そろそろ夜中へ差し掛かった頃、ツクモ先輩と私はガンプラの修理作業を終えて、新しい武装を製作していた。
ツクモ先輩は機体をインパルスに変えた様だけど、バックパックはいつの間にかストライカーパックシステム対応プラグに挿し変わっていた。
「何でシルエット対応じゃないんですか?」
この機体の製作中にストライカー・シルエット・ウィザードの違いと説明をユー君から受けた私は、ふと思った疑問をぶつけてみた。
するとツクモ先輩は眠たそうな目を擦りつつ答えてくれた。
「うーんとね、簡単に言えばストライカーパックの方が豊富だから、かしらね。――ランチャーやソードは流石に自作しないと再現できないけど。その点、シルエットは三種しか無いし色分けとかは最悪だから、ストライカーの方が何かと便利なのよ」
「成る程……」
そう言う私は、ユー君のジャンクパーツの中から適当に追加装備になりそうなのを探していた。ベースがエクシア系統ならアヴァランチとかにしろよ、なんて言われるかもだけど、大半がオリジナルで構成されてるアテナには容易く取り付けられないのだ。ダッシュだったら取り付けられたけど。
だからユー君に手伝ってもらいつつオリジナルの追加装備を作っていたんだけど、中々出来上がらないうえ、ユー君は何処かに失踪してしまっていた。
「うえーん! 終わる気がしないよ~!」
遂に精神的にも限界が来て、私は作業を投げ出す。ユー君が居ない所為で、改造の心得のない私には無理だよ~!
そんな時、夜中にも関わらず部屋のドアがバンッと開け放たれた。そしてドタドタとユー君が駆け込んでくる。
「で……出来たぞ……アテナの追加装備」
「ホント!?」
私はその言葉に思わず目を丸くする。ユー君は満足げに頷いてアテナに取り付けた。
一部パーツを取り外して、そこに被せるように取り付けていく。いざ完成してみると「鎧」という表現が正しい機体となった。
「追加装甲自体は全てエイジスと同等の防御力を誇るが、同時に展開式のGNスラスターも着けてある。……だが一時的な強化に過ぎないから、過信はするなよ。後、機体各所にはGNフィールド発生装置が着いてるから、それも有効活用してくれ。武器はGNソードⅢの代わりに、俺の方で用意したGNインパルスランサーだ。柄とヴァンプレイトの間にはアンカーが仕込まれてる。これで敵を突いて吹き飛ばすも良し、壁や地面に射出して文字通りアンカーにするも良しだ。更にヴァンプレイトの芯には棒状のクリアパーツに二ミリの真鍮線を通した物を使ってる。強度もさながら、威力もバカには出来ねえぜ。他にはGNランスのビームライフルと同じものが装備されてるが出力は通常よりも一割増しに調整しておいた。後はそのGNバズーカ付きシールドだ。様々な仕様の弾頭を使えるから、重宝するだろ。……俺が作れたのはこんぐらいだ」
ずらりと語ったユー君は得意気に鼻を擦るも、私やツクモ先輩から見たら驚異的だった。ユー君が失踪してからまだ三時間しか経っていない。この三時間でそれだけ作れるのは、ある意味スゴいと思った。
「……ユー、アンタその装備……」
「ミナツさんに案を貰いながら作った!」
サムズアップして笑顔で答える。ツクモ先輩はそんなユー君に呆れつつも自分の作業に戻った。
私はクスリと笑って鎧を纏ったアテナを見る。
「えへへ、ユー君が私のために作ってくれたんだね」
「……まー、確かにそうだな。なんかムズ痒い気分だけど」
私は笑顔でそう言うと、ユー君はポリポリと頬を掻きながらそう答えた。後は塗装だけであり、それぐらいなら私もできる。後は乾かして朝まで待つだけだ。
■
翌朝、私は昨日よりも早めに起きれた。まだ眠気が取れてないのか、「ふわーっ」と欠伸をしつつ重たい瞼を擦る。
私はパジャマのままアテナの鎧の様子を確認した。ちゃんと乾いてくれていて、綺麗な白色に輝いていた。
「……ふみゅ、後は……くっつけるだけ……ふぁ~」
寝起きだと何だか頭が回らなくて、ボーッとする。私は無理矢理目を覚ます為に洗面所へ向かって顔を洗う。しかし意識は中々覚醒してくれないもので、冷たい水で顔を洗っても若干ボーッとしていた。
洗面所から戻ってきて着替えると、ようやくして意識がハッキリしてきた。
「あぁ、そうだ、組み立てないと」
私は机に向かって座り込み、乾いた鎧をアテナに取り付けた。胸部のGNドライヴや各所のGNコンデンサー等は露出しているものの、全体が白一色で統一されたこの機体は、見た目通りの清潔さを保っていた。私はそのアテナをレッグポーチに入れて、朝食を食べに向かった。
朝食を食べた後に一階のロビーでぶらりと
