あと一週間しかありませんが、頑張って後、二、三話更新していきます。
あの後、たっぷりお仕置きを受けた俺は外に待機していた仁を呼び寄せ、念の為小屋の中を徹底的に調べあげた。実戦形式の訓練とはいえ、何か罠が仕掛けられているかもしれないと思ったからだ。
結局、なんも見つからなかったから教職員を坂本が担いでそのまま小屋の外に出ることにした。
教職員は縛られる前に「俺は今日の犯人役の職員の中でも二番目の強さだ! 俺を捕らえても第三、第一の教職員がやって来る……」とか言ってたが……アンタ、二番目の強さなのかよ!
普通、一番弱い奴から先に襲いに来るのがお約束なんじゃないか? そう、目の前の教職員に言うと「そんな幻想はぶち殺してやるよ!」とかほざいてたから、その脳天に軽く愛ある拳お見舞いしておいた。やっぱりコイツ、普通じゃないな。ま、臨時とはいえ武偵高の教師なんかやる人間がマトモなわけないんだけど。
「う〜ん、絶好の山登りだねぇ〜山頂まであと少しだ」
やたらとハイテンションな理子先導の下、俺達は相変わらず山道を頂上目指して登っていた。
俺は爺ちゃんや父さんの無茶振りで山登りの経験あるとはいえ、他の奴はそうもいかないみたいで。
山頂に着く頃にはみんなボロ切れのようになっていた。
武偵中の生徒とはいえ、数ヶ月前までは普通に小学生だったから、登山でヘトヘトになるのも仕方ないか。
というか、犯人役とはいえ、教職員をおぶさって登山とかやらせること鬼畜だろ!
とか思ってると、蘭豹が。
「ん? なんやお前ら。わざわざおぶって来たんかー? しおりにハンコ押してもらえばそれでよかったのに。根性あるやないか! 鍛えがいありそうやな」
なーんて言ってきやがった。
ん? 待てよ。今、何を言った?
「しおりに……ハンコ?」
「なんや、誰も説明聞いてへんかったか? それぞれのクエストに応じて課題が設定されていてな。それをクリアしたらしおりにハンコ押される。そうしたら依頼は完了したものとみなされる」
「へ? ちなみに課題って……」
「お前らの班なら、犯人役を見つけたらそこで依頼達成のはずやったが?」
「え? そんなんでよかったの⁉︎」
「そんなんって……先月まで小学生だった奴らに武偵高の教師をどうにかできるわけないやら。もし、武偵高の教師倒せる奴なんかいたら……」
「い、いたら?」
果てしなく嫌な予感を感じるが一応聞いてみる。
「いたら、問答無用でウチが強襲科入れてSランク認定させたる!」
黙ってよう。マッハ8でワンパンしたこと、絶対黙ってよう。
俺は普通の武偵になるんだ。Sランクみたいな人間辞めた人間の仲間入りなんて絶対されたくない。
「それなら彼はSランクで、
そんな俺の決意虚しく。俺がワンパンしちゃった教師は蘭豹に告げ口しやがった。
てめぇ、こんニャロー! よりによって、一番知られたらまずい奴に……。
ヒソヒソと蘭豹の耳元で告げ口する教師。コイツ、絶対根に持ってるな。
「ほー。そっか、そっか。星空。後でワイの部屋来いや! 大切なお話ししようや〜」
それ絶対お話しじゃなくて、OHANASHIの方だよな?
い、行きたくねえー。胃がキリキリしてきた。
だけど行かないと、胃じゃなく、全身が痛むことになる。
「……ま、昴ならそんくらい普通にやると思ってたけどな」
ボソッと、蘭豹が呟いたが……なんだよ。もう!
俺はただちょっと力入れて殴っただけだよ?
合意の上だよ。証人いるよ?
「ま、そんなことはいい。とりあえず、お前らの班はクエスト達成ってことで、今日の予定はこれで終いや。後はテキトーに飯でも食ってテキトーな時間になったら宿へ帰れ。ワイは一杯やるから、邪魔すんなよ?」
蘭豹はどこからともなく、酒樽を取り出した。
……一体どこに隠し持ってたんだよ? っていうか、未成年だよな?
