魔法戦記リリカルなのはForce~世戦の軌跡~   作:岸辺 翔

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狼・第3章 『さよなら』は新たな『始まり』

「…………俺は、二度と取り返しの付かないことをしてしまった。今更戻ることも、悔いることもできない。……茨の、闇の道か」

 

 

イヴ、なのは、ヴィヴィオ、フェイト、それに覇王の子とエイ。

俺は既に、6人を手にかけた。残るは三銃士とはやてのみ……。

……しかし、はやてはいいとして、三銃士は厄介だ。あいつらは俺に抵抗しうる力を持っているし……。

 

 

「銀狼さん?」

 

「……どうした、トーマ」

 

「いや、あの……いつも急に消えて、急に戻ってくるから……」

 

「…………なに、少しばかり私用を終わらせているだけだ。気にする必要はない」

 

「……そう、ですか」

 

「それより、ついたぞ。第23管理世界、ルヴェラ文化保護区。ようやくの街か」

 

「え……。あっ、ほんとだ!」

 

 

目を輝かせて喜ぶトーマを尻目に、俺は背中にいるリリィに視線を変えた。

精神感応でしか会話のできない出来損ない……。いや、少々のバグができてしまったこいつは、今現在ロクな服がない。研究施設に患者服のようなものしかなかったので、生憎ながら靴がない。なので俺かトーマがおぶっている訳だ。

 

 

「リリィ、初めて見る街は……どうだ」

 

<……凄い。凄いっ>

 

「……凄い、か。そうだな、人はこのようなものを作り出せる。……しかし、故に破壊する。……行こう」

 

 

俺は生憎右腕が無いので、背負うというより左肩に座らせているような状態だ。

別に重くはないし、俺の場合魔力が余っているのでむしろ軽すぎる。それよかバランスを取るのが難しいくらいだ。右袖にはショットガンをぶち込んではいるがそれでもキツい。

 

 

「トーマ、俺は警護に専念したいのだが……?」

 

「あ、すみませんっ。リリィ、俺が代わるよ」

 

<うんっ>

 

 

左肩に座っていたリリィを下ろし、トーマの背中に預ける。

おおう、軽い。バランスとれん。

 

 

「……俺は食料の調達するが、お前らは俺の傍を離れるなよ」

 

「はい、了解っす」

 

 

軽くなった左肩の感触を確かめながら出店のある商店街へと趣き、特産品らしき貝焼串を2つほど買っていく。

まあつなぎ程度の飯だから量はいらんとして、問題は宿か。民宿でも構わんが警備に適した作りだと嬉しいな。

 

 

「あとはこいつの服か……。リリィ、なにか希望はあるか。動きやすいだの見た目だの、なにか希望とか」

 

<……えと、おまかせします>

 

「…………ま、外に出たばかりで知っているわけがないか」

 

「そこでフリーマーケットやってみるみたいなんで、そこで見てみたらどうすか?」

 

「それでも構わんがな。さて……そこの、すまんがこいつに合う服と靴を探しているのだが」

 

 

シートの上に見せを広げていた少女に声をかけると、これまたウザいくらいに元気な声が返ってきた。

あー、五月蝿い。こういうの苦手。

 

 

「なになに、親子揃って旅行ですかー?」

 

「残念だが違う。……とりあえず頼む」

 

「はーい。そうだなぁ、この髪にあう服になると……―――あ、そだ。もしよかったらヘアカットもやってるよー」

 

「どうする」

 

<え、あと……>

 

「……じゃ、お願いします」

 

「はーい」

 

 

俺はそういった方向に疎いのでわからんが、トーマと店主である小娘が話しているのを眺めつつも、警護にだけ集中している俺がいた。

正直、今の俺の戦力はたいしたことない。少しでも魔力がなくなればロクに戦いこともできないし、片腕だけでは極短期決戦しかできない。

銃のリロードもできなければ刀を両手で押さえることもできない。これでは中途半端にもほどがある。

 

 

「………………全く。なぜこうも俺は、争いから遠ざかって……。クソッ、これでは本末転倒だ」

 

 

俺の目的はただ1つ。

この世界に訪れるであろう厄災を突き止め、なおかつ再びの平和を取り戻すこと。

その為であれば、身内であろうとなかろうと、たとえそれが命を賭してまで守りぬいた相手だとしても、愛しき家族であっても、俺は排除する。

それが唯一の道であり、銃騎士である俺に求められる答えであり、破壊者たる俺の所以だ。

そうしなければならない。そうでなければならない。そうあることで、俺はこれからも戦い続けられる。

俺は何も得ない、ただただ永遠に失い続けるだけ。いつか失うものすらも失い、永久の虚無で戦うのだろう。そうすれば、俺は銃騎士としての使命を果たせる。

 

 

「ね、そこのおにーさん」

 

「……俺か?」

 

「そ。どうしたのー、考えこんで」

 

「お前に関係のあることではない」

 

「……そう。なにをやろうとしてるのかは知らないけど、ほどほどにねー、総帥さん」

 

「…………お前こそ、このような場所で油を売っていていいのか、イーグレットの小娘(ガキ)」

 

「さっすがぁっ! ウチのライバル企業だけはあるねー。……で、どうして7年前に消失報告のされた総帥さんがここに?」

 

「色々あるのさ。お前らと違って、俺たちは報酬さえ貰えば任務は問わんからな」

 

 

リリィの髪を切っている小娘と小声でやりとりをしていると、どうやら散髪が終わったらしい。

服を着せている姿は少女そのものだったが、やはりどの動きにも緊張が漂っている。……ふむ、さすがに警戒させすぎたな。

 

 

「そう探るな。俺はお前に危害を加える気も、家に連絡を入れる気もない。放っておく」

 

「ありがとね、総帥さん。それじゃお勘定だけど、これでいいよん」

 

 

……安いな。

確かにフリーマーケット相応とも言える値段だが、いくらなんでも安すぎやしないか?

