謎だらけの妹と送る学園生活   作:二重世界

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第13話

「はぁー」

 

 放課後、俺は溜め息を吐きながら綾音と奈央、神崎の四人で部活棟を歩いていた。

 部活棟は三階建ての校舎で白崎高校の文化系の部活の部室が集まっており、俺達の目標は最上階だ。何で一番上にあるんだよ。三階とはいえ上がるのが面倒臭い。

 

 ちなみに白崎高校は体育会系はそれほどでもないが文化系の部活が活発な学校だ。確か去年、将棋部の先輩が個人で全国優勝、団体でも全国進出で騒がれていたな。他にも全国にいった部活はあるが興味がないので詳しいことは知らない。

 全校集会で表彰とかされていたが俺は寝ていたし。

 

 まぁ、そんなわけで放課後にも関わらず結構な人数の生徒がいて周りは賑やかだ。

 俺は今から地獄を見るというのに楽しそうな連中が妬ましい、恨めしい。

 そんな俺の心中には気付かないのか奈央は普段と変わらない様子で綾音や神崎と雑談している。

 

「神崎さんは聞いていたけど、綾音ちゃんも同じ部活だったんだね」

 

「……う、うん。まぁね……」

 

 昼休みの件から落ち着いた綾音が遠い目をする。

 自分が部活に勧誘された時のことでも思い出しているのだろうか? あの時はあの時で酷かったな。……色々な意味で。

 

「ねぇ、私のことも綾音ちゃんと同じで名前で呼んでくれない? ちなみに名前は葵ね」

 

「え~と、葵ちゃん……で良いのかな?」

 

「あんっ!」

 

 奈央が可愛らしく首を傾げると、神崎がハートを撃ち抜かれたかのように胸を押さえながら大げさに体を仰け反らせる。

 相変わらずオーバーリアクションだな。奈央が可愛いのは分かるけど。

 

 その後も女三人寄れば姦しいということわざを体現したような様子の会話を聞きながら目的地である快楽部の部室に向かう。

 まぁ、うるさいのは神崎だけだが。たまには静かに出来ないのだろうか?

 神崎が不適切な発言をしようとするたびに止めないといけないから精神が疲れる。

 

 そして遂に部室に辿り着いた。辿り着いてしまった。

 ここは最上階の中でも端の方にあるおかげで外から運動部の喧騒は聞こえてくるが、さっきまでみたいに周りに人気は少ない。

 離れたところに数人の人影が見えるがそれだけだ。声までは聞こえないし、顔の判別も出来ない。

 部長が興味のない人間とは関わりたくないということで自らこの場所を選んだらしいが隔離されているような気がしてならない。

 

「……お兄ちゃん、入らないの?」

 

 部室の前で固まっている俺を見て奈央が質問してきた。

 ここまで来たら逃げられないのは分かっているんだが体が動かないんだ。今からでも帰っていいかな?

 帰ったらあいつらが家まで来て余計に面倒臭いことになるだけだけど。

 俺は深呼吸をして覚悟を決めてから部室の扉を開ける。

 

「…………」

 

 バタン!

 

 俺は部屋の中を見て反射的に壊れるんじゃないかと言うほど強い力で扉を閉めた。

 ……今の何? 異様に容姿が整っていて格好つけた女が四つん這いの恍惚とした表情の男の上に座っていたんだが。神聖な学舎でSMプレイかよ! そういうのは家でやれ、家で。

 しかも一番謎なのが上から桜みたいなのが降っていたんだが。どういうこと?