「先生、まだ1◯歳ですよね? 未成年の飲酒は法律で……」
「あー? うっさいわ、ボケ! ワイのいた国では子供でも飲酒オッケーや。日本の法律なんかしるか! そんなもん、そこいらにいるクマやサルにでも食わせとけ!」
いやいや、日本にいるなら日本の法律守らないとダメだろ?
それにアンタ武偵だろ? あ、コラ! 樽の一気飲みはやめろ。
「……なんか昴の方が教師みたいだね」
理子の呟きに周りにいた他の生徒も同調していたみたいだが、蘭豹の耳には入らなかった。
よかった。もし、聞かれてたら身がもたなかったからな。
蘭豹は気づかず2本目の樽割ってるし。一気飲みって、樽でやるもんだっけ?
こうして、いろいろあった2日目は終了した。
その後下山した俺達は宿泊先のホテルに帰ってきた。
割り当てられた部屋の中でくつろいでいると、何やら坂本がソワソワしている。
挙動不審だ。一体何をたくらんでいやがる。
「おい、坂本!」
「うひゃい⁉︎」
驚き過ぎだろ。何かたくらんでるのバレバレじゃねえか!
「何ソワソワしてるんだよ?」
「いや……今の時間って何時だ?」
「あん、7時だろ。それがどうした」
「女子の入浴時間は8時からだよな?」
「坂本……まさか、お前……」
まさか……こいつ、なろうというのか。勇者に!
「さっき、山の上から確認したんだけどよ。このホテルの裏山からなら、女子風呂見えるんじゃね?」
「な、なんだと⁉︎」
「今から出れば十分間に合うが……星空、どうする?」
考えるまでもない。止めるべきだ。覗きは犯罪だ。バレたら武偵免許発行とか無理ゲになるし、それ以前に俺の命が終わる。物理的に!
だから、断るべきだ! そうだ。最初から選択肢は一つしかない。
さあ、さっさと言え。俺は行かないと。
「ちなみに、入浴は班毎で時間決まってるから……風斬やお前の妹も丁度入浴する時間だな」
そんなの……断るに決まって……
「どうする?」
「もちろん、行くに決まってるだろ!
あ、あー……これはあれだ。俺は兄として理子の成長を確かめる権利があってだな、別にやましい気持ちはないんだ。風香に対してもあくまで一許嫁として、他の男から守ってやらないといけないわけで」
「おい、昴「金次は黙ってろ! 男には死ぬと解っていてもやらなければいけない戦いがあるんだ!
それは……今、だ!」いや、恰好付けてるがただ覗きたいだけじゃねえか!」」
金次の鋭い突っ込みが入る。
「うるせー! 覗きは男のロマンなんだよ。まってろよ。
「そうだとも。さあ、俺達に続けぇ、文明開化は目前ぜよ!」
俺と坂本の号令により、いつ間にか俺達の部屋に集まっていた
よし、行くぞ。夢とロマンを求めて大秘宝を探しに!
嫌がり暴れる金次を筋肉で無理矢理黙らせ、俺達は裏山へと到達した。
さあ、ここからが本当の戦争の始まりだ。
「おい、例のモノを」
「おう! ほらよ」
坂本から渡されたのはレミントンM700。スナイパーライフル銃。なんでも、坂本の友人の兄が武偵で
どうやら、実銃であれば俺は狙撃銃すらも使えるみたいだ。左手のルーンが激しく光輝いてる。いつもより、光輝いてるからきっと、『心が震えてる状態』なんだろう。裏山といいつつ、近過ぎるわけではない。この裏山の中腹からホテルの露天風呂までの距離は目算で大体1キロくらいはある。
俺は狙撃銃を構え、スコープ越しに標的がいる位置を観る……するとそこに……居た。
湯気で視界はぼやけてるが、間違いない。あの金髪は理子だ。
フランス人の血を引く彼女は日本人女性にはない独特な美しさがある。
ハッキリ言おう。綺麗だ。
身体をすでに洗い終わったのか、髪から落ちる水滴や手足を伝う水滴が、より彼女の色気を際立たせている。
そして、なにより。
「り、理子の奴。アイツ、あんなに胸あったか?
