ラブライブ! ─ 背中合わせの2人。─   作:またたね

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長くなりそうなので前後編に分けます。



強い私へと。♯1

 

 

53話 強い私へと。♯1

 

 

 

「……………………」

 

ある少女は無言で机上の紙と向き合い、ペンを握ったまま瞳を閉じる。その少女が今必死で絞り出しているのは、歌詞。普段は全く縁のないそれを彼女は今書こうとしているのだ。

 

そして彼女は目を見開き───────

 

 

 

 

「────チョコレートパフェっ、美味しい……」

 

 

 

……意味のわからない言葉を、発する。

 

「生地がパリパリのクレープ……食べたいっ

ハチワレの猫……可愛い……

五本指ソックス……気持ちいい……ぅぅぅ……

 

思いつかないよぉ〜〜〜〜〜〜!!」

 

脳内がお花畑で出来ているのだろうか、なんと可愛らしい言葉を連ねるのだろう。しかし歌詞としてみるならば、そのフレーズは全くもって謎。本人にもその自覚があるようで自分の書き連ねたフレーズを見て悶絶している。

……その様子が非常にかわ

 

「……優真先輩、変なこと考えてませんか?」

 

「えっ!?い、いや!?考えてないけど!?」

 

「ことりちゃん、苦戦してるね……」

 

そう、俺と穂乃果と海未の3人は放課後の空き教室で作詞に取り組んでいることりちゃんの姿をひっそりと覗き見ていたのだ。

普段は衣装担当のことりちゃんだが、今回人生で初めて作詞というものに挑戦している。

では何故彼女が作詞をすることになったのか。

それはゆっくり今朝からの話をしていけばわかる。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

皆でメイド喫茶を訪れた次の日。

俺の機嫌は朝から(すこぶ)る悪かった。

昨日起こったあの事件……絵里と希が見知らぬ男に路地裏に連れ込まれそうになっている現場を見たときは、心底肝が冷えた。そこから俺は一目散に駆け出し、現場に着いてから絵里と希を逃がそうと努力したのだが……そこからの記憶が無く、気がついたら真姫の家にいて。

サトシは俺が2人を助けたと言っていたが、実際はどうだったのかはわからない。それに……昨日あれから真姫とサトシと作業をしたのだが、真姫の態度がどうにもおかしかった。あからさまに不機嫌、サトシと何かあったのだろうかと思うけれどサトシは普通に接していたからその不機嫌さがより際立って見えた。

それから作業が終わるまでずっとそのままだった真姫……どうにも気になる。

 

 

まぁここまで話しておいてなんだが、今のこの話と俺が機嫌が悪いのは全く関係がない。

 

 

一緒に登校してきた凛と花陽と別れ、俺は自分の教室へと入る。窓際の自分の席に座り、カバンを机の横にかけて机に伏せた。特に眠たいわけではないのだが、この行動には理由がある。

 

すると何人かの足音が俺の方へと近づいてきた。

 

「……優真」

 

「ゆーまっち、大丈夫やった……?」

 

「絵里と希から聞いたわよ?また無茶なことを…」

 

絵里、希、にこの3人か。

心配してくれているのだろう、その感情が顔を見なくても声だけで伝わってきた。

俺はその声に顔を上げずに伏せたまま答える。

 

「……おう、大丈夫だ。ありがとな」

 

「本当に?怪我はしてないの?」

 

「大丈夫だって」

 

「どっか痛いところはないん?ウチらのせいであんな……」

 

「あーもう!大丈夫だって言ってるだろ!!」

 

そこで叫びながら思わず顔を上げてしまった。

すると俺の顔を見た3人は──────

 

 

「んふっ!!」

 

「くすっ……」

 

「あっはは!!アンタ何よその顔!っはははは!」

 

……見られてしまった。

そう、俺の顔……左頬は今、尋常じゃないレベルで“腫れている”。普段の2倍ほどのサイズに膨れ上がった頬は目元にまで影響が及び、左目は普段の半分も開いていない。

マスクで隠そうかと考え、試しにその状態で鏡を見てみると腫れている部分を全くカバーできておらず、むしろ不審者レベルがアップしてしまうというね。

だから何もしないまま学校に来たわけだが、朝一緒に登校してきた凛と花陽……主に凛に大爆笑される始末。

しかも凛のヤツ、歩きながら爆笑してるから前を見てなくて電信柱でデコを強打しやがった。ザマーミロ。

 

