魔法戦記リリカルなのはForce~世戦の軌跡~ 作:岸辺 翔
「閣下、不可解な救助要請が来ています」
「……見せろ」
次元の海に存在しているOHN本社の総統室。
そこで俺は部下から一枚の紙を受け取った。
「次元座標100-CDA2G-203KS……? 詳細は来ていないのか」
「現在受信中です。至急伝達させますか?」
「……いや、俺が出向こう。自分で確認する」
椅子から立ち上がり、無駄にデカい机を避けてドアまで歩く。
この部屋の設計は俺がやったわけではないので、何故か『閣下に相応しい部屋にしよう!』とかそういうノリで、クソデカい部屋と机になったわけだ。
マジでふざけんな。
「では、人払いを?」
「……ああ、頼む。それから双転移ポートの起動を頼む」
「ハッ」
「…………しかし、次元座標が100番台……? あまり認知されていない座標だが―――」
<―――助けテ!>
「―――ッ……!?」
激痛と共に、何者かの声が俺の頭の中で響いた。
その痛みはこれまでの経験で語れぬほどのもので、体に力を入れることも適わず膝を付いてしまう。
これは…………なんだというのだ。銃弾も、重力も、大気も、熱も……このような痛みを生み出さない。頭の中身全てをミキサーでかき混ぜられ、強力な電気を流されたような……鋭くも鈍い痛み。
俺でなければショック死だろうな……。
「閣下!? 一体何が!!」
「まて…………話しかけるな……」
<苦シい……痛い、ヨ……!>
「ぐァッ……! っく……」
「えい、衛生兵! 衛生「黙れ!」あっ、も、申し訳ありません……」
「……ハァ……ハッ……。汝に問う、お前は……何処にいる」
<もういヤだ………………誰も、傷つけタくない……!>
「ああ……そうだな。その悲しみから逃れただろう。だから教えろ……お前は、どこに……!?」
<来ちゃダめ……みんな、死んじゃう……>
「…………悲しい思いを続けてきたのか……? その連鎖を食い止めるのはお前自身だ……俺はその手伝いしかできん……。―――おい! 逆探知が完了した! 今すぐ双転移ポートの駆動を切れ! 俺が直接飛ぶ!」
「ハッ!」
伝達兵が双転移ポートを遠隔停止させたのを確認し、体を駆け巡る魔力を胸の一転に集中させる。
頭痛が止まないが、それでも逆探知だけはできた。この声が次元間通信を利用した精神感応だったのが幸いしたな。
次元座標は先ほどの報告にあった場所だ。それほど苦労もしないはずだが……。
―――ッ!?
「銀十字!?」
【…………EC因子(エクリプス)の反応を感知。強制転移を開始】
突然俺の目の前に現れた、一冊の魔導書。
EC因子の感染源でもあり、俺の第二のパートナーだ。
「待て! 俺には任務が……」
【精神感応お発信地点と報告。……決定権を譲渡】
「なッ………………わかった。転移しろ」
【双転移発動。転移時の肉体保護としてディバイダーの起動を提案】
「……承知だ」
【認証完了。ディバイダー起動と同時に転移開始】
左手にDESERT EAGLE 14inchを模したEC兵器(ディバイダー)が現れると同時に、俺の体を部分的に機械質の鎧が包んだ。
左腕両足に展開されるこの鎧。銀十字いわく、これは『俺にもっとも適応した姿』らしい。よくからん。
同時に俺を浮遊感が襲い、目の前の景色を一変させた。
「……弾薬は充分、武装も難点は無い……。しかし、ここは―――」
ここはどこだ?
大気に混ざっている原始成分からして、ここが鉱山であるのはわかるが……。
あの半壊した遺跡に様なものも気になる。
「銀十字、ここはどこだ」
【転移先。ルヴェラ鉱山遺跡と断定。救難信号のあった地点から半径200メートル圏内であり、かつその4時間前へ時差転移を完了】
「時差転移までやったのか……。まあそれは構わんが、信号発信地(ポイント)から200メートル圏内……? …………って、あれしかないか」
誰がどう見ても怪しさ満天の鉱山遺跡。
俺が到着したのはその上にある崖……だな、畜生。銀十字め、厄介な場所を選んで転移しやがったな?