りんごくらいのサイズだと思ってたのに……着瘦せするタイプだったのか」
メロンやパイナップルには及ばないが、グレープフルーツくらいの大きさはあるかもしれん。
いかん。いかんよ。そんな大きさを中学の頃から持つなんて。お義兄ちゃん、心配です。
「おい、星空そろそろ……「うっせー! まだだ、まだ終われんよ」……早くしろよ」
まだ、理子しか拝めてないんだ。えっと……風香は……っと、居た。
お湯の中に入ってた。クソ、湯船の中じゃ、見えねえじゃねえか!
さあ、上がれ! 早く上がれ! その最終兵器を見せろ!
願いが通じたのか、風香が立ち上がる。
「ぶ、ぶふぅーーーーー⁉︎」
その裸体を見た俺は今世で最大級の興奮をしていた。
こ、これは紛れなもなく、メ、メロンちゃん⁉︎
まさに、理想なおっぱいがそこにあった。
「やっべえ。黒髪、巨乳、許嫁とか……ヤバすぎる」
興奮の余り、スコープから目を逸らしてしまったが、も、もう一度観るくらい……いいよな?
許されるよな? ちょっとだけ。あと、ちょっとだけ。
そう思ってスコープを観た俺は驚愕する。
なんと、風香が目線をこちらに向けてウィンクしてきたのだ。
ば、馬鹿なここから露天風呂まで距離凡そ1キロあるんだぞ?
普通の人間が目視なんかできるはず……そう思いつつ、スコープを使って風香を観るとその口が動いたのを視認できた。
なになに……『ホ カ ノ コ ノ ゾ イ タ ラ オ ト ス カ ラ ネ?』
「ナニを⁉︎」
怖い。俺の自称許嫁様があんなに怖いわけがない!
「おい、星空大丈夫か? なんか顔色悪いぞ? ま、まさか、バレたのか?」
坂本が心配そうな表情をして語りかけてきた。
俺はガクガク震えながら、レミントンM700を手渡した。
「み、見れば……わ、ワカル」
「あ、ああ……」
坂本はレミントンのスコープを覗いた。
次の瞬間、奴の顔色は赤くなった……かと思えばすぐに青くなった。
「な、なんだよ。この混沌。ち、違う。こんなのは俺が作りたい新しい時代じゃねえ!」
坂本は狙撃銃をぶん投げた。俺は直様キャッチする。
危ねえ、いくら風香が怖いからって人様から借りた銃ぶん投げるなっての。
レミントンはかなりいい銃なんだからな!
坂本の様子みてたら風香を観たことで発症した心的外傷が少し緩和された。
胃はまだ痛むけど。
「なあ、俺達にも見せてくれよー」
「あ、ズルい。次俺なー」
「俺も俺も」
「押すなよ、次、俺だ!」
狙撃銃の奪い合いが始まってしまった。
銃の取り合いは大切に! 銃を見かけても触らない。
武偵高からのお約束はどうした?
「ははっ、みんな凄く元気だね」
「覗きでなんであんなに張り切れるか、わからん。覗きなんてしない方がいいだろ」
「不知火と金次は相変わらず、淡白だな。女子に興味ないわけじゃないんだろ?」
「……ははは」
「……ん、まあ、少しは、なぁ」
不知火はなにやら気まずそうに。
金次は恥ずかしそうにそれぞれ反応した。
金次はまだ女性恐怖症、女嫌いになってないから今のうちに耐性付けとけば、後々ヒスらせやすくなるはずだ!
よし、ここはやっぱり……。
「なぁ、みんな。金次に観せてやってくれ。金次に夢を。
俺の言葉に。
「仕方ねえな。ま、いいや。なんか、よく見えねえし。ほら、金次」
顔色を悪くしたまま、坂本が震える手で狙撃銃を差し出した。
金次は恥ずかしそうな表情を浮かべたまま、狙撃を手に取る。
手が震えていたから、仕方なく左手で銃身に触れブレないようにしてやる。
そして、そのスコープを覗いて。
そして、ぶっ倒れた。
耐性なさ過ぎだろ、お前!