 

 

「いいのか、これで」

 

「どうせ趣味で作ったものだしねー」

 

「あ、銀狼さん、俺が払いますよ」

 

「お前らの世話も任務の内だ」

 

 

ポケットから紙幣を出そうとしていると、ふと小娘の視線が気になった。

なぜかは知らんが俺の手首を凝視している。俺の左腕には……ああ、アームリングか。

俺が左手首にしているリングは純金……ではあるのだが、いわばこれはデバイスのようなものだ。俺は一応複数の武器を持ち歩いていて、その1つとでも言っておこう。

 

 

「さすが総帥さんだ、いいもん持ってるねー」

 

「デバイスだ。金はかかっていない」

 

「そっちの彼女や男の子もつけてるけど、どういった関係?」

 

「え、いや、その……」

 

「なに、偶然が重なっただけだろう」

 

 

小娘に紙幣を渡し、少し急ぐように2人を連れて宿へ歩き出した。

 

 

『ちょっとー、お釣りお釣りー』

 

「とっておけ。チップとでも思えばいい」

 

『あー……ありがとね~』

 

 

俺は片腕なので、ぶっちゃけると小銭を出すのもしまうのも不可能に近い。できなかないが面倒だ。

なので、大抵は紙幣ですませてしまう。もったいないので多少なりとも工夫はしているのだがなぁ……。

 

 

「トーマ、先に渡航者用のゲストハウスに行っていろ。俺は私用を済ませてから行く」

 

「わかりました。部屋番号はあとから伝えますね」

 

「ああ」

 

 

2人と別れた所で俺は街を離れ、港の方へと進み始めた。

確かアレは……俺の、船は…………。

 

 

「総帥! そーす~い!」

 

「五月蝿い黙れアルファード。声がでかい」

 

「ハッ。失礼いたしました。……ウルブズの発進準備はできていますよ」

 

「ああ。俺はもう行くが、なにか他にあるか」

 

「いえ、なにも。新しい旅をどうぞ」

 

「……そうだな」

 

 

信頼できる部下である仮面の男が人の中に消え、いつしか街の人々も消えていった。

人がこの場所の認識が失うように……徐々に、違和感なく。

 

 

「……………………来る、か……」

 

 

ベルトに通してある直径4ミリ・全長16センチのクナイを1本抜き、順手に持って立ちすくむ。

気を読め。風を感じろ。そこに無くとも彼方にいる。無きものは有へ、在りきものは無へ。世界にとって有象無象とは同一にして表裏。

ヒュオッ―――

一瞬の耳鳴りがしたと同時に体を大きく右に捻らせ、顔の真横を掠めたナイフを持つ人物の太ももへクナイを突き刺す。

同時にベルトから3本抜き、転がり落ちた奴へ3本とも投げた。

 

 

「クソッ……。カバー!」

 

「遅い、糞ガキども」

 

 

再び2本抜いたクナイを後ろから現れた2人に投げつけ、怯んだ隙にヒップホルスターのマテバ (Model)6(Sei) ウニカ(Unica) グリフォンを抜いて撃ちぬく。

 

 

「動くな(フリーズィン)! …………いい動きだ、だが気配を断て。話にならん」

 

 

倒れている3人を見捨て、不可視加工されている巨大な船に跳び移る。

XL級武装式次元航行艦ベーオウルブズ。通路・個室・その他全設備に武装が隠されている、まあいわゆる要塞船だな。敵に武器の隠し場所がバレたらマズいことになる。

それだけ重要な船であり、それだけの悪意を詰め込まれた製造物。

上部ハッチを開けて艦首に跳び込み、メインモニタにつながれたキーパネルを叩いて行き先を指定していく。

今現在俺が危惧しなければならないのは2つ。時空管理局にいる八神はやてと、その回りにいる仔鴉たちだ。高町なのは、高町ヴィヴィオ、イヴ、覇王の子、フェイト・T・ハラオウン、エイの始末は終わった。

残るは三銃士とベルカの騎士。

これはどちらも脅威だ。まずベルカの使い手は相手にしたくない。やたらと近接戦に持ち込んでくるので不得意だ。―――逆に三銃士はと言うと、あいつらの相手もしたくない。

飛鳥と和輝はいいとしよう。どちらも強敵ではあるが、戦って勝てない相手ではないしな。問題は遊騎、あいつだ。奴は恐ろしい力を持っている。…………いや、秘めていたと言おう。

奴は俺の知る限り―――俺が消える直前に、その力を覚醒させていた。EC因子(エクリプス)を発動させていた俺の装甲を貫き、あまつさえあのエースオブエースが恐怖するほどの魔力を出していたのだ。

……恐らく、俺もただではすまないだろうな。良くて重症、悪くて死……。クソッ、無駄に強くなりおって。

 

 

『悩んでいるようなだ、銀狼』

 

「…………ああ。俺はこのまま、この道を照らし続けていいのか、それとも違えるべきなのか。そこがまだ……わからない」

 

