ラブライブ! ─ 背中合わせの2人。─   作:またたね

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前回、シリアスはないと言いましたが、すいません、今回も少しシリアスです(´・_・`)
アニメ本編に入るまではシリアスが続きそうです申し訳ありません…
そして今回書きたいことを書いていたら、文字数がすごいことになりました…
今回は優真のヒーロー回となります。
最後までお付き合いよろしくお願いします!


秋と天使と策略と

 絢瀬と東條との出会いから半年が経った。

 俺は男友達もできてある程度充実した生活を送ることができていた。

 まぁ、言っても昼飯食べるのも絢瀬と東條とだし、一緒に帰るのもその二人なんだが。

 

 そんな秋のある日のこと。

 

「優真くん、ちょっといいかしら?」

「ん、どした絢瀬」

「ちょっと数学のここがわからないんだけど…」

 

 今俺たち3人は、放課後学校に残って来週の中間試験に向けてテスト勉強に励んでいた。

 

「あぁここね…でも、俺我流だからうまく教えれるかはわかんないよ?東條の方がうまく教えれるんじゃないか?」

「ウチもお手上げ〜。もうゆーまっちにしか頼れんのよ」

「なるほど……まぁ頑張って分かりやすく説明するよ」

 

 そうして俺は2人に問題の解説を始めた。

 

 

 

 

「なるほど!そういう風に考えるのね!」

「あぁ。ここは単に公式を当てはめるだけじゃ解けないからな。まぁここまで難しいやつは中間にはでないだろ。安心していいと思うぞ」

「さすがゆーまっちやな!でも、中学の頃から、そんなに勉強できたっけ?」

「……ま、努力の成果だな。ちょっと死ぬ気でやればできるようになる」

 

 ……それはこっちの台詞だっつーの。

 東條も中学の頃は勉強ができたという印象はない。

 それが今じゃクラス3位の学力だからな。

 ちなみに1位が俺、2位が絢瀬だ。

 

「東條こそ、中学の頃こんなに勉強できたっけか?」

「あはは……ウチ、音ノ木坂を受けようとは思ってたんやけど、音ノ木坂がどのくらいの学力か知らなくて…。必死に勉強してたんだけど、やり過ぎちゃったみたいで。余裕で合格だったよ」

「なるほどね…希はそんなに音ノ木坂に行きたかったのね。この町が好きだったのね」

「あっ……うん!そうそう!」

 

 ん?今一瞬希が硬直したように見えたけど…なんだ?

 

「え、えりちは!えりちはどうして音ノ木坂を受けようと思ったん?」

「私?…私は、祖母がこの学校の出身で、私が小さい時によく話をしてくれたの。だから、割と子供の頃から高校は音ノ木坂にいくんだ!って決めていたわ」

「なるほどね〜、えりちはおばあちゃんが大好きなんやねっ」

「なっ…!か、からかわないでよ…!────わっ、悪いっ……?」

 

 最後、デレたな。ニヤニヤする東條を顔を真っ赤にして睨む絢瀬。

 なるほど、絢瀬はおばあちゃんっ子、と……

 

「しかし、集中切れてきたな……どうする?今日はお開きにするか?」

 

 時刻は6時。夏が終わり日の入りも早くなりつつある。

 

「んー…私はもう少し勉強したいかな。希はどう?」

「2人に任せるよ。でも、どうせなら場所を変えてやるのはどう?」

「ん、いいな。気分転換にもなるし、改めて集中できるかもな」

「帰りはもちろん送ってくれるよね、ゆーまっち?」

「はいはいわかりましたよお嬢様……」

 

 こうして俺たちは、場所を変えて勉強することにした。

 

 

 

 

 

 

 俺たちが選んだのは、学校から歩いて10分程度の図書館。

 ここのすごいところは学生限定で参考書の貸出を行っているところで、この近くに住む学生のテスト前の格好の勉強場所となっていた。

 専用の自習スペースを学校の生徒手帳と引き換えに予約し、俺たちは各々の席へ向かった。

 

