夜空の武偵   作:トナカイさん

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新年明けましておめでとうございます。
昨年は私の作品を読んでいただきありがとうございました。
今年もできるだけ執筆活動続けていきますので、今後ともよろしくお願いします。



Ammo26。ファミレスとかで騒ぐのはほどほどに! これ、大切なお約束

放課後。俺は武偵中学の校門前にいた。理子、金次、風香、不知火と共に駅近くのファミレスで親睦会を行うことになったからだ。

 

「理子の機嫌が少し良くなったのは助かったな。風香の方は……うぅ、胃が痛い」

 

結局あの後、俺に『あーん』をした理子や弁当を作ったのが橘花(いもうと)と知ったら(義妹と説明したらなんかキレられた)張り合ったり納得したが、机の上に置かれた弁当をあらためて見た風香が『だったら私も毎日弁当作ってくるから、残さず食べてね!』とか言って大人しくなったから助かったけど。たかが弁当で何であそこまでキレるんだよ。

女ってのはよくわからないもんだな。本当。

承諾しないと日本刀で刺して来そうな勢いだったから思わず頷いちゃったけど……明日から弁当二人前も食べる羽目になんのかよ。ま、食えるからいいけど。

転生して今の身体になってからかなりの大食いになったからな。多分、原作でレキが頼んでた超壺麺とか余裕で食えるんじゃないかな。金欠になったら大食い、早食いチャレンジとかやってみようかな。確かあれ、5000円くらいするもんだけど30分以内に完食したら無料だったし。食費が浮くのに越したことないからな。

ま、大食いなのは俺だけじゃないから多分遺伝的な体質が原因なんだろうな。

筋肉をよく動かすからその分の燃料が必要なんだろう。燃費が悪い体質だな。まったく。

そんなどうでもいいことを考えながら正門前でボケーッとして待っているとミシメキッ、ビキッ、誰かに肩を掴まれた。メチャクチャ痛てェ。

 

「……昴テメェ」

 

振り返ると、そこにはネクラそうな顔をしたネクラな目を吊り上げ、頬を引きつらせ、額にDの血管を浮かべた逸般人(キンジ)が立っていた。

おっ、もう蘭豹から解放されたのか。思ったよりも早かったなあ。

 

「おおっ、キンジじゃないか! 心配してたんだぞ? 大丈夫……じゃなさそうだな。あははは……」

 

ちょっ、落ちつけ。キンジ。肩に力込めるのやめろ。

両肩掴んで、頭突きしようとすんな。お前の頭突き洒落にならないから! あ、ぐりぐり攻撃もやめて!

ちょっ、顳顬(そこ)はだめ。手が、指が、顳顬(こめかみ)に当たってる。

そこは先祖代々、だめなんだって!

 

「あ、ひゃ、うっ」

 

「変な声出すなよ⁉︎」

 

仕方ねえだろ⁉︎ そこは本当苦手なんだから。

 

「……何やってんの。昴ってやっぱりそういう趣味だったの?」

 

「昴君が、いけない遊びしてる⁉︎ そんな、まさか昴君は男色家だったなんて……でも、昔の武士はそういう趣味の人もいたっていうし。それに下手に女に好かれるくらいならいっそ男の子に好かれる方が……ううん、やっぱりだめー!!!!!」

 

金次にぐりぐり攻撃されて、おかしな声をあげてしまった俺の姿を目撃した理子と風香の反応がそれだった。

ちょっと待て! やっぱり、ってなんだ?

俺は男に襲われて喜ぶ特殊な性癖なんか持ってない。金次と一緒にするな。

 

「「俺は普通の性癖だ! これはただのコミュニケーションの一環でふざけあってるだけだ!」」

 

あっ、金次と声が被った。

 

「じゃあ、キー君も普通に女の子が好きってこと?」

 

理子の問いかけに、困ったような顔をした金次は。

 

「……いや、女より男の方がいいな」

 

とんでも発言しやがった。

 

「やっぱりそっち系なんだ⁉︎ きゃは!」

 

「……昴君は渡さないから」

 

「は?」

 

おい、そこのヤンデレ共。何好き勝手言ってんだ。

それと金次。その答えはいろいろアウトだ。

お前、『女より男の方がいい』って、それ。

『女よりも男の方が気兼ねしなくていい』の間違いだろう?

