書く余裕があまりありませんでした。
目の前にある壊れた携帯の残骸を前に俺は呆然としてしまう。
おいおい、どーすんだよ。この状況。
「す、すまん。後日弁償はする」
頭を下げてくるキンジ。素直に頭を下げるのはいいことだよな。間違いを自ら認めるその姿、かなり好意的だぞ。
「いや、弁償はいいからとりあえずお前の携帯貸してくれ。それで許す」
ま、それでも……
「……そんなことでいいのか?」
許しはしないけどな。
「ま、原因はキンジだけじゃなく、枕投げた坂本にもあるし、誰だってミスは犯すものだからな」
俺の言葉にキンジは安心したかのように息を吐く。
「でもいいのか? なんかさっきまで焦ったような顔してたから深刻な事態でも起きたのかと思ってたんだが……」
「ああ、深刻な事態なら起きたな。主にお前と坂本のせいでな……」
キンジに返事を返しながら、キンジの携帯を操作していく。
ん? 登録が……宛て先がキンジの祖父宅とカナ名義のアドレスしかない……だと⁉︎ キンジ……お前って奴は。
「カナコンにもほどがあるだろ⁉︎」
最早キンジのこれはブラコンやシスコンなんて次元じゃねえ。
カナコンプレックス。略してカナコンだ。
「ん? ああっ!!! な、なんで他の登録者が消えてんだ⁉︎ しかも兄さんの名前がカナ名義に勝手に変更されてるし! ……くっそ、なんか無駄に高度な設定されてて名義変更できなくなってるし。兄さん……カナの奴、何やってんだよ」
「お前も大変なんだなぁ……貸せ。やってやる」
キンジの手から携帯を掻っ攫い、再び操作を始める。
カナ宛でもいいが、カナとキンジの姉弟キャッキャウフフは別に見たくないから、メールの宛先は……よし。来い、君に決めた!
「直ったか? ちょっ、何してくれてんだ、お前っ!!!」
キンジの顔が絶望に染まる。
キンジの携帯を拝借した俺がメールを送った相手。それは……
「よりによって何で蘭豹にメール送ってんだ。しかもなんだよ、この内容!!!」
キンジが泣きそう顔しながら携帯の画面を見せてきた。そこには……『親愛なる蘭豹せんせいへ。僕とせんせいの未来のことで大切なお話しがあります。今夜男子部屋に来てください』と書かれていた。
「あはははは、大丈夫、大丈夫。今ならまだ『間違えでしたー、てへ☆ 』って送れば風穴フルコースくらいですむから……」
「全然大丈夫じゃないだろ!」
キンジの言葉をスルーして。
「ア、イケネー手ガ滑ッタ……」
偶々、偶然空いてた窓の外に向かって携帯をぶん投げる。
びゅーん、ガシャン、バギィ……暗闇の中に響く破壊音。
窓ガラスに携帯が当たり、落下して携帯が破壊される音が聞こえた。よし、全て終わった。ミッションインポッシブル!
「昴てめぇぇぇ……なんてことしてくれてんだァァァ!!!」
「そう、それ。それが俺がお前に抱いた気持ち! わかったか、ばーかばーか!」
殴り合いを始める俺とキンジ。
それを肴にコーラを飲む坂本。
「まあまあ、落ち着けよ。とりあえず喧嘩はやめてカツオの叩きでも食おうや。叩き合うのはカツオだけにしとけ。なーんてな……あはは」
「「坂本……お前が言うな! お前が一番の原因だろうがァァァ!!!」」
このあと、めちゃくちゃ◯◯◯した!
いや、まあ、普通に殴りあったんだけど。
ってか、何故かつおたたきなんて持ってるんだよ、お前は。
こうして、良くも悪くもオリエンテーションは進んでいったが……その夜。
安眠を貪っていた俺は思いもよらぬ人物達から襲撃を受けることになった。
夜は更けて皆が寝静まった深夜。
俺は今、最悪な起こされ方をしていた。
「うーは〜♪」
サンバのリズムに合わせて俺の体の上に跨り踊り、そして飛び跳ねる一人の少女。
薄眼を開けて見ると、そこに映るのは縞々なおぱんつ……ではなく、金色の刺繍入りのパンツ。
それは月明かりでもわかる。ハニーゴールドなお召し物だった。
見えてるな。見せてるのか? 見せパンかよッ! ってそんなことより……
「なあ、理子や。理子さんや。俺の可愛い
なぜか、俺の腹の上で踊る峰……いや、星空 理子に声をかけた。
「んー何かなー私の可愛いお兄ちゃんよー?」
某ラノベのツンデレ司令官みたいな感じで理子が言う。
「いや、降りろよ。重いから!」
俺が文句を言うとお腹の圧迫感が消えた。
「クフフ……そーれ〜♪」
理子が俺の上から退いてよかったと思った次の瞬間、俺の身体に凄まじい衝撃が走った。
「ガトォォォ⁉︎」
飛び蹴りは痛い。避けれなかった。
「あはは、ガトーだって〜、試作2号機だー♪」
「ソロモ◯よ、私は帰ってきた! ……って試作2号機は奪われる機体じゃねえか!」
「クフフ、理子は盗まれる側よりむしろ盗む側だけどね♡」
「一体どこに核撃ち込む気だよ、お前は……」
「……昴の為ならどこにでも♡」
理子が目を据わらながら言う。
あ、ヤバい。コイツ、目がマジだ……。
コイツに核持たせたらいけない。ノーモア核。核撃ち込むのは犯罪です!
