今回長めですが、おかしなテンションで無理矢理書き上げてギリギリ間に合った番外編、どうぞお付き合いください。
EPISODE-CHRISTMAS!!:ビルダーさんと十人の美少女たち
――時は十二月二十五日。俗に言う「クリスマス」ってヤツだ。
街中じゃあ、カップル達がはしゃぎ回っている。流石のクリスマスだと、恋愛沙汰の多い聖蘭学園の校内も静かだ。昨日まであった、
そして俺ら模型部は今日も今日とて、来年の全国へ向けての練習も兼ねて学校へやって来ていた。……筈だったんだが。
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁっ!?」
部室へやって来て早々、俺は戸の目の前で大声で叫んでいた。今日は教職員もお休みの為、この学校に居るのは俺ら模型部だけなのが幸いだったな。そうじゃなけりゃあ今頃、職員室行き――じゃなくて!
それよりもこの光景は何だ。俺はそう問いたい。
「Oh! ユウキも来マシタ! これで
俺に真っ先に気付いたらしいのは、まるでサンタの女性版みたいな赤い衣装を身に纏ったシャーロット先輩だった。そしてその腕には重そうな箱が抱えられており、腕もぷるぷると震えていたのが見てとれた。
「持ちましょうか?」
「さ、Thank you。ユウキは力持ちデスネー」
「まぁ、鍛えてますから」
そう言ってシャーロット先輩から箱を受け取り、箱を指定された場所を置く。それと同時に勢いよく戸が開けられては、そこに息を切らした巫女とアイドル2人が居た。
「何があったの!? ……ってユーじゃない」
「ヘアッ!? ユウキさん何故こんなに早く!?」
「えっ、ユー!? あんましこっち見んな!」
「あれ、物凄く酷い言われようだな」
恐らくさっきの俺の叫び声ですっ飛んで来たんだろうが、反応がえらく酷いな。と言うか皆似たような衣装とは。そしてこの飾り付け。
俺はふと到った答えを言ってみる。
「俺に内緒でクリスマス会やろうとしたな?」
『ギクッ!』
遅れてやって来たマイペースなミナツ先輩除く三人は素直に反応した。まあ、大方ツクモ姉ぇが考案したんだろうが、俺に話もなしか。
取り敢えず荷物を置いてから「しばらく部室へ入ってくるな!」と言うアイの無茶苦茶な命令を受けて、俺は校舎をぶらりと歩かされることになった。アイの言う“しばらく”っていつまでだ。
しゃーない、一時間を目処に歩き回りますかねぇ。
■
はぁ、危なかった。
私、星河藍花は、胸を撫で下ろしながらドアに寄り添っていた。まさか予定時刻よりも早くユーが辿り着くとは思わなかった。これじゃヤヤちゃんの預言通りじゃない。
とにかく追い出すことには成功したし、こっちはこっちで準備を終わらせなきゃ。まずは眠たそうなミナツを叩き起こしますか。
「ほらミナツ、コーヒーあげるから起きなさいよ」
「アイカちゃん、少しだけ、少しだけだからぁ」
「だーかーら、眠らせないって言ってるでしょう?」
こりゃ何を言っても無駄かしら。ツクモちゃんを見てみれば、やれやれと首を横に振っていた。私もどうしたものかとソファーへ横倒しにした途端、ミナツはもう寝ていた。……戦力外通告かしらね。
「そう言えばカグヤちゃん、ヤヤちゃんは?」
「いえ、まだ出てくるのを拒んでいるのではないでしょうか?」
「チッ」
「舌打ち!?」
まさかまだあの衣装を着るのを拒んでると言うの? マサキちゃんでも
