謎だらけの妹と送る学園生活   作:二重世界

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第5話

「ハァー……」

 

 放課後、すでに太陽が沈み始めた頃、俺は溜め息をつきながら奈央と一緒に帰宅している。綾音は何か用事があると言って先に家に帰った。多分、俺の誕生日のサプライズパーティーの準備をしているのだろう。

 

 それにしても吉田の野郎。宿題を忘れた程度で居残りなんかさせなくても良いだろ。

 ちゃんと明日、持ってくるって言ったのに。

 まぁ、俺が前回も忘れていたせいで信用していないのだろう。

 

「溜め息をつくと幸せが逃げるよ、お兄ちゃん」

 

「そんなこと言われてもな……。今日は疲れた」

 

 宿題の件を除いても奈央のことがあったからな。

 ボクシングをしている時でもこんなに疲れたことはないぞ。

 何で月曜日からこんなに疲れないと駄目なんだよ。もう明日は学校に行きたくない。

 

「……て言うか、何で奈央は先に帰らなかったんだ?別に俺に付き合う必要もなかったんだぞ」

 

「だって一人で帰っても退屈だよ。それに荷物もまだ届いてないし」

 

 荷物?

 まぁ、今日から俺の家に住むなら荷物ぐらいはあるわな。朝、来た時は教科書などの学校の準備しか持ってきてなかったし。

 その後も適当に奈央と話しているうちに家に着いた。

 

「あ、ちょうど荷物が届いているみたいだね」

 

 家の前に宅配業者らしき人間とトラックの姿がある。

 俺が家の前まで行くと業者の人が話かけてきた。

 

「もしかしてこの家の人ですか?」

 

「そうですけど」

 

「いやぁ、良かったです。誰もいないので戻ろうと思っていたところだったんです。では、これに引き取りのサインをしてください」

 

 業者の人に紙とペンを差し出されたので受け取ると、俺はそれにサインをした。

 奈央の荷物なのに何で俺がサインをしているんだ? まぁ、いいけど。

 そして紙とペンを返して荷物を玄関まで運んでもらうと、業者の人は帰っていった。

 

「荷物これだけか?」

 

 受け取った荷物は段ボール箱三つだけ。

 引っ越しの荷物って意外と少ないんだな。それともこれが普通なのか?

 

「荷物って言っても服や本、お気に入りの人形とかだけだからね。他の日用品や家具はあるって聞いているし」

 

 まぁ、確かにいつ客が来ても大丈夫なのようにとか言って両親が日用品の予備は用意しているけど。

 部屋に関しては母さんの部屋を使えば大丈夫だろ。たまにしか使わないのに無駄にちゃんとしたあの部屋を。

 

「ところで、お兄ちゃん。この荷物ってどこに運べばいいの?」

 

「空いている部屋に案内するからそこを勝手に使ってくれ」

 

 靴を脱いで段ボール箱を二つ重ねて持つと家の中に入る。本当は三つ全部運びたいところだけど鞄が邪魔なので厳しい。

 

「おお!」

 

 奈央が急に感心するような声を出した。

 

「ん? いきなりどうした?」

 

「いや、お兄ちゃんって力持ちだな、って思って……」

 

「まぁ、これでも鍛えているからな」

 

 ボクシングをやめてからもたまに家にあるトレーニングルーム(父さんの趣味が筋トレで作ったらしい)で汗を流しているからな。

 毎日はさすがに面倒臭いけど鍛えとかないと体が鈍るからな。それに一汗かいた後の風呂は最高だ。

 後、綾音がたまにしてくれるマッサージも気持ちいい。特に豊満なおっぱいが当たる時の感触といったら……。

 

「へぇ、そうなんだ。……んっ!」

 

 奈央が力を入れて最後の段ボール箱を持ち上げようとするが上がらない。

 え?マジか?

 一番小さいのを残したのに。

 

「……大丈夫か?」

 

「うん、大丈夫……」

 

 奈央が必死の思いで何とか段ボール箱を持ち上げることに成功したが足がふらついてる。

 明らかに強がっている。どんだけ力がないんだよ。

 

「その荷物も俺が運ぶから代わりに鞄を持ってくれ」

 

「こ……これくらい持てるから……」

 

 いや、どう見ても大丈夫には見えないぞ。

 はぁー、仕方ないか。

 俺は一旦、段ボール箱と鞄を下に置いて奈央が持っている段ボール箱を取る。

 

「いや、これくらいなら大丈夫だよ」

 

「そうは見えねぇよ。それに男が可愛い女の子の前で格好つけているだけだ。大人しく甘えとけ」

 

「可愛い女の子って……。お兄ちゃん、妹を口説く気なの?」

 

 奈央が頬を少し赤らめながら満更でもなさそうな顔をする。

 それにしても本当に可愛いな。学校にいる間にある程度の心の覚悟は出来たとはいえ襲ってしまわないか不安だ。

 

「んなこと言われてもな。今朝、会ったばかりの女の子をいきなり妹だと思うことは出来ねぇよ。それは奈央も同じじゃないか? 会ったばかりの男を兄だとは思えないだろ?」

 

「……私はそんなことないけど」

 

 俯いてボソッと奈央が何かを呟いた。何って言ったんだ?

 ……って、いつまでも玄関にいるわけにもいかないな。早く荷物を運ぶか。

 俺は奈央から取った段ボール箱を他の二つの上に乗せてまとめて持ち上げる。

 少しキツいけど、この程度なら問題ないな。

 

「部屋に案内するからついてこい」

 

 言うと奈央は床に置いてあった俺の鞄を持って後ろをついてきた。

 そして玄関から少ししたらところにある部屋に奈央を案内する。

 若干、散らかってはいるが他には特に特徴のない部屋だ。強いて言うなら本棚にある漫画が妙にグロテスクな内容だと言うぐらいか。

 俺の母さんはスプラッタものが大好きという女性らしくない趣味の持ち主だ。それとも案外、女性の方がこういうのが好きだったりするのだろうか?

 綾音は絶対に無理だと言っていたが。

 

「ここは母さんがたまに帰ってきた時に使う部屋だ。好きに使ってくれ」

 

「良いの?」

 

「どうせほとんど使われていない部屋だ。それとも父さんの方の部屋を使うか?」

 

「……え~と、それはさすがに嫌かな?」

 

 遠慮がちに否定する奈央。

 まぁ、父さんは寡黙で格好いいけどトレーニングマニアのせいで汗臭いからな。年頃の女の子からしたら苦手なのだろう。

 

「じゃあ、ここで問題ないな。俺は着替えてくるから、奈央も着替えとけ。家の案内は後でする」

 

「うん、分かった。また後でね、お兄ちゃん」

 

 笑顔の妹に見送られて自分の部屋に戻る。

 妹というのは初めて出来たけど良いものだ。自分を慕ってくれる妹というのは守りたくなる。




5話終了です。

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