……え?遅いだろって?はい、遅くなりまして申し訳ありません。
1月のアレも終わり、少し余裕が出来たので一気に書き上げてみました!
というわけで、花陽ちゃん誕生日おめでとうございます!
……え?1日間に合ってねぇぞって?はい、遅くなりまして申し訳ありません。(2回目)
言い訳はあとがきでさせていただくとして注意書きを。
・この話は番外編です。本編との関わりはございません。
・作者は花陽ちゃんが大好きです。
では久々に書いたので少々緊張しますが…どうぞ私の花陽への思いを、どうぞ!
【小泉花陽生誕記念 特別話】Venus of Green Sp.〜ハナコトバ
1月17日。今日は私、小泉花陽の誕生日です。
……誕生日、なんだけど……。
「けほっ、けほっ……」
そう、絶賛風邪を引いちゃってます。
うぅ……せっかくの誕生日なのに誰にも会えないなんて……熱はもう下がったんだけど、まだ少し身体がだるいのでもう1日家でおとなしくすることになっています。
時刻は午後4時。μ'sのみんなは今頃午後練習に精を出しているはず。もし風邪を引いてなかったら部活に行ってみんなに祝われたりしたのかな……?まぁ自業自得だからなんとも言えないのだけれど。
そんな時でした。
『花陽ー!起きてるー?』
お母さんがドアの外から私に呼びかける。
「起きてるよー」
『あ、よかったよかった!さぁ入って入って!』
え?“入って”?
そして私の部屋のドアが開く。そこに立っていたのはお母さんと─────
「……お邪魔します」
「お、お兄ちゃん!?」
そう、優真お兄ちゃんでした。お兄ちゃんを中に案内するとお母さんはさっと下へと降りて行き、今はお兄ちゃんと2人きり。
私は起き上がり、ベットの端に腰掛けました。
お兄ちゃんはテーブルの上にカバンを置いて、カーペットの上に置いてあったクッションの上に座りました。
「どうしたの…?練習は?」
「みんなまだやってるよ。俺が代表でお見舞いに来た。……体調はどう?」
「うん、大丈夫。熱は下がったから明日は多分学校にも行けると思う」
「そっか。よかったよかった」
優真お兄ちゃんが笑顔を私に向けます。その笑顔にドキッとした私は反射的に目を逸らしてしまいました。
「……花陽?」
「ひゃい!?な、なにっ?」
「いや、いきなりどうした。やっぱまだ体調悪いんじゃ……」
「大丈夫だよっ!大丈夫大丈夫っ!」
……お兄ちゃんと2人で話すのは久しぶりで、それも何の前触れもなくこんな状況になっちゃったら緊張しちゃうよ……。
「本当に大丈夫か?顔も赤いし、やっぱり熱あるんじゃない?」
それはお兄ちゃんが来たからだよぉ……
とは本人には言えず、私はただ大丈夫とお兄ちゃんに言い続けました。
「大丈夫ならいいけど……っていうか」
そこでお兄ちゃんは堪えきれなかったかのように小さく吹き出しました。
「お兄…ちゃん?」
「いやいや……
“あの頃”みたいだな、って」
“あの頃”。その言葉で一瞬で記憶が蘇りました。
「覚えてる?花陽」
「……うん、覚えてるよ。
私と凛ちゃんと“優真くん”が、“兄妹”になった日」
そう言って私が笑うとお兄ちゃんも優しく笑った。
そして私たちは互いに“あの日”へと想いを馳せる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私が小学校四年生になってすぐの頃。凛ちゃんの家の近くに1人の男の子が引っ越してきた。
私と凛ちゃんよりも2つ年上で、お母さんたち同士で仲がいいみたい。
その人の名前は─────────
「……朝日優真です。よろしくね」
1番最初に見たその人の笑顔は、どこか悲しそうな……寂しそうな笑顔だった。
これは後からわかったことだけど、この時のお兄ちゃんは度重なる引越しで友達を作っても無駄になる、と冷めた考えを持っていたようで。