私が考えを巡らしていると、マサキちゃんからLI○Eが。やったわ、何とかヤヤちゃんを引き摺り出すことに成功したのね。これなら一時間で何とかなるわ。
「よーしっ! 後一時間で完成させるわよ!」
「そうね、ユーが戻ってくる前に片付けちゃいましょ」
「カグヤ、微力ながら頑張ります!」
「Rogerデース!」
私達(ミナツ除く)は腕を振り上げて気力を出す。人間、気力と体力があれば何とかなるってどこぞの蛇だって言ってたし。
その後はマサキちゃんとヤヤちゃんもやって来て、何とか仕上げに漕ぎ着けた。更にホウドウ親子もやって来て、きっかり一時間後には飾り付けも何もかも準備できたわ。
「後は、ユーを待つだけね」
■
――んあ、もう一時間経ってらぁ。
体感的にそう
「よっこらせっと」
十代男子がこんなこと言うもんじゃないけど、勢いつけて立ち上がった俺は、フェンス越しに街の様子を見やる。黄昏にも拘らず、空は雲で覆い尽くされているのもあって、もう辺り一面真っ暗だ。けれど、建物や街灯、イルミネーションが街を照らし、それはもう綺麗な光景だった。雲で星は見えないが、灯りが星の代わりに輝いている。こんな光景、見たことねぇや。
「さて、絶景も見れたことだし、部室へ戻りますか」
踵を返した俺は、屋上のドアを開いてその絶景を後にした。満足そうに微笑みながら。
無駄に冷え込む階段を下り、一階までやって来た俺は暗い廊下をスマホの懐中電灯を便りに歩くと、一つだけ戸窓から光が漏れている明るい部屋を見付けた。どうやらもう模型部に戻ってこれたみたいだ。
懐中電灯を消した俺は、真っ直ぐ部室の戸まで近寄ってみるも、中からかしましい喧騒は聴こえてこない。
(おかしい、何で静かなんだ? シャーロット先輩のデスデスすら聴こえない)
いや、デスデスは鎌を携えた金髪の子か。声も違うし。……どちらかと言えばカグヤが言いそうな気も……いや、ないな。
余計な考えに終止符を打ち、俺は戸の前に立ってガラガラと開けた。その瞬間――
『メリークリスマス&ハッピーバースデー!!』』
数回何かが弾ける音がして、俺の頭にはクラッカーのリボンが頭にかかった。そして俺は何のことかと頭が混乱した。
メリークリスマスは分かる。ハッピーバースデーって? 誰の?
数分
「ユー君? 起きてる?」
「起きてるよっ!」
ツッコミで返した俺の反応で安心したのか、皆安堵していた。しかし本気で分からんぞ、何でハッピーバースデーなんだ。メダルで変身しろってか?
頭のリボンを取りつつ、俺は近くに居たツクモ姉ぇに尋ねてみた。
「誰の誕生日なんだ?」
「……は?」
『……え?』
「……え?」
尋ねたら疑問符を浮かべられ、釣られるように疑問符を浮かべた皆に、今度は俺が
するとツクモ姉ぇは信じられないと言いたげな顔で、逆に尋ねてきた。
「アンタ本気で言ってるの?」
「おう」
「アンタの誕生日よ」
「そう言えば……あれ?」
納得しかけた手前、俺は冷や汗が出る。本気で自分の誕生日を忘れてるとはな。
しかしまあこれで晴れて十七歳か。意外と早いもんだぜ。
「そう言えば、母さんもだけど、皆揃ってその衣装なんだな」
「あら、よく気付いたじゃない。ヤヤちゃんとこのメイドさん達が作ってくれたのよ?」
ツクモ姉ぇが自慢気に答えると、ヤヤはそっぽを向いていた。顔も真っ赤だし。
それでまあ、皆赤一色って訳か。中央に金色のベル付きリボンが付いた肩出しワンピースに、サンタ帽とロングブーツ。素人目で見ても素材は一級品ってところか。余計な所で金使うなよ。
