夜空の武偵   作:トナカイさん

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今話から本編開始。
波乱万丈な『ルーマニア編』開始です。
修正、加筆を加えています。
次話以降、もしかしたら更新速度が落ちるかもしれません。
リアル多忙で夜勤とかありますので。
まあ、気長にお待ちください。


第0章 幼少期 ヴァンパイアストライク
Ammo01。海外旅行は波乱がいっぱい? ルーマニア旅行は危険がいっぱい?


青森から帰省して3日がたった。

俺は今、自宅の地下室に幽閉されている。

 

え? 聞き間違えかって?

安心していい。

そう思った人は正常だ。

 

 

 

 

 

ことの始まりは3日前。

 

「ただいま!」

 

自宅の玄関口を開けて、リビングに入ると、父さんと母さんが二人揃ってソファーに腰かけていた。

 

「お帰り」「遅かったな……」

 

夫婦揃って、挨拶を返すとおもむろに父さんがソファから立ち上がり、リビングから廊下に出ていった。

整備室に行って銃の通常分解(クリーニング)でもするのかな?

別段、珍しい光景ではないので、母さんの隣に座りここ数日あった金一さんの訓練という名のしごきによって疲労した身体を休めるべく、うたた寝をはじめていると……誰かに呼ばれる声が聞こえてきた。

 

「昴、こっちに来なさい」

 

声の主は父さんだったがいつもよりか、その声はピリピリしてる。

うわぁ、嫌だな。なんか嫌な予感しかしないぞ。

そんなことを、考えながら渋々整備室に入って行くと父さんが布に包んだ物を渡してきた。

なんだこれ?

疑問に思い包みを開くと中に、自動拳銃のFN Five-seveN(ファイブセブン)とデザートイーグルが入っていた。

 

「前に誕生会で渡した銃と予備の銃を用意しといた。幼稚園に行くとき以外、常に携帯しておきなさい」

 

「ええ⁉︎」

 

5歳児に武装させるって正気か?

エアガンじゃない、実銃だぞ?

銃刀法違反になるぞ。

 

「えっと……大丈夫なの?」

 

「平気だ、ばれなければ罪にならないから」

 

と、俺の前にお茶の入ったカップを置きながら言った。

いや、駄目でしょ! この人、本当に武偵なのかよ!?

 

「大丈夫、大丈夫。いざとなれば法務大臣や警視総監、武偵局長には顔が利くから」

 

そういう問題じゃねえよ!

と思いながら、カップに注がれたお茶を飲む。

 

「ああ、そういえば青森で誘拐されそうだった女の子助けたんだって?」

 

「ぶっ、げほげほ……な、なんで父さんが知ってんの⁉︎」

 

思わず口に含んだお茶を吹き零してしまった。

 

「風の噂で聞いたよ。木刀だけで制圧できるなら上出来だね。武偵憲章も覚えているようだし、本来なら10歳から始めようと思っていたけど今日からは銃を使った訓練を始めようか」

 

え、なんだか嫌な予感しかしないんだが?

 

 

「さて、まずは準備運動からだな!

最初は軽く腕立て伏せ100回×5セットいってみよー」

 

いや、軽くねえから!

 

あまりの無茶振りに耐えきれず、ガンダールヴの能力発動させて逃走を試みたけど無駄だった。

駆け出して100mも進まないうちに首元掴まれたよ。

……本当にこの人同じ人間か?

生身でガンダールヴの速さについてこれるとかもうチーターやん……まあ、Rランク武偵だから当然かもしれないけどさ。

その後準備運動という名の拷問を受けた。

確かに、ガンダールヴの能力を引き出すなら経験と鍛練は必要だ。

原作の事件に巻き込まれても生き残れるくらいには強くなりたいからそれ自体は願ってもな……いや、やり過ぎじゃ、ボケ!

と心の中で叫ぶ。

声に出してこんなこと言ったらオシオキされちまうからな。

まあ、抵抗は無駄だったけどさ。

逃げ出した罰として三日間俺は自宅地下に監禁された。

息子を監禁しちゃうとか、この人達はもう……しかし、俺はこの事に対し恨みは抱かない。

何故なら、この時から始めた訓練のおかげで俺は強くなれたからだ。

そのことを実感するのはそれから数年後のことだ。

 

 

 

「ここがルーマニアかぁ……」

 

 

あれから五年後。

俺はルーマニアに来ていた。

手にはトランクをひきさげ、腰には木刀と日本刀を刺し、上着の内ポケットの中には銃がある。

家族旅行ではない。父さんのお使いとして、単身で遠路はるばるヨーロッパに来たのだ。

小学生の俺が何故遠路はるばるルーマニアに来たのか、という疑問を解くには少し時を戻すことになる。

 

それは訓練という名の修行を始めてから5年ほどたった秋の日。

小学校から戻り部屋でデザートイーグルの整備をしていると、携帯電話が鳴り響いた。

 

「はい、もしもし星空……あっ父さん。どうしたの?」

 