『考えるな、感じろ。……などと無責任なことは言わないが、せめてもう少し素直になればどうだ』

 

「……なに?」

 

『お前はなにがしたい。なにを成すかではない。なにがしたいのか、だ』

 

「…………俺は、戦いを消し……平和にすることが目的だ」

 

『それは「結果」だ。俺が求めているのは「結果」ではなく「野望」だ』

 

 

諭すように、されど強く。

確かな言葉を向けてくれるナビゲーター……もとい、元人間のこいつ。

ウルブズのプログラムとかしてしまったが、元は俺と共に戦った戦友だった。

 

 

「俺に野望など無い。何度も言うが、ただ平和を求めているだけだ……」

 

『ではその平和となった世界には何が立っている? 人か? 動物か? 覇者か? 闇か?』

 

「人だ。この世界で生まれ育った奴らと、平和を願っていた者全てが、そこに立つべきだ」

 

『そこにお前の姿はあるのか?』

 

「無い。あってはならない。俺は悪の身だからな」

 

『……それは間違いだ。お前は永遠に武器を持ち、この世に君臨するべきだからな』

 

「どういうことだ」

 

『世界とは敵対する何かがあることで存在する。世界に平和をもたらすには世界を脅かす悪が必要だ。つまりお前がいる必要がある』

 

「俺は銃騎士、破壊者だ。ただ存在するだけの悪ではない。この世にある万物を消し尽くす悪だ」

 

 

俺は銃騎士。

太古の昔、ベルカが戦乱の海にいた頃だ。望み過ぎた平和が銃騎士という存在を産み、やがて破壊者となった。

平和のために正義以外を破壊する者、平和のために悪を滅ぼす者、平和のために死ぬ者。様々な銃騎士がいた。

だが目的は1つだ。皆一様に平和を願っていた。それが銃騎士の本懐であり、全てだから。

 

 

「行き過ぎた信仰心が内乱を呼ぶ……。同じ事だ。行き過ぎた平和は悪にしかならない」

 

 

昔、その光景を見てきた。神を湛えていた人たちが人を不信仰者と呼び、神の冒涜として殺していく様を。

あまりにも不毛で、あまりにも矛盾し、あまりにも醜い戦いだった。……いや、戦いですら無い、ただの虐殺だ。

 

 

『それでも尚、守りたい世界があるのではないのか』

 

「そうだ。しかしそれで世界を脅かすのは合理的ではない」

 

『脅かす? 世界を?』

 

「お前はそれほど知らんかもしれぬが……世界とは、比較的容易に動いてしまう。力、あるいは欲。人という単位が何かをすれば、事は動く」

 

『つまり、お前でなくとも世界は動かせると?』

 

「俺である必要はない。……むしろ、俺だけが世界を動かせない。人ですらない存在だからな」

 

 

俺はこの世界で消える前、大切な事を知ることができた。

銃騎士としてのこと、人としてのこと、俺という個人のこと、周りにいてくれる奴らのこと。

その中でわかったのは、俺が動かせるのは人だけということだ。

 

 

「イェーガー、目的地を再設定する。今後は俺の通信で動いてくれ」

 

『……了解だ。お前はどこへ行くつもりだ』

 

「OHN、ミッドチルダ支社だ。ゲリラを仕掛ける」

 

『自分の会社へ?』

 

「ああ。今現在の俺はOHNの総帥ではなく、銃騎士という個であることを世界に示さねばならない」

 

『馬鹿な事はやめろ。ろくなことにならない』

 

「今俺が最も優先すべきは結果だ。過程などどうでもいい。―――これをミッドの広報へ送ってくれ」

 

『……なんだ、これは』

 

 

端末に入っていたデータをウルブズに送信すると、声の主は少し曇らせた。

それもそうだ。もしこのデータが公になれば、俺は……。

 

 

『正気か』

 

「ああ。この世界を……この世界線を救うには、これしかない」

 

『…………なら、承ろう。お前がこの世の灯火とならんことを』

 

「すまない」

 

 

俺が渡したデータ。

それは、俺が全ての敵になるというもの。

ミッド、管理局、世界、OHN、その他全ての企業団体個人と敵対するためのデータ。

俺は、『個』としての戦いを始めようとしている。

 

 

『行け、隼人』

 

「……懐かしい名で呼ぶな」

 

『なに、私とお前の付き合いだ』

 

「…………そう、だな。俺はもう行ってくる。198秒後にそのデータを流してくれ」

 

『御意』

 

「ではな」

 

 

壁を叩いて大型のリボルバー グレネードランチャーを取り出し、転送ポートを使って次元転移を行う。

転移先は第1管理世界ミッドチルダ首都、時空管理局陸士部隊本部。その目の前にあるビル群の中だ。大型デパートの並ぶ首都ならではの人ごみの中、俺は左手に持ったリボルバーランチャーの銃口を空に掲げ、その引き金を絞った。

―――ドゥッ!