「……Ja.野宿でもするか」
【近辺に食用可能生命体の反応なし】
「……お前、何処までひねくれている?」
【現状通りには】
「……そうか。正常そうで何よりだ」
片腕だけでなんとか岩を登り、視界を
夜だからか明かりが目立つな。おかげで
「小さな町に……草原と……山脈。さしずめ自然保護区域か」
【光景から第23管理世界ルヴェラ文化保護区と算出。正式照合の可否判断を譲渡】
「曖昧で構わん。それよりも全周警戒をしろ」
【
パラパラと銀十字からいくつかのページが飛び出し、あたりに散らばっていく。
これらは索敵レーダーのようなもので、最高で約100億ものページを散布できる。しかも攻防兼用。
連ねれば刃にもなるし、集約すれば盾にもなる。まさに攻防一体の武器なわけだが―――
「……性格がこれだからな」
【なにか?】
「いいや……気にするな」
【……索敵範囲を半径3キロに拡張。危険分子なし】
「3キロて……やりすぎだ。1キロ圏内でネズミ一匹のこらず報告しろ」
【索敵範囲縮小。動体を複数確認。総数3。内一体は無機物と判定】
「無機物で動体……まるでデバイスだな」
【
「お、おい、勝手に変更を……って、クソ……」
勝手に変更された視覚で確認してみると、すぐにその姿を見ることができた。
15,6歳くらいのガキと、その隣で浮遊するちっこい無機物。その反対側には何処からかやってきたであろうネズミ。
……まあ、確かにネズミ一匹残らずと言ったが……。
しかもガキの方はまっすぐに俺の方へ来ているし。危険分子反応は無いから平気だと思うが……。
念には念を、だな。銀十字には隠れてもらうか。
「
特殊な歩法と魔力運用で瞬間的に音速を超え、ガキの後ろからDESERT EAGLE 14inchを突きつける。
その間に視覚の通常に戻し、ハンマーも起こした。
「……あの、俺……なにか?」
「今のところはなにも。しかし今後どうなるかはわからん。まずはここにいる理由を訊こう」
「長期旅行での観光です」
「証拠は」
「パスポートと、今までの写真くらいなら……」
「親権適用者は誰だ」
「保護者なら、います」
「名は。IDはわかるか」
「管理局の人で、名前は―――」
…………管理局、だと……?
「待て。管理局とは、よもや時空管理局か」
「え、ええ、まあ」
「……そうか、続けろ」
「えっと、スバル・ナカジマ。
「―――ッ……! …………そうか。あいつの……」
……しかし、なぜあいつの名が出てくる?
俺はもう、フェイトやなのはたちが生きている『あの世界』に変えることはできないはずだが……。
「…………すまんな。尋問のようなことをして。楽にしてくれ」
「軍人ですか? そんな
「法は法にあらず。一応管理局からの許可は得ている」
「管理局が質量兵器を許可……?」
「細かいことは気にするな。この時間にここへ来たということは、お前もあれが目当てか?」
「……はい。さっきも言ったとおり、観光目的で」
「ならこの時間からいくのは避けたほうがいい」
そう言ってDESERT EAGLE 14inchを右脇のホルスターに収め、魔力で作った小さな炎を明かりにする。
野宿でも共にどうだ? と誘ってみると、ガキは素直に頷いた。
「名を聞いていなかったな。俺のコードネームは
「トーマ、トーマ・アヴェニール。15歳です」
「で、そっちのデバイスは」
[どうも、スティードと申します]
「非戦闘用デバイス……か。しかも特注」
「はい、スゥちゃんがくれたもので」
……しかし、今は新暦何年だ?
