夜空の武偵   作:トナカイさん

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本日から5月3日まで更新は止まります。


Ammo06。囚われの少女

あの後、意識を取り戻したヒルダに対超能力者用の手錠をかけて拘束した俺はヒルダを連れて森を駆け抜けた。森から出ると目の前には湖が広がっていた。太陽の光がキラキラと反射する綺麗な湖にも驚いたが眼前に聳え立つ城を見て、さらに驚きの声を上げてしまう。

 

「うわぁ、如何にも……って、感じな古城だなぁ」

 

「おほほほっ! どう、驚いたかしら? この優雅に聳え立つ城こそ、我が吸血鬼(バンピュラス)の居城『アルカード』よ」

 

ヒルダが高笑いしながら自慢げに告げる。なるほど。自慢したくなるわけだな、こりゃあ。

その城はとにかくデカかった。映画『ハリー◯ッター』に出てくるホ◯ワーツ城並みの大きさの城が湖のど真ん中に建っているのだ。

城の周りを囲むように湖が広がっていて、城に行くには湖に架かる橋を渡る必要がある。周辺の森には狼がいる為、地理的に攻めにくい造りになっている。

 

「随分古そうな城だけど、どのくらい前に建てたんだ?」

 

敵情を知る話題を振るチャンスだと思い、まずは城の内部情報を吐かせようかとヒルダに聞いてみると。

 

「さあ? 詳しいことなんか解らないわ。興味もないし。私が生まれる前には建ってたみたいだし、お父様はほとんどこの国から出たことがないと仰っていたけど、この国に吸血鬼(私達)がいることが伝わってから少なくとも600年は過ぎてるんじゃないかしら?」

 

ろ、600……年?

あまりのスケールのデカさにクラっときた。

さも当然と言った感じで話すヒルダだが、普通の人間な俺の感覚からすると、目の前の城は荒らしてはいけない貴重な文化財に見えてくる。

(これ、中でドンパチやって、後で国や保護団体から苦情来ないよな?

遺跡を荒らした危険人物扱いされるとか……嫌だぞ?)

 

「中に住んでるのはお前とブラドだけか?」

 

「ええ、そうよ。ふん、なるほど。私達の情報を聞き出そうといった魂胆ね? 本来なら下等な人間であるお前には何も教えないところだけど……いいわ。特別に教えてあげる。

城にいるのは私とサヨ……お父様だけよ」

 

ふむ、やはり、原作同様。ブラドは小夜鳴に擬態してるのか。

つまり、小夜鳴を捕まえることが出来ればブラドとの戦闘は回避出来る可能性があるってわけで……。

なーんて、都合のいい展開を期待していたが。

現実はそんなに甘くなかった。

 

______ズズッン!!!

 

まるで巨大地震が襲ってきたかのような衝撃が城の前にいた俺達に襲ってきたからだ。

これは⁉︎

 

「地震か? ヨーロッパなのに……」

 

「ふ、ははははっ! 地震? あはははっ! 面白いことを言うのね。地震なんかではないわ。もっと恐ろしいものよ。さあ、来るわ。来たわよ。

さあ、彼が来たわよ(・・・・・・)!」

 

ヒルダの声と共に聞こえてきたのは、かなり激しく動き回る筋肉の音。

人間のではない。それは人間を遥かに超える量の筋繊維、そしてバネをしならせて、動く巨体。

筋と肉が間接を擦り合わせる音。そういった音がヒルダが上げた声と共に聞こえてきた。

 

(人間じゃない。人間でこんなに筋肉を鍛えるなんて、一部の人達を除いて不可能だ。そもそも身体の造りからして違う。さっき戦ったヒルダは人間態と変わらない形態だったから、人間と同じような感じだったけど、これは違う。人間じゃない。人間を超越した存在。

まさに______)

 

______ズシーン!!!

 

強い衝撃が俺達を再び襲う。

ガラガラっと、何かが崩れる音が聞こえ、見ると城壁の一部が崩壊していた。

人1人通れそうな穴が分厚い城壁の向こう側(・・・・)から開いている。

地震で壊れたのではない。

壁の向こう側から強い衝撃を放たれたんだ。

 

「おほほほっ! ごらんなさい、アレを」

 

ヒルダの視線の先に顔を向けると、そこには巨木に木の幹が突き刺さっていた。

それはまるで巨大な木の長槍。

それが巨木の幹に真横に突き刺さっていたのだ。

なんだ、これ?

