第一羽 ラビットハウスでの出会い
謎の空間、そこで『それ』は何やら楽しげに微笑んだ。
そしてノイズががかったような声で言う。
【・・・今まで、いつだって彼は私が求めている以上の最高の結果を残してくれた】
十番の精霊に始まり、四番、五番、八番、九番、七番、一番・・・。
三番のあの子の力もいずれはその身に宿してくれるだろう。
そう確信しながら『それ』は動いた。
【今回は難易度が高いけど・・・君、いや、君たちなら大丈夫だよね。ふふふ・・・じゃあ・・・いってらっしゃい。私の可愛い子供たち】
【君たちの今までにない
そして『それ』は二つの世界をつなげた。
****
ある昼下がり。
ここは木組みの家と石畳の街。
日本にありながらその情景はどことなく外国を思わせる。
そんな美しい街に喫茶店ラビットハウスはあった。
そこはどうも可愛らしい三姉妹が経営しているらしいが・・・。
「誰だ三姉妹って言ったのは!」
店内の掃除をしていた少女たちの1人が突然叫ぶ。
その叫び声にほかの二人の少女たちがびくりと肩を震わせてから言う。
「ふぇ!?突然どうしたのリゼちゃん!誰もそんなこと言ってないよ!?」
「ココアさんの言う通りです。…疲れているのなら少し休みますか?」
2人の反応にリゼと呼ばれたな紫髪の少女は赤面しながら言う。
「あ・・・い、いや、大丈夫だ。すまないな、チノ、ココア」
チノと呼ばれた少女は、はぁとため息をつく。
青の髪の左右に付いたヘアピン、そして何といっても頭の上に乗せた白いモフモフ、もといウサギが特徴的な可愛らしい少女だ。
「しっかりしてください…ココアさんのフォローで精一杯なんですから」
「む~。チノちゃん、私そんな迷惑かけてなくない?ここに来てからそれなりに時間もたったし私だってもう一人前だよ!」
ココアと呼ばれた少女は頬を膨らませながら反論する。
半分の花の髪飾りがトレードマークのピンク髪の少女だ。
「ほら、掃除だって私がいるからこんなに早く…」
そう言いながらココアは箒で床を勢いよく掃くが、勢いが良すぎたせいか、箒は手からすり抜け無情にもテーブルに置いてあった花瓶を破壊した。
「あ~あ…」
「ココアさん…」
その様子にリゼとチノが呆れた様子でココアを見た。
「…本当にごめんなさい。まだまだ半人前でした……」
チノはココアのそんな様子を見て苦笑してからから、でも今は店に人がいなかったのでよかったです、と言って塵取りをもって片づけを始めた。
リゼも、そうだなと言って雑巾をもってきて水浸しになった床をふき始めた。
「あ、私も手伝うよ…」
「「ココア(さん)はいい(です)。また何かやらかしそうだ(ですから)」」
「ええ〜!?」
二人の言葉にココアは膝から崩れ落ちた。
****
喫茶店ラビットハウスにてそんなことが起こっている丁度その頃、高校生、
「・・・俺は確かにさっきまでは家にいて料理を作っていたはずなんだけど・・・」
そう先ほどまで士道は自宅にて来客が来たこともあり料理を作っていたのだ。
できたハンバーグを皿に盛りつけてテーブルに運び、ふと気が付くと前には木組みの家と石畳の街。
困惑するなというほうが無茶な話だ。
そして状況が呑み込めていないのは士道だけではなかった。
「ぬ!?シドー!ここはいったいどこなのだ!先ほどシドー作ってくれたハンバーグはどこだ!?」
膝まではあろうかという黒髪が特徴的な美少女、
彼女は昼食を食べに士道の家を訪れていたのだった。
そしてもう一人。(と一匹)
「見たことがない街ですね・・・確かにさっきまで士道さんのおうちにいたはずなのに・・・」
『だよね~!よしのんびっくりだよ!』
水色の髪に蒼玉の瞳を持つ少女、
彼女らも十香と一緒に士道の家を訪れていたのだ。
「・・・・とりあえずこの辺りを調べてみよう」
士道の言葉に二人はコクリと頷く。
そして士道は二人を連れて歩き出す。
普通の高校生なら士道のような冷静な判断、行動はまずできないだろう。
士道が冷静でいられるのは今までの経験の賜物である。
精霊。
発生原因、存在理由が共に不明な謎の生命体。
その出現により大災害、空間震が発生し、甚大な被害を及ぼす。
また、武力を以てしても戦闘能力が強大なためほぼ達成は困難。
しかし、そんな精霊にもう一つの対処法があった。
それは…デートをしてデレさせること!