核を無闇矢鱈撃ってはいけません。核見つけたら触らない、近寄らない、食べない。これ、お約束な?
「……冗談だよ」
「今の間何⁉︎」
「もしもの話だから大丈夫だよ」
「もしもの話かぁ。じゃあ、お前が核撃ち込むガトー役だったら、俺はそれを止めるコウ・ウラ◯役か?」
「あはは、いいねぇ〜最後は核撃った後、相討ちだー」
結局、撃つんかい! それに相討ちっていっても死なないけどな。お互い。
「……人参は食えるけどな!」
テキトーなことを言いつつ、どう切り出したらいいか、頭を悩ませる。
理子が来た目的。理由。それは心当たりがありまくるからだ。
「……で、だな」
「……うん」
「メール見た……のか?」
「……うん。見た……本気?」
上から見下ろしてきた。うっ、なんだかものすっごくドキドキしてきた。
だが、ここで逃げるわけにはいかない。言うんだ。あれは間違えでした!
変な誤解させて悪かったな、って。
「……実は「ここかぁ、トオヤマァァァ!!! ワイを呼び出すとはいい度胸やないかー! 相談あるんやろ? さあ、朝までとことん話し合いしようやないか! なぁに、未来の弟の相談に乗るのも義姉の役目やから、恥ずかしがらんでええ、さっさと用件言えや。とりあえず、酒飲み行くぞ。来いや!「ぎゃあああぁぁぁ」」……場所変えるか」
らんらんに引きずられていくキンジを見送りした俺達は場所を変えることにした。
「……うん」
「じゃあ、とりあえず静かなところに移動して……「移動してナニをする気なのかな? 昴君」……ッ⁉︎」
背後から風香の声が聞こえた。聞こえたが。声がした方を振りむ……けない。なんだこの圧迫感。それにこの全身を震えさせるには十分過ぎる寒さは。
なんかこの部屋の気温だけ一気にマイナスまで下がったぞ。
「……理子さんが布団から抜け出してなかなか帰って来ないからもしや……って思って来てみれば。一体ナニを二人でする気だったのかな? ねえ? ねえ、ナニするの? 教えて欲しいなァ」
風香の顔を見ることが出来たが、見なければよかった。彼女は笑っていた。
まごう事なきスマイルだった。但し、目は全く笑っていない。
「いや……何も「もちろん婚前交渉だけど、それが何?」って、ナニ言ってるんっすか、理子さん⁉︎」
「……なっ、ぬぁんですってぇぇぇぇ!!!」
風香はハイライトが消えた目を吊り上げる。
いやいや、本気にするなよ。そんなことするわけないだろ。
誰かこのバカ共止めろ。
「そ、そんな羨ま……けしからんこと、絶対させない。許さない!
こうなったら……勝負です。昴君を賭けて私と決闘してください」
「望むところだよ。今度は負けないから!」
そう言いながら理子はメタリックシルバーのP38を抜いて手に持つ。
おいおいおい、どーしてそうなる。
暴力反対!
と思いながらも止めることはしない。
武偵中では……というより、俺の周りではこういうのはわりとよくある光景だからな。
だが、せめて平和的に戦ってほしい。
ので、決闘方法を一応聞いてみた。
「決闘方法は?」
「「もちろん、ランバージャックで!」」
あーはいはい、そうくるなーとは思ってたよ。さすが馬鹿の集まる武偵高附属中。マトモな奴がいねえ。
「「昴(君)
「誰がやるか! もっと平和的に戦え!」
「平和的にって……どうやって?」
「ランバージャックだって、十分平和的だよー」
どこがだよ! 四方を敵に囲まれてボコられる決闘方法のどこに平和的な要素があるんだよ?
「そんな物騒な決闘方法しなくてももっとあるだろ! ここは温泉街・箱根。温泉っていったら……」
「「いったら?」」
「卓球だ! 温泉卓球で勝敗決めろ!」
温泉街っていったらやっぱ卓球だろ?
卓球なら平和的に勝敗決めれるし。
そう思って提案すると。
「そうだね。なら、卓球で勝負です!」
「よーし、その勝負乗った! 温泉卓球マスターりこりんの腕前見せてやるぅ!!!」
よし、話題逸らし成功。
これで平和的な争いになる。
未然に武力衝突防いだんだから、何か貰えたりしないかなぁ。平和賞っていうか……賞金くれませんかね? 武偵中さんよぉー。
「とりあえず今日はもう遅いから明日の昼間に……」
「うん、そうだね……」
「そうしよっか。じゃあ、寝ようっか」
そう言った二人に布団に押し倒される。
そして、手足を紐で縛られた。
えっと……?