つまり私と凛ちゃんのお兄ちゃんの第一印象は……“少し怖そうな人”だった。お兄ちゃんも多分、“どうせ離れ離れになる隣人とその友人”くらいにしか考えてなかったのかもしれない。
そんな私たちの関係を変えたのは、お兄ちゃんが引っ越してきてから2週間ほど経ったある出来事だった。
▼
それは初めてお兄ちゃん……“優真くん”と凛ちゃんと3人で遊んだ時のこと。ある日私が凛ちゃんの家で遊んでいたら、優真くんがママ……お兄ちゃんのお母さんと一緒に凛ちゃんの家へと来た。
その流れで凛ちゃんのお母さんに『3人で外で遊んでおいで』と言われたのが事のキッカケ。2度目の邂逅に等しい私たちは、友達になる前のあの微妙な距離感のまま外で一緒に遊ぶことになった。
「2人は何がやりたいの?」
外に出ると優真くんが私たちに問いかける。
「んー、りんはボール遊びしたいな!かよちんは?」
「えっ、私っ?私は…なんでも……」
「そっかぁー……それじゃ、近くの河川敷に行こっか。それでいい?」
「「うん!」」
「じゃあ行こっか。……“凛ちゃん”、“かよちゃん”」
「……!」
若干の微笑みと共に、優真くんが初めて私たちの名前を呼んだ。 その笑顔は初めて見たあの時と変わらない、少しの寂しさを帯びた笑顔だった。
歩き出した優真くんに続いて、私たちも河川敷へと歩き出した。
▼
「“ゆうまくん”いくよーー!」
「よしこーい!」
河川敷の小さな広場で凛ちゃんと優真くんがボールの蹴りあいをしている。私はそれを外から眺めていた。小さい頃から運動が大好きだった凛ちゃんはボール遊びを通してすぐに優真くんと打ち解けた。でも私は運動が苦手で……そしてそれにも増して男の人が少し苦手だった。
だから凛ちゃんのように一緒に遊んで仲良くなる、なんてことは出来そうになくて…私はただ2人を眺めていることしかできなかった。
いつもそう。私は凛ちゃんのやることについていくだけ。だからと言って凛ちゃんに不満があるわけじゃない。凛ちゃんと過ごすのは楽しいし、凛ちゃんのことは大好き。
でも凛ちゃんについていくだけの自分は…大嫌い。
自己嫌悪に陥りそうな思考を振り払って、私は近くに咲いていた花に視線を移した。
私は花が好きだった。綺麗で可愛らしくて……見ていると落ち着くから。それに誰かと積極的に関わることなく、ただ静かに佇むその姿がなんだか自分と重なって見えて──────
「─────何してるの?」
不意に声を掛けられる。その声に振り向くと、すぐ近くに優真くんが立っていた。
私は驚いて声を上げてしまった。
「ひゃああああっ!?」
「うわぁ!そ、そんなに驚かなくても……」
「あっ……ご、ごめんなさい……」
「いや、謝ることもないんだけど……」
「うぅ…ごめんなさい……」
「や、だから……ってもういいや。それより!かよちゃん、花好きなの?」
「えっ…………う、うん……」
「そっかそっかー、花は良いよね。見ていると落ち着くし、笑顔になれる」
「……うんっ。だから、好きなんだ…」
男の子とこんなに話すのは久しぶりだったから緊張してしまう。私は次に話す言葉を探しながら、優真くんの様子を伺う。
「あの……」
「ん、どうしたの?」
「ゆ、ゆぅ……まくん?も、お花好きなの?」
「俺?うん、好きだよ。かよちゃんほどじゃないかもしれないけどね。……ねぇ、かよちゃんはボール遊びしないの?」
……彼なりに、私と打ち解けようとしてくれているのだろう。その優しさを確かに感じた。
でも……私にはまだその優しさを受け入れる勇気は、無い。
「…私は、あんまり得意じゃないから……」
「んーそっかぁ…なら、違うことして遊ぼっか!」
「えっ、いいよ…!私は、大丈夫」
「どうせなら3人で遊ぼうよ。凛ちゃんにも言って見るから」
「いいよいいよ…!大丈夫、大丈夫っ」
私が笑いながら大丈夫というと優真くんはむーっと言いながら腕を組んで悩んでいました。逆に困らせちゃったかな……?
