夜空の武偵   作:トナカイさん

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一部、原作最新刊のネタバレ有り。



Ammo17。君の名は……

バチバチ、バリバリ、と自身の身体の中で電流が流れるのを感じる。同時に電流によって自身の筋肉が刺激される感触も感じた。ああ、これはなったんだな。高圧電流の刺激によって身体を強化した状態。雷神モードに!

 

「ぬ、それは……」

 

爺ちゃんは一段階上がった俺に警戒した顔つきを浮かべる。

 

「……こっからが本番だぞ、爺ちゃん! こっから先、俺の技は全て一段階進化するからな!」

 

「ふん、面白い。かかって来るのじゃ!!!」

 

向かい合いお互いの顔を睨む俺と爺ちゃん。

 

「行くぞ! 『火中電撃(かちゅうでんげき)甘栗拳(あまぐりけん)』!!! アチャーアチャチャチャチャチャチャチャチャチャーッ!!!!!」

 

電流を纏った状態で放つ火中天津甘栗拳!

甘栗拳は一瞬のうちに数100発ものパンチを放つ絶技。そこに雷神モードにより強化された拳が加わればいくら爺ちゃんでもタダじゃすまない! ……はずだ。

そう思って繰り出したが。

 

「ふん、まだまだ遅いわ。『火中硬化甘栗拳』!!!」

 

ガキィィィン。

爺ちゃんは俺が放った拳に自身の拳を合わせて威力も勢いも相殺させやがった。『筋肉』を『硬化』させた拳で放つ『火中天津甘栗拳』。完全な力押し。単純なパワー比べでは爺ちゃんには通用しないってことだな。これは。

 

「ふむ……電撃……いや雷撃を纏うことで筋肉を収縮させておるのか。なるほどのぅ。儂らのように自らの生体電気を利用しない新たな金剛の力か。発想は面白いがまだまだじゃな。(パワー)速さ(スピード)、キレ、威力、永続時間……全てにおいて不合格じゃ!」

 

「なら、こいつはどうだ!」

 

俺は電撃を纏ったまま、爺ちゃんに向かって駆け出す。

頭、肩、腕を同時に動かし、当てることで威力を3倍に上げる技。『黒き三連星の鉾(デルタ・トライデント)』。

それを爺ちゃんに叩き込んだ! 爺ちゃんはよく筋肉が足りないと言って無茶振りしてくるが。

一つ、一つの力が足りないなら、より力を込めて叩き潰せばいい!

トラックが歩行者を跳ねるように、勢いよく飛ぶ爺ちゃん。

あ、ヤバい。殺してしまったか?

一瞬そう思ったが、あの爺ちゃんがこのくらいで死ぬ筈がない。

その読み通りに爺ちゃんは空中で飛び跳ねて、綺麗に着地しやがった。

だから、どこの暗殺部隊出身だー!

 

「……ふん! その程度か? 『硬化』したとはいえ、年老いた儂を打ち砕けぬようでは本物の強者には勝てぬぞ?」

 

いやいや、爺ちゃんみたいな化け物と戦う場面なんてないから!

 

「なら、こいつはどうだ! 『火中電撃甘栗拳・改』」

 

俺は電撃を纏ったまま、『甘栗拳』を繰り出してさらに足を動かして地面の土を掘り起こして上に蹴り上げた。上空に舞った土を『甘栗拳』で押し出していく。

一瞬で数100発ものパンチを放てる『甘栗拳』。そこに空中に舞った土が加わればどうなるか?

 

「……そんなもん効か……これは!」

 

拳そのものが効かなくても空中に舞った土を防ぐ術はないはずだ!

防御不可の一撃ならどうだ!

連続で『土』を打ち出す。

爺ちゃんは土塗れとなった。

 

「……やったか?」

 

巻がポツリと呟いた。

それ、フラグだ!

近づいたらバキューン! されるからな!

 

「ふむ、甘い。甘いわ! 正攻法では通じぬからと小細工できおったかー。甘い! 甘いわ!

儂にそんなもんは効かん!」

 

ダヨナー。わかってたさ。

こんなんで倒れたら苦労しないよなー。

本当、どうしよう。

 

「とはいえ、面白い技を見せてもらった。そのお返しではないがのぅ。儂も一つ、面白い技を見せてやろう」

 

爺ちゃんがそう言った時だった。

 

____パァァァァァァァァァァンッッッッッッ‼︎

 

俺の腹部から破裂音が鳴った。

痛みはない。衝撃も大したものではない。

だが、全く見えなかった。

……今のは『不可視の銃弾(インヴィジビレ)』か?

いや、それにしてはマズルフラッシュも、銃声もなかった。

それに『不可視の銃弾』にしては衝撃や威力も低い。

腹部に当たったが、ちょっとお腹を圧迫されただけだ。殺傷能力は低い。

 

「む? 力加減し過ぎたか。力を抑えて撃つのは難しいのぅ。いつもは銃弾くらいの威力で放つからのぅ」

 

「今のを銃弾の威力で放てるだって⁉︎」

 

馬鹿な……そんなの回避不可のチート技じゃねえか!