さて、俺の顔を見た3人の反応はというと……

 

絵里は反射的に吹き出した後、耐えられないように爆笑を始め。

希は最初から今に至るまで一貫して俺に申し訳なく思っているのだろう、口を押さえて引き笑いをしており。

にこは最初から遠慮もなしに目に涙を浮かべて大爆笑している。そこまで笑われると逆にイライラもしねぇよ。

 

「ゆ、優真……どうした、の、その……んふふふふ」

 

「笑いながら話しかけてくんな!!」

 

「はははは!あは、あっはははははは!!」

 

「お前は多少は自重しろ!にこ!!」

 

「も、もしかして……ウチのせい……?」

 

「……多分違うよ。お前から殴られたときはそうでもなかったし。痛かったのは放課後真姫の家に行ってからだ」

 

「そっかー!ほな遠慮なく笑うね!あははははは!!!」

 

「お前いい性格してんなホント!!」

 

笑いこらえてたのも自分のせいだと思ってたからかよ!!

ちょっと嬉しかったのに!俺の喜びを返せ!!

もうやだ、心折れそう……

 

一頻り笑った後、3人は改めて俺に声をかける。

 

「……満足したかよ」

 

「ごめんなさいね……だって……ふふっ」

 

「喧嘩売ってんのか絵里コラァ!!」

 

「まぁまぁ落ち着いてゆーまっち。

……どうして腫れてるのか自覚あるん?」

 

「サトシは昨日の男二人組に殴られたって言ってたけど……」

 

「「………………」」

 

ん?なんだ今の反応は。

俺の言葉に2人は目を合わせ、何も言わずに苦笑する。

 

「言ってない、みたいやね……」

 

「これ言わない方がいいのかしら」

 

「何だよ、違うのか?」

 

「「…………さぁ?」」

 

「……もしかして」

 

俺は自分の斜め前の席の屈強な男へと視線を移す。

そいつは俺達の話を聞いていなかったフリをしているが、こいつの嘘の下手さは筋金入り。今も肩がピクピクと震えている。

 

俺はゆっくりと席から立ち上がり、彼の肩をトントンと叩いた後、“握りしめる”。

 

「サトシくん」

 

「ひぇっ!?な、何だよユーマ!お前凄い顔だな!」

 

「もしかしてこれ、君が僕を殴ったのかな?」

 

「な、ななななななななんのことだろーな……」

 

「おかしいと思ってたんだよ……“何回か食らったことある痛みだなぁ”ってよぉ……?」

 

「……あ!あんな所に空飛ぶパンケーキが!!」

 

「そんなのに引っかかるのは世界中探してもお前だけだ、サトシ。……さぁ、覚悟はいいか……?」

 

「ごめんなさあああああああああい!!」

 

 

この後むちゃくちゃ(ry

 

 

 

 

 

「ったく……」

 

「う、ぐふぅ……」

 

サトシを“自主規制(ピーッ)”した後、俺は再び自分の席に着き、3人とサトシが合流して今は俺の周りに4人がいる。

 

「落ち着いた?」

 

「まぁな。なんかスッキリしたわ。お前らももう笑わないんだな」

 

「もう流石に見慣れたわよ。……さっきはごめんなさいね」

 

「私も……ごめんね、優真」

 

「別に気にしてねーよ。俺だって笑ってただろうし」

 

「そーやんなぁ。今のゆーまっちはさながら歩く変顔」

 

「お前はうるせぇ」

 

「痛っ!」

 

なお俺を弄ろうとする希に軽くチョップをかます。ううっ、と唸りながら涙目でこちらを睨む希。正直可愛い。

……っていうか俺そこまで強く叩いてないだろ。

 

「……それで優真。私達から提案があって」

 

「提案?」

 

「そう。私とにこと希で考えたんだけど……」

 

そして絵里はその“提案”を俺とサトシに話す。

それを聞いた俺たちは最初は驚いたものの……最後まで聞くとなるほどな、と納得しか起きなかった。

 

「これなら確かにμ'sとしても……」

 

「“あの子”にとっても、メリットになるな」

 

「でしょ?……やってみない?」

 

不敵に俺に笑いかける絵里。俺の答えは決まっている。

 

「───────あぁ、やろう!」

 

 

 

 

 

 

 

「アキバでライブよ!」

 