「何ヲシテルンデスカ?」
テンパって片言になってしまってるが、状況が状況だから平常心を保てん。
なんで俺手足縛られてんの?
「何って一緒に寝るんだよ?」
「添い寝する時、逃げ出さないように手足縛るのは普通だよね?」
「全然普通じゃない!」
普通ってなんだっけ?
ヤンデレ基準で物事判断するのヤメロ。
「だって、手足自由にしたらすばるん逃げるでしょ? それじゃ一緒にねれないじゃん。一緒に寝るんだよ。ずっと一緒に。ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと一緒一緒一緒一緒一緒一緒一緒一緒一緒一緒一緒ダヨ」
「私と一緒に寝るんだよね? 大丈夫、何もしないから。一緒に寝るだけだから。私と昴君、二人いればいいの。私とずっと一緒。そうだよね? そうでしょ? そうと言ってよ? そうだよね? 私だけを見て。私だけを愛して。私だけを選んで。私だけを私だけを私だけを私だけを私だけを私だけを私だけを私だけを私だけを私だけを私だけを私だけを私だけを私だけを私だけを選んで私だけを選んで私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私だけを選んで」
誰か、『普通』の常識をコイツらに教えてやってくれ。早急に!
「ええい、もうやだぁこんな世界ぃ」
転生したら転生先がヤンデレだらけだった件。
これ、小説にしたら売れるんじゃねえ?
なんて現実逃避していると。
「やかましいぞ、何騒いでるんだ!」
ゲッ、見廻りの教師が来た。足音が近づいてくる。
や、ヤバイ。入ってくる。男子部屋に女子がいるのが見つかったらヤバイ。
っていうか、両手足縛られてる姿見られるの別の意味でヤバイ。
俺にこんな趣味はない。
「誰だ、起きてるのは……」
両手足、縛られてるせいか身動きとれない。結び目が思った以上に固い。くそ、外れろ。外れろ。
くっ、マズイぞ。ヤツガクルゾ。
「おい、理子。風香。早く俺の拘束を解いて……って、いない⁉︎」
たった今まで両隣にいたのに……忍者かアイツらは。ま、マズイ。こんな姿見られるわけには……ダメだ。襖が開かれる。
筋肉全開。爺ちゃんの言葉を、教えを信じろ。
筋肉に不可能はない!
やってやる! やってやるぞ!!!
とあるDC兵の気持ちで、教師が入って来るのを待つ。
「誰だ、騒いでる馬鹿もんは……って何やってるんだ星空……」
入って来たのは、らんらんと同じ体育教師の後藤。通称、ゴリ。ゴリラ顔で、筋肉、体力馬鹿、趣味がトライアスロンという某鉄人みたいな教師だ。顔は悪いが生徒想いという評判の神奈川武偵中では比較的マトモな部類に入る先生だ。
「あ、オハヨウゴザイマス。えっと……寝れないので、筋トレを少々……」
今、俺は腕立て伏せをやっている……フリをしている。
「全裸でか?」
拘束解くために力入れたら浴衣破けたんですよ、なんて言えない。
「ハイ……」
「……早く寝ろよ」
「……ハイ」
襖が閉じられる。教師の足音が去っていく。
ふうー、なんとかバレなかったな。
ってきり、なんで夜中に筋トレやってるのか突っ込まれるかと思ってたが……。
爺ちゃんの孫だから鍛えて当然とか思われてたりしないよな?
ありそうで嫌だ。
「行った?」
「行きましたね……」
天井から声が聞こえ、上を見ると理子と風香のヤンデレコンビが顔を出していた。
コイツら天井板を外して天井裏に隠れていたのか。いつの間にそんな細工を……。
その事を問いただすと。
「だって、すばるんの部屋を防犯強化する為には必要だったんだよ〜」
「そうです。昴君の部屋の警備上必要な処置だったんです。これは『親切』の一環です。逃走ルートの確保や盗さ……防犯カメラの設置、盗ちょ……防犯上音源を拾う処置とかも必要だったんだよ。私達、とっても『親切』だよね?」
「それは親切じゃなねえ! それは親切じゃなくて普通に犯罪行為だからな!」
働きたくないでござる働きたくないでござる働きたくないでござる働きたくないでござる働きたくないでござる働きたくないでござる働きたくないでござる働きたくないでござる働きたくないでござる働きたくないでござる働きたくないでござる働きたくないでござる働きたくないでござる働きたくないでござる働きたくないでござる。
もう働き疲れたよ……パトラッシュ……。
今月も忙し過ぎて病んでまう!
俺が病んでるのは仕方ないことだっておもうんだ!(責任転換)
話変わりますが、ゼロの使い魔22巻、感動します。
デルフゥゥゥってなります。まだな方は読むことススメます。