気だな……。
サトシが嬉々として俺たちに語る。
「この別荘の裏の森に、暗い
そこにカードが置いてある。それを持って帰ってくるっていう単純なゲームだ」
「……意味あるのか?」
「ある!」
「……聞いてもいいかしら…?」
「盛り上がる!」
「…………」
俺を含め、なんとも言えない表情を浮かべるμ'sメンバー。
──────ある数名を除いて。
「面白そう!やろうよ!肝試し!」
「凛もやりたいにゃ!」
穂乃果と凛が瞳をキラキラとさせてサトシの意見に賛同した。
「肝試しって……」
「ちょ、ちょっと怖いかも……」
ことりちゃんや花陽は少し怯えているようだ。
まぁだいぶ暗いし、正直女の子には辛いかもな。
「やっぱりみんな女の子だし、無理じゃないか?」
「んー……じゃあ、ペアでやるのはどうだ?」
「どんだけ肝試ししたいんだよ……俺はいいけどみんなは」
「やります」「やるわ」「やるわよ」「やるにゃ」
……え、約4名顔がガチなんだけど。
ていうかさっきことりちゃん思いっきり嫌がってたよね!?
しかも絵里、無理すんなって!お前は暗所恐怖症だろ!
「……じゃあ肝試しやりたい人…」
念のため多数決を取る。
手が上がったのは、7本。
穂乃果、凛、ことりちゃん、絵里、矢澤、希、そしてサトシ。
「……東條も乗り気なのか?」
「うん、みんなの怖がる顔を見るのも面白いかなーってね♪」
「……本当いい性格してんな、お前」
「褒め言葉として受け取っておくよーっ♪」
「はぁ……んじゃやろうか、肝試し。3人もそれでいい?」
「……うぅ…頑張るっ」
「あまり乗り気ではありませんが……皆がやるというのなら…」
「私は別にどっちでも」
花陽、海未、真姫も賛成してくれた。
……俺もあんまり乗り気じゃないけど、頑張るか。
……あ、俺は別に暗いのとかお化けは苦手じゃないよ?虫はダメだけど。
「んじゃ、ペアを決めようぜ!ユーマ、そこのペン取って」
「ん」
近くにあった黒いマジックをサトシに渡すと、
それと割り箸を使って簡単なくじを作った。そしてそれをコップに挿し、簡易くじ引き箱の完成だ。
「数字が一緒だった人がペアな!俺ら合計11人だから1つだけ3つ数字書いたから!」
……先ほどからμ'sメンバーの数人にただならぬ空気が漂っているんだが……。
「狙うは一点……」
「絶対に負けません…!」
「勝ち取ってみせるにゃ……!」
「神様どうか私に力を……!」
……たかがくじ引き、なんだけど。
そして各々がくじを引き────────
▼
「ここの森の奥だぜ!歩いて片道10分くらいでひたすらまっすぐ!それで着くからみんな迷うなよ!目的地に着いたら全員揃うまでそこで待機な!」
別荘を出て裏に回ると、確かにそこには1つだけ森が大きく口を開けた空間があった。
「……なぁ真姫」
「何?」
「さっきアイツ祠にカードが置いてあるって言ってたけど……いつ置きに行ったんだ?」
「……そういえば悟志、バーベキューの途中で家の電話を使って続用人と何か話してたわね……」
「……召使いさんにやらせたってわけか、自分の家でもないのに…どんだけ肝試ししたかったんだ……」
「まぁ悟志も私の家じゃ我が子のように可愛がられてたけど。……それより優真さん。
本当にこのペアで大丈夫なの?」
「……た、ぶん」
後ろから突き刺すような視線を感じるけど。
「……どうすれば助かるか教えてくれよ」
「知らない。じゃあ私1番だから。……頑張ってね」
「ドライすぎるよ真姫さぁん……」
「じゃあ1番の真姫と穂乃果さん、準備よろしくだぜ!」
「はーい!頑張ろうね、真姫ちゃんっ!」
「ちょ、そんなにひっつかないでっ……」
真姫と穂乃果が腕を組みながら森の中へと歩いて行った。因みに1組に1つずつ懐中電灯が支給されている。
……この肝試し、果たして無事に終わるのか…?