 

「あれはお父様が遊びで投げた木の幹よ。目覚めの暇つぶしにああして身体を動かされているの。人間でいうダーツ遊び。どんな巨木も変身したお父様にとってはただのダーツの矢と同じことよ」

 

吸血鬼の暇つぶしはダーツ遊び?(それも巨木限定)

ダーツの矢代わりに巨木投げ飛ばしちゃうとか……自然保護団体が知ったら卒倒しそうだな。

まあ、あのブラドならさもありなん、だな。

などと考えていると再び……

 

______ズシーン!!!

 

穴の中から、木が吹き飛んできた。

 

「……マズイわね」

 

ヒルダが顔を青くして呟く。

 

「何がマズイんだ?」

 

「何でもないわよ。ええ、決して下等な人間に捕まった事実をお父様に知られたくないとか、そんなこと思ってないわ!」

 

あ〜なるほど。つまり。

 

「ああ、ブラドにバレるのが怖いのか?」

 

「っ〜⁉︎ ち、違うわよ。そんなことは決してないわ。ただ、下等な人間に捕まった事実を知られたくないだけよ!」

 

「凄んで怒鳴り散らしても、超能力封じてるから怖くねえよ。

つうか、その下等っていい方止めろ。人間ごとき(・・・)に捕まった下等な吸血鬼さんよ?」

 

「っ〜⁉︎ 言わせておけば……下等な人間の分際で!」

 

「その下等な人間に負けたのはどこのどいつだよ」

 

「負けてないわ。ちょっとしくじって捕まっただけよ。ええ、私はまだ全力を出してなかったもの! 天気がいい日(・・・)に戦えば絶対に私が勝つわ!」

 

ヒルダが言う天気がいい日にか……そんな日には戦いたくないが、いざ戦いになったら……そん時は。

 

「その自信はどっから来るんだよ……まあ、いいけどさ。それじゃ、今回の件が終わったらまた人間(辞めた人間(キンジ))と戦えよ。そして、白黒付けろ!」

 

逸般人なキンジに丸投げだ!

 

「言われなくてもそのつもりよ」

 

赤い目で俺を睨むヒルダ。そんなに睨まれたらゾクゾク……しないけどさ。俺、N(ノーマル)だし。

高圧電流流されても『痛い』っていう感覚はなかったけど。むしろ、筋肉がほどよく解かれて気持ちいい……もっと、もっと流してー、って感じ……いや、止めよう。それ以上考えるな。感じろ!

解りやすく例えるならマッサージ……そう。電気マッサージを受けた感覚だ。そう思うこと自体は別におかしいことじゃないはずだ。俺は決してアブノーマルじゃない! ただ電流を筋肉で受け入れただけだ!

と、こんな馬鹿なこと考えていたが、そんなことよりも重大なことがあったと、ハッ! と我に返る。

高圧電流で思い出したけど。さっき受けたヒルダの電撃はまだ身体の中に残ってる。

高圧電流で身体強化する技『雷神』。

その技は電流を体内に帯電させることも出来るから、数十分間は身体強化される状態になっている。

そしてそれは今も続いていて、体感的にあと……10分は余裕でいけるな。

よし、あと10分以内に行方不明のアリスの姉を見つけてやる!

それさえ出来れば依頼達成で吸血鬼の居城(この場所)からオサラバできるからな!

ブラド?

それはらんらんと綴、父さん達大人に任せる。

『武偵憲章1条。仲間を信じ、仲間を助けよ』。

その教訓をもとに。

らんらんと綴、父さん達大人を信じて(・・・)俺は俺の依頼を達成することにする。

決して吸血鬼と戦うのが面倒だから、とか。悪目立ちしたくない、とか。そんな理由じゃない。理由じゃないったら理由じゃない!

もともと吸血鬼と戦うのは乗り気じゃなかったし、今はこの城の隅から隅まで知り尽くした優秀な案内役(ヒルダ)もいることだし。それに俺の役目は陽動。戦場を引っかき回し、混乱させること。その役目は終わった。ここからは効率的に動いた方がいいんだ。

俺は任務を遂行してるだけ。そう、これは効率的に動いているに過ぎないのだから。

うん、そうだとも。

俺はあくまで、『受けた依頼をこなす、ただの武偵見習い』に過ぎないんだから。

だから俺はヒルダに優しく(・・・)お願いした。

 

「ねえ、ヒルダ。この城に閉じ込めてる少女がいるなら、そこに連れて行って欲しいなぁ?」

 

純化銀弾(ホーリー)が詰まったマガジンを再装填したDE(デザートイーグル)を眉間に突きつけて。

これは決して脅しじゃない、喧嘩早い蘭豹達と比べたら断絶優しいお願いの仕方だ。

さあ、ヒルダ。道案内よろしくね?