全員そんな格好だったら、普通の男子生徒だったらイチコロだな。“何が”とは言わないが。まあ、折角だしこれぐらい言っておくか。
「似合ってんじゃん、皆」
笑顔も付けて言ってみると、俺の口からそんな言葉が出てくるとは予想外だったのか、思いの外硬直していた。……まあ、俺から言うとそんな反応が普通か。
だが我に返った途端、ホノカとリリカ以外が全員真っ赤になっていた。
「ば、ばばばばバッカじゃないのっ!? バッカじゃないの!?」
アイは激しく動揺しまくってバカと連呼し、
「ゆ、ユーがぶっ壊れたっ! きゅ、救急車っ!」
ツクモ姉ぇは慌てて救急搬送させようとし、
「ユウキさん……カグヤ、もう死んでも――」
カグヤは言い切る前に幸せそうな顔でぶっ倒れ、
「ユウキが……私を褒めてくれた! 似合ってるって!」
ヤヤは素が出て素直に喜んでは舞い上がり、
「エヘッ、まるでパパが言ってるみたい♪」
母さんは親父を思い出しながら頬に手を当てて恍惚そうな表情を浮かべ、
「あら、ユー君ったらそんなこと言えたのね。私、嬉しいわ」
ミナツさんは平常運転ながらも顔はしっかりデレて、
「あ、ああ、あああ……」
挙げ句にマサキはショートしてる。
「何だこりゃ」
俺が何をやったと言うんだ。死屍累々ではないが、これじゃあまるで地獄絵図じゃねぇか。
折角のクリスマス会(と一応俺の誕生日会)が地獄絵図って何だ、何の嫌がらせだ。
しばらく彼女らを放っておくとして、俺は暇そうな妹二人を構うことにした。
「二人もすっごく似合ってるぞ」
「えへへ、ユー兄ぃに言われると嬉しいや」
「リリカ、ユー兄ぃに見せるの楽しみだったの!」
満面の笑みを見せる妹達を見て、構わず頭を撫で回してやる。誕生日プレゼントが何にせよ、もうこれが誕生日プレゼントで良い気がするな。妹達のサンタ衣装が見れただけ幸せだ。
すると案外早く全員が復活して、早速クリスマス会が始まった。司会は一度番組でやらせてもらったことのあるアイだった。
「さて、まず最初は“プレゼント交換”ッ! ユー以外が持ち寄ったプレゼントをじゃん拳で勝った順に交換相手を指名して交換していくわ。マサキちゃんは一番最後ね♪」
「何でっ!?」
「一番最初に勝っちゃうじゃない」
「うぐぐ……」
まずはプレゼント交換か、定番だな。だがマサキは一番最後のようだ。反論しても手も足も出ない。
「最初はグー!」
『じゃん拳!』
アイ、ツクモ姉ぇ、シャーロット先輩、カグヤ、ホノカがグー。ミナツ先輩、ヤヤ、母さん、リリカがパー。凄いな、見事な分かれ方だ。
勝った四人が更に順番を決めて、指名し交換。それが数回続き、全員が交換し終えた後にマサキが交換して、プレゼント交換が終わった。
何が出てくるかは開けてからのお楽しみだが、まあそれは後にしようとなった。
「続いては“王様ゲーム”ッ! クジを引いて当たりが出た人が、一から十までの番号の人へ命令する、至極ポピュラーなルールね」
「因みに何回やるんだ?」
「全部で五回やるわ!」
敢えて俺が聞くと、アイはドヤ顔で堂々と答えた。ドヤ顔の使い方間違ってるだろう、コイツ。
(まあ一番始めに当たりを引きそうなヤツがここには居るわけなんだが……よっと)
なんとなくで引いてみたら、細いクジの先が赤く塗られている。まず最初にチート少女が当たるかと思いきやこれは、
「……あー」
当たりじゃね?