「んじゃ、なんかあったら質問しに来てくれ」

「えぇ、わかったわ。それじゃ、また後で」

 

 そうして俺は2人と別れた。

 

 自分の机にカバンを置き、俺は本棚へと向かった。

 クラス一位とは言っても、俺は社会が少し苦手だったので、日本史のテスト範囲がわかりやすくまとめてあるような参考書を探すためだ。

「えぇと……社会の参考書は、と…」

 

 

 

 そうして本を探している時だった

 

 

 

 俺の目の前に衝撃の光景が飛び込んできたのは

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

 俺はその光景を目撃した瞬間、咄嗟に横の本棚に身を隠した。

 

 

 

 痴漢───────!

 

 

 スーツを着たやや小太りの男が、制服を着た女性の尻部を弄っていた光景が見えた。

 こんなところであるものなのか……?

 確かにここのスペースは図書館の奥の方で、かつ、カウンターはもちろん、周囲を徘徊する館員の死角にもなっている。さらに、正面から見ただけでは斜線状に配置されている本棚の死角になり、見えない。

 

 そんなことを考えて、少し頭を落ち着ける。

 改めてその現場を覗き見る。

 

 よほど恐怖を感じているのだろう、目をぎゅっと瞑り、声も出せずに男の痴漢に耐えようとする少女。

 そんな少女に興奮しているようで、少女を辱める手を止めない男。

 

 

 

冷静になれ───────

 

ここで俺がとるべき最善の行動───────

 

────下手をすると逃げられる

 

────幸い奥は行き止まり

 

俺一人での確保は不可能─────

 

────館員を呼びに行く間に逃げられる可能性がある

 

だったら──────!

 

 

 

 

 俺はスマホを起動し、メッセージアプリを呼び出す。

 2人のうち、どちらに連絡するか。

 一瞬考え、一瞬で答えを出す。

 そうして俺は急いで、かつ確実に伝わるように文面を作成し、送信する。

 

 

『東條、頼みがある────

 

 

 

 

 よし、準備はできた。

 

 後は俺がうまくやるだけ。

 

 そして俺は、痴漢と少女の前に対峙した。

 

 

 

「何してるんですか」

 

 

 

 感情を乗せない、平坦な声で問いかける。

 驚き振り返る痴漢と、目を見開く少女。

 

 

「その子、泣いてますけど」

「くっ……!」

 

 痴漢は唯一つの逃げ道である俺の方へ逃亡しようと走り出そうとする。

 

「いいんですか?俺、今の現場写真に撮ったんで、館員呼んで警察に突きつけますよ?」

「っ!!」

 

 痴漢は俺の言葉に動揺したようで、逃亡を一時中断する。

 

 

「いい年して何こんな変なことしてんですか?社会人が情けないですねー、仕事サボって痴漢に没頭ですか。しかもその地面に置かれたビジネスバック。中にカメラ仕込んでるんですよね?痴漢に盗撮。これだけのことしてんだ、バレればあんた確実に社会から消えますよ」

「う…うるさい!さっきから黙っていれば調子に…」

「あららぁ?そんな大きな声出すと、館員さん来ちゃいますよ?」

「くっ……!!このガキ……!」

 

 その時、俺の携帯に繋いでいたイヤホンから、“聞こえた”。

 よし、後は……

 

「俺って優しいですよねー、あなたのことを考えて、見逃そうとしてるんですよ。感謝して欲しいくらいで「調子にのるなよガキ!」」

 

 俺の声にかぶせる“ソイツ”に俺は遂に攻勢に出た。

 

 

 

 

 

「おい」

 

 

 

 

 

 

「ひっ…!」

 

 

 俺は初めて自分の声に感情を乗せる。

 

 

 

 正真正銘、俺の心からの怒り、嫌悪───────

 

 殺意を。

 

 

 

「今俺がしゃべってんだよ。

口を開くな変態。

てめぇみたいな奴が1番ムカつくんだよ─────

“抵抗できない弱者に手を出す奴”が

満足だったか?

何もできないその子に手を出して

愉しかったか?