大丈夫。大丈夫。何度も何度も私自身に言いつけた言葉。そうやって私は自分の感情を抑えつけている。
その時
「─────返してよ!!」
凛ちゃんの叫び声が聞こえて私たちは後ろを振り向く。するとそこには、男の子3人組と言い合いになっている凛ちゃんの姿があった。
それを見た途端、優真くんはその現場へと駈け出す。私も少し遅れて優真くんの後を追う。
「おい!何してるんだよ!」
お兄ちゃんが3人組に怒り声を飛ばす。
「こいつが俺たちにボールぶつけてきたんだよ!」
「だからちゃんと謝ったにゃ!」
「年下のくせに生意気なんだよ!」
「年上だからってなんでもしていいのかよ。この子も謝ったんだろ?それでいいじゃねーかよ!」
「あぁ?んだお前。お前も生意気なんだ……よ!」
突然3人組のリーダー格のような男の子が……優真くんの顔を殴りつけた。
「うっ!!」
お兄ちゃんは後ろに大きくよろける。
「ゆうまくんっ!」
「大丈夫だよ……凛ちゃん…これくらい」
「調子乗ってんじゃ……ねぇッ!!」
「ガハッ!!」
3人組が、一気に優真くんに殴りかかる。
「優真くん!!」
「ゆうまくんっ…!」
私と凛ちゃんは恐怖でただその現場を眺めていることしかできません。そして何より驚愕なのは。
─────どうしてやり返さないの……?
優真くんはただ一方的にやられるだけ。自分は決して手を出さない。その現場を見ていただけの私達は、泣くことしかできなかった。そんな中で……
「もうやめてよ!ゆうまくんは悪くないでしょ!?やるならりんをやるにゃ!!」
勇気を振り絞り、凛ちゃんが3人組に叫ぶ。
その声を聞いた3人は振り返り、ニヤリと笑った。
「─────じゃあお望み通りそうしてやるよ」
3人の矛先が優真くんから凛ちゃんへと変わる。
勇気を出して叫んだ凛ちゃんももちろんそんな覚悟はなくて……涙目で体を震わせ始めた。
誰か……助けて………!
心の中で叫ぶ。この後に及んで私はまだ恐怖で声が出ない。届くはずもないその願い。
そして3人組のうちが振り上げた手が、凛ちゃんに襲いかかる───────
しかしその腕は凛ちゃんに触れることはなかった。
その腕を後ろから強く握る優真くんのおかげで。
そしてお兄ちゃんはその腕を引っ張り相手をよろめかせると、その足を払って地面へと叩き倒した。
「───────その子に指一本触れてみろ。
タダじゃ済まさねぇぞ!!!!」
激しい怒りを表情に宿し、優真くんが叫ぶ。
その表情に3人組は恐怖を感じたようで、先ほどまでの余裕は全く感じられない。
「くっそ……お、覚えてろよ!!」
3人組は焦ってその場から逃げ出した。
その途端、優真くんは膝をついてその場に崩れ落ちる。
「ゆうまくんっ!」
2人で優真くんに駆け寄る。
「大丈夫!?」
「うん、へっちゃらだよ。あいつら口だけで全然力強くなかったし」
へへっ、と優真くんは笑う。
そんな優真くんに私は問いかけた。
「……どうしてやり返さなかったの…?」
「え?」
「やり返したら最初から勝てたんじゃないの?どうして?」
不思議でたまらなかった。その気になればさっきみたいに1発で追い払えたはずなのに。
すると優真くんは気まずそうに笑った。
「……嫌いなんだ、暴力は」
「え……?」
「ちょっと力があるからってそれを振るうだけで言うことを聞かせようとする奴が、大嫌いなんだ。
……でもね。
────大切な人を泣かす奴は、もっと嫌いなの」
最後だけ語気が強まる。そこには優真くんの大きな意思が感じられた。
「凛ちゃんとかよちゃんは俺がこの町に来て初めて出来た大切な友達だったから。そんな2人に手を出そうとしたあいつらが許せなかった。だから俺も手を出して止めようとしたけど…本当はそんなことなんてしたくない。
……あるはずなんだ。暴力に頼らなくても、誰かを守る方法が」
優真くんの言ってることは少し難しくて……半分理解できたような、理解できてないような。私と凛ちゃんはおそらくそんな感じだったと思う。
でも。
───『凛ちゃんとかよちゃんは俺がこの町に来て初めて出来た大切な友達だから』───
この言葉が、不思議と私の心を暖かくしてくれた。
今までそんなことを言ってくれる男の子は何処にもいなかった。同級生の男の子たちも、元気で明るい凛ちゃんと話すばかりで、私と話すことは少ない。そして凛ちゃんに対しても“男みたい”だとか、酷い言葉ばかり。凛ちゃんは可愛いのに……その言葉の度に凛ちゃんは傷ついていた。
だから優真くんが言う“大切な友達”という言葉は……すごく嬉しくて。
そしてお兄ちゃんは、笑う。
「……今度から、何が起きても君たち2人を守る。
だから俺を信じてくれないかな?
