勢いを絶やさずに!!
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mission1.出撃
横浜基地南東部に大量のBETAが出現しました。
EDFはこれを殲滅する為に部隊を派遣します。
情報によると小型級が大半を占めているという事ですが油断が大敵なのは、巨大生物との戦いで学びました。
この世界での公式な初陣です、充分に装備を整えてから出撃してください。
各員の健闘を祈ります。
「それで?貴方達は、一体何処の誰かしら?」
夕暮れに染まる横浜基地。
その巨大な門前では、横浜基地の魔女と名高い香月夕呼が数十人の衛兵を脇に携えて、眼前の正体不明部隊を睨みつけている。
通常の兵士の服装は、黒を基調としたものから紺や黄色等、階級によって色が変わるのだが目の前の部隊は皆バラバラで、ヘルメットの様なモノを付けてはいるが其々恰好が違うのだ。
羽の様なジェット機構が付いている部隊や、全身を黒で塗り固めた体格の良い部隊、一番数が多いのは通常の
そんな異質な部隊の先頭に立っているのは、大柄で鋭い鷹の様な目が特徴の男――作戦指令本部の長と自ら言っていた。
恐らく、彼の後ろに立っている初老の男性10人と三十代ぐらいの女性五人程がそれぞれの部隊の隊長であろうか?と夕呼は推測を建てている。
「我々は、連合地球軍――略称はEDFだ。何処の誰かという問いに対しては解答することが出来ない」
「何故?」
「……我々も気づいたらこの世界に立っていた。恐らくはフォーリナーの策略に嵌められ、ワープ装置等で此処に飛ばされたのであろう」
ワープ装置?フォーリナー?EDF?
と夕呼は一瞬思考の渦へと呑み込まれそうになるが、グッと耐えて再び目の前の部隊へと目を配る。
今は全隊員がこの場に居る訳ではない事は分かるが、それでも数が多い。
恐らく百人はいるであろう。或いはこれが全隊員なのかもしれないが……
そして、そのフォーリナーはワープ装置を操る程の高度な知能を有していて、その知能を持ってして罠を張り、EDFはまんまと罠にハマってしまったいう事になる。
「我々には、地球を守るという使命がある……いや、あったのだ」
「あった、とは?」
「今話した通りだ、我々がこの世界にワープさせられてしまったのだからもう――元の地球はフォーリナーに……ッ!」
指令本部長は言葉を重ねていく内に、段々と声を詰まらせていき、最後には唇を噛みしめて天を仰ぎつつ短く嗚咽を洩らした。
それに釣られる様に、EDF隊員達も次々と声には出さず涙を静かに流して、同じように唇を噛みしめて前をそれでも向いている。
しかし、それでも中には「ちくしょう……ッ、ちくしょうッ!!」と感情を露わにして、仲間に手で制されている者も幾人か確認出来た。
このEDF隊員達の反応に嘘偽りは一切無く、本当に悔しくて、遣る瀬無いという感情が夕呼や周りの横浜基地の男達の心には響いてくる。
横浜基地の隊員達も、そんなEDFの心情を察してか瞳に涙を浮かべてしまう。
しかし、あくまでも目の前のEDFは正体不明の部隊であり、もしかしたら敵なのかも知れないのだ。油断はしないで、EDFの隊員達の挙動を逐一監視するのが仕事である。
「そう……それはご愁傷さまね。でも、貴方達が何を思っていようと私達の地球には関係の無い事なのよ」
「無論、分かっている」
ここで夕呼は、とある考えを頭に浮かべていた。
もしも、彼らEDFが本当にフォーリナーというBETAの様な地球外生命体と戦っていたというのであれば、
例え、フォーリナーやEDFという事全てが嘘であったとしても、此方には戦術機があるのだ。戦術機の格納庫に絶対に近寄らせない様にしておけば、クーデターが発生しても対処は出来る。
しかし、それはそれでやはりコストが――
「我々は貴方に懺悔をする為に来たのではない。交渉をしに来たのだ」
「交渉ねぇ……私達が貴方達に何かを与える事は出来るけれど、貴方達は此方側にどの様な利益を与える事が出来るのかしら?」
「この地球を護る戦いに我々も参加する、というものしか我々に提供できるものは無い」
正直に言えば、夕呼側に与えられる利益は確かにあるのだが、この指令本部長が言う事を乱暴に言えば「俺達が協力してやるから、飯と寝床を寄越せ」という事だ。
こんな馬鹿げた交渉があるだろうか?
