ラブライブ! ─ 背中合わせの2人。─   作:またたね

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改めまして、またたねと申します。
今回から、ついに二期編のスタートです!


【2nd season 隣り合わせの2人】
再び始まる夢と奇跡


 

 

2期1話 再び始まる夢と奇跡

 

 

『次は生徒会長から』

 

 東京の音ノ木坂学院。

 半年前廃校の危機を迎えたこの学園は、来年度入学希望者数増加の影響により、廃校を免れた。

 それを成し遂げたのが、音ノ木坂学院アイドル研究部所属のスクールアイドル──その名を“μ's”。

 そしてそのメンバーの1人である俺、朝日優真(あさひゆうま)はこの集会の様子を、一般生徒同様座席に座って見ている。

 以前までは生徒会メンバーとして壇上後方に待機していたのだが、今回からは違う。任期を終え、俺達“元”生徒会は、新生徒会へと席を譲った。

 

 そう、この学院の新たな生徒会長は──

 

 ややあって、壇上に1つの影が現れた。

 

 緊張でぎこちないながらも、確かな足取りでステージ上のマイクに向かって歩くのは、オレンジの髪を、サイドテールで結った、空色の瞳の少女。

 そして彼女はマイクまで辿り着くと、一度だけ深呼吸をして、笑顔で前を見据えた。

 

 

 

 さあ、彼女の言葉と共に。

 

 俺達の、新たな物語が始まる──

 

 

『皆さん、こんにちは!私、μ'sの…じゃなくて、生徒会長の!』

 

 そこで彼女は言葉を切ると、マイクをスタンドから取り上げ、そのままの勢いで天高く放り投げた……って何してんだコイツ。

 

『たあっ!』

 

 そしてステップ、からのターン……の回転を利用しそのままマイクをキャッチ。いや本当に何してんの?

 そんな俺の心配をさておき、彼女は声高に叫ぶ。

 

 

 

『──高坂穂乃果(こうさかほのか)です!!』

 

 

 ──無音。拍手、歓声はおろか笑い声1つ上がらない。

 

『…………あれ?』

 

 彼女の心からの呟きが、えらく鮮明に聞こえた。

 そっと舞台袖に目をやると、頭を抱えている少女と、苦笑いで穂乃果を見つめる少女の姿があった。

 

 ……俺達の物語が、は、始まる……?

 

 

 

 

「穂乃果ッ!!何ですか先程のアレは……!」

「ご、ごめんってば海未ちゃん……」

 

 集会後、生徒会室で穂乃果の幼馴染である新副会長の園田海未(そのだうみ)が穂乃果に大目玉を食らわせていた。スピーチに戻った穂乃果は、“事故(自己)”紹介で行ったパフォーマンスが原因でスピーチ内容を“トバ”してしまい、中身も何もないスピーチをやってしまった。故に原稿を考えた海未は穂乃果に激怒しているのである。

 

「ま、まぁ海未ちゃん落ち着いて……穂乃果ちゃんだから仕方ないよ」

「うわーーん!ことりちゃ〜ん!!」

「ことり!またあなたはそうやって穂乃果を甘やかして……っ!」

 

 そんな2人の間に割って入ったのは、もう1人の幼馴染である新生徒会書記の(みなみ)ことり。彼女はその優しい性格から非情になれず、穂乃果のフォローに入った。

 

「先輩方も何か言ってやってください!」

 

 海未はたまらず、俺達にフォローを求めた。

 

「……まぁ、お世辞にも褒められたスピーチではなかったわね」

 

 そう穂乃果のスピーチを評したのは、元生徒会長の絢瀬絵里(あやせえり)。俺が高校に入り、一番最初にできた友人だ。

 

「そう?ウチは穂乃果ちゃんらしくて良かったと思うけどな〜?」

 

 そう言って笑ってみせたのは、元副会長の東條希(とうじょうのぞみ)。俺の幼馴染で、現在俺の恋人でもある、俺の大切な人だ。

 

「まぁ海未ちゃん、今回は許してあげたら?穂乃果ちゃん、昨日も遅くまで残ってスピーチの練習してたらしいやん?」

「えへへ、まぁね!」

 

 希の言葉に、穂乃果は満面の笑みでピースサインを返した。

 大方の……というか本人以外のμ'sメンバーの予想を裏切り、穂乃果はしっかりと仕事をこなしているのだ。スピードは遅く非効率的で、海未とことりの助けを借りながらではあるが、2人に丸投げすることなく、自らも積極的に業務に参加しているという。流石自ら生徒会長に立候補しただけのことはある……というか普通の人ならそれが当たり前なのだが。

 

「ですが希、ここで甘やかしては……」

「大丈夫や……穂乃果ちゃん、もし次何かミスしたら、練習2日参加させんからね」

「え゛っ」

 

 希の支援を受け、勝ち誇ったように笑っていた穂乃果の表情が固まった。

 

「そんなぁ!ひどいよ希ちゃん!信じてたのに!」

「──いつからウチが味方だと錯覚していた?

……なんてね♪皆に迷惑かけたのも事実なんやから、しっかり反省せんとね。次は頑張るんよ?」

「はーい……」

 

 一瞬希から某ヨン様みたいな霊圧を感じたが、きっと気のせいだろう。こんな感じで(?)穂乃果と海未の諍いを鮮やかな手腕で宥めるのも彼女の得意技であり、俺たちの日常風景でもある。

 言い忘れたけど、ここにいるのは皆μ'sのメンバーで、この場の5人含め後4人の計9人が音ノ木坂学院のスクールアイドル、μ'sだ。

 

「んじゃ、俺達もう戻るわ。頑張れよ」

「あ、はーい!来てくれてありがとう、3人とも!」

「おう」

 

 笑顔で手を振ることりに会釈を返し、俺達は生徒会室を後にしようとした……のだが。

 

 

 ──ガチャン!!