ちゃんと伝えないと、バカ二人は間違った解釈したまんまだぞ。

 

「キンジ君は、昴君のナァニ?」

 

いかん、風香さんがブラック風香さん……黒風さんになりかけてる。

 

「な、何って昔馴染の……」

 

「昔馴染の……何かなぁ?」

 

にこにこ、と顔は笑顔だが、目は全く笑ってねえ⁉︎

いかん。このままじゃ、周りに被害でかねない。

 

「き、キンジはただの幼馴染だ。誤解されるような関係はないし、俺は普通に女の子が大好き……あ、いや、風香さんがダイスキデス」

 

「うん。そうだよね?」

 

にこにこ、と笑った風香を見て思った。

俺の幼馴染や妹達がこんなに病んでるはずがねえ⁉︎

それにしてもキンジのヤツ。

顳顬(こめかみ)、ぐりぐりしやがって。

仕返しにとっておきの嫌がらせしてやる!

そう思った俺は金一さんから送られてきたとあるメアドにメールを送った。

火火火、キンジ死に晒せ!

 

 

 

 

理子の案内で武偵中学に近い最寄駅の駅前にあるファミレスに入った俺達は。

 

「「「「「「カンパ~~~イ」」」」」

 

ドリンクバーで各々淹れた飲み物片手に、乾杯した。手に持ったグラスを傾け、中に入った液体を一口飲む。ああ、リアル◯ールドめっちゃ美味え。やっぱドリンクバーっていったら炭酸だろ。

ただ、うーん。やっぱり薄いなぁ。氷入れ過ぎたかな。

めっちゃ、寒気するんだけど。

好きな飲み物を飲んで一息ついていると、一番騒がしい馬鹿が、馬鹿な発言をしてこの場の空気を凍らせやがった。

 

「よ~し、それじゃあ~さっきもクラスでやったけど、もういっかい自己紹介をしよっか。

まずは、理子からするね〜。

私の名は星空理子。そこに座っている星空 昴の義理の妹で昴の彼女でもありま~~す!!!」

 

 

……は?

……はぁぁぁあああ?

 

 

「……」

「……」

「……」

 

固まる俺達男性陣。

え、何何?

どういうこと?

 

「……どういうこと昴君?」

 

ゾクッとした感覚がして、首をギギギッと動かして風香の方を向いてその顔を覗き込むとうげぇ!

そこには……阿修羅がいた。

圧倒的な怒気を孕み、周りの空間を歪ませるようかの負の瘴壁を放つ、暗黒面に堕ちた超能力者がいた。

 

「ひゃひゃひゃひゃッ!!!!!」

 

また、このパターンかよ。

なぁ、神様……俺が一体何をしたってんだ?

あれか。神社で賽銭ケチって五円玉の代わりに五円チョ◯入れたのを根に持ってんの?

五◯チョコ美味いだろ? ありがたいだろ?

気に入らないのなら次からは札束チョ◯か、チョコバッ◯か、うまい◯にするからそろそろヤンデレけしかけんのやめようか?

 

「すばるんは悪くない! 悪いのはすばるんにこびりつくお前みたいなばい菌だろ?」

 

「ばい菌? あはは! それは貴女でしょー?」

 

一般的に武偵は、毒、金、女に弱いとされている。

毒はどんなに鍛えても解毒できなきゃ、抵抗できないし。

金に目がくらみ、任務を放棄する武偵もいるのは確かだしな。寝返ったりする奴もいるし。だけどそれは仕方ないことだ。武偵は基本、金で動くものだからだ。

そして、男にとって一番の弱点が女だ。

女に甘くなるのは男の本能みたいなものだからな。

だから女に弱いのは仕方ない。

仕方ないが。

 

だがちょっと言いたいことがある。

俺は……俺には。

俺にはヤンデレ趣味とかは、全くねぇんだぞ?