夕呼達には何の得も無い可能性が高い事と、基地がカツカツで支給する食べ物を更に何百人分、或いは何万人分分け与えろと言うのだから。
「ふぅん?なら、早速こっちの部隊が苦戦してる前線に赴いて貰おうかしら」
「問題ない、
ならばと、夕呼が早速横浜基地の精鋭部隊<伊隅ヴァルキリーズ>から先ほど苦戦しているという通信が入った場所へと、向かってもらうとしよう。
伊隅ヴァルキリーズを失うのは夕呼にとっても非常に痛手であるし、EDFの実力も確かめられる……という正に一石二鳥。
取れた鳥が、大物であれば尚良しだ。
「なら、早速――」
そう、夕呼が声を発しようとした時不意に、戦術機の駆動音と共に幾人かの男達の勝鬨の様なものが聞こえてくる。
見えてきた戦術機達は紛れもなく、伊隅ヴァルキリーズの物であったが、その殆どが損傷を受けており、特に柏木機は稼働しているのが不思議なぐらいの具合だ。
そして、伊隅ヴァルキリーズ達が操る戦術機の後ろには目の間に立つEDF隊員達の服装と同じ数十人の男達が戦術機の後を追うように走りつつ、歓声を上げているではないか。
この状況に夕呼達や横浜基地の兵士たちは呆気に取られたように目を見開いて、帰って来る戦術機達を見ていて、一方のEDF隊員や隊長延いては作戦指揮本部長達は顔に笑みを浮かべながら走り寄る同胞たちを見ている。
「何故、貴方達EDFの部隊が此方の部隊と共に……?」
「実は我々が此処に向かう途中で、フォーリナーの様な怪物に襲われているマシーンを発見して、見捨てるわけにはいかないと隊員達を数人援護に向かわせた次第だ」
そして、戦術機達はゆっくりと格納庫へと入っていき、数分後伊隅ヴァルキリーズの面々が夕呼の目の前へと敬礼をしつつ一列に並び、支持を待つ。
無論、夕呼は即座に『何故彼らと共にいたのか、援護と言っていたがどのくらい役に立ったのか』と矢継ぎ早に聞き、満足いく解答が伊隅により説明されるとゆっくりと息を吐いた。
伊隅からの途中報告が無かった理由は、BETAの攻撃により通信機器をやられた事による通信障害と、BETAの数が余りにも多く例え通信機器が無事でも報告する余裕は無かったということである。
「成程、事情は分かったわ。まずは貴方達を信用する事にしましょう」
「信じて用いてくれるだけでも、我々は幸運だ。只、一つだけ此方からお願いしたいことがあるのだが」
「何かしら?」
「EDFの指揮は全て、私が行う――この条件は問題ないか?」
「えぇ」
そうか、と作戦指令本部長は安堵したように頷くと、EDFの隊員達の方を向き、その厳つい顔面に笑みを浮かべた。
単純に喜色の笑みなのだが、それが夕呼はどうにも不気味に見え、無意識下で一歩足を作戦指令長から引き本質を見極めるように見つめる。
しかし、何かが分かる訳でもなく夕呼はゆっくりと自らに宛がわれている部屋へと向かうのであった――
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夕呼が部屋に戻ってから数時間後、既に日は落ちて辺りを静寂が包む――二十三時。
不意に、廊下が俄かに騒がしくなっていることに気が付いた。
普段であれば、さして気にも留めない雑音なのだが、防音付きの夕呼の部屋にまで廊下の喧騒が聞こえると言うのは珍しく、何となしに廊下を覗いてみると、二人の横浜基地兵士が扉の前で何やら言い合っているではないか。
「貴方達、一体何をしているのかしら?」
「はッ!!どうやら、横浜基地の南東数十キロ先に旅団レベルのBETAが出現したとのことでして……」
「既に、お休みになられているかと思い、扉の前で躊躇っていたところです」
はぁ、と夕呼は目の前の兵士達のマニュアル外の対応にため息を吐きつつ、旅団規模と言う中々の数のBETAへの対応に頭を悩ませた。
ここで、戦術機の中隊を編成して出撃させるのは容易いが、旅団規模となると此方の犠牲も少なくは無くなってしまうだろう。最悪、全滅もあり得る。
「貴方達はもう持ち場に戻っていいわ」
「「了解!」」
夕呼の一声に、揃って敬礼するとキビキビとした動きで去っていった。
しかし、旅団規模となるとEDFの隊員達では太刀打ち出来ないのではないか?という思いもあり、EDFに頼るのは気が引ける……。
しかし、この考えをした直後夕呼は、EDFに任せる事を決意した。
伊隅ヴァルキリーズの戦術機に残されていた戦闘データを見る限り、時間稼ぎをするだけの力量はある。
それに、少数とは言えBETAの群れを一掃した武器も非常に魅力的だ。
タダ飯を食わせる程、今の時代は楽ではない、ならば働いて貰おうではないか。
「もしもし、香月よ。早速、貴方達に出撃して欲しいんだけど――」
『了解、香月さん基地内アナウンスをさせてもらいたい。EDFの隊員は数が多いからな』
「えぇ、構わないわ」
そう夕呼は区切ると、管制のピアティフ中尉へ連絡を取り、作戦指令本部長へアナウンス機器を届けるように指示を出す。
数分後、基地内の何処の場所にも付いているスピーカーから、ガガガと機械音が流れ出し、次いで作戦指令本部長の『あーあーマイクテスト』という声が聞こえてきた。
『EDFの諸君出撃準備だ、迅速に頼むぞ。横浜基地の兵士諸君は、そのまま横になっていてくれて構わない。――以上だ』
今ので、EDFの兵士達は出撃する気になるのだろうか?