重厚感溢れる低い地鳴りが響くと、あたりは騒然とし、皆一様に俺のことを注目していた。

 

 

『緊急ニュースです。たった今、7年前に消失したはずのOHNの総帥からメッセージが届きました』

 

 

ビルの壁に付けられた大型ディスプレイにキャスターの姿が写り、俺が先ほど送ったデータが再生される。

ううむ、自分の声を聞くというのは気味が悪いな。

 

 

『これを聞いている奴の中に、OHNの者、管理局の者、そうでない市民、そのどれもがいるだろう。故に、俺はこの場を借りて宣言する……。今時を以って俺は、貴様ら人類全ての敵となることを宣言する。この世界は堕落しすぎた。よって破壊対象になる』

 

 

ニュースキャスターの戸惑いは隠せず、その表情は困惑している。

 

 

『俺はこの世界を破壊する。この狂った世界を、貴様ら人類をな。全ての武力を持った企業・団体へ宣戦布告を行うと同時に、いかような者であろうと俺の敵である。聞け! 俺は今から時空管理局陸士部隊本部を襲撃する! 管理局員よ……OHNの兵よ! 貴様らの力で俺を抑えてみるがいい!』

 

「……説明のとおりだ。ひれ伏せ! 愚者共ッ!!」

 

 

ドゥッ!

再びの発泡。

同時に俺は駆け出し、陸士部隊本部への強襲を始めた。

ドゥッ! ドゥッ! ドゥッ! ドゥッ!

続けて放たれた4発のグレネードは放物線を描き、本部の壁にあたって瓦礫へと変えていく。

弾切れと同時にランチャーを捨て、大きく跳躍して本部の敷地に跳び込んだ。

 

 

『敵襲! 武装局員は至急対応を!』

 

「今頃緊急放送(スクランブル)か。遅すぎるな」

 

 

対応の遅いサイレンを聞きながらも破壊した壁を通り、中に居た局員の頭を蹴って気絶させる。

警備が手薄だな、おい。

 

 

「侵入成功……。第一次目標(ファースト・フェイズ)を開始」

 

 

気絶させた局員の制服を拝借し、その場でさっさと着替えを済ませる。

丈は合っていたので、とりあえず軍服は下に着たままだ。

 

 

『こっちだ! 早く集まれ!』

 

「あっ、あとは頼む! 俺は戦えない!」

 

『早く逃げろ!』

 

 

武装局員が走ってきたので、俺はむかってきた方向へ走りすれ違った。

逃げ惑う一般局員に紛れて、な。

いとも簡単に潜入できてしまったが、いいのかこれで。

 

 

「こういう緊急時はどうすればいいんだ!? 俺は最近入ったばかりでよくわからないんだが……!」

 

「いいから避難誘導にしたがえ! 俺達は戦えないんだ、現場に行ったら足手まといになるぞ!」

 

「わ、わかった! ―――ご苦労だったな」

 

「なんっ……!?」

 

 

無警戒だった馬鹿の首筋に手刀を叩き込み、気絶させて蹴り飛ばす。

ふむ、大分奥まで来たな。あとは管制室にでも言って通信網を遮断するか。そうと決まれば先手必勝。さっさと局員証をかざしてエレベーターに乗り込み、地下深くにある駆動炉へと急いだ。

今思ったのだが、管制室はいくつもあるし、動力系をヤったほうが早くないか?どうせ電源を破壊した所で非常電源があるだろうし、まあここは医療施設とは別の動力だ。平気だろ。

チーンッ、という気味のいい音が聞こえたのでトアを蹴破り、超大型のパイプがうねる動力室にたどり着いた。

窮屈だった制服を脱ぎ捨て、軍服の下に隠していた粉末状の爆薬を部屋中にぶちまけてエレベーターに戻る。ドアは破壊してしまったので、開きっぱなしだが、そのまま上に上がり、隙間から火の付いたライターを投げ込み―――ドン、だ。

 

大きな爆発と共に地鳴りが響き、あたりはドス黒い煙に覆われた。はぁ……あの不落の地上本部ともあろう施設が、こうも簡単に落とせてしまうとはな。電源供給を断ってしまったのでエレベーターは止まってしまったが、救出用に備え付けられている天井の勝手口を蹴り破って外へ出る。

あとは壁にある非常梯子を伝って上へ上がれば、通信施設の詰まった管制室まで一直線だ。

 

 

「……ここを落とせば、ミッドの警備は手薄になる。そうすれば残る兵力はOHNのみ……。なんとも頼りないことだ」

 

 

管制室にいた局員を全てなぎ倒し、非常電源で動いていたサーバーをダウンさせる。

これで全体通信は落ちた。個人間での念話はどうしようもないが、ある程度連携を止められたはずだ。

 

 

「さて、さっさと俺は撤退でも―――……ッ。この……気配はッ!」

 

 

ドアの向こうから感じる濃厚な敵意……。

かなりの手練だ。鋭く尖った剣を彷彿とさせるような、純粋な意思……。

 

 

「あまり交戦はしたくないが、しかたあるまい」

 

 

ベルトの裏に仕込んであるクナイを指の間に2本ずつ―――計8本抜き、いつでも投擲できる姿勢で構える。

ドアが一瞬煌めいたかと思うと、それは形を無くして瓦礫へと豹変した。

今の一瞬で切り裂いたというのか……。早い、そして強い。

 

 

「…………久しいな、ベルカの騎士よ」

 

『……見損なったぞ。私が最初に会った時、そして共に歩んだ日々……。お前は、良き武人だと思ったのだがな』

 

「残念だったな。俺はもともと傭兵であり、暗殺者であり、武人とは程遠い反乱分子(レジスタンス)だ」

 

『そのようだ……。貴様は、私が葬ってやる!!』

 

 

煙の中から現れた姿を見ると同時にクナイを投げ、ナイフを抜いて構える。

刹那のうちに走ってきた一閃をナイフで弾き、足技を混ぜて一気に畳み掛けるが抑えられてしまう。

強いな。だが、この程度でやられるようではクソ同然だ。

 

