ラブライブ! ─ 背中合わせの2人。─   作:またたね
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良いお年を……と言ったな、あれは嘘だ。



衝突

 

 

5話 衝突

 

 

「……」

 

 部室を包む沈黙。

 優真と希が部室を後にしてからしばらく経ち、凛が持ち出した疑問に答える声は、1つも上がらない。

 私…絢瀬絵里含め残されたメンバーには、余りにも重すぎる問いだった。

 

「……凛は、凛はね」

 

 沈黙に耐えかねて口を開いたのは、先程疑問を提示した凛本人だった。

 

「出ない方が……いいんじゃないかな、って」

「凛……」

「もちろん出たいよ、『ラブライブ!』。でもA-RISEには……中西光梨さんがいるんでしょ?もう優兄ィと希がその2人と関わる必要はないよ。せっかく2人とも幸せになれたのに……そんなのって、あんまりだにゃ……」

 

 凛は泣きそうになりながら、言葉を紡いでいく。そんな凛の言葉に納得するように──

 

「……私も」

「凛の言うことに、間違いはないと思う」

「……こればっかりは、仕方がないと思います」

 

 ことり、真姫、海未も同意の言を述べた。

 にこと花陽と穂乃果は俯いて何も言わないものの、考えていることはおそらく私たちと同じ。

 

 そして、私も──

 

 

「──みんなごめんね」

 

 

 やけに大きく響いたドアの開く音、その先には優真と希の姿があった。

 

「希……!もう大丈夫なのですか?」

「うん。心配せんでもええよ」

「優兄ィ、希ちゃん本当に大丈夫なの?」

「あぁ。むしろ、さっきより元気かもな」

「え……?」

 

 優真の言葉の意味がわからないと言うように、凛が疑問の声を漏らす。

 その説明とばかりに、希が笑顔で皆に告げた。

 

「──みんな、出ようね、『ラブライブ!』」

 

「!」

「希、ですが…!」

「みんながウチのこと心配して、出ないって言うんじゃないか、って思ってたんやけど、その通りやったみたいやね」

 

 ふふ、と笑った後希は皆の顔を見回す。

 そして改めて続きを繋いだ。

 

「ウチはもう逃げないよ。光梨ちゃんから、自分の過去から。だからみんな……ウチにその機会を下さい。みんなの力を、貸してください」

 

 希が深く頭を下げる。

 僅かな時間で、希は覚悟を決めたみたい。

 だったら、私たちは。

 

「顔を上げなさいよ希」

「にこっち……」

 

 私を口を開こうとした刹那、先に希に声をかけたのはにこだった。

 

「アンタがやるって言うなら、私達に止める理由なんてあるわけないじゃない。もともと覚悟は決まってたんだから後は突っ走るだけよ」

 

 にこが希に笑いかける。それを受けた希は、目に見えて表情が明るくなっていく。

 

「うん……!ありがとう、にこっち。みんなも……いい?」

 

 誰も声は出さない。しかし希を包む柔らかな笑顔が答えだった。

 

「……ってなわけで、俺たちはこれまでと変わらず『ラブライブ!』を目指す。んで、A-RISEと戦って、俺と希の過去にケリをつける。そういうわけだ」

「負けられない理由が増えたわね」

「そっちの方が燃えるよ、真姫ちゃん!」

「穂乃果ちゃんはテンション上がりすぎだよ…」

 

 ことりのツッコミに、今度こそ皆が声を出して笑う。先程までの沈黙は、最早露ほどにも姿を見せなかった。

 

「……それで優真、さっき花陽が纏めてくれた変更点なんだけど……」

「ん、あぁ。聞かせてくれ」

 

 先程まで話し合っていた内容を、優真に伝える。一通り聞き終わると、彼は表情を険しいものへと変えた。

 

「……確かに厄介だな。練習と並行してやることが増えそうだ」

「でしょ?私達からは特に解決案は無し。優真は何かある?」

「ん……パッと思いつくような名案は無い、かな。それも含めて、これから話し合っていこう。昼休みもそろそろ終わるし、とりあえず今は解散、ってことでどう?」

「そうね……また放課後話し合いましょう」

「よし!んじゃ今後の目標は地区決勝出場目指して新曲の練習!それと並行して場所探し!やるぞ!」

 