一汗拭ったところで皆がロビーへ降りてくる。そこで私も合流しては、皆でバスへ乗り込む。……だけど何故かユー君だけ慎重な面持ちでいた。それもそうか、実妹の姉妹がこの大会に出てて、しかも私達の次の対戦相手なのだから。
「ユー君、やっぱりホテルで待ってた方が……」
「いや、大丈夫だ。心配してくれるのは嬉しいが、お前達の試合だ。最後まで観ておきたいんだよ。」
首を振ってユー君はそう言った。
「……うん、そうだよね」
私はやるせない顔で前を向いた。無慈悲にもバスの戸は閉まり、エンジンが温まって会場へ向けて走り出す。
ツクモ先輩も心なしか、その手を強く握り締めていたのが、視界の端に見えていた。
会場へ辿り着くと、私とツクモ先輩はその足を進めて、早速バトルシステムの前に躍り出た。
「お、来たね! 次のお相手さん!」
「あ、ツクモ姉ぇだ! おーい!」
二人の少女が笑顔で手を振ってくる。片方は鈴とリボンの付いた黒い帽子に黒装束を纏ったセミショートの銀髪に水色の瞳を持った少女で、もう片方は鈴とリボンの付いた白い帽子に白装束を纏った茶髪のロングヘアーに水色の瞳を持った少女だ。どうやらどちらも、ツクモ先輩のことを知ってる様子だった。
「正直覚悟はしてたけど、お久し振りね貴女達。元気にしてた? おばさん元気?」
「えへへ、ボク達はちゃんと元気だよー!」
「お母さんも元気だよ!」
ツクモ先輩の質問に二人とも仲良く答える。見た通り元気で微笑ましいのだけれど、この二人が昨日のあの試合をした子だとは思えない。
私はそんな複雑な気持ちになりつつも、隣のツクモ先輩を見上げた。
「そっか……でも、貴女達だからって容赦はしないわよ!」
「ボク達だって負けないから!」
「ユー兄ぃ返してもらうんだから!」
《Press set your GP-Base》
あの台詞を最後にバトルシステムが起動する。
《Beginning[Plavsky Particle]dispersal.field7,forest》
プラフスキー粒子が散布され、ステージが設定される。場所はジャングル……熱帯雨林かな?
《Press set your GUNPLA》
それぞれがガンプラを台座に置くと、ホログラムの画面が表示される。準備完了だ。
《BATTLE START》
「鷹野月母、ストライクインパルス! 出るわよ!」
「ガンダムアテナ、七種 真幸! 勝利を切り拓く!」
「芳堂
「芳堂
出撃直後に地面へと降り立つ。しかし視界には丁度ジャングルの木々が生い茂っていた。
降り立って直ぐだけど、早速ツクモ先輩が溜め息を吐いた。
「全く以て嫌な気分ね。今更だけど」
「……敢えて聞きますけど、あの二人はユー君の妹さんなんですか?」
私の質問にツクモ先輩は、うんと答えた。
「あの二人は昔から兄のユーを慕っててね。――でもユー、ある事件を境に地元を離れたのよ。相当トラウマだったようだから。それ以来あの子達とは会ってないわね」
「これ、絶対ユー君が知ったら怒りますよね……」
「アハハ、そうね~。でも言わなきゃ大丈夫な話よ」
そう言いながらツクモ先輩は、バックパックに繋がれた三二〇ミリ超高インパルス砲「アグニ」を構えていた。私はそれを護衛する様に、射線から僅かにズレた位置でGNインパルスランサーを地面に突き立てて仁王立ちしていた。
「おっ、早速真ん中から来たわね」
「それじゃあツクモ先輩、初撃お願いします!」
「オーケー、一発ドカンと決めてやりましょう!」
前方に見える黒い翼の生えた四足歩行の犬(?)と、山吹色と黒と白の三色で塗装されたヘビーアームズに、ツクモ先輩は容赦なくそれを放った。
一直線に放たれジャングルの木々を貫いて行くが、当たった感触がない。
「避けられたわ! ……右!」
私は言われた通りに右方向を見ると、真上から先程の四足歩行のガンダムが襲いかかってきた。
すると私の目の前で止まってはそのバックパックから歪な翼を広げて、その翼でアテナを挟んだ。しかし何も起こらず、それ以上挟み込むこともしない。私は嫌な予感がしたと思うと、一瞬体に痺れるような電撃が走った感覚がした。
「な、何?!」
私は訳が解らないまま慌てていると、粒子残量が勢いよく減っていくのが見えた。
「う、そ……」
■
観客席で見ていたユウキは思わず席を立ってしまう。アテナに対して起こる現象に気付いたが故である。
「え、なに? マサキちゃん急に動かなくなっちゃったよ!?」
「何をしておるマサキ!」
叫んで言ったところで届く筈はないが、それでも二人はマサキに声援を送る。その中でユウキは、ポツリと呟いた。