「ユーが一番最初……」
「マジか……」
ツクモ姉ぇとアイが微妙な顔で俺を見ていた。別に変な命令はしねぇよ。
「二番が六番と……そうだなぁ、抱き合うってのは?」
俺がそれを提案すると、二番のクジを当てたのはアイで、六番のクジはヤヤが当てていた。正直アイは嫌がるかなぁと思いきや、
「いよっしゃぁっ!」
「お主、何故そこで喜んだのじゃっ!?」
戸惑うヤヤに対してアイは堂々と答えた。
「再びヤヤちゃんをもふれる
「なっ、儂の反応速度を超えたじゃと!」
本気になったアイドルがヤヤを羽交い締めにしてまで抱き付いてるのを他所に、俺達は新しくクジを引く。結果は――
「あら、私が女王様ね?」
マイペース・オブ・マイペースなミナツ先輩だった。……この選定には流石の皆(約二名を除く)も悪寒が走らざるを得なかった。
そして案の定、たっぷり時間を置いて考えたミナツ先輩は、口許を緩め閉じていた目を細めるように開けた。
「三番の子、私に膝枕しなさ~い!」
そしてしばしの沈黙の後、膝枕しなければならない人物が手を挙げ……って俺じゃねぇかァッ!?
挙げて決まったのは良いが、周りの同情の視線が地味に痛い。俺の心が妙に痛むんだよ。
にしても「いつまで」と言うのを指定していないのが恐ろしい。彼女の気が済むまでやらされるぞこれは……。
結果、俺はミナツ先輩の隣に移動し、ミナツ先輩が頭を乗っけて満足そうに呟く。
「やっぱりちょっと固いぐらいが落ち着くわねぇ」
この人、絶対分かってて当てただろう。何で分かったのかは知らんが。砲術士のカンか?
例え俺が犠牲になろうとも、やっぱり5回終わるまで続く。そして次に選ばれたのは――
「やった、ボクだぁ!」
「良かったわね、ホノカ」
当たってはしゃぐホノカ。母さんに撫でられて嬉しそうに微笑んでいる。見ろよ親父、兄貴、妹ってこんなに良いもんなんだぜ。
そんなホノカが頼んだことは、ある意味意外なものだった。
「焼き
「や、焼き玉蜀黍?」
正直、母さんどころか皆(約三名除く)も困り顔である。どうしても叶えてやりたい願いだが、生憎玉蜀黍も焼く為の物もない。
母さんが泣き顔で俺に助けを求めてくるもので、俺は顔を逸らしたいのを我慢しつつ、咳払いしてホノカに言った。
「ホノカ、ここに玉蜀黍も七輪もない。明日、兄ちゃんが焼いてやるから、我慢してくれ」
何だろう、来年の全国大会とか進路云々とかも考えなきゃなんねぇのに何やってんだ俺は。……ええい、ままよ。それくらいどうにでもなる。
ホノカも明日に持ち越しになるのは不満そうだったが、母さん曰く「俺を独り占めできる」と考えたらしく、それで満足していた。
そうして再びクジを引いてみると、次に選ばれたのはカグヤのようだ。
「か、カグヤが当たってしまいました」
か細い声でそう答えたカグヤは、捨てられた子犬みたいな表情をする。それに対して俺らはなんと反応すれば良いのか分からなくなっていた。
何でも命令していい筈なのに、ぶつぶつと呟くカグヤは何を命令しようか迷っているようだった。
「じゃあ、私が九番の人の腕に抱き付くと言うのは……」
そして俺の隣には、更にカグヤが増えました。……え、何? 新手の虐め? 俺の使える部位が右手だけになっちまったよ。ミカでもまだ右足も使えるぞ。やっぱりすげぇよミカは。
そして最後となったクジ引きによる王選。最後に選ばれたのは――
「あ、私だ」
さっぱりとした物言いの割りに、嬉しそうなマサキだった。最後の最後に引いてくるとは。まあ思考回路がゲーム以外じゃ平凡なマサキは、まだマシなお願いになるだろう。