 おー!と声が響く。やることは決まった。

 目標新たに私たちは、部室を後にした。

 

 

▼▽▼

 

 

 A-RISE波乱の記者会見から1週間後。

 動乱に包まれたスクールアイドル界隈もそれなりの沈静化を見せ、どのグループも2週間後に迫った地区予選に向けて努力を重ねているだろう。

 

 無論それは俺たちμ'sも例外ではない。

 改めて『ラブライブ!』を目指すと決めてから1週間、新曲を詰めていく為の練習をみっちりと行い、このまま行けばかなりの完成度を誇る曲になるという確信を俺は抱いていた(メンバーには伝えず、このままではダメだと尻に火をつけ続けているが)。元々俺たちは新曲を予選に出すつもりだったので、ある程度のスタートダッシュを切れていたのが非常にデカい。

 モチベーションも十分、順風満帆に見える俺たちにも、決して無視できない目の上のタンコブがあった。それは──

 

 

「あーもう!!1週間よ1週間!!」

 

 

 最早練習終わりの恒例となった部室での話し合い。そこで痺れを切らしたかのように声を荒げたのはにこだった。

 

「1週間も経つのに何で場所ごときが決まんないわけ!?何かいい案はないの!?」

「にこちゃんだって『アイドルらしくない』とか『ラブリーが足りない』とか変なこと言って拒否するばっかでアイデア何も出さないじゃん!」

「そうだにゃ!!たまにはにこちゃんもなにかアイデア出してよ!」

「うるさいわねぇ!生意気なのよアンタ達!」

 

 珍しく的確な指摘を見せる単細胞コンビ。

 これが勉強面や日頃の行いに現れてくれればどれだけ楽なことか……。

 

 ……こんな下らぬ悩みに思考をすり替えてしまう程には、俺たちの問題は深刻だった。

 

 1週間あれば場所なんて決まる。

 そんなことを考えていた俺……いや俺だけじゃない、皆の認識は大いに甘かったと言える。

 

 場所を選ぶということは、ただ選べばいいというわけではない。俺たちの曲にあった場所、そうでなければ動画としての価値が著しく落ちる。故に空き地や街中でのライブを選ぶことが出来ず、かといってホールや仮設ステージを抑えようとするとのしかかるのが、俺たちにはどうしようもない費用面の問題だ。

 元々廃校寸前だった音ノ木坂に、ホールを額をアイドル研究部に融資するほどの余裕はなく──根本的に与えられた部費以上の活動をすることが認められていないが──これからのことを考えると部費を散財するわけにもいかない。学生向けに貸し出される市外の町のステージも、俺たちがそれに気づいた時にはすでに他のグループが借り抑えていた。流石激戦区東京、場所取りからすでに戦いは始まっている。

 

 まぁつまり。

 

 ──八方塞がり、ってやつだ。

 

 

「どうすっかなぁ……」

「こんなところで躓くなんて笑い話にもならないわよ!何かいい案はないの!?」

「だから……なんでにこちゃんが偉そうなのよ」

 

 にこが声を荒げてしまうのも無理はない。

 まだ2週間あるとはいえ、もう2週間しかないのだ。早いうちに場所を決めて安心しないと、今後の練習にも支障が出てしまうかもしれない。

 どうしたものかと考えていると──

 

 

「はいはい、みんな落ち着いて」

 

 

 パン、と手を叩くとともにその場を宥めたのは希。彼女には何か考えがあるようで、いつものような優しい笑みで希は皆に言う。

 

「とりあえず、みんなで街に出てみん?息抜きも兼ねて、ね」

「街に……?」

「最近練習しっぱなしやし、ここで話し合うだけじゃ気づかないこともあるかもしれんやん?一旦街に出て、自分たちの目で歩いてみることで何か見つかることがあるかもしれんよ?」

「……確かにそうだな」

 

 希の意見に肯定を示す。

 ここでモヤモヤしたまま話し合っても埒があかない。それならば気分転換がてら街を歩いて場所を探す方がまだ幾らか建設的だ。

 