それがわからねば今後の行動も変わってくる。
「時にトーマ、J・S事件を知っているか?」
「それって6年前の大規模犯罪ですよね」
「ああ。あれは酷いものだった……。まあそれはいい」
そうか、6年前か。
ということは、なのはやフェイトは25歳という事になるな。
むゥ……そろそろ抜かれるぞ、俺。
「食料の確保はできているのか」
「はい。銀狼さんのほうは?」
「問題ない。元々1週間くらいの断食ならば耐えられる」
「うへぇ……想像もできない」
「しなくていい。それよりも…………設営や寝具はあるのだろうな」
「まあ、自分の分くらいは……」
「俺の心配はするな。砂漠だろうが沼地だろうが、俺は何処にでも適応しうるようになっている。傭兵を甘く見るなよ」
「傭兵? 傭兵って言ったら犯罪じゃ」
「ふむ……そうだな、正式名称で言うと『防衛用装備を持ったプライベートオペレーター』だ。よって軍属ではない」
「い、言い回しの屁理屈ですよね……それ」
「法律なんぞそれでいい。穴の無い鉄壁など存在しないのだからな」
そのような他愛の無い雑談をしながらも、着々と準備を進めていく俺とトーマ。
コーヒーを出された時は流石に礼を言わざるを得なかったがな。
そろそろ4時間経つかと思ったそのとき、再びあの声が聞こえた。内容は先ほどと同じものだが、痛みはそれほどでもない。―――……ただ、トーマにも聞こえているようで、痛みに苦しんでいた。
「その痛みを受け入れろとは言わん。慣れろ」
「まさか、貴方にも……!?」
「ああ。しかし、この程度ならば問題ない」
―――トクン……
心臓の鼓動と同期して、右目が急にうずいた。
俺の右目は視力を失っている。しかし、その代わり以上の能力を得ている。
その1つが―――
EC因子は俺に力を貸し、俺は体を貸す。そうしてやってきたが……まあ、時折不便もある。
色々と、な。
「……行くのか」
「……助けてって、言ってます」
「…………そうか。なら、俺も力を貸そう」
声がしたので遺跡を見てみれば、そこにはコルト M16と重装甲を装備した兵士が数人巡回していた。
それに白衣を着た研究者らしき人物が複数と、装甲車両に物資搬送員が数名。
……戦力はたいしたことないな。
「お前はそこにいろ。一撃で全員気絶させる」
「でも、人数が」
「これでも隻腕で戦ってきた経験はある。1キロ圏内のこの距離で外すわけが無かろう」
右袖に左手を突っ込み、中からベネリ M3 スーパー90を抜いて構える。
同時にレアスキルであるトリガー・ハッピー―――魔力を弾丸として形成する能力―――を発動させ、無数のTASER XREP弾を形成した。
TASER XREPというのは、まあ簡単に言うと射出型のスタンガンだな。性格にはその弾丸だが。
俺が今構えているM3も、弾丸は12ゲージのTASER XREP弾だ。本来射程は50メートルほどなのだが……まあ、そこは俺の技術で云々。
「作戦許容時間は3分。できるか」
「……がんばります」
「了解。目標補足…………
合図と共にトーマが走り出し、その後ろから幾多ものTASER XREP弾が発射されていく。その全ては警備員や研究者たちの首筋を捕らえ、確実に気絶させていった。
っと、俺も後を追わねばな。俺がここに来たのは元々悲鳴を主を助けるのが目的だ。
M3のスリングを肩に掛け、崖を一蹴りで飛び降りる。すぐにトーマに追いつき、中にいた研究員や武装警備員を全てTASER XREP弾で気絶させていく。
なんだ、えらく薄い軽微だな。見た目は重要そうだったが……。
「……この研究……もしや……」
「知ってるんですか……?」
「見覚えがある。この肉塊、それにこの気配……よもやECでは」
「E……C?」
「大分ヤバい方向ということだ。お前はあまり首を突っ込まないほうがいいかもしれん。ここから先に進むと、二度と後戻りはできんぞ……」
幾重もの電子ロックで保護された巨大な扉を前に、俺はM3を構えなおした。
この先から超えの気配がするが、陽動の場合もある。警戒するに越したことは無い。
「…………でも、助けてって……言ってます」
「……そうだな。なら、
厚さ30センチ程度の扉を蹴破り、瞬時に進入してM3を構える。
敵影無し、民間人無し、生命体反応1―――クリア!