 

 

 乱暴な音を立てて、ドアが開かれた。

 

「みんな!!」

「っと……お前ら、どうしたんだ全員揃って」

 

 入って来たのは、残りのμ'sメンバー4人。

 

「……優真、大変よ」

「どうしたんだよ、にこ……」

 

 膝に手を当て、肩で息をしながら俺に話しかけて来たのは、3年生の矢澤(やざわ)にこ。アイドル研究部の創設者で、部長でもある。

 

「……あるわよ、“もう一度”」

「もう一度……?」

 

 呼吸を整えるので必死なにこに代わって俺に続きを述べたのは、1年生の西木野真姫(にしきのまき)。圧倒的歌唱力と、天性のツンデレを兼ね備えた彼女は今、普段の冷静さを微塵も感じさせないまま、必死の形相で俺へと訴えかけてくる。

 

 

 

「……もう一度、もう一度……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう一度!」

「『ラブライブ!』!?」

 

 俺含むμ's全員が集まった部室で告げられた事実に、絵里と希が驚きの声を上げた。

 俺も声こそ上げなかったものの、2人同様大きな衝撃を受けたことに変わりはない。

 

「そうなんです!!A-RISEの優勝を以って終了した第一回『ラブライブ!』、感動のフィナーレもそこそこに、早くも第2回大会の開催が決定したんです!!!」

「は、花陽落ち着」

「これが落ち着いていられますか!?!?今回は前回を上回る規模で、会場の広さは数倍!ネット配信の他、ライブビューイングも計画されています!!アイドル史に残る伝説が、再び幕を開けようとしてるんですよ!?こんなのって、こんなのって!!!……最っ高……」

「……いや、“オタ陽”か」

「り、凛はこっちのかよちんも……ってもういい加減むりだにゃーーー!!!」

 

 恍惚の笑みでその場に崩折れて涙を流すのは、俺の大切な幼馴染の1人、小泉花陽(こいずみはなよ)。アイドルとお米が大好きなこの天使は、この2つが絡むと人格が変わってしまうというなんとも可愛らしい(?)欠点を抱えている。

 そんな花陽の様子に耐えられないというように叫ぶのは、もう1人の幼馴染、星空凛(ほしぞらりん)。俺や花陽とは親友という言葉も緩いような友情で結ばれた彼女であっても、今の花陽の状態は救いようがないらしい。

 

 そんな俺たちに見向きもせず、花陽は声高に話を続ける。

 

「今回は前回のランキング形式ではなく、各地で予選が行われ、各地区の代表が本線に進む形式になりました!!つまり、今までのランキングによるアドバンテージは全くナシ!!私たちにも本大会出場のチャンスがあるということなんです!!」

「凄い……!」

「これって、凄いチャンスなのでは……?」

 

 花陽の力説に、ことりと海未が目を見開いて驚いている。

 

「こんなまたとないチャンス、やらない手はないでしょ?」

「あったりまえでしょ!!やるしかないってわけよ!」

 

 真姫の言葉に、にこが強く賛同する。

 皆が浮かれた様子の中で、俺だけ……いや、俺と絵里だけはその事実に気づいたようだ。

 

「……待って」

 

 盛り上げムードに、絵里の冷静な声が水を差す。

 

「どうしたん?えりち」

「地区予選をやるってことは──()()A()-()R()I()S()E()()()()()()ってことじゃ……」

 

 瞬間。

 しん、と部室が静まり返る。絵里がしまった、と顔を歪めるももう遅い。俺は言わないままでもいいかと思っていたが、口にしてしまったなら仕方ない。

 

「……そうだな。俺達が本大会に出るなら、A-RISEを超えて行かなきゃならないな」

「そんな……」

 

 ことりの呟きが、部室に響く。

 皆もどこか諦めムードに入ってしまったようだ。まぁそうだ、相手が前大会の優勝者……“絶対女王”A-RISEとあっては、そうなってしまうのも無理はない。

 

 だが。

 

「だからって諦めるのか?」

「えっ……」

 

「やる前から諦めて、何か生まれるのか?確かにA-RISEは強敵だが、それは逃げ出す理由にはならないだろ?」

「……優真先輩の言う通りです。エントリーは自由ですし、挑戦してみるのもいいと思います。穂乃果もそう思うでしょう?」

 

 海未の問いかけで、皆が穂乃果の方を見た。

 確かに穂乃果なら、やる前から諦めるなんて真似はしようとしないはず。

 穂乃果が今までのように俺達の道を照らしてくれるなら、皆も戦おうとする意思が芽生えるのかもしれない。

 

 俺と同じような期待を、海未も抱いたのだろう。だからこそ、穂乃果に声を掛けたに違いない。

 

 

 しかし。

 

 

 穂乃果の口から出た言葉は、とても想像のつかないようなもので。

 

 

 

 

「──出なくて、いいんじゃない?」

 

『えっ?』

 

 

 

「『ラブライブ!』。出なくてもいいんじゃない?」

 

 

 

 

 

 誰しも予想が出来なかった穂乃果の言葉。

 

 俺達の未来は、不安な先行きで始まった。

 

 




二期編ですが、一期、1.5期編で散りばめられた伏線を回収していきます。お時間があれば、どうぞ読み直していただけると二期編をより一層楽しんでいただけると思います。
と、言うわけでアニメ二期1話のお話でした。朝日優真と言う少年がいるラブライブ二期の物語を、どうぞお楽しみに!

今回もありがとうございました!
感想評価アドバイスお気に入り等、お待ちしております!

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