魔法戦記リリカルなのはForce~世戦の軌跡~   作:岸辺 翔

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牙・第2章 愛した人よ

「……………………この魔力波長……」

 

「…………ああ。こりゃあ……アイツ(・・・)だ」

 

 

夜遅く。

如何なる獣も息を潜めるような闇の時。

その時間、2つの陰が蠢いていた。1つは―――牙。そして―――蜘。

かつては三銃士としてうたわれた2人が、ここで密かに集まっていた。しかしたりない。女神の姿が。

 

 

「和輝、追跡できるか」

 

「キツいな。確かに残留魔力でも追っていけばたどり着けるかもしれねぇが、タイムラグは最短で8時間ってとこだ。意味が無い」

 

「……ったくよォ。もしこれがアイツなら……相変わらず末恐ろしい奴だ」

 

「そうでもなきゃ銃騎士なんてやってらんねぇだろ。お前でもどてっ腹に穴あけんのが精一杯だったくせに」

 

「あれは計算に入れるなよ。不意打ちだったし、しかも直後にボコされた。まぐれだ」

 

「まぐれも気まぐれも、所詮は偶然。実力じゃない。俺はアイツに勝てないし、それはこれからも」

 

 

銃騎士と、それに使える三銃士。

主従関係は無い。それぞれが信頼し合い、使用しているだけの〝絶対的な仲間〟でしかないからだ。

本来は―――本当ならば。

 

 

「…………そういやさ、最近上がOHNを敵視してるが……何かあったのかよ」

 

「……その事には口を出すな。戻れなくなる」

 

「……説明しろよ、どういうことだ」

 

「そのままだ。お前は関わらないほうがいい。それしか言えない」

 

「……おい、そりゃねぇだろ。なんで今更退け者なんだよ」

 

「巻き込みたくないからだ。いくら俺たちが仲間でも、課を超えてまで頼むことじゃない」

 

「そうかもしれねぇが、アイツの―――隼人の事なら話は別だろ! 昨日、俺はこの波長を出す奴と戦ってきた。背格好も、戦法も、アイツそのものだった……!」

 

「……それは、マジか」

 

「ああ……こんなことで嘘言っても、なんの意味も―――」

 

 

ガコンッ。

暗闇の向こう―――重圧なドアのあるほうから、鈍い金属音が響いた。

何かを落としたような、力加減を間違えたような。

 

 

『…………あの……和輝、さん。今のって……』

 

「ッ……。どうしてここにいる」

 

「夜間警邏で、見回ってたら……」

 

「寝ろ。時間も遅い」

 

「…………教えてください、今の話」

 

「言えるわけが「遊騎」……なんだ」

 

「無駄だぜ。どうせ俺たちが言わなくても……OHNの方でばれる」

 

 

隼人の残した唯一無二の血縁 〝イヴ〟

彼が残した最後の証拠、彼がこの世界にいたという、ただ1つの。

 

 

「…………あいつは、この世界に来たかもしれない。いや、いるんだろうな。……様子はおかしかったけど」

 

「詳しく聞かせてください! OHNの私じゃなくて―――隼人の娘として!」

 

「………………ったく。俺ぁ知らねぇぞ、和輝」

 

「へーへー。俺が責任とって教えりゃいいんだろ、ちくしょーが」

 

「あのっ、どんなことでもいいんです! 見つけた場所とか、時間とか……」

 

「……」

 

 

いつにもまして熱心な視線を向けるイヴに圧されたのか、和輝はやれやれと呟きながら手招いた。

立ってないで座って聞け―――そういうことだろう。

 

 

「単刀直入に言っておく。隼人かもしれねぇ〝敵〟はいた。でもってそいつに俺は返り討ちにされた。消息は一切掴めてない。……以上だ」

 

「ほかに……なんでもいいんです、教えてください!」

 

「何もねぇんだよ。今教えたのが今わかってる全てだ。奴の拠点もわからなければ行動理念も、その意味もな」

 

「……じゃあ、せめて魔力波長のデータだけでも、お願いしますっ」

 

「……………………なあ、遊騎。まだ年端もいかない少女に頭下げられてる俺って、どうよ?」

 

「恐ろしいほどに下衆に見える」

 