「要救助者1名を発見。トーマ、俺が見張りをしている間に救出(セーブ)できるか」
「は、はいっ」
フォアエンドを壁に引っ掛けてコッキングし、左腕1本で構える。
見張り兼護衛という立場上部屋から出ることはできない。できうるのであれば通路に出たいが……そうもいかん。
後ろではトーマの短い悲鳴も聞こえるし、なにより……あいつは、自ら〝こちらの世界〟に来たのだ。俺がとやかくいう筋合いは無い。
「トーマ! まだか!」
「その、手錠が中々外れなくて……」
「チッ……。どけ、撃ち壊す!」
M3を壁に立てかけ、右脇のホルスターからDESERT EAGLE 14inchを抜き、貼り付け台に拘束されていた女の手錠と足枷を撃ち壊す。
早くしてくれ、そろそろ3分が経過するぞ……!
『―――警告、警告。感染災害の危険発生』
「奴らに感づかれた! まだか!」
「あ―――大丈夫です!」
「早く脱出を―――クソッ!」
バシンッ!
扉が重厚な魔力障壁に変わり、さらには天井からスプリンクラーのような突起が出てきた。
こいつァ……まさか……
『これより熱焼却処理を開始します。近隣ブロックの職員は至急非難を』
「やはりか……! トーマ! 魔法は使えるか!」
「一応、基本的なものは!」
「なら全力でシールドを張れッ。念のためこいつも使え」
そう言って着ていたロングコートを投げ渡し、被っているように伝える。
俺の軍服は耐弾・耐熱、耐刃の特殊繊維でできている。多少の熱なら緩和してくれるだろう。
仕方ない……
『カウント6』
「よもやこれに頼らねばならんとはな……」
『5―――4』
「トーマ、準備はいいか」
「はいっ」
『―――3』
「はァ……E-Cディバイダー、スタートアップ!」
【E-C Divider Code-000.Start Up】
俺の左腕と両足を機械的な鎧が被い、さらにくるぶしまである長いロングコートが現れた。
……ん? 今までのものと違うな。鱗状の模様ができているし……何故急に装備が変わった?
『2―――1』
「―――っ!」
<
『―――0』
「―――なんだ、今の波動は!」
大量のガスと火炎が舞い散る中、俺は『俺が良く知る反応』を感知していた。
部屋にあった設備は全て溶けているが、無論俺に傷は無い。しかし、今の反応はまさか―――!
