夜も更け、街の灯りもまばらになってきた頃、ノイズ、としか表現ができない姿をした者が高台から街を見下ろしていた。
この人物はかつて士道達の前にも何度か姿を見せてはいるがその目的を始め多くのことは分かっておらず便宣上〈ファントム〉と呼ばれていた。
ファントムはただの人間を精霊に変える力を持っているらしく現に精霊達の何人かはファントムとの接触によって精霊化していた。
そのファントムがノイズの中で微笑みながら満足そうに呟く。
【ふふ、無事にみんなヒトと接触してくれたようだね。候補は・・・4人、いや、5人かな?上手くいくといいけど】
そう言ったあとファントムは後ろの森の方を向いて誰かに話しかけるように言った。
【ねえ、君もそこに隠れてないで出ておいでよ。無理やりこの世界に連れて来ちゃったお詫びに少し目的を話してあげるから】
「あらあら、気づいておられましたの」
何もいないはずのところから突然声が響く。
そして影の中からゆっくりとその声の主が姿を現した。
黒と赤のドレスを身にまとった美しい少女だ。
そしてその左目は何故か時計となっておりカチカチと時を刻んでいる。
ニヤリ、と笑いながら少女は言った。
「ではお言葉に甘えてわたくしまで巻き込んで何をしようとしているのか、話していただきましょうか」
少女の言葉を受けてファントムは静かに話し始める。
【私の目的はね、〈ナイトメア〉
ファントムの言葉に狂三と呼ばれた少女が眉をひそめる。
「・・・自らの脅威を自ら作れとおっしゃいますの?わたくしはもとより他の精霊さん達もあなたに協力するとは思えませんわよ?」
【大丈夫、君たちはこの世界でただ霊力を使ってくれるだけでいい。それで私の目的は達成される】
「・・・それがこの結界と関係しているということですの?」
狂三の言葉にファントムは小さく驚く。
【へぇ・・・君は気がついていたんだね。ご名答だよ。この結界の中で霊力を使うとその一部が私の手元に来るようになってる。かつての
そう言ってからファントムは狂三に一つの宝石を見せた。
それこそまさに精霊の力の結晶、
しかしその霊結晶は透明で一部がエメラルドになっているのみだった。
「その
狂三の言葉にファントムが頷きながら答える。
【そう、空の
ファントムのその言葉を聞いて狂三はニヤリと微笑む。
【ではそれを知ったわたくしが霊力を使わなければいいのではありませんこと?このことを話したのは愚策でしたわね】
狂三が勝ち誇ったようにそう言うと今度はファントムが笑って言った。
【でも君たちは霊力を使うと思うよ】
「・・・どういうことですの?」
【今ここにいるのは本体の一部だけど、この世界の支配者は私。つまり私を倒さないと元の世界には帰れない。帰りたいんでしょ?元の世界へ】
ファントムがそう言った瞬間、狂三は動いた。
足元の影から古式の歩兵銃と短銃が飛び出し、狂三の手に収まる。
そしてそれをファントムに向けると何のためらいもなくその引き金を引いた。
狂三の攻撃はまさに一瞬だったがファントムはその場から跳躍して回避する。
そして地面に降り立ったファントムは狂三に笑いかける。
【ほら、やっぱり使った】
「・・・・わたくしはこんなところでモタモタしている暇はありませんの。ここであなたを倒して元の世界に帰らせていただきますわ。さぁ、おいでなさい。〈
狂三が天使の名を呼ぶと、その背後に巨大な時計が現れた。
〈刻々帝〉、時間を操る能力を持った強力無比な天使である。
その羅針盤の数字の七から霊力が溢れ出て、狂三の持つ銃に込められる。
そしてファントムにそれを向けて放った。
「〈
【・・・・っ!】
ファントムはまたもその場から跳躍し、それを避ける。
狂三が放つ追撃も空を縦横無尽に飛び回ることで回避していた。
しかし、ただそれだけで終わる狂三ではなかった。
「わたくしたち!」
狂三がそう叫ぶと、なんと足元の影から何人もの狂三が現れた。
その数、十人。
ザフキエルの能力で生まれた過去の狂三たちだ。
本体の指示を受け、分身体が一斉にファントムに襲いかかる。
しかしファントムは飛びかかってくる狂三たちもギリギリのところでかわしていく。
そこで本体の狂三が新たな弾を放った。
「〈
放たれた弾はファントムではなく分身体の狂三に命中する。
その瞬間、分身体の狂三の姿がかき消え、次の瞬間にはファントムを捉えていた。
【
【くっ・・・】
ファントムが分身体の狂三を引きはがそうとするが、もう遅い。
狂三はもう一度引き金を引いた。
「【
ついにファントムにその弾が命中する。
その瞬間、ファントムは動きを止めたまま空中に静止する。
【
そして狂三たちは両手の銃に霊力を込め、四方八方からファントムを撃った。
そしてしばらくして【
多数の霊力弾で撃たれたファントムは空中から真っ逆さまに地面に落ちた。
その衝撃で土煙があがる。
「・・・・・・」
狂三はジッと落ちたファントムの方を見つめる。