そう踏んでいると、輝かしい笑顔でとんでもないことを言い放つのだった。
「えーっと、それじゃあ明日、フランス洋菓子店「フルール・ド・フェール」の流星タルトと、ベーカリー「アーブラウ」のふわふわブレーツェルに、甘味処「歳星」の百里餡蜜を、八番の人に買ってきてもらおうかなぁ」
「うげっ、私っ!?」
マサキの命令に嫌そうな顔を示したのは、ツクモ姉ぇだった。どうやら八番はツクモ姉ぇだったらしい。
しかし、どこも人気店だけあって、朝から並ばなきゃ即座に売り切れになるぞ。特に一番最初の流星タルト。
顔を引き
結果5回共引いた訳で、司会である筈のアイは十分ヤヤを堪能したのか満足そうにしていたが、代わりにヤヤはすっごい落ち込みようだった。
「もう、ユウキのお嫁に行けぬ……」
「オイ、勝手に俺を婿に仕立てあげるな」
「そうです! ユウキさんはカグヤのお婿さんなんです!」
「カグヤはややこしいこと言うな!」
話が
「お前が貰い手を気にする必要はないだろ。別に今考えることでもないしな。そろそろ皆で用意した料理食べんだから、それで元気出せよ」
「バカっ、私はユウキじゃないんだからっ」
涙目ながら素で睨まれた俺は苦笑いしつつ、ヤヤの手を引っ張りあげて立たせる。
「さ、料理食べようぜ?」
「フンッ、今日ぐらい、儂にあーんさせろ」
「はぁ?」
そう言って、一切れのケーキが乗っかった皿を持ったヤヤが、一口ぐらいのサイズに切って俺の口まで持ってきた。
ヤヤも慣れない行為が恥ずかしいのか、僅かに頬が赤らんでいる。
「ほれ、早く食べんか」
「えっ、あ、あぁ」
促されてケーキを食べたが、予想以上に恥ずかしい。何か耳元まで熱くなってきたぞ。
それをヤヤも見てとれたのか、俺の口からフォークを引っこ抜いて、目線を逸らしながら尋ねてきた。
「ど、どうじゃ?」
「うん、美味い」
やっぱり母さんが作ったやつは美味い。
「そ、そうか」
素っ気なくも嬉しそうに口許を緩めたヤヤは、一切れ分食べ終えさせるまであーんを繰り返して、カグヤとアイから嫉妬の視線を受けていたことは、なかったことにしておこう。
こうして数時間が経過すると、既に外は暗く、時間も午後八時を過ぎた頃となっていた。
「そだ、皆で外行ってみない? 上着着てさ!」
唐突にそんなことを言い出したツクモ姉ぇに釣られ、皆もそれを快諾しては各々学校指定のコート(母さんはトレンチコート、妹達は大きめのフードケープ)を羽織って、校舎の外へと出てみた。
■
校門から正面玄関へ続く道にはすっかり雪が積もっており、道の脇に植えられた桜も、枝だけでその上に雪が乗っかっている。
それに空からは白い雪が降り、俺らが吐く息も白い。すると母さんが懐かしそうに、空を見上げながら言った。
「実家を思い出すわね」
確かにロシアも雪が降る。流石に日本とは大違いだが、降ることに変わりはない。そう思うと、思い出すのも分かる気がする。
そんな時、ツクモ姉ぇが皆の前に躍り出て、少し大きめに声を出した。
「ハイハイ、皆さんご注目!」
大きく手を振りながら視線を集めたツクモ姉ぇは、何故外へ出たかの理由を話した。
「この聖蘭学園には、願いを叶える大樹があるの。今から全員で願いに行こうと思いまーす!」
「クリスマスの日にか?」
どうせなら元旦だろう。
「生憎、元旦には学校は開けられないのよ」
「だから今日、ですか」