 

 

 

そうして。

ヒルダに案内された俺は城の地下道を歩いている。地下道は暗くてジメジメしていて、寒い。

ヒルダにもうちょっとマシな道はないのか! と文句を言ったが。

「あら、こんなに暗くてジメジメして、涼しい快適な空間は他になくてよ?」なんて、驚きの発言が返ってきた。糞、蝙蝠女め! お前らの感覚で語るな! 吸血鬼はやはり、人間とは感性が異なる生き物らしいな。

吸血鬼にとっては過ごしやすいのかもしれないが、人間にとっては劣悪な環境だぜ。

 

「さあ、着いたわ。この先が飼育小屋の入り口よ」

 

ヒルダは大きな鋼鉄製の扉の前で歩みを止めた。

飼育小屋。

その言葉で思い浮かべるのは、牛や豚、鶏などの家畜だが、きっと俺が思い描くものとは違う。

この先(・・・)にいるのは、吸血鬼にとっての(・・・・)家畜だから。

 

「ちゃんと生きてるんだろうな?」

 

「当然よ。死んでたら新鮮な生き血が飲めなくなるじゃない? 馬鹿なの? 筋肉しか取り柄がないのかしら?」

 

ヒルダのその言葉にイラっときたが、ここで殴ってもスッキリしないので今はガマンしておく。

スカッとするにはそれ相応の場面を用意しないとな。そう、例えば筋肉馬鹿な爺ちゃんとタイマンとか。圧倒的な筋肉で叩き潰されたりする場面(シチュエーション)とか。ヒルダを泣かすプランを練るのも面白そうだ。

 

「……お前は後で殴るのは確定事項として、この中で金髪の少女は何人いる?」

 

「ッ……! やっぱり(・・・・)アイツが目当てだったのね。知ってるのに尋ねるなんて、いい性格してるわねー」

 

「いいから答えろ!」

 

「……二人よ。二人とも珍しい血液型だから生かしてあるわ」

 

ギギギィと、奥歯を噛み締めながらヒルダは答える。

悔しいんだろうな。格下と思っていた人間に負けた挙句に、自分達にとって、有能な遺伝子と血液型を持つ子供を奪われようとしているのだから。

 

「そっか。よかった。助けられる……」

 

ふー、とりあえず生きていてよかった。死んでたらアリスに『嘘つき呼ばわり』されるからな。

無事で一安心だ。

さあ、さっさと助けてトンズラするか!

そう思い、俺は鋼鉄製の扉の前に立ち、背中に差した木刀を抜いて構えた。

『雷神』は継続中だ。今の状態は言うならば……『雷神モード』。

身体中に溜めた電気を流して解き放つ、生体電気を利用したモード。

その溜めた電気を木刀に流すイメージをする。

よし、行くぞ!

 

「ア◯ンストラッシュ!」

 

天高く掲げた木刀を振り下ろし、思いっきり扉に叩きつけた。

 

スパァーン!

 

木刀に籠めた力はだいたい50%くらい。

『雷神モード』発動中だから常人の125倍くらいの出力で扉をぶった切った。

ちなみにア◯ンストラッシュと掛け声を出したが、型も振りも全く違う。

掛け声だけのなんちゃってア◯ンストラッシュだ。

それにしても常人の125倍の出力は凄まじいな、鋼鉄製の扉はまるで豆腐のようにスパァッと斬れたぞ。

しかし、これでは斬れた木刀が凄いからなのか、『雷神』で身体強化したからなのか、どっちが凄いのかいまいち解らんな。うーむ。

 

「な、何をしたのよ、今……」

 

『今、私の目の前で何が起きたの⁉︎』と、俺の周囲ではわりとよくある反応をヒルダがしたが、俺自身特別なことは何もしていないので答え難い。

ただ単に、身体強化した身体で手にした木刀を振り下ろして、扉をぶった切っただけだからな。

それも、感触的には箸で豆腐を切る感覚に近い。

特別なことは何もしてない。

 

「別に大したことじゃない。ちょっと木刀で扉を切り裂いただけだ。こんなの誰でも出来ることで、おかしくはない」

 

「いえ、おかしいわよ⁉︎」

 

吸血鬼に突っ込まれた。

そんなにおかしいか?

