ガンダムビルドファイターズ アテナ   作:狐草つきみ

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EPISODE-11:黒くてあんまし見えないわね

 歓声の五月蝿さにも慣れたマサキは、「対軍恐怖症」を抑え込みつつ、真っ直ぐにバトルシステムを目指す。対戦相手は二人の少女。

 姉妹なのか、片方は――身長的に姉だろう――茶髪のセミロングをサイドポニーにした活発的な印象を与え、もう片方はストレートの茶髪をハーフアップに纏めて、前髪で若干顔が隠れたやや暗めの印象を与える。

 

 有無を言わさずバトルシステムが起動し、照明が落とされる。

 

 

《BATTLE START》

 

 

「七種真幸、ガンダムアテナ! 勝利を切り拓く!」

「鷹野月母、ガンダムアストレアType-F! 出るわよ!」

 

 白と赤の二機が降りた地は、凹凸した白い地面に、真っ暗闇な空――月面だった。

 

「月面なんて困るわよ、全く」

「ど、どうしてですか?」

「これだけ天然の遮蔽物(クレーター)があれば、寧ろ相手が有利なものよ。滑腔砲でも持ってくれば良かったわ」

 

 呆れ半分にツクモが溜め息を吐く。それに対して接近戦を仕掛けるしかできないアテナを駆るマサキはなんとも言い難かった。

 本当に辺りはクレーターと虚無の空間のみで、敵すら見えない。

 

「ツクモ先輩のセンサーに引っ掛からないなんて……隠れてるのか、それとも動いてないのか」

「どちらにせよ、私達も動かないとならないわ。新装備を用意してきたんだから、しっかり使ってやりなさいよ?」

「はい!」

 

 そう言うと同時に、マサキのアテナは地を蹴り宙を駆け、ツクモのアストレアは地面をホバー移動するかのように前進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかしまぁ……敵さんも面白い機体で来るもんだ。女の子が使うモンじゃねぇっての」

 

 その頃、観客席へと移ったユウキがそうボヤいた。バトルシステムの真上に表示された映像に、マサキとツクモの機体が、そしてもう二人の夜間迷彩(ナイト・カモ)の配色をした機体が走行していた。

 

「夜戦好きならまだ解るが――それよりも、相手の強襲戦法には気を付けた方が良いだろうな。夜間迷彩を施してるのが良い証拠だ」

 

 ユウキは、ビルダー(外野)故のファイター(内野)へ何も出来ない歯痒さを噛み締めながら、試合を見続けた。

 

「勝てよ、二人共。頑張れよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マサキは空から、ツクモは地上から、という役割分担で索敵を続けていたが、一向に機影すら捕捉できない有様だった。

 そんなことに地団駄を踏むつもりは無いが、今にでもそうしたい気分のツクモは、よく目を凝らしていた。

 

「な・ん・で! 見つからないのよ!」

「仕方ないですよ。もしかしたら、背景に同化して見えてないだけかもしれませんし……」

 マサキの一言に、ツクモは疑問符を浮かべる。

「……うん? 背景に……同化?」

 

 ツクモが腕を組んで考え始めたと同時に、前方斜め上から榴弾の雨が降り注いだ。

 

「榴弾!?」

「榴弾砲か滑腔砲ね、してやられたわ!」

 

 GNスナイパーライフルを手に、後ろへ猛スピードで後退しながらツクモは初撃を撃った。

 

「いっけぇぇぇ!」

 

 マズルフラッシュが盛大に閃き、銃口から鋭いビームが吐き出され、一瞬にして敵へと突っ込んだ。

 しかし途中で爆発し、敵の姿が見えるようになる。

 

「あれは……?」

「ジェガンとティエレンってとこかしら? 黒くてあんまし見えないわね」

 

 そう言ってる間にもジェガンがアテナに取り付き、いつの間にか宙へ投げ出される。

 

「そんなことでっ!」

 

 マサキは逆さまの状態でジェガンの頭部へシールドを向ける。そして左コンソールからシールド武装を選択した。

 

「しばらく固まってなさい!!」

 

 シールドから強力過ぎる閃光が迸り、ジェガンの動きが止まる。そこに付け込んで蹴りを食らわしては、横倒しのまま放置しておいた。

 

 