そして改めて───────
────俺と友達になってくださいっ」
そしてその笑顔のまま、優真くんは私たち2人に手を差し出す。
その笑顔は今までの寂しさを宿した笑顔とは違う…お兄ちゃんの“本当の”笑顔だった。
私と凛ちゃんは互いに顔を合わせ……笑う。
そしてその手を──────取った。
「「よろしくね!」」
3人は笑う。心の壁は崩れ去り、私たちは本当に“友達”となった。
そして優真くんはこう続ける。
「……しかし、俺もまだ弱いなぁ。こんなに傷だらけだし…かっこわりぃっ」
……ううん、そんなことない。
“力”じゃなくて“思い”で私たちを守ろうとしてくれた優真くんは。
私を“大切”と言ってくれた優真くんは。
───優しくて、カッコいい。
その姿はまるで────
「─────お兄ちゃん」
「えっ?」
「優真……お兄ちゃんっ!」
「お兄……ちゃん?」
「うんっ…!優真くんは、私のお兄ちゃん!」
私がそう言うと、凛ちゃんも瞳を輝かせた。
「そーだよそーだよ!お兄ちゃんだ!」
「り、凛ちゃんも…?」
「ゆうまお兄ちゃん。だから、“ゆうにぃ”だ!
よろしくね!ゆうにぃ!」
「優真お兄ちゃんっ!」
私たちが笑顔でそう呼ぶと、優真くんもにっこりと笑った。
「────よし!じゃあ今日から2人は俺の妹だ!よろしくね!」
そして私たちは……“友達”から“兄妹”になった。
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「あれからお兄ちゃんとよく遊ぶようになったよね」
「ああ。正直あの日がなかったら、俺はずっと1人だったかもしれないな」
“兄妹”になった私たちは、それからの時間をほとんど一緒に過ごしました。お兄ちゃんは凛ちゃんと2人で遊んでいた時とは違って私のやりたいことを聞いてくれる。それがとても嬉しくて……。
それから時は流れて、私たちは成長しました。
体はもちろん……心も。
だから私には……お兄ちゃんが……
いつも優しくて、私を守ってくれて…私に笑顔を向けてくれるお兄ちゃんが
─────もう“お兄ちゃん”には、見えない。
兄を慕う愛情は、いつからか異性へと向けるそれへと変わってしまっていて。
その隣に立ちたい、と。
友達のままじゃ……妹のままじゃ、もう嫌だ。
私はやっぱり……お兄ちゃんのことが、好き。
兄としてはもちろん、1人の男性として。
でもそれを自覚する度に思い出す。
大切な幼馴染が兄に向ける感情も、自分のそれと同じだということ。
自分のとても大切なμ'sのみんなの中にも、自分と同じ気持ちを抱いた人がいるということ。
みんなの“タカラモノ”を1人で独占してしまいたいと思うことは……正しいことなの?
そんな思いばかりが頭を巡って、私はいつも後手後手に回ってばかり。みんなは学校の外や部活中、お兄ちゃんと楽しそうに話していて……
でもやっぱり、その光景を見て私も……
お兄ちゃんに、甘えたいなぁ……」
「………………」
ふと気づくと、目の前のお兄ちゃんが目をパチクリさせていました。その頬はだんだんと紅潮していっています。
……もしかして。
「────声に…出てた?」
「……うん」
「……いつから?」
「『お兄ちゃんに』から」
やや遠慮がちに告げたお兄ちゃん。しかしそれを聞いた私は──────
「うわああぁぁぁぁぁああ!!!!」
「ちょ、落ち着け!花陽っ!!」
思わず絶叫してしまいました。
何で!?よりにもよって本人の前でっ!?