 

「いやいや、世の中には木刀で真剣と渡り合う侍とか、何でも斬れる刀(ただしコンニャクはダメ)とかあるから、別におかしくは……」

 

「比べる基準がおかしいことに気づきなさいよ⁉︎」

 

くっ、存在自体がおかしい吸血鬼に突っ込まれるとか……なんなのもう。

 

「仕方ないじゃないか! 身内に駆逐艦沈めちゃった祖父とか、人間辞めた人間(Rランク武偵)とかいればそりゃあ、鋼鉄製の扉くらい斬れるようになるよ!」

 

「普通はそうならないと思うわ。本当に人間なのかしら? 人間にしてはいろいろおかしいわ。気のせいだと思っていたけど貴方からは私達に近い匂いを感じるし。まるで似ている(・・・・)存在のような……。

まあ、気のせいよね。それはともかく貴方も苦労してるのね……ぐすん」

 

おや? (ヒルダ)の目にも涙が。

あれ? もしかしてヒルダさんいい人?

というより、あんがいチョロい人?

なーんて考えていると。

ジトーと、ヒルダは俺を睨み付けてきた。

くっ、鋭いな。ヒルダの癖に。

ヒルダの癖に……。

 

「なんだか、とっても馬鹿にされた気がするわね。

まあ、いいわ。アイツのいる場所ならあっちよ」

 

そう言ってヒルダが指差す。

その手の手首には手錠がかかったままで、一応逃亡防止の為にヒルダに付けた手錠と俺の手首に付けた手錠との間は鎖で繋がっている。

 

「あっちか。行くぞ!」

 

俺はヒルダが指差した方向に向かって駆け出した。

木刀を手にしたままなのでガンダールヴの速さで駆け抜ける。

手首が少し重く感じるが、走れないほどの重さではない為、強引に引っ張りながら走った。

 

「え、ちょっ、ちょっと待ちな……ヒャアアア!!!」

 

ヒルダが何か叫んでたが、よく聞こえん。まあ、放っておいても大丈夫だろう。ヒルダだし。吸血鬼(ヒルダ)ならそう簡単に死なないから多少乱暴に扱っても問題ないしな。

そんなことより……待ってろよ、理子達。今いくからな!

今、助けに行くよ。

 

「 いたら返事しろ______‼︎ 理子____________‼︎」

 

アリスの姉は名前は書類で知ったが容姿が解らないので、とりあえず容姿も解る理子の名前を叫んでみた。

狭い地下道を走っていると、その声が聞こえた。

 

「______‼︎」

 

いる。誰かいる。

声が聞こえた場所へ向かって全力で走ると、一つの牢の前に辿り着く。

その牢の中に……居た。

一人の囚われの少女が。

ボロボロの服だか、布切れを身に纏ったガリガリに痩せた金髪の少女。

長い間こんなところにいたせいか、くすんで見えるが、よく見ればその髪の色はもともとは美しい金色(ハニーゴールド)だと解る。

それを短いツインテールにしたその少女は間違いなく。

 

(______峰・理子______!)

 

大怪盗の血を引く、この世界のヒロインの一人だ。

その彼女が目の前にいる。

そんな彼女がボロボロの布切れを纏った姿で軟禁されている。

その事実を、その姿を目にした俺はとりあえず、引きづるようにして連れてきた(何故か気を失っていたが)ヒルダを足蹴しておいた。

 

「@tgdjjwja?」

 

そんなことをしていると理子は何やら驚いたような声を出したが、すまん、何を言ってるのかさっぱり解らん。人間翻訳機の蘭豹を連れてくるんだった……失敗したな。

何やらヒルダを足蹴した俺に驚いているようだが、アレか?

「ヒルダはりこりんの獲物だー、勝手に倒したらぷんぷんがおーだぞ!」っていうノリか?

だったらすまん。何故かは知らんが気を失ってるから、今のうちに好きに教育してやってくれ。

なんだったら手柄もやる。

名誉とか特にいらないからな、俺は。

依頼さえ果たせればいいんです。




HappyBirthdayToMe……。

ヒルダさんをチョロイン化させるのはアリかな?

修正

400年→600年

ネットで確認したらブラドの年齢600歳越えてた。
もちろん、その頃にヒルちゃんはいません。
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