なんとなく理解したマサキが頷き、ツクモ姉ぇは気を取り直してその樹へ向かおうと言い張り、俺らも「折角だし」と言う単純な考えでその大樹とやらへ向かうことにした。
大樹の下へは然程時間が掛からなかった。庭園の中央にあるだけあって、大きくて目印になりやすく、遠目からでも見えるから一直線に進めるんだ。
「あれが、ツクモちゃんの言っていた大樹?」
「ええ、噂じゃあ根っこのところに巨大な石があって、それを養分に成長してるらしいわ」
「なぁ知ってるか、それを世間じゃ岩って言うんだぜ」
「お黙り」
「ゴフッ!」
ちょっとした小粋なジョークですよ姉貴。……とまぁ冗談は置いといて、確かに不思議な感じはするな。確かに“願いを叶える”とかオカルティックな噂が広がる訳だ。
「因みに効果はあるのか?」
「この大樹の下で告白した数多の先輩達は、皆卒業後に即結婚したそうよ」
「ヤンキーかよ」
「お黙り」
「ガハァッ!」
夢がないとか拳で言わなくても良いでしょうに。せめて口で言ってくれよ。ツクモ姉ぇ、拳のキャッチボールじゃなくて、言葉のキャッチボールしようぜ。
もう二撃目を食らってHPゲージがレッドゾーン入ってる中、ツクモ姉ぇはそれすらお構いなしに両手を重ねた。それに続いて皆も同じように手を重ね、俺も仕方なしに両手を重ねた。
(……まあ取り敢えず、皆で幸せになれますように)
別にガンプラバトルだけが全てじゃない。ここに居る全員が、それぞれの思うように生きて、それが幸せであれば、俺はそれが一番だと思う。だから俺はそれを願うし、叶うのであればそれが望ましい。
他の皆は何を願ったんだ? いや、聞くだけ無粋か。
その時一瞬だけ、樹が光ったような気がした。
誰もそれに気付いていないようで、願い終わった全員はそれぞれ何を願ったのかヒントを出して当て合っている様子だ。それこそ面白味がないってのに、何やってんだか。
「願いごとを教えあったら願いは叶わねぇぞ。願いは自分の内に秘めておくもんだ」
――そうだ。願いってのはそんなものだ。叶うか叶わないか分からないことを口にしても、それは絶対叶わない。だったら叶わなくても、願いは内に秘めておいた方が良い。口に出せば、信じられなくなるからな。
「ユーの癖に、カッコいいこと言っちゃって」
「でもそれがユー君らしいわよね?」
「ミナツの言う通りよツクモちゃん。今のユー、とってもカッコ良かったんだから。ホントよ?」
「ユウキはexcellentでexciteデース。もっともっと
「えぇ、カグヤもそう思います。まあユウキさんはいつでもカッコいいんですけれど」
「それは褒めすぎじゃぞカグヤ。ユウキ、せめて惚れさせるのは一人に
「そうよ、ユー君。そうするとパパみたくなっちゃうわ」
「ユー兄ぃは最高のお兄ちゃんだもん。ね、リリカ」
「ユー兄ぃは最良のお兄ちゃんだもん。ね、ホノカ」
「……えへへ、ユー君は人気者だね。でももう少し、デリカシーがあって欲しいかな」
全員からそんなことを言われて俺は、苦笑いしかできなくなる。
「あぁ、そうだな」
俺の願いって実はもう、叶ってんのかな。
ヤヤはやっぱりアイカに襲われる(意味深
どうもメリークリスマス、カミツです←遅い
ガンプラバトル要素の無い回でしたが、ヤヤのサンタコスが出せたし、ヤヤをデレさせたし、私は満足です(要するにただの自己満足)。
実はこのクリスマスパーリィともう一つ、マサキとのデート回を想定していたんですが、やっぱりヤヤはデレさせたかったのでこっちを書きました。
さあ、次回はバレンタインだ←続き書けよ