 

「久しいではないか……なあ、シグナムよッ!!」

 

「貴様こそ7年ぶりに会ってみたらどうだ! この前ふいに現れたと思ったら、今こうして貴様は『悪』の道へと走った! どういうことか説明しろ!!」

 

「いいだろう、ならばそのカス程に退化した脳ミソでも理解できるように、体に教えてやろうか!」

 

「貴様ごときが……私に傷を付けられるものかぁっ!」

 

 

何度も繰り返される斬撃を避け、間の隙を突いて蹴りを放つが当たる気配はない。

フンッ。無駄に7年間稽古を積んではいないようだな。

 

 

「私は貴様のやり方に、昔から賛同はできなかった! やれ自己犠牲だ、やれ勧善懲悪だ、貴様は『善』を貫くことは一度もしなかった!」

 

「ハッ! 笑わせる。正義を貫いた所でそれは所詮『大多数の善』でしかない。残った少数の意見は切り捨てられ、あまつさえ悪として扱われる。そこに本当の平和はあるのか! 答えろ烈火の将ッ!」

 

「ロクな行いをしない少数を切り捨てることのなにが悪だという!」

 

「いいか、悪の中にも義はある。俺はそうだった。国に見捨てられ、救いを求めたが切り離された国民たちが集まり、俺や遊騎たちの育ったレジスタンスが誕生した!」

 

「だがそれが何になる。世界とは常に方針を決めて進まねばならない!」

 

「そうして不満をつのられた少数は増え続けやがて巨悪となる! いいか、世界とはいかような者であろうと、全てを受け入れるだけの容量(キャパ)が求められている! それを持たない世界など、存在価値は無い!」

 

 

放たれた一閃をナイフで返し、飛びゆくレヴァンティンを尻目に俺はベネリ M3の銃口をシグナムの顔面に突きつけた。

仮に避けられようと、弾かれようと、今の俺は全身に暗器―――暗殺などに使われる隠し武装―――を仕込んでいる。確実に仕留められるさ。

 

 

「―――降伏しろ、烈火の将(シグナム)。俺は無駄な殺生はしたくないが……、お前がそれを望むのであれば、いたしかたあるまい」

 

「……貴様のような悪人に助けを媚びるなど、生き恥にも程がある……。殺せ」

 

「…………そう、か。ならばその命、焔となりて消えるがいい」

 

 

ダァンッ……!!

狭い室内に響いた銃声。

12ゲージのスラッグ弾はシグナムの腹部を貫通し、その腹を風通しよくしていた。

溢れる血。途切れる呼吸。香る消炎。

そのどれもが、俺の興奮材料となってしまう。

 

 

「ッハ……。きさ…………ま……!!」

 

「さらばだ、シグナム。また会うことは……無いだろう」

 

 

どちゃりと転がるシグナムを蹴りよけ、俺が戦った証拠代わりにM3を置いていった。

残るベルカの騎士は3人、うち2人は戦力外だ。これは……予想以上に早くカタが付きそうだ。

一番厄介な主戦力である高町なのはとフェイト・T・ハラオウンは落ちた。残りの戦力は大したことではない。むしろ厄介なのはOHNだ。

俺が大きくしたせいもあるが、対魔導戦や格闘戦に優れた逸材が多すぎる。怖い半面、楽しみでもある。ククッ、俺も相変わらずだな。

 

 

「急ぐか。これ以上邪魔が入ると面倒だ」

 

 

さて……。仕事仕事、と。

ドアを蹴破ぶってエレベーターのあった空洞の壁を蹴って下へ降りていく。

次の目的地は局員用の寮だ。あそこには数万の局員が収容されているし、そこに打撃を与えれば戦力はおおかたなくなるだろう。被害も甚大になるだろうが……いたしかたあるまい。

 

 

『Rブロック連絡通路に異常発生! 全隔壁を閉鎖する! 局員は避難してくれ!』

 

「させるか、よっと!」

 

 

体内に蓄積されている魔力を高圧電流に変換させ、壁を伝って駆動系回路をショートさせる。

これで隔壁が降りることはない。通信は途絶えたものの、口頭での伝達手段を使うとはな……。よもや不確実な方法を使うとは。

 

 

「…………医務室も破壊しておくか」

 

 

通路の途中にあった医務室に入ると、数人の医者と患者がいた。クソが、まだ避難していないのか……。

 

 

「んなっ……なんで、こんな早く―――」

 

「邪魔だ」

 

 

医者たちの顔面を蹴り飛ばし、ベッドのカーテンを開けて確認する。こういうところには武装した兵士が隠れている場合があるからな、伏兵として。

カーテンを開けたそこにいたのは、紛れも無く…………俺の知り合い達だった。

高町なのは、高町ヴィヴィオ、イヴ、フェイト・T・ハラオウン、覇王の娘。その5人が……それぞれのベッドで寝ていた。

……俺は、この部屋を破壊することができない。殲滅すると言っておいて、俺はまだ甘い……こいつらを殺すことすらできていない。

このままで俺は世界を救えるのか? たった5人を殺すことすらできないというのに……。

 

 

「………………悪く、思うな」

 

 

上着に隠してある粉末状の火薬を部屋の中にぶちまけ、ライターを用意した時だった。

 

 

「動かないで!」

 

「……ッ。よもや、貴様のような非戦闘員が出てくるとはな」

 