「とりあえず、今日はみんなで街を歩きながら場所を探そ?見つからんくても、何かヒントがあるはずやから」

「そうね、希の言う通りだわ。今日はみんなで、パーっといきましょう」

「何で仕事帰りのおっさんみたいな言い方してるのよ、絵里」

「でも真姫ちゃん、みんなで遊びにいくのって久しぶりだね!ワクワクしてきたよ!」

 

 希の提案に、皆の雰囲気が目に見えて明るくなった。それだけでも、希の狙い通りといったところだろうか。

 

「んじゃ、今日はみんなでパーっと行こうや!」

「なんでアンタまでおっさん化してんのよバカ」

 

 

 

 

 

 

 街に出て1時間ほど。

 ゲームセンターやアイドルショップを見て回った俺たちは、クレープを片手に街道を歩いていた。

 

「場所、見つかんないねー」

「でも、気分転換にはなったよね!」

 

 穂乃果のぼやきに、ことりが笑顔でそう答える。やっぱことりはマジ天使。

 

「……どう?優真。何かいい案浮かんだ?」

 

 絵里が問いかけてくるも、俺に出来るのは渋面を返すことだけ。

 

「現状を打開する名案は何も。ただ俺たちの想定以上に場所が残されてないことはわかった」

「そうね……」

 

 そうして歩いていると、とある場所が目に留まる。

 

「UTX学院……」

「……A-RISEはどこで歌うのかしらね」

「さぁな。俺たちと違って資金も潤沢なアイツらは、場所に困ることなんてないだろうさ」

「……あれ?」

「ん、どうした花陽?」

 

 

「──穂乃果ちゃんが居ないの」

 

 

「え……あ、本当だ」

「どこに行ったのかしら」

「あいつにしては珍しく音もなく消えたな」

 

 ざっと辺りを見回してみるも、穂乃果らしき姿は見当たらない。

 

 ……どこ行ったんだ?あいつ。

 

 

 

▼▽▼

 

 

「うう……みんなどこ行っちゃったんだろう」

 

 優真たちが穂乃果が居ないのに気づいたのとほぼ同時刻。

 穂乃果もまた、皆と実はそう遠くない場所で逸れてしまったメンバーの姿を探していた。

 街頭でふと見つけた、A-RISEのポスター。それを見て彼女たちはどうするのだろうと考え込むこと数十秒、ふと気づけば残りのメンバーの姿はなく、今に至る。

 

「こんな地元で迷うなんて恥ずかしくてたまらないよ……」

 

 そんなことをぼやきながら歩いていると──

 

 

「──見つけた!」

 

 

 突如穂乃果の正面に現れた少女。穂乃果を見つけるやいなや喜びを滲ませた声を発した。

 

 

「やっと見つけた!高坂穂乃果ちゃん!」

「え……あっ!あなたは……!」

「まぁまぁ!さ、こっちこっち!」

「へ、わ、ちょ、ちょっとーー!!」

 

 少女は穂乃果の腕を掴むと、強引に駆け出して行った。

 

 

 その表情は、天使のような笑顔で、かつどこか歪んで見えたという。

 

 

 

▼▽▼

 

 

「穂乃果ー!」

「穂乃果ちゃーん!」

 

 俺達が穂乃果を探し始めて数分経つものの、彼女の姿は見当たらない。

 いくら穂乃果とはいえ、事情も話さずに俺たちの前から急にいなくなるなんてことは考えられない。何かトラブルやアクシデントがあったに違いない。

 

 

「あ、穂乃果ちゃんだにゃ!」

 

 叫びながら指を指す凛。

 凛が示した方を見ると、確かに穂乃果の姿があった。しかし……

 

「……あと1人、いる…?」

「穂乃果を引っ張って行ってるみたいだけど……」

「向かってる場所は……UTX、かしら」

「そう見たいね。制服もUTXだし」

「っ!!希!!」

「うん!!」

 

 穂乃果の腕を掴んでUTXへと向かう1人の少女の姿が目に入った瞬間、俺と希は一目散に2人の元へと駆け出した。

 

「ちょ……優真、希!?」

 

 絵里の声を後ろに感じるも、振り返る暇はない。

 

 

 ふざけんな。

 

 そんなところで、何をしてる。

 

 

 ───中西、光梨……!!

 

 




実は次の話も明日投稿されます(ボソッ

今回もありがとうございました!
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