寝ぼけてたのかなぁ…?風邪だったから!?
それよりうわあああぁん!!どうしようどうしようっ!!
「ち、違うのお兄ちゃんっ!あれはっ……!」
否定しようと勢いよく立ち上がる……しかし。
「ぁっ……」
昨日からずっと寝たきりで、そんな状態でいきなり立ち上がった私は、立ち眩みを起こして体が大きくよろけてしまいました。
駄目だ 後ろに 倒れる
そう悟って私は襲ってくるであろう衝撃に身構えることにしました。
しかし。
「花陽ッ!」
私が倒れた途端に立ち上がり私の方へと駆け出してくれたお兄ちゃんは倒れかけの私の体に腕を回して……私を抱きしめてくれた。
それでも転倒を阻止することは出来そうになく……
私たちは2人で後ろへと倒れ込みました。
─────あぁ、お兄ちゃんの腕だ。
力強くて優しい……お兄ちゃんの。
その温もりを感じながら私は痛みと衝撃を覚悟します。
───────バフン。
……衝撃は思っていた何倍も柔らかいものでした。
それはそうだ。だって──────
「─────後ろベッドじゃん」
お兄ちゃんの冷静なツッコミに思わず吹き出してしまいました。そして2人して笑う。必死になっていたのが馬鹿みたいに思えて。
そして一頻り笑った後、私は気付きました。
……己の体勢の、なかなかの気まずさに。
(なああっ!?)
体に回された腕
私の頭の上にある右の手のひら
至近距離という言葉が相応しいほど近い互いの顔
そんな状態で私たちは2人でベッドに横になっていたのです。
それに気づいた私の頬は一気に真っ赤に染め上がりました。言葉が出ない。気まずいのはわかっている。それでも……
─────ずっと、こうしていてほしい。
私のそんな様子に気づいたお兄ちゃんは……
優しく笑う。
そして。
私を強く、抱きしめました。
「えっ……?」
「甘えたいなら甘えなよ
何遠慮なんてしてんだよばーか」
耳元に優しく囁くと、右の手のひらで私の頭を優しく撫でる
一気に鼓動が高鳴る
ドキドキと緊張で言葉が出ない
そんな私の体をお兄ちゃんは優しく起こし
今度は後ろから抱きしめた
「暖かいな。やっぱりまだ熱あるんじゃねーの?」
「ううん。…お兄ちゃんが、こうしてるからだよ」
「……そっか」
沈黙が流れる。
それは2人だけの時間、2人だけの沈黙で……
幸せな時間でした。
そしてお兄ちゃんが再び耳元に優しく囁きかける。
「……花陽は偉いよな」
「え……?」
「自分の気持ちをいつも“大丈夫”って抑え付けて、みんなの意見に合わせて……花陽だって、本当はしたいことあるはずなのにな」
「……そんなこと…」
「知ってるよ。全部わかってる。
俺はお前の“お兄ちゃん”なんだから。
……だから俺には何でも言っていいんだぞ?