「しまった、マガノイクタチだ」
「ま、マガノイクタチ?」
ヤヤが初めて聞いたかのように疑問系で言うと、ミナツが代わりに答えてくれた。
「マガノイクタチって言うのは、アストレイゴールドフレーム天や天ミナが搭載してるものよ。言うなればエネルギーを吸収する空力制御翼かしら」
「そんなの使われたら、真っ先に戦闘不能になるじゃない!」
叫ぶアイカにユウキが宥めるように続けた。
「その代わり、エネルギー吸収をしてる時には、今みたいに機体を敵機に近付けて固定しないとならない。だからその間は無防備なんだが……」
「今回は相機もいる。しかもよりによってヘビーアームズね」
ミナツの台詞に、ユウキは苦虫を噛み締める様に苦い顔をしていた。このままでは、アイカが言った通りにアテナが戦闘不能になってしまう。
「何とか抜け出してくれよ……!」
■
エネルギーを奪われ続けていたマサキは、武装を確認しつつ、あることに気付く。そのまま武器選択画面からGNインパルスランサーを選ぶ。そして右手に持ったGNインパルスランサーをブリッツの胴に当ててから勢いよくトリガーを引いた。
突き飛ばされた衝撃でエネルギー吸収が止まってしまったブリッツは木々を薙ぎ倒しながら後ろへ吹き飛ばされる。
「うぅっ! ……乱暴なお姉さんには悪戯なんだから!」
「生憎そんな悪戯に付き合ってられないの!」
アンカーを巻き取って回収したGNインパルスランサーのヴァンプレイトを戻し、そのままシールドを構えてアテナはブリッツに槍を叩き付けた。
しかしビームクローに阻まれ、そのまま足蹴にされた。アテナを引き剥がした後にそのままアクロバティックに起き上がったブリッツは軽快なステップでそのままMA形態へと変形した。
「くっ! 飛べっ!!」
マサキはコンソールを思いっきり前へ押し込み、アテナをそのまま上空へ押しやった。そしてブリッツの突進を寸で躱してみせ、逆さまの状態でシールドに付いたバズーカを放つ。
「当たんないんだから!」
突進して急ストップを掛けたリリカはビームライフルを旋回させてから、バズーカの弾頭を撃ち落とす。
爆煙が広がり、視界を防ぐことができたリリカはマサキを差し置いてホノカの援護へ向かった。
その頃、ツクモはと言うと……
「ったく、兄と違ってウザったいまでにしぶといわね! 誰に似たんだか!」
「えへへ、ユー兄ぃに追い付けるよう、ボク頑張ったんだよ!」
「だったら、そのユーの師匠である私に勝ってみせなさい!」
ヒートアップしてきたツクモは、コンソールを操作する。するとストライカーの右側垂直尾翼が旋回して、そのグリップらしき所をマニュピレータで掴んで引き抜いた。そのままシールドを構えてファイヤーアームズに斬りかかる。
「近付かれなきゃ、ボクに攻撃なんて当たらないよ」
軽いバックステップで躱され、逆にファイヤーアームズの胸部装甲が展開し、二門のガトリング砲が姿を現した。
「今度はボクの番だね!」
無邪気な笑顔を浮かべながらホノカは容赦なくガトリング砲で掃射した。マシンキャノン以上の威力を持つガトリング砲を、ツクモはシールドで防ぎながらも、かなり分が悪いと思っていた。
「マサキちゃんの様子も分かんないし……どうしたものかしら」
そう呟いた時、
「ホノカー!」
「リリカ!」
後ろから四足歩行のMA形態で駆けてくるブリッツがいた。それに冷や汗を掻いたツクモだが、それも直ぐに収まる。
「待てぇ~!」
更にその後ろから馬鹿にならないスピードでリリカのブリッツに体当たりしたアテナがいた。その勢いでMA形態のまま前転してMS形態になったリリカは、頬をぷくっと膨らませる。
「邪魔しないでよ! ……ホノカ! このガンダム蜂の巣にして!」
「えぇ~、ボクはツクモ姉ぇと遊んでたんだけど」
「あのガンダム頑丈過ぎるの!」
「しょうがないなぁ~」
ホノカは面倒臭そうにするも、斬りかかるツクモを避けてリリカと交代する。
「ツクモ姉ぇ、今度は私と遊んで!」
「良い子にしてれば、うんと遊んであげるわよ!」
「今が良いの!」
「それなら、悪い子にはお仕置きね!」
手に持ったビームサーベル兼ビームブーメランをラックに納め、再びアグニを構える。
飛び回るブリッツはそのままインパルスに突進してくるも、ツクモはニヤリと口許を緩めてアグニをそのブリッツの空いた胴に突き立てては容赦なく放った。
ブリッツの胴には穴がぽっかりと開き、そのまま力無く地面に倒れ伏した。
「お次はホノカちゃんね」
そのままツクモは構わずマサキの援護に向かったのだった。