▼▽▼
「結構暗いねー!」
「……そうね」
穂乃果と真姫は腕組みから手繋ぎに変えて暗い森の中を歩いていた。
「あ、私暗いのは大丈夫なんだけど、幽霊とかは苦手なんだよねー……だから真姫ちゃん!出てきたときはよろしくね!」
「ええっ!?む、無理に決まってるでしょ!?幽霊なんて!」
「…………え、冗談だったんだけど……もしかして真姫ちゃん、幽霊信じてる?」
「当たり前じゃない!小さい頃襲われたことだってあるんだから!」
「襲われた?」
「……家にいたのよ、白くて、傘みたいな幽霊が……!私が夜更かししようとするといっつも部屋に入ってきて『早く寝ないと食べちゃうぞー』って言うの。だから私は小さい頃夜更かしをしたことが無かったわ」
「……ふふっ…あははははは!」
「な、何笑ってるのよ!?本当なんだからね!?」
「だ、だって……はははははは!」
穂乃果は気づいていた。
それはただ“親が布団のシーツを被って驚かしに来ただけ”だと。それを本当に怯えたように語る真姫の様子が面白くて穂乃果は笑ったのだった。
「真姫ちゃん可愛いっ!」
「わぁっ、ちょっと!絶対バカにしてるでしょ!」
「んーん、真姫ちゃん可愛いなぁーって!」
「も、もう!穂乃果っ!」
ことあるごとに自分に抱きついてくる穂乃果を鬱陶しく思う一方で……恥ずかしくも嬉しくも思う真姫は複雑な心境のまま穂乃果のなすがままにされていた。
そんな状態でしばらく歩いていると、1つの場所へと行き着いた。
「……別れ道?」
「悟志さんは一本道って言ってたよね?……あ、あそこ立て札があるよ」
2人は怪訝に思いながらも、その立て札の内容を覗いた。
『左に祠あり。左だぞ?絶対に左だからな!』
「……わかりにくいっ」
「そういうフリかな?右に行けっていうフリなのかな?」
真姫は不機嫌そうに、穂乃果は苦笑いで各々の感想を述べた。
「……どうしよっか、真姫ちゃん」
「……左ね。おとなしくこの看板に従いましょう」
「わかった、じゃあしゅっぱーつ!」
「だから……引っ張らないでってば!」
またもや穂乃果にされるがまま、真姫は左の方の道へと歩き出した。
▼
「うぅ……怖いよ凛ちゃぁん……にこちゃぁん……」
「……………………」
「……………………」
「なんで何も言ってくれないのぉ……!?」
にこ、凛、花陽の3人は花陽以外ほぼ無言でただただ歩き続けていた。
理由は簡単、くじの結果だ。
「……にこちゃん」
「……何よ、凛」
「やっぱり納得いかないにゃ」
「……我慢しなさい。あれも運命よ」
「なんで!?にこちゃんだって、納得いかないでしょ!?」
「うるさいわね!!なんとか我慢してるんだから話しかけないでっ!!」
「あわわわ……け、喧嘩はやめようよ2人とm」
「「花陽(かよちん)は黙ってて!」」
「誰か助けてぇ〜……」
ただでさえ恐怖で震えそうなのに、2人に喧嘩されるとますます怖くなる花陽だった。
「はぁ……こんなこと話しても仕方ないわ。道も暗いし、何か楽しい話でもしましょう」
「楽しい話かにゃ?」
「そう。何かない?」
「そんな急に言われても……ってあれ?」
そして3人は、穂乃果たちも辿り着いた別れ道のところへと到着した。
「別れ道?」
「悟志くんは一本道って言ってたよね……?」
「どうなってるのよまったく。なになに……?
『左に祠あり。左だぞ?絶対に左だからな!』
ですって。どうする?」
「どう考えても怪しいにゃ……」
「うぅ……助けてぇ……」
「もうかよちん泣かないの!うーん……じゃあこうしよ!