「だよなぁ……。―――イヴ、本来ならやっちゃいけねぇことだが……これ持ってけ。今現在、わかってない(・・・・・・)情報だ」

 

 

頭を下げて頼み込むイヴの目の前に、和輝は1枚のメモリーチップを置いた。

なんの変哲も無いメモリ。極秘情報伝達用に作られた、彼らにとっては普通の……。

 

 

「ぁっ……ありがとうございます! この恩は、絶対に返しますので!」

 

「早く行けよ。余裕で犯罪行為だしな」

 

「すいませんっ!」

 

 

足音を消して走り去る少女を見送りながら、2人は大きく息を吐いた。

安堵にも似た、複雑な感情の混ざった吐息。

やってはならぬ禁忌を犯した償いと、これから起きるであろう事態に対して。

―――こうして、混沌は始まった。

 

 

 

 

 

†★†★†★†★†★†★†★†★†★†★

 

 

「♪~♪♪~~」

 

 

深夜の密会から数日。

OHNの仕事も無く、学校も休みの休日。

完全なオフ日だというのに、イヴは遊びに行く事無く家にいた。

17歳という年頃の年令だ。友達の1人や2人いてもおかしくないだろうに、彼女にはそれがいない。

決して人付き合いが苦手なわけではない。誰とでもわけ隔てなく接し、OHNの中では天使とまで呼ばれているくらいだ。(基本、OHNはむさいオッサンしかいないため)

そんな彼女が何をしているのかというと、まあ普通の少女らしからぬ…………銃器・弾薬の管理なのだが。

 

 

「―――ふうっ……これでいいかな」

 

 

銃器の整備を一通り終え、次はナイフなどの刃物に手を付けた。

そんな時―――

……カチャッ

小さな金属音が、玄関から響いた。

 

何度も響く音に気づいたイヴは携帯していた護身用のハンドガンH&K HK45を持って玄関へ向かった。

ドアノブとは逆側に身を寄せ、静かにスライドを引いて構える。

何度も何度も響く金属音も止み、最後にはシリンダーの回る音が聞こえた。

 

 

「…………っ!」

 

 

ドアの指先が覗いた瞬間イヴは腕を掴み、その主を押さえつけようと体術をかけたと同時だった―――

イヴの関節は曲がらぬ方向へ押さえつけられ、もはや動かすことさえままならぬ状態になっていた。

その間、イヴが腕を掴んでから僅か0.4秒。瞬きすら許さぬ速度でそれは終わっている。

 

 

「はや……い……!? だっ、誰!? この家の鍵を開けられるって事は、生半可な職人じゃないはず!」

 

「―――ッ……!? ……………………名は、なんという」

 

「イヴ。貴方は何者……? 変声機でもつかってるみたいだけど、どうしてあの人の声を」

 

「……イヴ、残念だが本人だ」

 

「えっ……?」

 

 

束縛が解かれ、銃を構えながら振り返ったそこにいたのは

 

 

「すまんな、別人でなくて」

 

 

2メーターはあろうかという背丈に、膝まで在る銀の髪。

誰もが知る、たった1人の総帥―――銀狼だった。

 

 

「…………っ……!? 違う……なんで……嘘だっ、嘘に決まってるっ! そんなはずは―――」

 

「……遅れてしまってすまない。今……帰還した、イヴ」

 

 

銀狼はイヴの持つ銃をゆっくり降ろすと、動きを許さないかのようにその細身を包み込んだ。

何者にも出せぬ絶対的威圧感と、それに相対する安堵感。今までに幾度と無く求めていた間隔の襲来に、イヴは警戒を解かざるを得なかった。

 

 

「なあ……イヴ、1つ、訊いていいか」

 

「…………なに、隼人」

 

「お前は……誰の味方で、何の敵だ」

 

「私は隼人の味方だよ……絶対、に…………」

 

 

涙ぐんだ瞳を向けたイヴは唐突にその意識を失い、やがて眠りについた。

銀狼はイヴを廊下に寝かせ、ドアに手を掛ける。

 

 

「―――残念だ、イヴ。お前が何者かの味方である以上、俺はお前と相対し敵対しなければならない。ならばせめて……俺の手で鎮めよう」

 

 

閉じかけたドアの隙間から腕と銃が覗き、手に収められていたハンドガン HK45が奇声を上げた。

ただ1人の娘―――イヴに向かって

 