 そしてツクモは、予想地点より離れていたティエレンの弾幕に手を焼いていた。

 ティエレンにはそこまで強力な武装は積まれていない……と踏んだ自分が馬鹿だったと数分前の自分を何回か殴りたいが、そんなことを言ってられる程暇でもないのが現実だった。

 

「手数じゃ圧倒的にあっちが有利じゃない……なら、そこを押し切るまでよ!」

 

 ツクモは右コンソールから武器選択をする。すると、両肩から連結された、まるでデュナメスのフルシールドを連想させるものは、どんどんと分離していき、やがて複数の銃器と化した。

 

「行きなさい! ライフルビット!!」

 

 敵の攻撃に細心の注意を払いながら、ツクモは両手のコンソールでビットを手動で動かしていた。

 マサキに頼りっきりな自分が情けなくてしょうがないが、それでもツクモはマサキに頼るしかない。

 

(皮肉なものね……全国で優勝した私がこんなザマなんて。しかも年下の子に頼るしかない有様……でも私は続けたいと望んだ。だからここに立ってるんじゃない。マサキちゃんを助けるって決めたんじゃないの? それなのに逃げてばっかじゃ――)

 

「――先輩として! 見せ場が無いじゃないのッ!」

 

 ビットの猛攻で動きを足止めされていたティエレンは、慌てふためいたように動き回る。

 そんなティエレンに向かって、アストレアがGNピストルⅡサーベルモードを両手に携えて向かって来ていた。

 ピンク色の刃がティエレンの装甲に僅かに食い込む。しかし断つには至らない。

 

「チッ!」

 

 舌打ちしつつツクモはティエレンを蹴っ飛ばす。そしてビットの一斉射撃で四方八方からビームを浴びせた。

 爆煙が晴れ、視界が確保されるとそこには、両脚と滑腔砲を失ったティエレンが横たわっていた。

 

「なっ! どれだけ硬いのよコイツ!」

 

 それと同時にティエレンが熱を持ったかの如く赤熱し、ツクモは即座にライフルビットを集める。

 

 

 

 ――直後、盛大に爆散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ティエレンが爆散した時、マサキはアテナが出せる最大出力でツクモの下へ向かっていた。だが自分が交戦していた場所と、ティエレンの位置が余りにも離れていた為に距離がかなり開いていた。

 マサキは距離があり過ぎるのに焦りを感じつつ、アテナを走らせるも、遠目でも見えた爆煙にマサキは青褪める。そんな時、後ろからアラートが鳴り響く。

 

《CAUTION》

「まさか、もう!?」

 

 振り向きざまにシールドを構える。するとヒートナイフがシールドに当たり、アテナが後退る。

 目の前には、ヒートナイフを逆手に構えたジェガンが立っていた。もう回復したらしい。

 

「予想外過ぎるっ! ……でも!」

 

 「勝ちたい、勝たなきゃ」と言おうとするも、頭の中に先程ツクモが控え室にて言ったセリフが蘇り、途端に呑み込んだ。

 

『――無理しないで、楽しくやろう?』

「……っ!?」

 

 楽しく――果たして自分にできるか? そんなのはNOだ。自分は勝つことしかできない。勝つことでしか自分を証明できない。

 

「うあぁぁぁぁ!」

 

 葛藤に苛まれたマサキは、乱暴にGNソードⅢを振り回し、ジェガンを近付けなくさせる。

 

「嫌っ! 来ないで! 来ないでえぇぇぇ!」

 

 マサキは錯乱するかの如く振り回す。それを軽々と避けていくジェガンは、反撃だとでも言わんばかりにタックルをぶちかまし、アテナの胸を踏み付けてビームライフルをアテナの頭に向けた。

 

 

 

《Enhanced Remote Realizer system, STANDBY》

 

 

 

 ――その時である。マサキの耳に謎の機械音声が届いたのは。

 マサキがコンソールに触れていないにも関わらず、アテナはジェガンの脚を掴み、投げ飛ばす。

 

「え………なに?」

 

 目の前で何が起こったのか、それを理解できないマサキはただそう呟いた。

 アテナは動かず、ジェガンを待ち構える様に佇む。ジェガンはゆっくりと立ち上がり、サイドアーマーからビームサーベルを取り出してアテナに突撃してきた。

 