「これでも私はベルカの守護騎士……。黙って見過ごすわけにはいかないの」

 

「良(よ)い……度胸だ。ならば貴様もろとも血の海に沈めてやる」

 

 

ベルト裏からクナイを3本抜き、目の前にいる馬鹿に向けて構える。

ベルカの騎士、癒しの担い手……シャマル。本来前戦に出て戦う立場ではない後方支援のはずだが、無謀な賭けに出たか。

 

 

「自らの行動を悔やむのだなッ」

 

 

クナイを2本投げ、それをクラールヴィントで防がれたのを確認して足技をかけた。

あの武器は特性上、2つのデバイスで1つの空間に1つの技しか構成できない。ならばクナイを防いだ瞬間に手はは詰まる。

風の盾の下から繰り出した蹴りは顎に直撃し、大きく仰け反ったところにクナイを投げる。物の見事に左胸に刺さったクナイは血の雫を垂らしていた。

 

 

「……非戦闘員が戦地へ出るというのは、即ち死を意味する。馬鹿な真似をするからだ」

 

 

板ガムほどのサイズのC4を設置し、医務室を出た直後に起爆させた。

これで主要施設は大方破壊完了だ。残る局員寮は……まあ、壊そうと壊すまいと、大して変わらんだろう。既にほぼ全ての局員が退避してしまっている。

まったく……。当初の計画が大分変更されたな。本来ならば4分以内に全施設を破壊するつもりだったのだが、9分経った今でも遂行率は48パーセント。そのかわりに戦力は削れたし、差し引きして89パーセントといったところか。

 

 

『銀狼、聞こえているか』

 

「……どうした」

 

『マズいことになった。本局の機動隊がウルブズの周りにいる。気づかれたぞ』

 

「俺が到着するまでお前が交戦しろ。第一次戦闘装備の使用を許可する」

 

『了解だ』

 

 

……ウルブズが本局に感づかれるとはな。

あれでも最高精度のステルス性と機動力を持ち合わせているのだが。

 

 

「予定変更か。地上本部の攻撃を中断、ウルブズの救援を優先する」

 

 

最後のC4を壁に仕掛け、ぶち開けた穴から脱出。

ぬっ……。マズいことになったな。本局の魔導師らが既に取り囲んでやがる。あまり無駄な損害は出したくないが……邪魔だな。

 

 

「次元犯罪者銀狼(シルバーウルフ)! 武器を手放して投降しろ!」

 

「ここにはオーバーSランクの精鋭を集めた。お前に勝ち目はない!」

 

「……Sランク、な」

 

 

確かにそのようだ。

見覚えのある顔もいるが、数は30を超えてしまった。今も尚増え続けているのを見ると……恐らくは管理局の精鋭を全て集めているようにも見える。

 

 

「確かに、貴様らは管理局内で優秀な兵のようだ。しかしそれも魔力のある空間内限定の話……」

 

「レイトシフトで片付けるぞ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

「…………Divide Field……Standby,Ignition!」

 

 

フッ―――

一斉に動き始めた局員は体を止め、驚愕の顔をしていた。

無理もない。今、あいつらは魔法を使うことはおろか格闘戦をすることもできない。立つのがやっとの状態だからな。

究極の対魔導兵装EC因子(エクリプス)。魔力を魔力素へ分断し結合を許さない―――つまり魔法の発動をさせない―――フィールドを形成しただけ。

……しかし、魔導師というのはそれだけで無力になる。所詮は魔法に頼っているだけの人間だ。

 

 

「どうした、公僕(イヌ)め。貴様らはこれでも無力だということが理解できんのか」

 

「EC因子(エクリプス)……!? そんな、報告書には……!」

 

「人間はいつもそうだ。報告、報告と己の目で見ようとしない。だからこそ過ちを犯す。―――罪人よ、我は問う。各々が裁かれるか、この場にて壱として裁かれるか。選べ、咎人」

 

 

左手にMk-Ⅱ手榴弾《マーク・ツーハンドグレネードを持ち、為す術のない局員に向きあう。

絶対的戦力差の前に、この魔法頼りの局員たちは何をするのか。もし無謀な賭けに出るのであれば俺はこいつらを見捨てる。仮に逃げ出すようでも見捨てる。

さあどうする、管理局員よ。

 

 

「Dead or Alive.好きに選べ」

 

「……俺たちは、管理局に忠誠を誓った。アンタが……7年前にアンタが救ってくれた管理局と共に生きると決めた! お前が管理局を滅ぼすのなら俺は死ぬ!」

 

「……忠、か。組織に忠を尽くすか、愚か者め。ならば貴様の望みどおり消してやる」

 

 

セーフティーピンを噛んで引き抜き、レバーを握りながら公僕どもを見据える。

脆いな。たかだか魔法一つで生きてきたとは……。

 

 

「最後に何か……言い残すことはあるか」

 

「ハッ。無いな。俺たちは負けた。そうだろ、みんな」

 

「……ああ。そうだな。負けは負けだ」

 

「良い度胸だ。逝ねよ」

 

 

レバーを離し、放り投げるために小さく振りかぶる。

―――パキンッ!