 

 

 

 

†★†★†★†★†★†★†★†★†★†★

 

 

 

「なあ、ちょっといいか?」

 

「え……? ああ、きみか」

 

 

時空管理局・首都航空隊第2中隊隊舎。

その体長室に見慣れた男が入ってきた。

 

 

「遊騎くんの所にいなくていいのかい?」

 

「今はお前に用があってな。もう報告はいってると思うけどよ、いま、俺の昔馴染みが犯罪者予備軍で……まあ見かけたら連絡くれ、って話だ」

 

「ああ、たしか……」

 

「銀狼。銃騎士の(・・・・)銀狼だ」

 

 

銃騎士―――?

……ああ、いたなそんなの。

世界は私に言った。〝乙は再生の象徴『銃騎士(ガナー・ライダー)』、甲は破壊の象徴――●●●――なり〟

なら彼は、私が始末すべき相手なのかな……?

 

 

「おい、きいてんのか? 上の空だけどよ」

 

「聞いているよ。私の部隊にも通達しておくが、あまり期待はしないほうがいい」

 

「そりゃそうだ。まあ用件は済んだし、俺ァ帰るぜ。じゃな」

 

「また」

 

 

ふふっ…………ふふふふっ。

そうか、再生者が現れたか。今まで何度も接触を図ってきたが、何故かめぐり合えなかった彼に……。

今行こう、再生者。破壊者である私が―――剣銃士(パルディオ・ガーナー)が。

 

 

「銃騎士、再生者。剣銃士、破壊者。破壊によって再生し、再生によって破壊する。君と私は同一であり入れ違う運命なんだ。……だろう? 世界の支配者よ(マイ・ファーザー)」

 

 

君と私は方向性を間違えてしまった。

しかしそれが正解だ。

矛盾であるが故に正しき答えなんだ。

さあ巡り合おう。〝君〟と〝私〟よ!

 

 

 

 

 

†★†★†★†★†★†★†★†★†★†★

 

 

 

「執務官っ!」

 

「えっ? ……ああ、どうしたの?」

 

「きっ、緊急報告です。大至急CDCまでお願いします!」

 

「戦術司令室(CDC)に? …………わかった。ありがとうね」

 

「いえ!」

 

 

……なんだろう、すごく嫌な予感がする。

今はただでさえEC因子(エクリプス)が出てきたせいで忙しいのに、その状況でCDCに集合?

これじゃあまるで、戦闘が始まったから集まれって言われてるみたいだ。

 

 

「ティア、急ごう」

 

「はい!」

 

 

一緒にいたティアと共に駆け出し、CDCを目指した。

ここからそれほど距離があるわけじゃないけど、歩いてたら2,3分かかってしまう。大至急なら尚更急がないと。

自動ドアが開く速度にすら遅さを覚えていると、部屋の中には見慣れた人たちが集まっていた。

なのは・はやて・遊騎さん・和輝さん・飛鳥さん、スバルにエリオ、キャロやフリードまで……。これじゃあまるで、機動六課(・・・・)のメンバーだ(・・・・・・)。

どうして……この人選が?

 

 

「はやて? なんでみんなが?」

 

「……ちょお、理由があってな。こうせなあかんことになったんよ」

 

「理由って……あの時みたいな、大きな事件になるってこと」

 

「かもしれへん。しかも今回はEC因子(エクリプス)感染者が相手になるっちゅうことで、OHNに増援を要請したところ……なんと6人も寄越してくれるそうや」

 

「それは……凄いことだけど」

 

「それと、首都航空隊からも1人来るそうや。もう来てもおかしくないころなんやけど……」

 

 

―――変だ。

いくらなんでもおかしい。

OHNの兵士は6人もいれば、管理局の1個中隊と同じくらいの戦力はある。かつての六課みたいな例外はあるとしても、過剰すぎる戦力だ。

 

 

「遅れてしまってすまない。お声をかけて頂いたと言うのに申し訳ないこt―――…………おや、ここはどこかの園かな?」

 

「どういう意味や、それ」

 

「いやはや、こうも美人ばかりが揃っていると現実かと疑ってしまってね」

 

「そか、ここは現実やから安心しぃや。自己紹介ええかな?」

 

「……そのようだ」

 

 