「あっ――」

 

 マサキは呆然としていたが為にコンソールに触れるのが僅かに遅れるが、アテナが再び動き出し、勝手にビームサーベルをシールドでいなした後、GNライフルでジェガンの顔、右肩、右脚を撃ち、よろけた所をGNソードⅢで下から斬り上げて両断した。

 

 

 

 

 

《BATTLE END》

 

 

 

 

 

 バトルが終了してはホログラムが解除され、照明に明かりが灯る。

 一足遅れて歓声が耳に入ってきたマサキは、即座にハッとする。気付けばバトルが終了していた。驚いたマサキはツクモの方を見ると、ツクモか抱きついてきた。

 

「やったわねマサキちゃん! 第四回戦も勝ったわよ!」

「え、あ……はい」

「……どうしたの? どこか具合でも悪い?」

「いえ、特には……」

 

 何が起こったのか、未だに理解が追い付かないマサキは、バトルシステム上に立つアテナをそっと見る。

 何故か悪寒が走り、マサキは身震いした後、ツクモの身体をギュッと抱き締めた。

 

 マサキ達の第四回戦はこうして終了し、後は決勝を残すのみとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会場の最後列に、その女性は座っていた。長く伸ばした黒髪はハーフアップに纏められ、翡翠色の瞳はどこか悲しい眼をしていた。顔立ちは一見すると丹精に見え、マサキと似たような顔付きである。

 

「……やっぱり、始めてたのね、マーちゃん」

 

 女性はそっと立ち上がり、会場を後にする。外に出ると、車の前に金髪碧眼の女性が立っていた。

 

「想像通りだった?」

 

 やや訛りのあるハスキーボイスで、その女性は訊ねた。

 

「ご想像にお任せするわ」

「そう……だったら、さっさと行きましょう? フライトに間に合わなくなるわ」

「そうだったわね」

 

 黒髪の女性はクスリと笑い、車に乗り込む。金髪の女性はやれやれと首を振って運転席に座った。

 

 

 

 

「待っててね、もう直ぐ帰ってくるから」

 

 

 

 

 車は徐々にスピードを上げて発進する。

 女性は愛おしそうにアリーナを見上げた後、前を向いた。

 

 決勝戦まで、後七日。

 




ようやく次回が決勝戦。
約一週間ぐらい間が空いてしまいましたが、ようやく投稿です。スミマセン。

では敵機体の説明です。



ジェガン 特務部隊仕様(SAC)
武装:ビームライフル、ヒートナイフ、ビームサーベル、シールド、ハンドグレネード
特殊装備:追加装甲
ジェガン(エコーズ隊仕様)に、スタークジェガンのバックパック・前腕追加装甲・脚部スラスターを追加して、両肩はガーベラ・テトラをベースに改造した肩部追加装甲にして、右肩にヒートナイフを装備したお手軽(?)改造機。
カラーリングは夜間迷彩と呼ばれる特殊なカラーリング。地上での夜間戦闘や強襲、宇宙空間での空間戦闘などがしやすくなるらしい。
スラスター類が優秀な為、突進力があり、タックルや敵への突貫又は突撃に秀でており、相方のティエレンと合わさって連携する事により真価を発揮する。


ティエレン 特務部隊仕様
武装:長滑腔砲、非太陽炉搭載機専用ビームライフル、背部八連装小型ミサイルポッド×4、脚部六連装ミサイルポッド×4
特殊装備:クローラーユニット
上記のジェガンとの連携を想定した機体。ティエレン地上型とセルゲイ専用ティエレン・タオツーをニコイチしてミサイルポッドを着けた改造機。ミサイルポッドは着脱可能。
ジェガンと同じカラーリングをしており、夜間迷彩により強襲戦術を得意とする。
ジェガンと比べ鈍足で、スラスター類がそこまで無い為に、射撃武装で補っている感じである。その為、孤立すると弱い。
ジェガンの援護を担当するので、比較的前に出ることはなく、この機体の姿を見たのはツクモが初めてなのだとか。



以上です。今回は機体をどうしようかと考えていたら、いつの間にか時間が過ぎてましたw
そして友達からジェガンとティエレンのアイデアを頂いて今に到る……様な感じです。
そんな事はさておき、また次回!ノシ
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