にこちゃんが右。凛とかよちんが左ってことで!」
「ちょっと!!なんでにこだけ1人なのよ!!」
「だってにこちゃん、さっきから怖くなさそうだし。大丈夫でしょ?」
するとにこは突然、雰囲気を変え──────
「えぇ〜、にこぉ、こんな暗いところ1人で歩けない〜っ♡」
「……ちょっと寒くないかにゃ?」
「ぬぁんでよ!」
冷ややかな目をしてにこを見つめる凛に、にこが反駁した。
「守りたくなるでしょ!!」
「ならないにゃ。どっちかっていうと────」
「うぅ……凛ちゃぁん…怖いよぉ……」
「こっちの方がよっぽど守ってあげたくなるにゃ」
「……悔しいけど同感ね」
涙目+上目遣いで懇願する花陽はまさしく“守ってあげたくなる存在”だった。
「……仕方ないわ。みんなで左に行きましょ。迷うときはみんな揃って迷う方がまだマシだわ」
「賛成にゃ!ほらかよちん、あと少し頑張ろっ?」
「うん……頑張るっ」
そして3人は左の道を進んでいった。
▼
「やはり暗いですね……」
「うん……ちょっと怖いな…海未ちゃんはこういうの平気なの⁇」
「平気、と言えば嘘になりますが……恐れおののいて動けなくなるほどではありませんね。
ことりは昔からこういうのはあまり得意ではありませんでしたね」
「うん……穂乃果ちゃんはこういうのは大丈夫だったけどね」
海未、ことりの幼馴染コンビは昔話をしながら暗い森の中を歩いていた。
一見どちらも何も気にしていないように見えるが……ことりの表情は普段より少し暗い。
その微妙な変化に、海未だからこそ気づいた。
「ことり?何かありましたか?」
「えっ!?な、なんで⁇」
「いえ、普段より元気がないように見えたので……」
「……ううん、何もないよ…⁇」
「……あなたが嘘をついていることくらい、わかりますよ。……まぁあらかた想像はつきますが」
「えっ……⁇」
海未の言葉に、ことりの表情は少し驚愕のそれに変わる。
「─────優真先輩のこと、ですね?」
「…………」
その無言が肯定だということを示していた。
「……ひとつ聞きたいことがあります」
「……何?」
「─────ことりは優真先輩のことが好きなのですか?」
海未は前から──────それこそ音ノ木坂に入る前からずっと思っていたことがあった。
ことりが優真のことについて話すときはいつも本当に嬉しそうで。もしかすると……否、もしかしないでも……ことりはその人に恋をしているのではないかと。
ずっと思っていたこと。それを今初めて海未は口にした。
そしてことりは、答える。
「─────────うん、好きだよ。
音ノ木坂に入る前から……私を助けてくれたあの日から、ずっと」
ことりの答えは、海未の予想通りのものだった。
そしてことりはこう続ける。
「……優真くんを追いかけて音ノ木坂に入った、って言っても嘘にならないんだ。最初はただお母さんが理事長をしてるから、ってことの方が大きかったんだけど……優真くんと会ってから初めて音ノ木坂に入りたいって心から思えたの。
だから優真くんへの思いは負けないつもり。
──────μ'sの他の誰にも」
ことりのその言葉に、海未は明確な意思を感じ取った。“μ'sの他の誰にも”。その言葉にはことりの覚悟が現れていた。
優真へと思いを寄せるメンバー。
海未にはことり以外にも数人、確信はないものの心当たりはあった。
まずは凛。それから絵里。もしかするとにこもそうなのかもしれない。
そして────────希。
少なくともこの4人は優真に対して、恋愛感情かどうかはわからないが特別な感情を抱いていることは間違いない。
この中から優真と結ばれることがあるとするなら……ことりであって欲しいというのが海未の幼馴染としての思い。
しかし海未は知っているのだ。
優真と希の過去の話を。
それ故に、無責任にことりを応援することができない。だから────────
「……そうですか。頑張ってください。私はことりの味方ですよ?」
こんなありきたりな答えしか返せなかった。
「……うん、ありがとうね、海未ちゃん!
……くじの結果があんな風だったから、少し気になっちゃって」
「気持ちはわかります。しかし今更それを気にしても仕方ありませんよ?」
「そうだよね。うん!もう気にするのはやめるっ!……ってあれ?」
「? どうしましたか……って」
話をしているうちに、2人もあの別れ道へと着いた。
「別れ道?悟志くんは一本道って言ってたよね?」
「どういうことでしょう……あ、立て札がありますね。
『左に祠あり。左だぞ?絶対に左だからな!』
だそうですが……」
「うーん、怪しいね……どうする?海未ちゃん」
「──────右です。右以外ありえません」
「……根拠を聞いても、いい…?」
「人間、未知の道を選ぶときには無意識に左の道を選ぶ傾向があるのです!だからこういう時は右に行きましょう!」
「海未ちゃんってク○ピカ理論信者だったんだ……」
「こういう時こそクラ○カ理論を使うとき!さぁ行きますよことり!」
「あぁ!待ってよ海未ちゃんっ!」
意気揚々と右を選択した海未に、ことりが遅れて着いて行った。
▼
「うぅ……どれくらい進んだ……?」
「まだ半分もいってないぜ……だ、大丈夫だぜ絵里さん!俺があなたをお守りするぜ!」
悟志、絵里の2人は先頭に悟志、その両肩を絵里が持って歩くというフォームで暗い森を進んでいた。絵里は元来の暗所恐怖症。最初は意地を張って普通に歩いていたのだが、肝試しの暗さが耐えられるわけがなく今は目を瞑って完全に悟志に道を任せている。
「え、絵里さん暗いのダメなのか?」
「……少、し」
「少しっていう怖がり具合じゃないぜ……」
普段では見られないそのギャップを微笑ましく思いながらも、悟志はある1つの懸念事項を抱えていた。
(絵里さんのいる手前絶対こんなこと言えないけど……怖ぇよぉおおおおおお!!!!)