そこんとこわかってんの?

せっかくの晴れ舞台の入学式が終わって、新たにクラスメイトとなった奴らと楽しいひと時を過ごす……はずだったのに。

なんでこんな修羅場になってんの?

スマン、帰っていいか?

楽しい談笑?

 

何それ? 美味いのか?

 

 

今のこの惨状を楽しい談笑とかほざく奴がいるなら、今すぐ脳外科か眼科に行け。あるいは精神科にでも行った方がいい。

何故なら俺の目の前は修羅場もとい、文字通り『戦場』となっているのだから。

 

「ひゃひゃひゃひゃ!!! 死ね、死に晒せー」

 

阿修羅と化した風斬 風香と。

 

「よーし、りっこりこにしてやんよ」

 

武偵中学ではなく、一般社会の店内で実銃であるワルサーP38を発砲しまくるアホな子が暴れているからな。

なぁ、神様。俺のことそんなに死なせたいのか?

馬鹿なの? 死ぬの?

一般のお客さんはもちろん、ウエイトレスや店の従業員のみなさんは外に逃がしたが俺達、武偵中学に怒られるんじゃないか?

下手したら退学もんだろ? この騒ぎ。店内で実銃発砲、器物損壊、営業妨害、店に対する補償。

刑事罰____武偵三倍刑なる決して受けたくない罰が頭の中に思い浮かぶ。

店のテーブルを盾にして弾除けに使っているが防弾仕様ではない為、このテーブルも弁償しないといけないんだよな? 耐久性低いからあまり長くは持ちそうにないし。

頼みの綱は中学の防弾制服と己の筋肉。そして、外まで広がってるであろうこの騒ぎが職員室に届かないことを祈るばかりだ。教師が来て止めてくれるなら普通は喜ぶべきだが、武偵中学は教師も普通じゃないから余計騒ぎが広まって、ただの喧嘩のレベルではすまなくなる。

いや、実銃ぶっ放す時点で『普通』じゃないんだけど、神奈川武偵中学には問題教師がいるからな。

そんなことを考えていると店内のドアが開き誰かが入って来た。

 

「おーやっとるな〜。よしよし、ヤレヤレ~~。ぶっ殺せ! 殺しあえー餓鬼共!!!」

 

野生の蘭豹が現れた。

 

コマンド

 

①告る

 

②たたかう

 

③にげる

 

④デートしてデレさせる

 

⑤キンジを生贄に……

 

……よし、⑤だな。

⑤しかねえ。

 

「キンジ、いい作戦があ「断る!」……チィ」

 

キンジのくせに勘のいいやつめ。

 

「……なんかディスられてるような気がするんだが?」

 

「気のせいだ。気のせい」

 

まったくキンジのくせに生意気だな。

ってか誰だよ。蘭豹にここ教えた馬鹿は! ……あっ、俺か⁉︎ さっきキンジに嫌がらせするつもりで蘭豹に『近くのファミレスで屯ってるんで来ませんか? キンジが大切な話しがあるみたいです』なんてメール送んなきゃよかった! ああ、俺の馬鹿! この非常時に非常識な蘭豹を寄越すとか何を考えているんだ俺は?

 

アハハハ、と笑い声が聞こえたので隣を見ると不知火が現実逃避していた。

 

解る解るぞ、その気持ち。

某国にプルトニウムを渡すぐらいヤバイ奴が来てしまったからな。

なんとかしないと終わる。俺の学生生活とか、青春とか。

なんとかしないと。銃声が鳴り響く。流れ弾が時々飛んできたが、当たりそうなヤツだけ、俺はナイフで斬ったり、銃弾を銃弾で弾いたりしながら防いでどうするか考える。

あっ! そうだキンジならこの状況どーにかできるかもしれない。

ヤンデレ武装巫女と何度も接しているキンジなら対ヤンデレの対処法を知ってるはずだ!