私の後ろにいた男の人が1歩前に出ると、一礼して口を開いた。

 

 

「私はゴードン・グレゴリー、階級は一等空佐だ。管理局に来る前は神父をやっていたのだが、いかんせん転属を命じられてしまい……。なにか懺悔をしたいのであれば、私のところに来るといい」

 

「というわけや。グレゴリー空佐は中・近接系の使い手やから、今回の戦いでは何かと役に立ってくれると思う。みんな仲良うしてな」

 

「いや、それはいいんだけどよ……神父ってあれか? 神の使いってやつ?」

 

「私は神父ではあるが、己が神の使いだとは思っていない。悪魔でも私は、人々の懺悔を聞き届けるだけだ」

 

「…………ふーん。なら、どうして人はお前んとこに懺悔しに行くんだよ」

 

「そこまでは知らない。私は聞く側であって、問う側ではないからな」

 

「無責任なんだな」

 

「そういうな、私とて疑問が無いわけではない。しかしなれどそれが伝統なのだから、私個人がどうこうできることでもなかろう」

 

 

言っていることは間違っていないのかもしれないけど、和輝さんの言うことも一理ある。

…………って、あれ? こんな話題だっけ?

確か紹介だったような……。

 

 

「ええかな? 本題に入りたいんやけど」

 

「すまない、どうも口が回ってしまった」

 

「コミュニケーションをとるんはええことや。……でまあ、本題のことなんやけど、問題は今後の敵にあるんよ」

 

 

はやてが小さなリモコンを操作すると、部屋の照明が暗くなってスクリーンが下りてきた。

……この部屋って、そんな設備あったかな? なんだか最近色々と変わってるような。

 

 

「まず1つ。EC因子(エクリプス)をもった敵との相対が主になってくる。そう予測した管理局は新たな部隊の新設を許可してくれはった」

 

「んで、今回お前らはそのために読んだ―――っつーか、誘うために集めたわけだ」

 

「せやね。それでお願いなんやけど、新しく設立する、私たちの部隊…………特務六課に来てくれへんかな?」

 

 

…………答えは決まってる。

色々と弊害の出る困難な状況だけど、返事は1つだ。

 

 

「……―――」

 

 

 

 

 

†★†★†★†★†★†★†★†★†★†★

 

 

 

「……なのは、ちょっといいか」

 

「あ、なに? ゆーくん」

 

「少し……話さなきゃならないことがある」

 

「…………今回の事件のことならいいよ。はやてちゃんと通して、和輝さんから聞いてる」

 

「それもあるんだが……少し、違うんだ」

 

 

集会が終わったあと。

私とゆーくんは本局の自室に戻って、資料整理をしてた。

 

 

「今回仲間に加わったあの神父もそうなんだが、OHNから来る6人ってのも……怪しすぎる」

 

「なんで? あの神父さん、優しそうじゃない。それにOHNの人はみんな良い人たちだよ?」

 

「いや、そうかもしれないんだが……。なんつーか、読めないんだ。あの神父の経歴を探ってみたけど、どうみても辻褄が合わない」

 

「なんで? 元々神父さんで、その才能があったってわけじゃなく?」

 

「考えてもみろ。非戦闘員のはずの神父が首都航空隊に入れるか? しかも部隊長で」

 

「え……あ、そうだね。入局してから1年で首都航空隊に選ばれるなんて、ロストロギアクラスの能力でもないと……」

 

「俺たちみたいな例外なのか、それともただの才能なのか、あるいは他の何かなのか……。これ……かなりマズい事になりそうだぜ」

 

 

ゆーくんの心配はわかる。

首都航空隊は管理局の中でもエースの称号を貰った人でないと入れやしない、トップとも言える部隊だ。

それを、戦闘経験の無い神父がいきなり入っちゃうなんて……。しかも階級は一等空佐。実質、はやてちゃんよりも上の地位だ。

 

 

「でも悪い人には見えないよ?」

 

「そうだな。確かにひねくれてるようにも見えるが、腐っても聖職者だろう。多分……犯罪暦は無い」

 

「あたりまえだよ。だってカリムさんのお墨付きなんだよ?」

 

「だからこそだ。あのカリムが太鼓判を押すって事は相当なことだぞ? …………ちと、OHNに頼んで探りいれてもらう」

 