そう、この剛力悟志という男……見かけによらず大の怖がりなのである。皆で思い出を作るために肝試しという提案をしたのだが……このとき悟志は自分がどうするのかを考えていなかったのだ。
「悟志くん……震えてる……?」
「な、何言ってるんだぜ!絵里さんが震えてるんじゃないのか?」
「そ、そうよね……頼りにしてるわ、悟志くん」
(あぁあああああ!!そんな目で見ないでくれええええええ!!)
お互いに恐怖を抱えながら歩いていたところ、2人は例の場所へとたどり着く。
「あれ……?おかしいな」
「悟志くん?どうしたの……?」
「いや、真姫の家の人からひたすら一本道だって聞いてたんだけど……別れ道があるんだ」
「そんな…!あ、でも看板があるわね。どれどれ…
『左に祠あり。左だぞ?絶対に左だからな!』
ですって。……これ、悟志くんが……?」
「ち、違うぜ!俺も別れ道があるなんて知らなかった。……どうする?」
「……左、にいきましょう。とりあえず看板に従っておいたほうがいいんじゃないかしら」
「そうだな。よし、なら左にいこうぜ!」
「ええ。……じゃあ肩をお借りします……」
そして絵里は先ほどのフォームへと戻る。
「……ずっと思ってたんだけど、何で肝試しやりたがったんだ?そんなに怖いなら手上げなきゃよかったのに」
「えっ!?そ、それは……」
ふと悟志が疑問に思って後ろの絵里を振り返ると
───────絵里に浮かんでいた表情は“恋する乙女”のそれだった。
「……ははーん」
「な、なに……?」
「わかったわかった。俺は絵里さんを応援するぜ!」
「ちょ、悟志くんっ!?」
「やー、相手が俺でごめんな。本当は違う人がよかったんだろ?」
「ま、待って!や、やめてよ!」
「ははは!絵里さん顔真っ赤だぜ!」
「もう!悟志くんっ!!」
普段は見せない反応をする絵里が面白くて、悟志は絵里をからかった。
一通り満足した後、悟志は改めて口を開いた。
「あー満足した。ごめんごめん。
……まぁ、気になるよな。ユーマのパートナーはあの人だし」
「……うん。って、悟志くん…貴方もしかして…」
「……ユーマの過去については少しだけ知ってる」
少しだけ、というのは嘘だが。
その言葉に絵里は大きく目を見開いた。
「じゃあ、優真たちに何があったのかも……?」
「大筋は。でも詳しいところは俺も知らないぜ」
「そう、なんだ……」
「へへっ、まぁ暗いのは森の中だけにして!
さっさと祠まで歩こうぜ!」
「……えぇ、そうね。……じゃあまた肩を……」
「……そのフォームは安定なのな」
例のフォームを取りながら、2人は祠を目指して左の道を進んでいった。
▼▽▼
「……………………」
「……………………」
無言。響くのは俺たちの足音だけ。
ペアが決まったとき、どうしようと思ってしまったのは内緒だ。
俺のペアは────────希だった。
表面上は平静を装ってはいたものの、内心は動揺しまくりだった。……ペアが決まったときの周囲の空気も相まって。
明らかに不満げな視線が俺と希に集中したときのあの居辛さはなんとも形容し難いものだった。
朝に自分の想いを自覚したこともあり、俺はなんとも気まずい思いで希の隣を歩いている。
歩き出してから2分ほど経過して会話は全くなし。
手を繋いだりすることはおろか、互いに少し距離を開けて歩いている状態だ。
このままでは埒があかないと思い、俺は口を開く。
「……暗い、な」
「……うん…」
はい、会話終了。
キャッチボールは一回で終わってしまった。
…………勇気出して話しかけたんだからもう少し話を広げてくれませんかねぇ!?