と言う純粋な疑問を夕呼が抱いた所で、指令本部長はアナウンスを切ってしまった。
その数分後、本当にEDFの隊員達が集っているのかどうかを確認する為に、夕呼は正門へと赴いていた。
普通に考えれば、あの出撃命令では上がる士気も上がらないと思うのだが、作戦指令本部長は自信満々の声色でアナウンスをしていたので恐らく大丈夫なのだろう。
やや早歩きで、夕呼が廊下を歩いていると後ろから不意に、ドタドタと走る音が耳に入ってきた。
どうやらその正体は、件のEDF隊員の様で何も武器を持たないまま夕呼が向かう正門へと向かっているようだ。
「貴方、随分と招集が掛かってからの行動が随分と遅いのね?」
ついつい夕呼の口調が厳しくなり、EDFの隊員も足を止める。
武器を持っていない所に余計に腹が立ち、睨み付けるというオマケも付けてしまったが、その隊員は特別気にした様子も無く「色々ありまして」と言ってのけた。
その様子に更に腹が立ったが、隊員は再び駆け足で正門へと向かってしまったので、これ以上は言及する事が出来なかった。
再び歩き出した夕呼はいよいよ正門へと辿り着くことに成功する。
なにやら、正門の付近では鉄のガチャガチャという音や、銃のコッキングの音が鳴り響いており、キリッと引き締まったムードが流れている様であった。
「おい、ゴリアスZが足りねえぞッ!!ついでにAFもだ」
「コッチにガバナー持ってきてくれ!」
「新入り、こっちはプロミネンスが必要だ」
何やら武器の調整をしている、EDFのレンジャー部隊。
その奥には、青を基調として背部に羽のようなエナジーユニットが装着された部隊が見える。
指令本部長が言うには――確かウィングダイバー部隊、だったか?
どうやらウィングダイバー部隊は既に準備を終わらせて作戦概要について話し合っている様であった。
それにしても、BETAが
横浜基地の部隊で出撃するならば、少なくとも中隊~大隊で対応する数なのだけど……と、夕呼は不安を胸に抱きつつも再びEDFの隊員達に目を向けた。
EDFの隊員達は、BETAの恐怖をまだ植え付けられていない為、士気は高いが一度部隊を蹂躙されると瞬く間に戦えなくなるのだから恐ろしいものだ。そのせいで、何人もの兵士達が恐怖で動けなくなり殺された。
「……貴方達は、そうならないでね」
そう、夕呼は小さく呟き準備を着々と進める隊員達を眺めていた――。
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『今回の作戦は、横浜基地の副指令である香月夕呼博士の公式な指令だ。負けは許されない……勝って帰って来い!』
BETAが出現し、進軍を進める方角へと到着したEDF部隊はまず、作戦指令本部からの無線を受けて緊張を高めた。
今回はこの世界に来て、初めての出撃だ。EDFの隊員達は日夜、巨大生物との戦いに明け暮れていたが、この世界のBETAという存在は巨大生物の何十、或いは何百倍もの数が地上や地下を跋扈している。
否が応でも、EDF隊員達は戦わざるを得ない。
しかし、EDF隊員達の顔に浮かんでいる表情は嫌々というような負の表情では無く、闘志に満ちた瞳と、巨大生物の様に地球を害す共通の敵を倒すという気概が見て取れる。
今までも、EDFは困難に直面しそれを打ち破ってきたのだ。