ヤツならこの事態を静めてくれるかもしれない。

そう思い荒らされた店内を見回すと。

 

「って、金次ぃぃぃいいいいいい!!!!!」

 

床に血塗れになり倒れていた。さっきの流れ弾に当たったのか? 外傷はないから制服に当たったんだな。必死に身体を揺らす俺。あ、揺らしちゃダメだったんだっけ?

テンパってると「ガフッ」とキンジの口が開き呻き声と呼吸音が聞こえた。

生きてた。よかった。

 

「はあ〜よかった。危うく死人が出るところだったぜ」

 

「おばめ、ばはりよふめぼ(お前、周りよくみろ)」

 

「ん? なんだ。何がいいたいんだ?」

 

「おばめ、の……ぶぅばぁん当たった……ガフゥ(お前が逸らした銃弾が当たったんだぞ)」

 

「おい、キンジ! 大丈夫か? しっかりしろーーー!!!!!」

 

人殺しダメ。絶対! そもそも金次死んだらアリアのドレイ役誰がやるんだよ?

俺嫌だからな。アリアとは何度か会ったことあって、会うたびドレイ呼ばわりされるけど、絶対ドレイになんかならないからな!

つうか、金次死んだら伊・U(イ・ウー)潰せなくなるだろうが!

教授をぶん殴るのが目標だけど、わざわざ自分から伊・U(イ・ウー)ぶっ潰して世界中の超人達から目を付けられたくはない。SDAランキングは圏外がいい。ちなみにSDAランキングとはアジアでどんだけ人間辞めてるかがわかる、アメリカの民間会社が勝手に格付けしてるいわば『人間辞めたランキング』だ。

父さんが確かその上位版の世界ランキングで上位に入ってたな。

それも一桁台、トップファイブに。

爺ちゃんは武偵じゃないからランキング外だけど、世界中……特にアメリカでは危険人物扱いされてるとか言ってたし。あの二人の血を引いてる俺はいろいろ自重して気をつけないと本格的に人間辞めちまうことになりかねない。だから目立つようなことはしない。

普通の人間になるべく近づく努力をしよう。

そう思って武偵中学の学科も強襲科(アサルト)ではなく、探偵科(インケスタ)を志望した。

だから、キンジが死ぬようなことになったら俺が困る。

絶対、そのしわ寄せは俺に来るってのは解るからな。これまでの流れ的に。

それにバスカービルのリーダーがアリアになったら、ひたすら特攻かましてすぐに全滅する。間違いなく。

そもそもキンジいなきゃバスカービル自体存在しないかもしれない。

それは非常に困る。

俺が平和的な武偵活動を送る為にもキンジにはぜひともバスカービルに入って原作通りに人間辞めてもらわないと。

だからキンジ死ぬな! お前は必要な人間なんだ。

などとりあえず金次の心配(?)をしながら現実逃避も同時にする俺だった。

 

 

とりあえず、今日生き残れたら女には用心しよう。何故か、守れる気は全くしないが。

 

 

この騒動の顛末をいうと。

 

ワルサーを弾切れ(予備弾倉含む)までぶっ放して若干大人しくなった理子と日本刀を振りかざして疲れ果てた風香が同時にダウンした後、煽っていた蘭豹がようやく教師らしく二人に説教をかまして二人を職員室まで連行していき、ようやく俺達は解放された。店側には謝罪と賠償。今度無報酬で一か月間、店内清掃やら皿洗いのバイトを任務扱いで受けることになった。なんで俺達まで……とも思ったがあの馬鹿達を止められなかった監督責任は確かにある。

ま、怪我人出なかっただけいいし、被害届け出さないでくれるだけ温情があるけどさ。

店側と交渉を終え無事に帰宅の途につけたのは日が沈んでからだ。

今回の件で思ったのは……

 

ああ、命って素晴らしいってことだな。




今話はちょっと短めに。
……いろいろあって、時間ないんで本当すみません。
夜勤中なんで感想返しも朝までできません。
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