時は流れ放課後。全員が集合した屋上で、絵里が朝俺にした提案を皆の前で話している。

2年生と真姫は俺の顔を見て笑わなかった……穂乃果以外はね。穂乃果は凛と同じぐらい爆笑しやがったから“手刀制裁(チョップ)”を食らわしてやった。ちなみにサトシもいるよ。

 

「ええっ!それって……」

 

「路上ライブ……⁇」

 

「でも秋葉って……」

 

「A-RISEのお膝元じゃないのかにゃ?」

 

「そんなところでライブ…うぅ、畏れ多いですっ」

 

穂乃果とことりちゃん、そして一年生の3人はこの提案に疑問を浮かべている。

 

「……何か意図があるのですか?」

 

海未だけは動揺を見せずに絵里へと疑問の言葉を向けた。

 

「アキバはアイドルファンの聖地……あそこで認められるパフォーマンスが出来れば、大きなアピールになるでしょう?」

 

「なるほど、確かに……ですが」

 

「……そんな時間はあるの? 私たち、後少しで文化祭のステージもやらなきゃいけないのよ?色々と並行しすぎて完成度が落ちるのは良くないんじゃない?……っていつもの優真さんなら言うと思うけど」

 

海未と真姫の意見はもっともだ。

そして真姫は俺が話に切り出そうと思っていたタイミングで俺に話を振ってくれた。……俺を見る表情が心なしか暗い気がするが。

 

「確かに気持ちはわかる。だからライブをするって言ってもダンスは入れない。そこまでやってたら本当に時間がなくなっちまうからな。

……でも俺たちはそれ以上に、アキバで()るメリットの方が大きいと考えた。

そのゲリラライブで文化祭のステージを宣伝出来れば、文化祭での成功にも繋がると思うんだ。

『ラブライブ!』まで残された時間は少ない。俺は打てる手は限界まで打っておきたいと思う。どうだ?」

 

俺の言葉をどう受け取ったのか、海未は納得しているように見えるが、真姫の表情は険しいままだ。

 

 

 

「─────私はやってみたいな!」

 

 

 

─────そう来ると思ってたよ。

平行線を辿りそうな話し合いの展開を変えたのは、やはり彼女(穂乃果)の“勇気”。

 

「だって絶対楽しいよ!それでたくさんの人に見てもらえて、文化祭にも来てもらえるでしょ?やるしかないよ!みんな!」

 

穂乃果はあくまで前だけを見続けている。

それに伴うデメリットなど眼中にもなく、ただやりたいこと、楽しいことを目指して一目散に駆けて行く……俺たちの手を引っ張りながら。

 

「……うん!面白そう!」

 

「凛もやってみたいにゃ!」

 

「わ、私もっ……!」

 

満面の笑みで放たれた穂乃果の言葉は確かに皆の考え方を変えた。海未も真姫もしょうがないとばかりに笑顔を浮かべている。

 

「決まりね!」

 

絵里の宣言でこの議論は完結した。

……さぁ、ここからが俺たちの本当の狙い。

 

「じゃあ早速日程を……」

 

「と、その前にっ」

 

穂乃果の声に被せて、絵里が話を切り出す。

 

「私たちが歌うのはアキバ。だから今回の詩は、アキバのことをよく知っている人に書いてもらうべきだと思うの。

 

───────ことり」

 

「ふぇっ!?わ、私……⁇」

 

まさか自分だとは思わなかったのだろう、ことりちゃんは体をビクリと震わせながら返事をした。

 

「私達の中であの街を1番知っているのはことりよ。貴女なら、次のライブで歌うのに相応しい詩が書けると思うんだけど……」

 

「……でも私じゃ、そんな……」

 

……そうだろうね。君は自分に“自信”がない。

アイドルとしてとかそういうのを抜きに、“自分自身に自信がない”、“自分には何もない”……それが今の君の自己評価なのは知ってる。

 

でも。

 

“だからこその”。

 

「それすごくいい!やってみなよことりちゃん!」

 

「凛もことりちゃんの歌詞で歌ってみたいにゃ!」

 

俺達の意図を悟ってか、はたまた天然か……おそらく後者だろうが穂乃果と凛が賛成の意を示す。

 

「えぇっ……で、でも……」

 

「わ、私も見てみたい…!ことりちゃんの作った歌……!」

 

「ことりなら、アキバで歌うのに素晴らしい歌詞が書けますよ?」

 