金次の身体を揺すったり、頬を叩いたりしたが、反応はない。
これ、かなりマズイんじゃ?
脈を確認してみるが、測れない⁉︎ 心臓の音を聞いてみるが、と、止まっている⁉︎
「おい、仁呼べ!」
「彼ならホテルにいるはずだよ」
「くそ、間に合わねえ」
どうする? どうしたらいい?
なにか、ないのか! これまでの戦いで学んできたこと。
拳銃の撃ち方、曲芸、剣術、体術……ダメだどれも使えない。
他には……他には。
俺の頭の中で今までの戦いの様々な記憶が思い浮かぶ。
あっ! あった。金次を救う方法。
「おい、いるんだろ? ちょっと力貸せ、
俺は自分の影に向かって囁いた。
俺の影が不自然に動く。
まるで、大きく頷くかのような、不自然な影の動き方をした。
よし、これなら。
俺はヒルダから放たれた電撃を自ら纏い、そして、金次の胸に手を置いてマッサージを始めた。
心臓マッサージだ。知識なんてほとんどない。
母親や妹がやるマッサージ法はちょっと特殊で、普通の人間に使ったら黒焦げにしてしまう可能性があるからできないしな。ま、金次なら大丈夫だとは思うが、万が一って場合もある。それに、ここには不知火がいる。
なんかわからんが、時折不知火から向けられる視線がなんか嫌な感じがするからできれば不知火の前でヒルダの力をモロに使いたくはない。
だから俺はあくまでも普通の心臓マッサージをやってるように見せかけた。
数分後、金次は蘇生した。
アレに
なんだかどっと疲れた俺達はホテルに戻ることにした。
しかし、金次の奴、何を観たんだ?
ちょっと、気になった俺は皆が帰るのを確認してから、こっそりレミントンのスコープを再び露天風呂に向けた。
そこに映っていたのは……。
「な、なんだと!」
そこに映っていたのは、素っ裸になったらんらんの姿だった。
誰得だよ?
最大のミッションを終えた俺達はホテルの部屋に戻ると、俺の携帯が鳴っていた。
見るとメールが数件来ていた。
まずは……風香。『他の子、覗いてないよね? 覗いたら……わかるよね?』のタイトルから始まったまるでホラーな文章。
スルーだ。スルー。
次に着てたのは……隣のクラスの男子からか。
『結局、星空は見れたのか? 見れたなら、胸と尻どっちが好きだ?』
……はぁ? そんなもん、決まってるだろう。俺は……
おっと、また着信だ。
えっと……不知火からか。
あれ? アイツ、どこにいるんだ?
『明日の朝食、ゆで卵と生卵選べるみたいだけど、昴君達はどっちがいい? 希望があるなら今夜10時までに出さないといけないみたいだから聞いてもらえないかな?
ちなみに、昴君は卵は白身と黄身どっちが好き?』
なんだこの質問。
ま、気づいちまったし、早めに答えてやるか。
俺は生卵派だ。
ちなみに卵は……って、また着信かよ⁉︎
『星空、なんでワイの部屋来ないんや!』
げっ、ら、らんらんからのラブメール。
む、無視してぇぇぇ。
『これから部屋行きます』
『俺は』
『キミが』
『好きだ』
「……よし、送信完了!
さて、そろそろ寝るかな……あー疲れた」
背伸びをし、再び画面に目を向ける。そこで気づいた。自身がしでかしたミスに!
バラバラに送信したつもりが、送信者はとある人物になっていた。
『俺はキミが好きだ。これから部屋行きます』
……な、なんじゃこりゃー⁉︎
訂正文を送らないと、そう思ってテンパっていると背後から強い衝撃を受け、俺は携帯を落としてしまった。
「あっ、悪い昴」
枕を投げてきやがった坂本。
床に転がる携帯。
俺の携帯が転がったことに気づかず、その携帯が転がった床へ向かって歩いていく金次。
そして。
事件は起きた。
「うおっ! ……と、と、と」
畳で何故か転んだ金次が大きくバランスを崩し。
バキッ!
「「「あっ!」」」
金次が俺の携帯を踏み付け、ぶっ壊しやがった。