敵が何であろうと、如何に強大で歯が立たないとしても、EDFは戦わなければならない。
「敵、未だ視認出来ません」
「あぁ、如何やら着くのが早すぎたみたいだな?」
「早すぎて損する事は何もない、万全の態勢で望める」
敵が視認出来ない時間、EDFの隊員達は戦い前の緊張を紛らわせる為に軽口を言い合う事が良くある。
今も、こうして会話を交わしつつお互いを励ましているのだ。
しかも今回の戦いは巨大生物では無く、BETAという巨大生物よりも更に凶悪な異形、故に隊員達は不安と緊張を心に誰しもが抱いている。
「そういえば、英雄の噂を知ってるか?」
「……英雄の噂?あの、単独でマザーシップを落としたっていう奴の?」
一人の兵士が、手に持つロケットランチャー『ゴリアスZ』を確認しつつ、隣で同じ作業をしている仲間へと声を掛ける。
一方の声を掛けられた兵士は、怪訝そうな顔をしながらもしっかりと返答を返した。
「あぁ、そうだ。かつてEDFに実在していた『ストームチーム』のリーダーらしい」
「ハッ!全く、お前は本当にそういう噂話が好きだな?そんな奴が実在しているんなら、俺達を助けて欲しいもんだぜ」
所詮は噂だ。
と、鼻で笑った。
声を掛けた兵士も、「まぁ、そうだよな」と同じように笑うと思い出したかのように、再び声を挙げる。
「この噂には、続きがあるんだ」
「……何だ?実は巨大生物の仲間でしたーってか?」
「違う。…実はそのストームチームのリーダーは未だにEDFの何処かの部隊にいるらしい――てッ!!敵、接近!!」
会話を続ける暇も無く、不意に敵は現れた。
現地には、若干の霧が掛かっており暫し接近するまで、視認できなかったのである。
しかし、EDFの対応は迅速かつ正確で、まずは戦闘の部隊がゴリアスZを連射。
BETA旅団の戦闘を走る小型級を数百匹爆風で木っ端微塵にしていった。
しかし、ゴリアスZでも倒せない大型級のBETAはEDFの隊員達を確認するとスピードをグングンと上げ、大挙として押し寄せてくる。
すると今度は戦闘に立っていたロケットランチャー部隊が後方へと、リロードしながら後退し、代わりにAFを持ったアサルトライフルの部隊が先頭へと並び立った。
「奴等に鉛弾を喰らわせてやれぃッ!!!」
「「「了解ッッッ!!!!」」」
小隊長の命令の元、隊員達はAFを即座に構え、銃撃を開始。
銃弾が雨の様に、要撃級の頭や足へと命中し、血飛沫をあげて倒れていく。
大型BETAの陰に隠れていた小型達も、その雨に成すすべもなく次々と地に臥せていき、あっという間に地面は赤一色に染まった。
しかし、その銃弾を諸共しないBETAが未だに進軍をしている――突撃級だ。
突撃級は、前面に付いている甲殻を持ってして銃弾を弾き、EDFの部隊へと凶悪な突進を続け、遂にEDFの戦闘の部隊へと肉薄した。
「ッ!?」
「ぐッ!?!」
突撃級の突進を生身で受けたEDF隊員達は、後方でロケットランチャーを構える部隊の元まで大きく弾き飛び、苦悶の表情を浮べる。
だが、どうやら動ける様で、素早く立ち直ると再びAFを構えて突撃級へと速射を始めた。
その様子を、派遣した戦闘データ送信戦術機からリアルタイム映像データで受信し、横浜基地のモニターで見ていた夕呼はその顔に驚愕を浮べる。
EDFの隊員達が吹き飛ばされた事に驚いたのではなく、その後だ。
(生身で突撃級の突進に、耐えたですってッ!?)