 後、女の妙なドヤ顔がイラッとした。

 予想よりはマシだがそれでも酷い。

 

「いきなりどうしたの?」

 

 奈央が俺の行動に驚いている。

 ……良かった。奈央は今の光景を見ていないんだな。

 

「もしかして首吊りをしている変態と、それを隣で笑顔で見ている変態でもいたの?」

 

「……神崎、洒落にならないからやめてくれ」

 

 あいつらなら、それを否定できないのが恐ろしいところだ。正直、俺もそのレベルのは考えていたし。

 

「ちょっとここで待っていてくれ」

 

 そう言うと俺は奈央から部屋の中が見えないように気を付けながら急いで扉を開けて中に入ると急いで扉を閉めた。

 そして部屋の中央にいる人間椅子に座っている変態――快楽部の部長に答えの分かりきっている質問をする。

 

「……何やってるんですか?」

 

「私がいかに偉大な人間かということを教えるための演出よ。新入部員に対する第一印象は重要でしょ?」

 

 部長がまたもやドヤ顔で答える。

 ですよね! 分かってました! 貴女はそういう人です。

 

 部屋に入ってから気付いたんだが上からまっているのは桜紙か。

 桜紙はともかく人間椅子は逆効果だと思うんだが。普通の人間が見たら引くだけだ。

 後、何で奈央が入部することが確定しているみたいな言い方なのが気になる。まだ意見を聞くどころか会ったことすらないのに。

 兄としては妹をこんな変態の集団には入れさせたくないというのが本音だ。

 

 ていうか、この桜紙は何だ? まだ降っているんだが。

 ……どうでもいいけど凄い量だな。後で掃除するのが大変そうだ。

 出所に視線をやると、そこには棚の上に乗って桜紙をまいている見たことのない女の子? がいた。……見覚えはある気がするんだが誰だ?

 

「天夜、もういいわよ」

 

 部長が桜紙をまいている奴の方を向きながらそう言った。

 ……ん? 今、何て言った? 天夜?

 俺は棚の上の人物を指差しながら部長と交互に見る。

 

「……あれ、七瀬ですか?」

 

「そうだよ」

 

 俺の疑問に本人が下に降りてから部長の代わりに答える。

 マジかよ。これが七瀬……。言われなかったら気付かなかったぞ。

 下手なモデルなんかよりも綺麗なんだが。

 

「何で女子の制服を着ているんだ?」

 

「部長命令だからね。後、頭はカツラね」

 

 七瀬が普段と変わらない様子で言う。

 女装とか恥ずかしくないのだろうか? 特に気にしていないように見えるが。

 俺なら絶対に嫌だ。

 

「……これも俺の妹に対するサプライズですか?」

 

 どうでもいいけど俺、この部屋に入ってから質問しかしてないな。

 ツッコミどころが多すぎる。まぁ、いつものことだけど。

 

「いえ、これは私の趣味よ。メイクとかしていない簡単な女装だけど、驚くほど美人になったでしょ? 前から天夜にはこういう格好の方が似合うと思っていたのよ」

 

 確かに。元々、七瀬は見た目は優男で中性的な顔をしていたからな。俺も女装が似合いそうだな、とは思っていたがここまでとは……。

 ちゃんとメイクまですれば色々とヤバいことになりそうだ。何が、とは言わないが。

 

「秀司も着てみる?」

 

「結構です」

 

 俺は部長の提案をハッキリと断る。

 すると意外なことにそこまで興味がなかったのかアッサリと引いてくれた。

 

「そう。でも女装がしたくなったら、いつでも言ってね。すぐに用意するから」

 

 だから女装なんかしたくないんですが。……いくら言っても無駄なんだろうが。

 

「ところで貴方の妹はどこ? 一緒に来ていないの?」

 

「今は部室の外で待たせています」

 

「何でそんなことしてるの? 一緒に入ればいいのに」

 

 部長が不思議そうに首を傾げる。そんな姿ですら妙に様になっている。本当、性格させ良かったら告白していた可能性もあるのに。

 

「それは部長が――」

 

「まぁ、いいわ。入っていいわよ!」

 

 俺が説明しようとしたのを無視して外にいるメンバーを部屋に招き入れる部長。

 ちょ、何やってるんですか!? 人間椅子に座ったままですよ!

 せめて、これだけはやめさせようと思っていたのに失敗か……。俺は思わず溜め息をついてしまう。

 




13話終了です。

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