「……わかった。でも、あんまり私的なことには関わらないほうが」

 

「わぁってる。節度を持たせるさ」

 

 

OHNはどんなことでも調べ上げてしまう。

もし私のことを調べさせれば、ジュエルシード事件の詳細まで知られてしまうだろう。

それだけ凄い諜報組織であって、情報網を持ってる。おそらく無限書庫を調べさせれば、管理局でさえ数百年かかる作業を1年も満たさずにすべて調べてしまうだろう。

恐ろしいけど、私たちの矛にも盾にもなってくれる大切な存在。

それをわかってる……けど……。

 

 

「大丈夫だよね。CW社の新武装だってあるし、私たちだってEC因子(エクリプス)に対していつまでも無力なわけじゃない」

 

「AMFとは違うからな、あれは。でもあいつが―――隼人が昔、EC因子(エクリプス)を使って訓練をしてくれたおかげで、俺や和輝、姉さんたちは対策ができてる」

 

「その時のデータを基にして私も対策を練れてるし、ありがたいけど……。でも、でも……さ」

 

「…………ああ。わかってる、言うな。あいつの事は、身内の俺が……俺と姉さん、それに和輝が相手する。もし出てきたらだけどな」

 

 

ゆーくんにもはやてちゃんにも聞いたけど、この世界にあの人が……隼人さんが、来てるかもしれないって事。

フェイトちゃんやリィンフォースさんには言ってないみたいだけど、2人ともOHNとつながりがあるし、嘘を突き通すことは難しいと思う……。

なによりの問題はイヴちゃんだ。あの子は他の誰よりも一途な分、なにかにのめりこむと他のものが何一つ見えなくなってしまう。

あの子が保護された当時は隼人さんに一直線だったけど、最近はやっとそれも改善されて、普通の高校生になれたのに……。

 

 

「なのは、イヴの様子を見に行ってくれないか?」

 

「……うん。私も心配だからね。ヴィヴィオを連れて行ってみるよ、最近会ってないから会いたいみたいで」

 

「ヴィヴィオらしいな。遊びに行くといっつもイヴにべったりだし」

 

「好きなんだよ、きっと。似たような生まれ方をしたっていうのもあるかもしれないけど…………やっぱり、相性じゃないかな」

 

「…………っていうか、単純にイヴが世話焼きなだけだと思うけどな」

 

「それはあるね。―――それじゃ、行ってくるね」

 

「ああ」

 

 

手短に身支度をして、本部の転送ポートから支部へ、そこからさらに海鳴市に転移する。

今は確か、アリサちゃん家にヴィヴィオがいるはずだから……。

 

 

「あ、ママ!」

 

「なのはじゃない。やっと来たの?」

 

「ごめんね、遅れて。ヴィヴィオ、今からイヴちゃんのとこに行くけど一緒に来る?」

 

「えっ? 行く! アインハルトさんもいいかな?」

 

「え、いや、あの……私は」

 

「大丈夫だよ、きっと。ほら行こう!」

 

「え、ええっ?」

 

 

半ば借り出されるようにしてアインハルトもついてくる事になり、3人でイヴちゃんのいるマンションへ向かうことになった。

イヴちゃんが住んでいるマンションは隼人さんが残していった場所で、フェイトちゃんが暮らしているマンションの上の階だ。結構広いんだけど、ほとんどが武器で埋まってて……。

2人には悪影響が無いか心配だけど、そのあたりはイヴちゃんも考慮してくれている。

 

 

「あの、イヴさんというのはどのような方なんでしょうか?」

 

「えっとね……6年前にあった、J・S事件は知ってる?」

 

「はい。OHNの方々や管理局の協力があって解決したと」

 

「うん、それなんけど、あの事件で一番の功労者であるOHNの総帥がいて、その娘さんなの。ちなみにフェイトちゃんはその人の妹」

 

「そっ、そんな凄い人なんですか!?」

 

「凄いし、強いよ。私とも張り合えるし、いろんな戦い方をするし、たぶん2人がまとめてかかっても勝てないんじゃないかな?」

 

 

そうだ、あの子は強い。

肉体的な話だけじゃない。精神面でもだ。

だからこそあの子は強くなれて、これからも強くなる。

 

 

「ど、どんな方なんでしょうか……」

 