そして土煙の先に起き上がる人影を見た。
「さすがにやるね、しっかり刻々帝の力を使いこなしてくれてて嬉しいよ」
ファントムは先ほどまでのノイズがかかった声とは違う、しっかりとした少女の声でそう言った。
白い制服を身につけておりサイドテールの髪をしている少女だ。
狂三はその姿を見て言う。
「・・・あれだけやってノイズか剥がれただけですの。しかもその姿・・・」
そう、狂三は見たこともないファントムの姿に覚えがあったのだ。
まさにそれは。
「そう、
「趣味が悪いですわね・・・士道さんが見たらなんとおっしゃいますことやら・・・」
狂三がため息をつくように言うがファントムは特に気にした様子もなく続ける。
「・・・さて、君の霊力は十分集まったし、今日のところはお別れだね」
そう言ってファントムは新たにエメラルドの他に一部が黒に染まった霊結晶を見せた。
「・・・わたくしが逃すとお思いですの?」
狂三がそう言うとファントムはニヤリと笑って言った。
「ただ逃げるだけじゃない。今度はこっちからも仕掛けるよ」
その瞬間、霊力が渦巻きファントムの体を包んだ。
そしてその霊力が精霊の最強の鎧、霊装を作り出す。
その霊装、それこそ普通の服にしか見えないが銃の弾丸程度なら簡単にはじいてしまうほどの強度を誇るのだ。
さらに霊力でファントムは純白の翼を形成し、天高く飛翔した。
そして
「
その瞬間、ファントムの背後に濃密な霊力が渦巻き、巨大な球体が出現する。
翼や歯車といった複数の構造物が付いており、球体部分の無数の恐ろしい眼球が狂三を睨み付ける。
「いくよ」
そう言ってファントムは手を掲げてから振り下ろす。
それが合図となり雷霆聖堂の眼球から無数の霊力弾が放たれた。
「・・・・っ!」
雨のように降り注ぐ霊力弾を狂三は何とかよけようとするがさすがに数が数である。
よけきれず分身体が何体か倒されてしまう。
このままでは全滅は時間の問題である。
「こうなったら・・・」
本体の狂三は近くにいた分身体を盾にし、一瞬の時間を作り出す。
そして自らをあの弾丸で打ち抜いた。
「【
その力で狂三は一気に霊力弾の範囲外に移動する。
それと時を同じくして狂三の分身体は全滅した。
そして・・・。
「逃げられましたわねぇ・・・・」
そう、その一瞬でファントムは姿を消していた。
狂三は悔しそうに歯噛みする。
そしてポツリとつぶやいた。
「正面から戦ったら勝ち目はない、ですわね・・・。さて、どうしたものでしょうか・・・」
そして狂三は影に飲み込まれ姿を消した。
二亜「いろいろとこっちの方が都合がいいので移行しました予告コーナー!本日のゲストは映画限定キャラ万由里ちゃんです!」
万由里「ん・・・よろしく」
タカヒロ「万由里君か・・・確かこの前の人気投票で一位になった子だったね。おめでとう」
二亜「そういやそうだったね~。おめ~」
ティッピー「名誉なことじゃな」
万由里「なんていうか・・・その、ありがと」
二亜「あー・・・その頃は私は影も形もなかった・・・いや、別に嫉妬とかしてないよ?うん」
タカヒロ「ちなみにその人気投票、作者は四糸乃君に十万票入れていたようだ・・・」
二亜「頭大丈夫かなあの人」
万由里「もう手遅れなのかもね」
ティッピー「ひどい言われようじゃな・・・・」
二亜「・・・それはそうと今回の話、万由里ちゃんの登場が微妙過ぎない?もう本人が登場したとは言えないでしょこれ」
万由里「まあ私は消えちゃったわけだし・・・・それは仕方ないって割り切るわ。けど、そうだな・・・かなうなら何でもないような一日を士道たちと過ごしてみたかった、なんてね」
タカヒロ「・・・・・・・」
ティッピー「・・・・グスン」
二亜「・・・・うん、オッケー、任せといて」
万由里「え?」
二亜「私がその何でもないような一日を描いてあげるよ。
万由里「そ、そんな夢みたいなことが・・・・」
二亜「夢を作るのが漫画家の仕事だよ。っしゃできた!」
ティッピー「早くないかの!?」
二亜「細かいことは気にしない!じゃあ、行ってらっしゃい万由里ちゃん!」
***
タカヒロ「行ったな・・・・」
二亜「そうだね・・・んじゃ、こっちも仕事終わらせますか。次回のタイトルはっと・・・【始まる木組みの町の生活】・・・これはまた平和そうなタイトルだね。お楽しみに」
ティッピー「それはそうと二亜よ」
二亜「ん?」
ティッピー「万由里の話・・・なんというタイトルにしたのじゃ?」
二亜「・・・・【万由里アラウンド】」
一か月ぶりの更新になってしまいました・・・。
モン〇ンの魔力恐るべし・・・。
次回はもっと早く更新できるようにがんばります。
予告が本文に入ったのは後書きのところで書いていたら誤って消してしまったからです・・・。
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