「………………ッ……! やはりか…………!」
急いで振り返ったそこには、予想通りの変化を遂げていたトーマがいた……。
部分的な黒い装甲に、色の変わった瞳。こいつも世界に選ばれてしまったか……。
クソッ。ディバイダーまで起動していやがる。
<E-C Divider Code-996.Start Up>
「―――トーマ! そいつを停めろ!」
「ディバイド―――ゼロ……」
突如天井に向かって放たれた巨大エネルギー砲撃。
威力は不完全とはいえ、それでも施設を貫通してしまう威力だ。このまま制御不能状態にしておくのは厄介だな。
あまり手荒なことはしたくないが……。
「―――ッ!」
瞬時にリボルバー型のディバイダーを蹴り落とし、女を引き離してトーマを床へ押さえつける。
そのまま後ろ手にOHN特性の手錠をかけ、DESERT EAGLE 14inchの銃口を頭に突きつけた。
「声が聞こえれば返事をしろ! もし意識が無いようであればこの場でお前を殺す!」
こいつは
だからといってはいそうですかと見過ごすわけにもいかない。少なくとも敵味方をはっきりさせ、今後の処置を伝えねばな……。
「―――っ……!? あ……れ……。俺、なにを……!」
「聞こえるか、返事をしろ」
「え……あ、はい!」
意識が覚醒した瞬間、ディバイダーと鎧は消え去った。
どうやら無我で発動していたようだな……。危険極まりない話だ。
敵意がないのを確認し、トーマの拘束を解いた。
「この場で詳しい話はやめておこう。用件は1つ、お前は今どれだけ〝危険な立場〟にいるかわかってるか」
「危険な立場……ですか?」
「…………その様子では、なんら理解していないようだな。―――まあいい。早くこの場から逃げるぞ。奴らが来る」
「あっはい!」
トーマが女を背負い、俺が証拠を消しながら撤退する。
ふむ、そこそこの魔力量はあるみたいだな。そうでなければ女を背負って全力疾走など、そうそうできるものではない。
俺のように基礎を鍛えていれば関係ないが……それでもガタがくる。
しばらく走り続け、山の2合目辺りで小休止を取ることに。
「トーマ、こいつに名を訊いてくれ。お前がEC因子(エクリプス)に感染したのを見る限り、シュトロゼック・シリーズであることは間違い無いだろうが……」
「えと……俺はトーマ・アヴェニール。君は?」
<リリィ・シュトロゼック>
「リリィ……うん、可愛い名前だ」
「…………
「あの、銀狼さん。これからは……」
「なに、宛はある。しかしお前の面は割れてしまっているから、表立った行動はさけることになるだろうて」
「なっ、なんでですか!?」
「先刻、熱焼却処理システムが発動しただろう。あれが発動したということは俺たちがあそこにいたのを視認されて、そして確認をしたということだ。まあ俺はいかような媒体にも姿が映らないから問題ないがな」
「……じゃあ、もしかして……手配されてるんじゃ」
「そう考えるのが妥当だろう」
そう言うと、当然のようにトーマは考え出してしまった。
いくら長期旅行とはいえ、裏の世界に首を突っ込んでしまったのだ。後戻りはできないし、今後は世界や組織の連中に狙われることとなる。
俺が傍にいる間はさせんが。
「安心しろ。隠密行動は得意だ。たとえ手配書を回されたとしても逃げられる自信はある」
「…………俺、管理局に信頼できる人がいるんです。その人に言えば、きっと保護してくれ「甘ったれるな」んなっ……」
「俺たちは今、管理局の認識で〝殺害を認められている〟のだ。理由はいくつかあるが、俺たちが『
そう言って右目の眼帯をずらし、蒼の瞳に紅い文様の描かれた右目をトーマに見せる。
おかげで摩訶不思議な能力もあるがな。
「
「……詳しくは後に明かそう。今は逃げ延びることと、俺から離れないことだけを考えろ」
「でも、銀狼さんが敵にならないって保障は―――」
「…………そうだな。だが俺はお前を敵にする気は無い。同じ病にかかったものとして……なにより、
シュトロゼック・シリーズ。
それは
銀十字の書が何冊あるのかなど知らんし、少なくとも先ほどトーマも出現させていた。つまり現時点で2冊あるということになる。
…………まあ、詳しいことは後々考えるか。ダルくなってきた。
「これ以上留まるのは危険だ。町まで出るぞ」
「……はいっ」
[あの、銀狼殿?]
すすす~、と寄ってきた非戦闘デバイスのスティードが、俺に耳打ちをしてきた。
なんだ、主人に聞かれたくないような話なのか?
「なんだ」
[もしや、OHNのでは……?]
―――ッ……
さすが、デバイスだな。
情報のリンクが早い。
「……………………俺の素性は伏せておこう。今度のためにも、今の関係を定着させるためにもな」
俺はスティードをトーマに投げ渡し、山道を歩き始めた。
OHNの総帥、銀狼。
今の俺はその立場でここにいるのではない。
俺は今、
同じ病に感染した同胞として、更なる悪夢を生まぬように
―――俺は、