甘えたいなら、いつだって甘えてくれていい。
花陽は俺の大切な友達で、大切な妹。
俺は絶対に花陽の気持ちに応えてみせるから」
そう言って私に優しく微笑むお兄ちゃん。
その言葉は私の心を優しく包んでくれています。
……でも。
─────私の“1番叶えたい気持ち”には、
きっと応えられないと思うな。
この胸に秘めた想いを伝えることができて
その想いにお兄ちゃんが応えてくれるなら
どれだけ幸せだろう
勇気を出して、告げてみようか
でもやっぱり
───────“言えないよ”
「あっ、そうだ」
思い出したようにお兄ちゃんが声を上げました。
「どうしたの?」
「いやいや……ちょっと待っててね」
するとお兄ちゃんは私の体から離れて、カバンへと向かいます。そして中から取り出したのは。
「はいこれ」
「……これは?」
「みんなからの、誕生日プレゼント」
「えっ?」
「誕生日おめでとう、花陽」
突然渡されたプレゼントと笑顔で告げられた言葉。
その意味を理解した時、あまりの嬉しさで思わず涙が込み上げました。
「元々これを渡しに来たんだった。忘れるところだったよ」
「……ありが、とう…………」
「なーに泣いてんだよっ」
「だってぇ…………」
今日は祝ってもらえないと思ってたから嬉しくて。
「……それとこれは俺から」
お兄ちゃんが先ほど渡したプレゼントとは別に、カバンから改めて何かを取り出しました。
それは可愛らしい紙袋に包まれている小さな何か。
「ありがとう!開けてもいい?」
「いいよ。気に入らなかったらごめんね」
そして中身を取り出すとそこには……
「これって……!」
「懐かしいだろ?」
それは────────リボン。
私が小さい頃よく頭につけていた、黄色のリボンでした。
「昔つけてたリボン…あれすごい似合ってたし、好きだったから。学校とかでは無理でも、プライベートの時とかにつけてるのを見れたら嬉しいな、って思ってね。嫌だった?」
「ううん!嬉しいっ……!ありがとうっ♪」
「よかった。……あとそれから、これも」
その声で改めてお兄ちゃんの方を見直すと……
その手には小さな花が握られていました。
「お花……?」
「─────“
「誕生……花?」
「うん。誕生石はよく聞くけど、花にもあるんだってさ。何月何日は何の花、って感じでね。
ここに来る途中にある花屋で見つけたんだ。花陽は昔から花が好きだったから喜ぶかな、って思ってさ。
小さい花だけど……綺麗だと思う」
「……うん、綺麗…」
花束というにはあまりにも大袈裟な……でも雑草として片付けるにはあまりにも勿体無い。そんな儚さを宿したこの花の名は──────
「────“ナズナ”。春の七草のひとつだけど、1月17日の誕生花なんだってさ」
「ナズナ……?」
「だからはい、これ」
そしてお兄ちゃんは私にその花を手渡しました。
……“それが意味するコト”を、お兄ちゃんはわかっているのでしょうか。
「ありがとっ。……はい、どーぞ♪」
私は受け取ってすぐの花を、お兄ちゃんへと渡し返しました。
「えっ、でもこれお前……」
「いいのいいのっ。
……“私”から、“お兄ちゃん”へのプレゼント……」
「ん…まぁよくわかんないけど、ありがとう…?」
花には“言葉”がある。
“花言葉”と呼ばれるそれは、よく知られている。
薔薇ならば“深い愛”。白百合ならば“純潔”。
プロポーズや告白の時に花と同時に“言葉”をも渡されるという行為は、女の子の憧れ。
そしてナズナの花言葉は──────
────“私の全てを、あなたに捧げます”
「──────えいっ!」
「うわっとっととっ!」
私はベットから飛び降りて、お兄ちゃんへと飛びつきました。
そして彼の耳元に、囁く
「─────大好きだよ、お兄ちゃん♪」
その一言に、“
そしてお兄ちゃんは、私を抱きしめながら私の頭をそっと撫でる。
「──────俺も大好きだよ、花陽」
「…えへへっ♪」
お兄ちゃんがどちらのつもりで言ったのか、それはわかりません。でも今は……今だけはこの時を、大好きな人と。
お兄ちゃんは私が離れるまで、ずっと抱きしめていてくれました。
その様子を、お兄ちゃんの手に握られた“
そのあとお兄ちゃんは、3日間風邪で学校を休みました。うぅ、ごめんなさい…………
改めまして花陽ちゃん誕生日おめでとうございます!
本編の方ではオタ陽での活躍が目立つ彼女ですが、それも私の愛ゆえでございます。
今回は優真と花陽の過去を中心に話を作ってみました。
本当ならば昨日に投稿する気満々だったのですが、やはり疲労が溜まっていたようで気が付けば意識を失ってしまいました。てへぺろ。
そんなこんなで必死に書き上げた今回の短編はいかがだったでしょうか?
ご満足いただけたなら幸いでございます。
次回は、次回こそは本編を投稿させていただきます!
1月のアレも終わり、時間的にも少しずつ余裕がでてきたので、ゆっくりゆっくりと投稿していきたいと思うのでよろしくお願いします!
……さすがに前みたいに一週間に2、3話というわけにはいきませんが…笑
長くなりましたが今回もありがとうございました!
感想評価アドバイスお気に入り等お待ちしております!