そう、普通は突撃級の突進を喰らった場合、良くて全身複雑骨折で死ぬし、悪くて四肢が吹き飛ぶ。
それを喰らった直後に、立ち上がって再び戦闘に参加出来るなんて事は有りえない。
というよりも、生きていること自体が有りえないのである。
しかも、思ってみれば旅団級のBETA相手に戦術機にも乗らず、生身で戦い、しかも善戦する何て事自体が、言ってみれば非常識な事なのだ。
『いいかお前等!!死んでも撃ち続けろッッ!!!』
『『『『ゥウオオオオォォォォォォォァァッッッ!!!!!』』』』
今しがた、突撃級に吹き飛ばされたばかりだというのに、隊員達は隊長の号令の元、自らを奮い立たせる為に雄たけびを挙げて再びBETAの元へと駆けだした。
勿論、銃弾を撒き散らしながらである。
モニター越しだと言うのに、夕呼と共にリアルタイム映像を見ていた伊隅ヴァルキリーズの面々はその気迫に息を呑んだ。
「彼等は、何故あそこまで……」
思わずと言った具合で伊隅は声を洩らしてしまう。
一度、生身で突撃級の突進を受けて、生きていることも異常だが、再び武器を取り正面から向かっていく事もまた、異常だ。
EDFの隊員達に恐怖を覚えると同時に、尊敬の念を抱いている事を伊隅ヴァルキリーズは知った。
生身でBETAと相対すること自体が、命取りだというのに彼らは恐れず、只真っ直ぐに向かっていく。
それが、伊隅達には涙ぐんでしまう程に眩しかった。
「――我々EDFの隊員達にはもう、護るべき家族も恋人もいない」
不意に、モニター室の入り口から声が聞こえてくる。
夕呼や伊隅ヴァルキリーズが振り向くと、其処に立っていたのはEDF作戦指令本部長であった。
彼が放った言葉は暗澹としたものだったが、その声色自体に暗い感情は含まれていない。
「護るべき者がいないのに、何故……貴方達はそんなにも戦えるのですか?」
質問をしたのは、柏木晴子だ。
柏木は潤んだ瞳と、相乗して震える声で指令本部長へと質問をした。
指令本部長は、モニターへと近づくと口を開く。
「我々は、地球と人類を護るために在る――世界が違おうとも、此処は地球だ。そして、未曽有の危機に直面し人々は怯え、理不尽に命を奪われているのだろう。ならば、我々は戦い続ける」
指示に戻るとしよう。
そう言って、作戦指令本部長は踵を返してモニター室を後にした。
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「負傷者は下がってリバーサーを使え!」
「は、はい!!」
EDF小隊長は、未だに生き残っていた小型BETA<戦車級>を複数相手取りながらも、負傷した新兵へと指示を出す。
この新兵は、此方の世界に来る数日前に入隊し、戦場に立つのも今回が初めての正真正銘初陣だ。
故に、立ち回り方が分からず要撃級の足に弾かれ、動けはするモノの鈍く痛む足をそのままにしておけば次は死ぬことが容易に想像する事が出来る。
小隊長は手に持つ、スパローショットM3をショットガンとは思えない程の速度で速射しつつも、戦場を見渡していた。
左を見れば、既に息絶え倒れた突撃級の裏側でAF20をばら撒く音が聞こえてくる。
右を見ると、フォーマンセルで編隊を組んだ部隊が大量の小型BETAを相手取り、雄たけびを挙げているではないか。
「地球から出ていけッッ!!!」
「横浜基地の兵士達は泣いていたんだ、家族や仲間を殺されたってなッッ!!!」
EDF隊員達は、巨大生物と戦っていた時同様の憎悪と、確固たる意志を抱いて戦場を駆けている。
小隊長も横浜基地で偶々目にした、基地の通路でへたり込む兵士に話を聞いてみれば、親友が殺されたと瞳に涙を浮かべながらも語ってくれたのだ。
それでも、あの兵士は戦い続けると言っていた。仇を必ず取って、人類が勝利するまで戦い続ける……と。
『数キロ先に、BETAが複数出現、対処してください!』
不意に、管制から連絡が入る。
それは、EDFの隊員達にとっては最悪の知らせであった。
いつもなら、余分な弾丸を持ってきて敵の増援にも対応するのだが、今回はこの世界での初陣という事で十分な弾丸を持ってくることが出来なかったのだ。
(不味いな……弾が無い。
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「準備完了です!」
EDF
本来であれば、レンジャー部隊と共にこのウィングダイバー部隊も戦闘に参加している筈だったのだが、背部に装着された飛行ユニットの調子が悪く、たった今完全に治した所なのだ。
数は二十人程と少ないが、彼女たちは精鋭部隊の名に相応しい装備と実力を有している。
「左翼部隊、向こうの
『『『了解!!』』』
その通信の数秒後、ウィングダイバー部隊左翼に近づいた数百のBETAは瞬く間に殲滅された。
「ウィングダイバー、全隊前進ッ!!」
ウィングダイバー部隊の小隊長の号令の元、EDFの
横浜基地の夕呼や伊隅ヴァルキリーズは、その行動の一切を見逃さないと言わんばかりにモニターを凝視していた――。
引き延ばしぃ!!
EDFって最初はね、苦戦しないもんね。
だからね、五話辺りからね、ドンドンね……ね?