正確に言うとデレさせてキスをすることで精霊の力、霊力を自分の中に封印してしまうのだ。
しかしそんな能力は誰もが持っているわけではない。
理由は不明だが、五河士道こそがその能力を持った、唯一の人間なのである。
士道は軍隊をもねじ伏せてしまうような精霊とデートを繰り返してきた。
それはまさに命がけのことだが強力なバックアップもあって士道はこれまで八人の精霊の力を封印してきた。
そして何を隠そう、十香と四糸乃も士道に力を封印された(もといキスをされた)精霊なのである。
このように士道は精霊にかかわることで多くの体験をしてきた。
時には死にかけるようなこともあったので、多少はこういうことに慣れているのだ。
今回も新たな精霊の仕業だろう、士道はそう考えていた。
精霊の仕業、というのは確かに当っていた。
しかし事態は思っているよりも深刻だということを彼らはまだ知らない…。
*****
「…なかなか人に出会えないな」
士道たち三人はしばらく辺りを歩いてみたものの特に情報も得られずにいた。
わかったことといえばここが日本であるということくらいだ。
しかし日本でこんなところは見たことがない。
街並みはそれこそ外国のものに似ていた。
「ぬう…シドー,お腹が空いたぞ…」
辺りを見回しながら歩いていると十香が早くも音を上げ始めた。
昼食を食べ損ねているので仕方のないことなのだが。
「そうだな、どこか空いている店を探すか。あ…でもお金ないぞ」
その言葉に十香がガーン!と衝撃を受けてその場に座り込んだ。
しかしそこで四糸乃が可愛らしいウサギの財布を十香に差し出してきた。
「あの…少ないですけど、これで何か食べましょう」
その瞬間、十香が顔を輝かせながら立ち上がった。
早い復活である。
「おお…!ありがとうなのだ四糸乃!」
「えへへ…」
『たまたま持ってきておいてよかったね~四糸乃!』
そんなやり取りを横目に見ながら士道はどこか入れそうな店を探す。
そして一つの店が目に留まった。
「喫茶店…ラビットハウス…」
他にもないかと見回すが閉まっていたりしてどうやらこの辺りでは入れるような店はそこだけのようだった。
(…ここにするか)
そう決めた士道は二人を呼ぶ。
「おーい、この店に入ってみよう」
「おお!よし、わかった!」
「わかり…ました」
そして三人はラビットハウスのドアを開けた・・・。
****
「私…いらない子なんだ…」
先ほど手伝うことを拒否されたココアはいまだ落ち込んでいた。
「だれもいらないなんて言ってないですよ…元気出してください。またこれから頑張ってくれればいいんです」
「チノの言うとおりだ。これからが大切だと思うぞ」
二人の励ましを受けた後、涙目になりながらココアはチノに言った。
「じゃあ…頑張ったらお姉ちゃんって言ってくれる?」
「か、考えておきます」
チノがそう言うとココアは満面の笑みを浮かべた。
「よし!これからさらにお仕事頑張るよぉ!」
(ちょろいな)
(ちょろいですね)
リゼとチノが呆れているとカランカラン、という音が鳴り扉が開いた。
どうやらお客が来たようだ。
そして入ってきた三人に声を合わせて言う。
「「「いらっしゃいませ!」」」
そして彼らは二つの世界を跨いだ、運命の出会いを果たした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
処女作ということもありわからないことだらけですががんばっていきたいと思います。
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