自分の思うままに出来て」

 

 そして俺は“ソイツ“に向けてゆっくりと歩く。

 “ソレ”は怯えた様子でゆっくり迫ってくる俺を震えながら見ていた。

 

 

「わ、悪かった!!この子に痴漢をしたこと、本当に申し訳なく思う!だ、だから…」

 

 

 その“言葉”を聞いて、俺は計画の成功を確信する。

 

 

「そうかそうか。お前みたいな社会のクズにもまだ謝罪する気持ちなんてものが残ってたんだな」

 

 

 そして俺は“ソレ”の襟首をつかんで締め上げ、最大級の殺意を込めて言う。

 

 

 

 

 

 

「失せろゴミ」

 

 

 

 

 

 

 男はこの言葉を聞いて、すぐさま逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 俺はその場にいた少女に話しかける。

 

「もう大丈夫だよ。安心して」

 

 その声にさっきの大人を震え上がらせるような怒気はこもっていない。

 それを聞いて、少女は俺の胸に飛び込んできた。

 

「うぉっ……!」

 

 突然のことに驚愕する俺だったが、その女の子が小さく震えて、涙を流している様子を見て俺自身も辛くなる。

 特徴的な髪型、髪の色、そして近くで見ると一層際立つ、天使のような美貌。

 こんなに儚い少女が、アイツに辱められていたと思うと、再び怒りがこみ上げる。

 よほど恐怖だったのだろう、少女は声を出そうとするも、唇が震えて言葉になっていない。

 

 そして少女はほとんど聞こえない、掠れた声で、

 

 

「もう…少し………このまま、でも……いいですか……?」

 

 

 と言った。

 

 

 俺はその子の頭をそっと撫で、優しく言う。

 

 

「怖かったな……もう安心していいから。

 

 

君が泣き止むまで俺が側にいる」

 

 

 その子はしばらく俺の胸に抱かれながら、体に纏わり付いた恐怖を洗い流すように泣き続けた。

 

 

 

 

 

そして暫く経った後、少女は口を開いた。

 

「あの……」

「ん、どうした?」

「その……写真を…」

「あぁ、現場写真のこと?

 

 

──────撮ってないよ」

 

 

「えっ……?」

「さすがに女の子が痴漢されてる現場を取るのには抵抗があったからね。君も嫌がるだろうと思ったから、最初から撮ってない。あれは唯のあいつを脅すためのハッタリだよ」

 

 少女は驚いた顔をして────目に涙を浮かべた。

 

 

「えっ、泣くの!?」

「……あの状況で…そこまで…私のこと…」

「……あの状況だからだよ。あの場に居合わせたのは俺だけで、君を助けられるのは俺しかいなかった。だから俺は最善と思える行動をしただけだよ。

それに、俺一人で解決したわけじゃない」

「えっ……?」

 

 そのとき、“協力者”の二人が現れた。

 

 

「ゆーまっち!計画通り、あの男確保したよ!」

「まったく……ヒヤヒヤしたわよ…危なっかしい真似は止めてって言ったのに……」

「ん、ありがとう東條…。それに絢瀬もな」

 

 

 

 

 俺が東條に送った文面はこう。

 

『東條、頼みがある

今、この館の奥の方の本棚で痴漢があってる

周りに人いないし逃げられたら困るから

お前と絢瀬で館員に通報してくれ

でもここにきたら逃げられる可能性があるから俺が奴をわざと逃す

だから、奴が油断して館から出ようとしたところを確実に取り押さえて欲しい

髪型はシチサンわけ 丸底メガネ 大型のビジネスバッグを持ってるから一発でわかるはずだ

あと、俺があいつに痴漢したって事実も吐かせる

だから、俺の携帯と通話をつないだままにして、その通話を録音しておいてくれ

なんとか俺が時間を稼ぐから確保の準備ができたら俺に合図を送ってくれ

俺はイヤホンつけたままにしておく

お前の返信が来ても来なくても、俺は実行に移す

 

頼む気づいてくれ、信じてる』

 

 