 

「そうじゃ、儂が本気を出せば軍艦でも打ち抜ける! 実際、この技で昔、駆逐艦を沈めてやったがのぅ。

これはのぅ。昔、戦友が使ってた目潰し技をパクって昇華させたものじゃ!」

 

がはははっ! と笑う爺ちゃん。

駆逐艦を沈めた武勇伝は何度も聞いたが、それをこの技でやったのか。

確かに見えない攻撃をされたら、軍艦といえど無事にすまないだろうが。

 

「この技は指の力。指先の筋を鍛えることで威力が上がる技でのぅ。指先に体重を乗せることで空間を押し出し、見えない銃弾(空気の塊)を放つ技なのじゃ! もっとも、指には筋肉はないがのぅ。鍛えるのは腕の筋肉じゃ。指の第一関節を曲げる深指屈筋(しんしくつきん)、指の第二関節を曲げる浅指屈筋(せんしくつきん)、指の付け根の関節を曲げる虫様筋(ちゅうようきん)、指を伸ばす指伸筋肉(ししんきん)、中指を中心に、人差し指と薬指を外側に動かす背側骨間筋(はいそくこつかんきん)、親指の第一関節を曲げる長母指屈筋(ちょうぼしくつきん)、親指の第二関節を曲げる短母指屈筋(たんぼししくつきん)、親指を握りこむ(閉じる)時に収縮する母指内転筋(ぼしないてんきん)、親指の第一関節を伸ばす時に収縮する長母指伸筋(ちょうぼししんきん)、親指の付け根を伸ばす時に収縮する短母指伸筋(たんぼししんきん)などじゃ。それらを極限まで鍛えれば装甲が硬い戦艦ですら打ち抜ける!

もともとは戦友の技じゃったが、儂は独自の呼び名をこの技に付けた。『そこにあるようで、そこにはないもの』。『見えないが確かにあるもの』。『目に見えないのに確かにある銃弾』から連想して……まるで水面に映る月のようなこの姿なき技にこう名付けた。『鏡花水月(きょうかすいげつ)』と、な」

 

筋肉鍛えれば戦艦打ち抜けるのかよ。その考えなかったわ。

 

「昴も頑張ればこのくらいできるようになる!

筋肉は裏切らないからのぅ。障害になる者が現れたら筋肉鍛えて拳で殴れ!」

 

「出来るかぁ____!!!!! うぐっ⁉︎」

 

叫んだ俺に見えない攻撃が炸裂した。さっきより威力上がってんぞ? 今のはまるで竹刀で叩かれたような感触だ。

『鏡花水月』と爺ちゃんは言ってたが、厄介だな。あれは。

弾の出処がわからない。指先から放たれたであろうが、あまりの速さに目が追いつかない。

 

「儂が本気を出しとったら、とっくに死んでおるぞ?

加減してやっとるうちに儂を倒さんと本当に死ぬぞ?」

 

何で俺、祖父に殺されそうになってんの⁉︎

 

「殺されて堪るかー!!!!!」

 

踵を返して全力で逃げる!

雷神モード舐めんな! 身体強化されたら、逃げ足も速くなるのだから。

とはいえ、雷神モードは長くは続かない。

電流を自力で発生できればいいが、生体電気を操るやり方なんてわからない。逃げるにしても、状況を変える必要がある。状況を変えるには……とある考えが浮かんだ俺は足を止める。そして、爺ちゃんに向き合う。もうこれ以上は逃げれない。爺ちゃん相手に逃げられるはずない。逃げたくない。爺ちゃんは俺に真正面からぶつかってくれている。ここで逃げたら、俺は爺ちゃんに顔向けできない。何より俺を応援してくれるチームメイト達の為にもこのまま逃げ続けたくない。

だけど、いくら覚悟を決めてもこのままじゃ勝てない。俺と爺ちゃんの間には大人と子供の差がある。筋肉量、体力、知識、経験……何もかも及ばない。

例え距離を離しても『鏡花水月』で狙い撃ちされ。近距離で挑めば『火中天津甘栗拳』でタコ殴りされてしまう。爺ちゃんに勝つには俺一人では無理だ。状況をひっくり返すのには、協力者がいる。

だから……そいつの名を呼んだ。

 

「……いるんだろう? ヒルダ」

 

『オッホホホ、ようやく私の存在に気付いたのね? で、何の用かしら?』

 

爺ちゃんの元へと走る俺について来る()からその声が聞こえた。なんとなくだが、解っていた。いるかもしれないと。何度かその前兆はあった。串に刺さったヤモリ焼きとかな。

だが、確証はなかった。さっき電流が流れるまでは。

 

「頼む。 協力してくれ!」

 

『協力? この私が? 貴方のようなエリマキトカゲのような男に?』

 

「人をエリマキトカゲ呼ばわりすんな!」

 

『ピギィ! と鳴いたら考えてあげなくもなくてよ?』

 

よし、本当だな?

その言葉。動物大好きな俺への挑戦状と受け取ってやる!

エリマキトカゲの声真似くらい楽勝だ!