電話は海外出張中の父からだった。

 

「え、来週の土曜日?空いてるけど……はぁ? 飛行機に乗って海外に行け?」

 

突然の話に頭がついていかず混乱していると、父がダメ出しの一言を口にする。

 

「その通りだ。ちょっと海外の知り合いのところまでお使いに行ってほしい。ああ、パスポートはあるから安心していいよ。初めての海外でちょっと危険かもしれないけど、日頃の訓練の成果を実戦で試すいい機会だからね。「えー、嫌だ。面倒」訓練の一環の模擬戦で、敗けた者は勝者に従うというルールあるだろう? 5年分の権利を使うから拒否権はないぞー」

 

チケットは送ったといって電話を切られ、呆然とするなか荷造りを始めたのだった。

はぁ〜。……気が重い。

 

そして、出発の朝、母からチケットを受け取り行き先を確認した俺は愕然とした。

俺が行かなきゃならん国。そこは……

ルーマニア。

吸血鬼伝説がある歴史ある小国。

この世界においては『串刺公』よりも『無限罪』と呼ばれる事の方が多い吸血鬼(ブラド)が住まう国。

理子ルートに入りました……。

ってこれ死亡フラグ立ってないか?

いや、ルーマニアに行くからって吸血鬼(ブラド)と戦うとは限らないじゃないか⁉︎

よし、ポジティブに考えよう!

仮にブラドに襲われても、弱点もわかってるし、なんとかなるだろう。

魔臓を同時破壊できればブラドは怖くないからな。

って、まてよ?

ということは……だ。

理子救い出せるよな? 理子を助けたら、原作壊すことになるよな?

まぁ、ブラドに会ってしまったらその時考えよう。

それにしても……海外か。前世では縁なかったなー。

仕事みたいなもんだけどせっかくだから楽しむか!

 

そんなことを考えているとあっという間に出発する当日となり、気づくと俺は成田空港に到着していた。

空港に着いた俺は出国手続きを済ませるべく、航空カウンターに向かう。

そして、飛行機の搭乗時刻まで空港内の売店や飲食店で時間を潰し、出発前の家族団らんを満喫する。

 

「それじゃ行ってくるよ」

 

時間はあっという間に過ぎた。

 

「はいはい、気をつけてね~」

 

「兄さん、気をつけてくださいね? 行ってらっしゃい」

 

「にいにぃ~お土産よろしく‼︎」

 

母と妹達のそれぞれの言葉を聞き、苦笑いしながら出国ゲートに向かい、手続きを済ませる。

普通ならこんな子供が1人で海外に行くのは怪しまれる。

それも帯銃や武装した小学生なんて、搭乗拒否されて当然なのだが。

そこはRランク武偵の父親。

父の推薦状と法務大臣やら、官僚の氏名と実印を押印された武装許可証やら出国許可証とかを提示すると驚くほど手続きは短くすんだ。

国家権力凄えな、やっぱ。

あまり乗り気じゃなかったが、来ちまったもんは仕方ねえ。

さて、日頃(訓練)の成果見せますかー!

気合を入れ直し、機内に乗り込む。

座席に座ると、移動までに蓄積された疲れもあってすぐに眠気が襲ってきた。

少し目を閉じるか……。

 

「隣失礼するよ?」

 

しばらくして声をかけられた。

目を閉じていたせいか、どうやらうたた寝をしていたようだな。

声をかけてきた人を薄目を開けて見てみるとそこには二人組の女の子がいた。

声をかけてきたのは短髪のおかっぱ頭をしてしている小学生くらいの子供だった。

あれ?

この子……どこかでみたような? この子を大きくさせた感じの女性を確かアニメかなんかで……。

……ってどう見ても(つづり)だよな?

ってことは連れは……ゲッ!ら、蘭豹(らんびょう)だ‼︎

なんでいんの?

というか、二人はもう(つる)んでるの?

小学生だろ、まだ。

まさか、原作崩壊が始まってんのか?

落ちつけ、落ちつくんだ、俺。

よし、冷静になって考えよう。

 

綴と蘭豹(らんらん)が現れた。

この二人に対して有効な選択肢は……

 

 

①死んだふり

 

②寝たふり

 

③口説く

 

 

ってか、なんだ? ……この選択肢⁉︎

口説くという選択肢は絶対ないだろ、誰得だよ!

②だな。寝たふりしてやりすごそう。関わっちゃいけない。

関わったらブラドと闘る以前に死ぬ。物理的に(確定)。

だからここは寝たふりでやり過ご……。

 

「なぁ、そこの餓鬼。起きてんやろ? お前武偵見習いか?」

 

はい、やり過ごせないとさ、こんちきしょう!

武偵見習いということまでバレてるし。

恐るべし野生の勘。

というか、初めての海外旅行で偶然綴や蘭豹と同じ飛行機に乗って座席が隣になるとか、俺の運勢どうなってんの? 今日は絶対厄日に違いない。

しかし困ったな……話しかけられた以上、寝たふりはできん。

どうする? どうする?