…………無い、な。振りかぶったはずのMk-Ⅱが……ない。

 

 

「……………………魔法? ……いや、それは無理だ。ならば魔法による投擲……? …………―――ッ!」

 

 

咄嗟にその場を飛び退くと、数発の弾丸が地面に着弾した。

狙撃か……。厄介だな。着弾地点の痕跡を見るかぎり魔力包容加速弾ではなく実弾だ。これでは俺のDivideは効果がないし、実弾である以上それを持つ者は限られる。OHNの兵か三銃士のどちらかということだ。

OHNならば問題はない。しかし、三銃士となると……。

 

 

「よう、久しぶりだな」

 

「もう逃さないわよ、総帥サマ♪」

 

「よくもなのはたちをやってくれたな……てめぇ」

 

「………………三銃士、やはりお前らか」

 

 

局員たちを庇うようにして現れた3人。1人1人がSSランク以上を保持している強豪で……尚且つ実弾の使用許可を持っている癖者だ。

左腕1つでこいつら3人を相手にするのは少々―――いや、大分苦労するだろう。正直EC因子(エクリプス)を使っても勝てるかわからん。

 

 

「なにをしに来た。よもや、自殺志願者ではなかろうな」

 

「ちげぇよ」

 

「お前を捕まえるために来た」

 

「大人しくしなさい。貴方に勝ち目はないわ」

 

「…………断る、と言ったらどうする」

 

「「「実力行使」」」

 

「……だろうな」

 

 

3体1。

状況的には圧倒的不利だが……まあいい。

 

 

「来い、三銃士。お前らが望むのであれば俺は殺めることも厭わん。馬鹿の躾も仕事の内だ」

 

「へっ。言ってくれるじゃねぇか」

 

「遊騎、Rー4レンジでやるわよ」

 

「……わかった。準備はいいのか」

 

「「Rog」」

 

 

3人が銃を構えたと同時に袖を振り、中に仕込んでおいた刃無き刀を手に取る。

遊騎はS&W M500を2丁。和輝はWA2000、飛鳥はコルト ダブルイーグルを2丁もちという部隊構成の不安定な装備だ。

しかし……こいつらの場合、チーム戦よりか個人の技能に頼っている部分が大きいからな。これでも間に合ってしまうのだろう。

 

 

「……我天に捧げる御言(オン・ケルトリエ)の祖なり(・ソワカ)。我が身に害為(ヒルネマエ・)す者を罰したれん(マリシエイノエル)」

 

 

柄だけの刀に光が灯り、その刀身を微かに表した。

決まった形を持たない幻想の刃。それがこの刀の完成形であり不完全な姿。わけのわからない物を押し付けられたな……。

 

 

「来い、三銃士」

 

「言われなくてもな!」

 

 

俺と遊騎は同時に走り出し、互いの獲物を構えた。

M500から放たれた強大な銃弾を切り裂き、見出した道を進んで遊騎に斬りかかる。しかし片腕ということもあってか防がれてしまった。

遊騎は両腕をクロスさせて俺の腕を抑え、なんとか刃に触れないようにしていた。

 

 

「どうした、残りの2人は手を出さないのか」

 

「Rー4っつーのはな、1対1を複数回行うってやつでな」

 

「ほう。ではそのゴミ程の精神に重んじて俺も1つ教えてやろう。貴様らに勝ち(・・・・・・)目はない(・・・・)―――EC因子(エクリプス)ッ」

 

【認証。武装を展開します】

 

 

銀十字が現れると同時に、俺の右腕に量子が集まり形を形成していく。ただの棒状から徐々に変形していき、最後には―――物々しい、機械仕掛けの右腕となった。

指先は刃となり、見た目そのものが禍々しい腕。銀十字が俺に与えた新たな武器であり体だ。

 

 

「腕が生えやがった……!? EC因子(エクリプス)の超速再生か!」

 

「残念だが語弊がある。これは再生ではない。展開だ」

 

 

遊騎の腹を蹴り飛ばし、距離が離れた所で右腕を構える。

俺の意思を読み取ると同時に腕はその形を変え、徐々に新たな姿へと変貌していく。腕を形成していたパーツは次々と細かく展開され、内部に秘めていた量子を追加しながら形を大きく変えている。

腕は砲身となり、俺の右肩からつながれた全長130センチのカノン砲に変形した。

昔見たことのある砲身だ。たしかB★RSとかいう奴が使っていたような……。

 

 

「吹き飛べ」

 

「おいおい……マジかよ!」

 

 

直径30センチ程の砲弾を秒間18発の速度で連射し、あたり一面が土煙に埋もれてしまった。

……凄いな、この武器は。俺の意思で変形するし、なにより弾切れがない。EC因子(エクリプス)内部の量子で変換できるとはな……。

 

 

「…………銀十字、生命反応は」

 

【微弱な反応が3つ。脅威無し。無力化済み】

 

「了解(Ja)。引き続き全周警戒を」

 

【続行確認】

 

 

刀を納めて戦意を沈めると、右腕のカノン砲―――銀十字曰く名前は無いから好きに付けて欲しいらしい―――は元の機械的な右腕に戻っていた。

ガシュンガシュン変形するさまは見ていて面白いな。

 

 

「素直にB-カノンでよくないか」

 

【判断を譲渡】

 

「お前な……」

 

 

否定しないということはいいのか? いいならB-カノンとするか。ちなみにBは『破壊者(Breaker)』のBだ。あとB★RSのB。

オンタリオ社製の単発式スナイプハンドガン ラプターを持って煙の中を探していると、3人が倒れているのを見つけた。

銀十字によると、もう意識は無いらしい。脆いな、無知な武装を使われると三銃士といえどこの程度か。

そう思いつつこの場を去ろうとしていると、一瞬にして外気がマイナスを超えていた。冷気によって煙が立ち上り、その空に奴はいた。

 