「私達の中で1番適任はことりね。期待してるわ」

 

花陽、海未、真姫も同じように賛成したが、おそらくこの3人は俺たちの狙いがわかっているのだろう。真姫が先ほどの不満気な表情から笑顔へと変わっているのがその事を示している。

 

そして絵里が、俺たちの意見をまとめ上げる。

 

「ことり。これは他の人にはできない……“貴女にしか頼めないこと”なの。もちろん、全てをことりに任せるつもりはないし、手伝えることならなんだってするわ。

 

頼んでる側がこんなことを言うのもおかしな話だけど……

 

─────貴女なら出来るわ、ことり」

 

 

「…………!」

 

 

そう、つまりはそういうことだ。

彼女が自分に自信が無いのならば、その自信を持つ機会を与えてあげればいい。

もし彼女が自分で作った曲でライブを行い、それを成功させることが出来たなら、それは彼女にとって大きな実感を伴う自信となる。

これが俺達三年生の、大きな狙いだ。

 

……さぁ、君の答えは。

 

皆が無言でことりちゃんを見つめている。

その本人は焦りや悩みといった感情が混ざった複雑な表情で考え込んでいた。

しばらくの後、彼女は覚悟を決めたように───

 

 

「───うん!私、やってみる!」

 

 

笑顔でそう言った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

というわけで作詞を始めたことりちゃんなわけだが、先程から苦戦しているようで全く進んでいない。元よりまったく手のつけたことの無い領域のことをしているので、それも無理もないことだ……がしかしそれを強要したのが俺たちである手前、辛そうなことりちゃんを見ていると申し訳ない気持ちになる。

 

 

「……どうする?」

 

「どうするもなにも、ことりに作詞をさせるよう提案したのは優真先輩でしょう?」

 

「いや、俺じゃないから!絵里だよ絵里」

 

「え、そーなの?私てっきり優真先輩かと思ってた」

 

「私もです」

 

「……お前らの中で俺はどんな印象なんだ」

 

確かに裏で何かすることも多いけど。

 

「……しかし確かに何かしてあげないと、不味いかもしれませんね……」

 

「だな」

 

普段作詞を担う俺と海未はことりちゃんが抱える苦しみはよくわかる。何曲か作り終えた今でも行き詰まることはあるし、感じる重圧は曲を作れば作るほど大きくなっていく。

しかもことりちゃんは膨らみに膨らんだ重圧を今、1人で背負っている状態だ。それに加えて慣れない作業……きっとあの小さな背中には、不相応なほど重たいものを抱えているはず。

 

……彼女のためとはいえ、申し訳ないことをしたのではないかと思ってしまう。

 

「……後悔しているのですか?」

 

「えっ?」

 

不意に横にいた海未に問いかけられ、思わず驚いてしまった。

 

「ことりに作詞を任せたこと…優真さんが直接提案したわけではないにしても、その選択を取らせたこと。後悔しているんじゃないですか?」

 

「……後悔はしてないよ。うん」

 

「“後悔は”?」

 

「……迷ってる。手を貸してあげるべきなのか、優しく見守り続けるべきなのか」

 

そう、迷っている。

このままではことりちゃんは重圧に押し潰されてしまうかもしれない。かといって俺が手を貸して出来た曲は、ことりちゃんに自信を与え得るものになるのだろうか。

そんな心の迷いに俺は悩まされていた。しかし……

 

「────らしくないですね」

 

そんな俺の迷いをくだらないというように、海未は俺を見つめている。

 

「……」

 

「普段あれだけ人の悩みに首を突っ込みたがっているのに、珍しい」

 

「そうか?」

 

「ええ。少なくとも私にはそう見えます。

……私達が悩んでいるのなら少しでも力になろうとして、あわよくばそのまま解決してあげたい。そんな考えの下で行動を起こすのが私の優真先輩の印象です。違いますか?」

 

「海未……」

 

「だから今回も、悩む必要なんてないのでは?」

 

そこで初めて、海未は俺に笑いかけた。

……今もしかして俺、後輩に心配されたか?