見よ、この俺のエリマキトカゲを。

 

「ピ、ピギィィィィィィィイイイイイイ!!!!!」

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

無言になる周囲。

爺ちゃんや巻すらぽかーんとした顔をしている。

な、なんかもの凄い残念なものを見る視線をあちこちから感じるんだが、これはもしかしてやらかしたか? 俺。

 

『……まさか本当にするなんて……プライドないのかしら?』

 

くっ、ヒルダの癖に生意気な! ヒルダの癖に! 後で殴る!

 

『今日からお前の名はロドリゲスね!』

 

「どこのブリザードお嬢様だ、お前は!」

 

2、3発殴りたかったが、堪えた。今はまだコイツの力が必要だからな。

 

「頼む! 今は頼れるのお前しかいないんだ! 俺にはお前が必要なんだ!」

 

『ッ⁉︎ し、仕方ないわにゃ……か、感謝しなさいよ。高貴なこの私が人間(笑)如きな貴方に手を貸してあげるんだから』

 

噛んだな、ヒルダの奴。チョロインは健在か。

というか(笑)つけんな! 俺はれっきとしたただの普通の人間だ! まあ、エリマキトカゲから人間(?)扱いされただけでもいい……わけあるかー!

そう心の中で文句を言っている間にヒルダから電流が流れてくる。よし! 充電完了!

 

「ありがとうな、ヒルダ」

 

『礼なんていらないわ。代わりに今度、貴方の血でも貰おうかしら? 久しぶりに血液風呂に入りたいし……』

 

「死なない程度になら血をやるよ」

 

『約束よ。嘘ついたら血を飲み尽くす〜指切った♪』

 

そう言うやいなや影からヒルダが飛び出してきた。

前に見た時と同じようなゴスロリの服。金髪のその長髪をツインテールに結んで。

口元に黒い扇子を当てて不敵に微笑みながら告げる。

 

「さて、では反撃といこうかしらね」

 

バチバチ、とヒルダの周りには何やらバレーボールくらいの球体が浮んでいる。

 

「『雷球(デイアラ)』!!!」

 

ヒルダが叫んだ瞬間、ピンポン玉のようなその球体が炸裂した。

バチィと放電し、爺ちゃんに直撃する。

バチバチッと放電音(スパークノイズ)が鳴り響く。

 

「……やったかしら?」

 

オイオイヒルダさんや。それは言ってはいけない台詞だぞ。巻と言い何でフラグ建てたがるんだ!

このくらいで倒せたらこんな苦労は……。

予想通り、ヒルダの電撃を受けても倒れずに立ち止まったままの爺ちゃん。

無言のままだったので、近づいて『火中天津甘栗拳』をブチかましてやったら……あっ、動いた。

慌てて後ずさると爺ちゃんは呟く。

 

「……はっ! いかん、いかん。寝てた」

 

「寝てたのかよ⁉︎」

 

……思わず突っ込んでしまった。

ヒルダの電撃直撃したのに、寝てたですますとか。

ありえないだろう!

 

「ちょうど良い感じにマッサージされたからのぅ。肩コリや腰痛が改善されてさっきよりも戦いやすくなったわー」

 

「ま、マッサージ……ですって? 私の電撃を……マッサージ扱い? この高貴な私を……マッサージ師扱い? ふふっ、ふふふー! ふははは! ブチ殺し確定ね! こんな屈辱を二度にわたって受けるなんて。許さない。お前達一族は絶対に許さない! 吸血鬼の誇りにかけてぶっ殺してあげるわ!」

 

あーあ。爺ちゃん、ヒルダ怒らせた。知ーらね。

そりゃ、あの『雷球』とかいうヒルダの技を浴びておいてマッサージ扱いしたらキレるだろう。

自身の必殺技をマッサージ扱いされたら誰でもキレるよな、うん。

 

「じ、爺ちゃん、ヒルダに謝れ」

 

「え? 儂なんかおかしなこと言ったかのぅ? いい感じに刺激されたからお礼のつもりで言ったんじゃが」

 

「あの太々しい態度、さすがは貴方の血縁者ね。そっくりだわ」

 

「そいつはどうも」

 

全然嬉しくないがな。爺ちゃんに似てるとか……そいつは最悪な評価だ。

俺はそんなに人間辞めてない。

 

「さて、さっきのマッサージで身体もほぐれたことじゃし。儂もちょっと本気でやるかのぅ。

ふん! 見よ。これが儂の____『雷神様』じゃあー!!!!!」

 

バチバチバチッ!

爺ちゃんから放電音(スパークノイズ)が鳴り響く。

爺ちゃんの身体から紫電の放電が迸る。

あれは……まさか!

 

「初めてやったが、ふむ。ちぃっとばかし出力が低いのぅ。

これなら体内を流れる電気信号を利用した方が良いのぅ」

 

間違いない。爺ちゃんはなりやがった。

俺が生み出した『先天性筋形質多重症』を扱いやすくする為の身体強化技。

 

____『雷神モード』に!




ちょっとスランプ気味なんでもしかしたら、更新止まるかもしれません。
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