 

「久しぶりやなぁ……銀狼さん」

 

「ああ。お前もいたのか。子狸」

 

「誰が狸や。そーゆー銀狼さんこそ、何考えとんのかわからへんやんか」

 

「誰も知る必要など無い、俺は1人でこの任務を遂行する」

 

 

夜天の王、八神はやて。

ベルカの守護騎士の主人であり、その絶対的広域魔法の素質でSSランクを持っている強者だ。

正直相手にしたくはない。面倒だからな。

 

 

「……ならば仔鴉よ、今すぐここから立ち退け。でなければ俺は貴様の翼をもぎ取らねばならない。二度と空に舞い戻れぬようにな」

 

「残念やけど、私はもう仔鴉やない。……空を統べる鷹や」

 

「ほざけ。鷹を気取る鴉が隼に勝てるとでも……?」

 

「思っとるよ。それにな、私は1人やない。仲間がいる!」

 

「―――ぬゥッ!?」

 

 

4本の砲撃魔法が俺を掠め、その強大な魔力を発散しきれずに爆発していた。

黒く、闇にそまるような魔力光……。まさかとは思うが、……可能性はある。

 

 

「はぁっ!!」

 

「やはりな……お前か」

 

 

後ろから殴りかかってきた腕を掴み、不意打ちをしてきた奴の面をおがむ。

本来であればこの世に存在しない者。それは俺が個人の意思で命をつなぎとめさせてしまった間違い。世界の理を破壊した時の者だ。

 

 

「お久しぶりです……主・隼人」

 

「ああ……そうだな。他の次元世界では会っているが、この世界で会い見えるのは7年ぶりだ。変わらんな……お前は」

 

「主こそ、意地っ張りなところはお変わり無いようで」

 

「ほざいてろ」

 

 

7年ぶりに出会えた。

本来ならば戦いたくなど無い。しかし……己で決めたこと。守らずしてどうする。

俺は戦う、たとえその相手がかつて愛し守りたいと思った者であってもな。

 

 

「これは少々計算外だ。広域殲滅型に近接戦闘型……。厄介な組み合わせを選んでくれたようだ」

 

「勘違いしてほしぃないなぁ。なにも私たち2人で抑えられるなんて思ってないよ?」

 

「ハッ。そこらの有能魔導師をいくら呼ぼうと、実弾兵器に対応できる奴などいない」

 

「そか。ならこの子たちはどうや?」

 

 

―――ッ!

 

気づいたときには遅かった。

俺の周りにはオレンジ色の魔力弾が数十個浮遊し、大気には電気が走っている。空を見れば水色で帯状の道のようなものと、見覚えのある龍が飛んでいた。

…………そうか、まさか……な。

 

 

「ククク……ククッ、ハッハハハハハハハッ!! 面白い! そうか……そういうことか! 思いもしなかった! まさか貴様があの時のメンバーを……機動六課を再編成しようと企むとはな!!」

 

「……義父(とう)さん、抵抗をやめて……おとなしくして」

 

「そうだよ! なんでこんなこと!!」

 

「どうしてフェイトさんを撃ったんですか!」

 

「家族じゃないんですか!?」

 

「そこまで疑問か……? 俺は銃騎士、平和を求めすぎ壊れた存在だ。俺の行動理念はただ1つ。戦争を無くすこと。ならばその火種となり得る全ての因子を排除するだけだ」

 

 

スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスター、エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエの4人。

俺を囲んでいたのはこいつらだった。

 

 

「よもやあれから7年……それなりにお前らも成長したのだろう……。しかし、超えることのできない次元を壁というものをわからせてやろう」

 

「動かないで! 動いた瞬間に全弾発射します! 威嚇じゃない、本気よ!」

 

「そう、そうか、本気か……。だが所詮魔導師だ。失せるがいい。―――銀十字」

 

【承認。ディバイダー稼働】

 

 

銀十字を中心に強力な魔力素分断フィールドが形成され、これであいつらの魔法は使えなくな―――…………?

何故だ、何故まだ魔法を使っている?

確実にディバイドは発動している。どういうことだ。

 

 

「無駄や、ディバイドは完全でないにしろ、もう克服しとる」

 

「……ほう。さすがの7年で進化もしたか。ならばこれはどうだ? 天変地異というものを見せてやる」

 

 

上着の内ポケットから小さなボタンを取り出し、これみよがしに握りこむ。

 

 

「動かないでって言ったわよね!」

 

「フンッ……速い、そして正確だな」

 

 

その動作を見ていたティアナが弾を1発射出し、スイッチを俺の手から見事に撃ちぬいた。

しかし―――それが機動条件(・・・・)だ。

なにも破壊されたら終わりではないさ。一定値以上の衝撃が加わった瞬間にそれは作動する仕組みだ。

 

 

「しかしそれが仇となる」

 

「これは……地震……!?」

 

「……違う、自然のものじゃありません!」

 

「なに……なんなの!!」

 

 

ドンッ!!

地表がひび割れると同時に連鎖反応が起こり、次々と地面を破壊していく。

あのスイッチは地下にあるライフラインに仕掛けた爆薬を作動させるための起爆スイッチだ。

そのせいでこの地域一体にあった爆薬が起爆。地鳴りが起こり、地面は姿を変えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 さ あ 、 終 わ り(フィーネ)の 始 ま り だ 」

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