 

「……確かにそうかもな。なんかごめんな」

 

「何故優真先輩が謝るのですか。

 

────ことりに力を貸してあげてください。

それが出来るのはおそらく、優真先輩だけです」

 

「……お前や穂乃果でも大丈夫だろ」

 

「いいえ。昨日の話から察するに、おそらくことりは私達に劣等感を抱いていると思うんです。そんな私たちからアドバイスを受けたとしても、ことりの自信には繋がらないと思います」

 

「成る程、な」

 

申し訳なさそうに俺にそう言った海未の顔を見て俺は納得した。確かに海未のいうことは正しい。……そして海未自身はそのことをもどかしく思っているのだろう。悩み苦しむ自分の幼馴染を助けたいと思っても、どうすることもできない歯痒さ。海未の申し訳なさを宿した表情からはそんな思いも見て取れた。

 

……だったらもう、やるしかない。

大体迷う必要なんてなかった。

 

俺が“変わるため”。

 

他人の事情に突っ込むのに、それ以外の理由なんていらない。何時からだろう、その思いが揺らぎ出したのは。

 

「わかった。ことりちゃんのことは俺に任せてくれ」

 

「よろしくお願いします」

 

俺の言葉に、海未も笑顔で応えた。

 

「…………むぅ、私だけ仲間はずれ……」

 

「ん、居たのか穂乃果」

 

「居たよ!一緒に見てたじゃん!」

 

「完全に空気だったな」

 

「逆に空気を読んでたの!海未ちゃんと優真先輩が真面目な話ししてたから!」

 

むきー!っと唸りながら不満を露わにする穂乃果に、俺と海未は苦笑いを浮かべる。

 

「悪かったよ穂乃果。ごめんな。そしてありがと」

 

俺は穂乃果の頭に手を乗せ、優しく撫でてやる。

 

「……これじゃ動物見たいじゃん」

 

「嫌か?」

 

「……嫌じゃないけど」

 

だろーな。口ではそう言いながらも嬉しそうな顔してるし。やっぱり凛に似てるな、こいつは。

 

「……あの、優真先輩」

 

「ん、どうした海未」

 

「み、見てるこちらが恥ずかしいのでそろそろ……」

 

「え、あ、ごめん」

 

俺としては恥ずかしいことをしている自覚は全くないのだが、顔を赤くしながら俺にそう言ってきた海未を見ると申し訳なくなってしまったので穂乃果の頭から手を離す。

 

「えーっ、もう止めちゃうの?」

 

「結構気に入ってんじゃねぇか」

 

「まぁねっ!……でも優真先輩、多分それ他の女の子にしない方がいいよ?」

 

「え?いやいや、別に誰にでもやるわけじゃないけど?」

 

「……天然でそういうこと言っちゃうんだ……」

 

「だからこの人は…………」

 

え、なんでそんな目で俺を見るの?

なんか悪いこと言ったかな?

 

「とにかく!優真先輩それμ's以外の人にやるの禁止!あとみんなに平等にすること!いい!?」

 

「え、うん……」

 

よ、よくわからないが今の穂乃果は怖い。

大人しく従っておいた方がいいだろう……

 

「わかればよし!……ねぇ、優真先輩」

 

「ん」

 

「……私難しいことはわからないけど、ことりちゃんの力になってあげたい。でも私じゃことりちゃんの力にはなれない……だから」

 

 

面と向かって見たのは初めてかもしれない

 

お前のそんな顔は

 

 

 

「────ことりちゃんを、お願いします!」

 

 

 

そんな目で見られたら

 

嫌ですなんて言えねぇよ

 

 

 

光り輝く曇りなき眼は、俺の心の奥底まで照らそうとする

 

でもごめんな穂乃果

 

今の俺にとってその“光”は

 

 

 

──────“心底、気持ち悪いんだ”

 

 

 

全てを照らすその目に

 

ただ前だけ見てるその目に

 

みんなに勇気を与えられるその目に

 

“俺が欲しくてたまらない”その目に

 

 

────“嫉妬”して、しまうから

 

 

 

「……あぁ。俺に任せとけ」

 

そして俺は“(つく)る”。いつものように、当たり前のようにその笑顔を。

 

その笑顔を見て2人は笑い、去って行った。

 

 

 

君達の信頼に応えてみせるよ────

 

 

────自分を“変えるため”、にね。

 

 




後編は明日投稿される予定です。
どうぞお楽しみに!

新たに評価していただいた、

凛乃空さん、トゥーンさん、あんじ[エリチカ]さん、
香月あやか(kazyuki00)さん、そそそそさん

ありがとうございました!とても励みになります!

さて、それでは今回もありがとうございました!
感想評価アドバイスお気に入り等お待ちしております!

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