次の日の放課後、俺は希と話すために下駄箱の外で待っていた。
教室の中じゃ人が多すぎてゆっくり話なんてできないからな。
会って、何を話すのか。
決まっている。どうして“あんなこと”をしたのか、だ。
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季節は過ぎ、希と出会った春から、秋になった。
あれから希は友達も増え、遊びに行くことが増えた。
希と接する時間が減ったのは正直少し寂しかったけど、希が笑顔になる時間が増えるなら、俺はそれでよかった。
そして、さらに時は進んで、冬になった。
12月。世間はクリスマスやら大晦日やらで忙しくなる。
そんな12月の半ばに入ったある日。
「優真くんっ」
「ん、希っ。どうしたの?」
「あのねあのね、その……24日の夜、空いてるかな……?」
「あー、その日は友達の家でパーティーがあってそこに行くんだよねー。どうしたの?」
「そっか……少しだけでも、ダメかな?本当にすぐ終わるから!」
「ん、それなら大丈夫っ」
「やった!ありがとう!」
俺が承諾を出すと、希は本当に嬉しそうに笑った。
「なにするの?」
「まだ内緒っ!さ、一緒帰ろ!」
「あれ、今日は一緒帰れるんだ。中西たちと遊び行かないの?」
「……うん、今日はね。さ!帰ろ!」
ん?なんだ?
今の一瞬の間……
気になるけど、まぁいいか。久々に希と帰れるんだし。
そうして俺たちは教室を後にした。
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そして24日。今年は学校が24日まであり、明日からが冬休みだ。
「朝日クーン」
教室を出ようとすると、クラスの女子に声をかけられた。
「ん、中西。何?」
「今日の夜、希ちゃんと会うんでしょ?」
「え、なんで知ってんの?」
「本人から聞いたのよっ。頑張ってね!」
ああ、希と仲がいいもんな。
「あ!これ本人から言われたんだけど、集合場所、公園じゃなくて、学校に変えてくれだって!」
中西がひそひそ声で俺に告げる。
「ん、わかった。ありがとね」
「はーい♪ 頑張ってね」
そうして俺は教室を後にした。
この後起こる悲劇を知ることもなく。
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「朝日くん?」
ふと自分の名前を呼ばれて、俺は意識を現実に戻す。
俺の名前を呼んだのは昨日友達になった、
「おお、絢瀬…。っ…」
絢瀬と、希だった。
「こんなところで何してるの?」
「あぁ、いや、ちょっとな……」
「ふぅん…あ、よかったら一緒に帰らない?希のことも紹介したいし…いいでしょ?希?」
「うん、ええよ。でもえりち、ちょっと先に行っててもらってもええ?少し、この人と話したいことがあるんよ」
……!
「あら?もう知り合いなの?ええ、わかったわ。ゆっくりいいわよ。校門でまってるから」
「ありがとな、えりち」
絢瀬は俺と希に笑顔を向けると、校門へと歩き出した。
こうして俺と希は二人きりになった。
「……帰ってきてたんだな、希」
「うん……優真くんが、この学校に来るなんて思わなかったよ」
そして俺たちは語り出す。
お互いの止まったままの時を動かすかのように。
「しかし……なんだ?さっきの喋り方…関西弁のマネゴトか?」
「真似事じゃないよ!……あれが今の私の素だよ」
嘘だ。希が嘘をつく時、一回左を向いてから作り笑顔をすることを俺は知っている。
……俺にそんなの通用しないこと、分かってるくせに。
しかし俺は、それを言及することはしなかった。
「ふぅん……そっか」
「優真くんこそ、喋り方変わったよ。
少し大人びたっていうか…」
また嘘をついた。言えよ、冷めてるって。
自分でもわかってるんだよ。
でも…俺にはもう、あんな風には…
「…いろいろあったんだよ。あれから」
「なるほど……」
俺は本題を切り出す。
「なぁ、希。聞かせてくれないか。
────どうしてあの日……来てくれなかったんだ。
24日の夜…
どうして何も言わずに行ったんだよ…!希!」
その言葉を聞いて希は、目を見開いた。
その顔には、驚き、後悔、恐怖…いろいろなものが混ざり合っているように見えた。
そしてしばらく目を閉じ、考え込んでいるように見えた。
「ねぇ優真くん……
少し、昔の話、しない?」
本文、短いでしょうか、長いでしょうか。
読んでくれる方、感想に書いてくれると嬉しいですっ
今回も、ありがとうございました!