「優しい人だよ。いつだって笑ってくれるし、必要なこと教えてくれる。いろんなことを知ってるし、料理も上手だしっ」

 

「……なんだか、理想のような方ですね」

 

「うん、理想だよ。本当に……凄くて」

 

 

…………理想。

確かに、イヴちゃんは理想だろう。

色白で綺麗で可愛くてスタイルも髪質も良くて、それに人からの評判も良い。

理想といってしまうのは簡単だろうけど、そこに行き着くには死を乗り越えざるをえなくて……人は妥協する。

あの子は一度死んだ。人として、心を完全に失った。そうして……理想の真実を手に入れてた。

 

 

「えっと、確か合鍵は……」

 

 

イヴちゃんから預かってる合鍵をさしてロックを外し、ドアノブを回して中にはい―――

 

 

「―――イヴちゃん!?」

 

 

玄関に倒れていた人影。

誰かと思って体を抱き起こすと、今まで話題になっていたイヴちゃんだった。

それにこの臭い、銃を撃ったときに出る硝煙の臭いだ。でも血臭はしない。

 

 

「ヴィヴィオ! どこかに薬莢は無い!?」

 

「待って! ―――……あった、靴箱のした! 45口径!」

 

「45? ……これだ、イヴちゃんのHK45。ちょうどハンマーも起きてるし、セーフティもかかってない。それにマガジンから弾も減ってる」

 

「え……じゃあ、自害?」

 

「…………違うと思う。弾痕が廊下にあるから、ドア付近で撃たれて銃だけ投げ込まれたか……」

 

「あ、あの、お2人とも……ここは報告をしたほうが」

 

「駄目だよ、それはできない」

 

 

うろたえてるアインハルトちゃんに教えながら、現状を確認していく。

 

 

「イヴちゃんは局の人でもなければ、ましてや一般人でもない。OHNの中でそれなりの権力だって持ってるから、それが狙われたとなれば…………たぶん、かなりの大事になっちゃう」

 

「……そう、ですか」

 

「でも変なんだ。服が一切乱れてないし、何かが荒らされた形跡も無いから……たぶん、イヴちゃんが知ってる人の犯行だと思う」

 

「アインハルトさん、その銃に何かの繊維とか付いてない?」

 

「いえ、特に何も。ですがプロの犯行と考えるべきなのでは」

 

「それは無いよ。イヴちゃんは半径3メートルくらいなら気配を完全に感知できるから、不意打ちはありえない。なにか確実性のある証拠は……」

 

 

イヴちゃんは気を失ってるだけだからいいとして、少しでも手がかりを掴んでおきたい。

銃に指紋があれば簡単だけれど、そうもいかない。あとは何かが落ちてないか……ん?

何か、光ってる……?

 

 

「これ…………髪の毛?」

 

「真っ白で……イヴさんのでしょうか?」

 

「…………ちがう。長すぎる。髪だけでイヴちゃんの身長はあるよ。……ってことは、まさか―――」

 

 

嫌な予感がした。

私の知る中で、この長さの白髪は1人しかない。

しかも、丁度最近になって現れたっていう報告も受けた。だとしたら、この現場にも納得が行く……!

 

―――ギィンッ!

 

 

「銃声!? みんな伏せて!」

 

 

銃弾の跳ね返る音が聞こえたので2人を伏せさせ、外に向かって瞬時にシールドを展開する。

3人同時に入ったせいで玄関は開けたままだ。そとからの狙撃が容易すぎる。

急いでドアを閉めて鍵をかけ、深い息を吐く。ここは隼人さんが住んでいたというだけはあって、窓はすべて防弾、ドアは防弾防爆仕様。

安心はできる。

 

 

「大丈夫? 怪我とかない?」

 

「は、はい、大丈夫です」

 

「平気だよ。でも、一体誰が……」

 

「犯人が証拠を消すために、私たちの口を封じようとしたのか、それとも……!」

 

「とりあえずイヴさんを運ぼう。アインハルトさん、そっち持ってください」

 

「あ、はい」

 

「……待って。動かさないほうg―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――玄関を閉めたのは失敗だったな、自ら退路を塞ぐとは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そんな、まさk……

 

 

 

 

 

ガァンッ!

 

ガゥッ、ガンッ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が最後に聞いたのは、3発の銃声だった。

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