どうしようかと頭を悩ませていたそのとき。
──────ガササッ!
横の藪から大きな音がした。
「きゃああぁっ!?」
希が大きな声を上げて俺の腕を握る。
その予想外の行動に俺の心拍は一気に跳ね上がる。
「……なぁ」
「あっ……ご、ごめんっ……」
「いや、いいんだけどさ。……お前もしかして……
怖いの苦手なの?」
「さ、さぁ……なんのことやらわからんなぁ〜……」
「うん、その反応で確信したわ。ならどうして肝試しやりたいって挙手したんだよ。それにさっきどうしてあんなこと言ったんだ?」
────────『うん、みんなの怖がる顔を見るのも面白いかなーってね♪』
「普通にそんな余裕なさそうだけど」
「えっ?い、いや、それは……その……」
あれ、突然顔赤くなった。どうしたんだろう。
「東條?」
「──────────女の子なんだから怖いのは当たり前でしょ!?」
「開き直った!?しかも逆ギレ!?」
「うるさーい!うるさいうるさいうるさーい!」
何やら叫びながらパコパコと俺の胸を両手で叩く。
「ちょ、東條っ、落ち着けって!」
「────────東條じゃないっ!」
「えっ……?」
「────────“希”って……呼んでよ……」
─────いちいち反則すぎるんだよ。
ほんと、心臓に悪い。
「───────わかったよ……希」
俺が少し照れながらも名前を呼ぶと、“希”は嬉しそうに笑った。そしてスタスタと前を歩き出す。
「ありがと、優真くん♪」
「はぁ……そんなにポンポン性格変えてていいのかよ。いつかみんなの前でボロが出ても知らねぇぞ?」
希は俺の言葉に足を止め…首だけ後ろに振り返る。
「いいでしょ?
──────キミと二人きりの時くらい」
……なんか今日、卑怯すぎる。
こんなの……ズルすぎだ。
さっきから希にやられっぱなしだ。
───────ちょっと仕返ししてやるか。
「ほら行くぞ───────希」
「えっ……?きゃあっ!?」
俺は希の細い腕を優しく握り、森の中を再び歩き出した。
「ちょ、優真くんっ!?」
「嫌だったら振り払っていい。そんなに力入れてないから」
「…………嫌じゃ、ない、よ…」
振り返って希の顔を見たいのは山々だが、生憎それはできそうにない。……俺の顔もきっと真っ赤だから。
そのまましばらく歩き続けていると、俺たちはとある場所へと着いた。
「あれ……?」
「別れ道……?」
サトシは一本道って言ってたはずなんだけど……どういうことだろうか。俺は希の手を離し、周りを見回してみたが、参考になるものは何もなかった。
「あ、優真くん。ここに立て札が刺さってるよ?なになに……
『左に祠あり。左だぞ?絶対に左だからな!』
だって。……これ、悟志くんかな?」
「……っぽいな。でもあいつわざわざこんなことするかな……?」
「うーん、後で聞いてみよっか。それよりどっちに進む?」
「……俺は左だと思う。希は?」
「私も左。じゃあそっちにしよっか」
「よし、じゃあ行こうぜ」
俺はそう言って左の道へと歩き出そうとする。
しかし希はそこから動かない。
「希?」
「───────腕」
「ん?」
「さっきみたいに────────お願い」
「………………おう」
ほんっと、調子狂う。
先ほどの腕繋ぎの状態のまま、俺たちは左の道へと歩き出した。
、
希、可愛いなぁ……(ほっこり)
希があそこで挙手した理由、皆さんはわかりましたでしょうか。
……おそらく想像通りですよ。
さて、新たに評価をくださった流星@睡眠不足さん、どうもありがとうございました!
評価文と相まって、本当に励みになりました。
これからもどうぞよろしくお願いします!
そしてどうやら日間ランキングの方にもお邪魔させていただいてるみたいで……!
本当にありがとうございます!これも閲覧していただいている皆様のおかげです!
これからもどうぞこの作品の応援をよろしくお願いします!
私も精一杯皆様のご期待に応えていくつもりです!
長くなりましたが今回もありがとうございました!
感想評価アドバイスお気に入り等お待ちしております!