どうしたら、いいんだ?

どうやってこの状況を切り抜けたらいいんだ?

山で熊に出会った人間はおそらくこれと似た恐怖を感じるんだろうな。

 

機内の座席に座りこれから起こる出来事に期待と不安を感じていたところに、転生以来最大の出会い(ピンチ)を迎えてしまい、俺は混乱していた。

蘭豹に声をかけられるとか、原作介入が始まったのか?

しかし、意外と昔の蘭豹って可愛らしいんだな。これが後数年であんな残念な感じになるのか……。

時って……残酷だよな。

目の前にいる蘭豹の格好は上は武偵高の制服に似たものを着用しているが、下は超ミニなスカートを履いている。膝丈何センチだ? 金次がいたらヒスるぞ。

かなり際どいミニスカートを身に着けている。

因みに、綴は東京武偵高の制服を着用している。

 

「おい、聞いてるのか?」

 

そんなどうでもいいことを考えていると、無視されたと勘違いしている蘭豹が声を荒くあげた。

うわぁ、質問しただけなのに殺気出してるよ。

見た目は子供なのに何コイツ超怖えー。

 

「ち、違いますよ。いきなり質問されてビックリしただけです」と、無難な言い訳をして、蘭豹の出方をみる。

 

「ふん、まぁいい。……で、お前武偵見習いか?」

 

再び先程と同じ質問をしてきた蘭豹。

誤魔化せる雰囲気ではないな。

 

「はい、父から……あ、武偵の星空 光一。俺はその息子の昴です。

父から、将来武偵として活躍できるように鍛えられてます」

 

「ワイは蘭豹や。なんやお前。光一先生の息子やったんか?」

 

え、光一先生って⁇

 

「私は綴 梅子。こっちの蘭豹とともに昔、光一先生に教えてもらってたことがあるんだ」

 

蘭豹と綴を教えたって……あの父親、本当に何者なんだろ?

それにしても、綴と蘭豹か。早くても出会うのは数年先だと思っていたんだけどな。

武偵高の教師じゃないのかな?

その辺探ってみるか。

 

「えっと、二人共、もしかして武偵高生ですか?」

 

「そうや」

 

「そうだが?」

 

な、なんとこの二人にも学生時代があったのか?

いや、当たり前か。

一応(・・)、人間だしな。

 

「つかぬ事をお聞きしますがお二人はどちらの学校にお通いで?」

 

歳近いのに敬語で話すのはアレだ。

この二人にタメ口とかありえん。

タメ口聞いたら死ぬ。ガチで!

 

「ワイは香港と上海……今は名古女(ナゴジョ)に通ってるでえ。因みにインターンや」

 

「私は東京武偵高よ。同じくインターンよ」

 

そういや、蘭豹は中国出身だったな。

てか、名古女(ナゴジョ)って。まぁ、蘭豹なら確かに撃たれなさそうだけど……。

ナゴジョとは名古屋女子武偵高校のことを指す。この学校、女子高なのに専門科目は強襲科(アサルト)のみというキチガイな学校で制服は素肌が見えるくらい短く武偵が着る服としてはあまり好ましくない。素肌を晒すということは防御が疎かになるからな。しかし、彼女達はあえて着用することで周囲に『自分は何があろうと撃たれない』と自己暗示を含めたアピールをする為に着ている。

その為、数ある武偵高のなかでも実力派として知られ、武偵業界では有名な学校なのだが……。

なんでらんらんがそこの制服着てんだよ⁉︎

ってか、インターン生かい!

外見もそうだけどら中身も子供だろ、あんたら……って、寒気がした。ごめんなさい。調子乗りました。

そういや、蘭豹こう見えても俺と年齢あまり変わらなかったな。原作でも18、19歳だったしな。

ということは今の年齢は俺より1、2歳上、11、12歳くらいか……。

ちなみに強襲科(アサルト)というのはその名称の通り、犯罪現場に突撃! 強襲する学科で。

テロの制圧などを行う最も死亡する可能性が高い学科だ。その卒業までの生存確率は僅か、97・1%。

毎年100人に3人は死ぬというキチガイな武偵高の中でもかなりアレな学科だ。

悪しき伝統で挨拶代わりに死ねということから通称『死ね死ね団』とも呼ばれる。

まぁ、綴や蘭豹に対してはいろいろツッコミどころ満載だが今はいいや。それより。

 

「ルーマニアには依頼ですか?」

 

「その辺のことは言えんやけど……まぁ、仕事の邪魔はすんなよ?」

 

しねえよ。

あんたらと関わったら命がいくつあっても足りないからな。

俺はまだ死にたくない。

まぁ、同じルーマニアに行くとしてもむこうでこの二人とバッタリ出会う確率なんてそんなに高くないだろ。

余程、運がない限りは……。

たまたま同じ飛行機で一緒になった人と旅先でバッタリ会うなんてそんなこと起きるわけがない。

なーんて、思っていた俺だが、自分の運の無さをこの時の俺はまだ……知らなかった。

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