 そう送った。そしてイヤホンを挿し、行こうと決意したそのとき。

 

 メッセージが届いた。

 

『わかった、むりしないで』

 

 

 東條と絢瀬両方に送信する時間はなかった。

 自分でもなぜかはわからないが、俺が選んだのは、秒速で東條だった。

 俺の賭けは、成功した。

 そして時間稼ぎの途中、俺は東條からの合図を受け取った。

 そこからは一挙に攻勢にでて、奴に罪を自白させた。

 俺が何を言うまでもなく、自分から言いだしたのだから笑える。

 そしてわざと奴を逃し、安心させたところを、館員が捕らえる。

 俺に最初から奴を逃がすつもりはなかった。

 物的証拠も抑え、言い逃れできなくした状態で、奴を警察に叩き込むための俺の計画。

 

 こうして俺の計画はなんとか成功したのだった。

 

 

 

 

「……ってわけ」

 

 俺は俺の計画を目の前の少女に説明する。

 

「凄い…そこまでの計画をあの短時間で…」

「本当凄いよ。でも危なっかしいんやから……ウチが気づかんやったらどうするつもりやったん!」

「…まぁ、別の方法考えてたかなー…」

「絶対嘘ね。貴方は無茶とわかって突っ込んで行ったはずよ。そういう人だから」

 

 

 うっ……バレてましたか。流石絢瀬。

 

 

 「あの……本当にありがとうございました。感謝してもしきれません…」

 「ええんよええんよ、お礼はこのバカなお兄さんに言ってあげてな」

 「おい東條っ!……はぁ、そういえば、まだ名前聞いてなかったね、なんていうの?」

 

 

「はい。

 

 

────南ことり、15歳、中学三年生です。」

 

 

 

「ことりちゃんっていうんやね。ウチらの一個下か〜。ウチは東條希!よろしくね!」

「絢瀬絵里よ。よろしくね、ことりさん」

「朝日優真だ。よろしく、ことりちゃん」

「はい、よろしくお願いします!…あの、もしよかったら……今度勉強、教えてくれませんか…?」

「ええ、私たちでよければ。いいわよね、二人とも?」

「うん、全然ええよ!」

「ああ、俺も構わないよ。……でも、今日は帰ったほうがいい。あんなことがあったんだ、家でゆっくりしたほうがいいよ。

後日、警察から事情聴取がくると思うけど、そのときは俺に連絡して。俺も当事者だから、立ち会うよ」

 

 君を1人にはしない。

 

 そういう意味を込めて俺はことりちゃんに言った。

 

「はい、わかりました……今日は本当にありがとうございました」

 

 そう言って彼女は頭を下げた。

 

「そんな何回も頭さげんでええんよ。今日はウチらが送って行くから。さ、いこ?」

 

 

 そして俺達は波乱の図書館を後にした。

 

 

 

 

 

 ことりちゃんを送り、絢瀬を送った後、東條を送ることになった。

 

「今日は大変だったな……」

「本当だよ〜。すぐ無茶するんやから、ゆーまっちは」

「ああするしかなかっただろ。放っておけなかった……。

でも、すぐ反応したな。メッセージ送ってから1分も経ってなかったぞ?」

「あはは…たまたま携帯開いてただけや。でも…

ゆーまっちがウチを頼ってくれて、嬉しかった」

 

 あの時、自分でも驚くくらい選択は一瞬だった。

 とっさに東條を選んだ理由、自分でもわからない。

 冷静になった今なら、絢瀬の方が冷静かつ確実に対応できたとさえ思える。東條が落ち着きがないというわけではないが。

 

 

 東條はさらに続ける。

 

 

「それに……なんか、昔みたいにカッコよかったよ?」

 

 

 

 そう言って俺に笑いかける東條。

 

 その笑顔は、俺が昔見た面影と重なった。

 

 

 

 




やったぜ優真!
というわけで、今回はことりちゃん初登場回でした!
これからことりちゃんが優真達三人にどんな影響を与えていくか、楽しみにしていてください!
次回も、新たなμ'sメンバーが出てきます。
今回も、ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!

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