ガンダムビルドファイターズ アテナ   作:狐草つきみ

42 / 87
EPISODE-33:これが少女のするガンプラバトルかよ……

 ウイングとバルバトスの火花を散らしあう戦いは、まさに接戦と言わんばかりに続いていた。

 

 

 

 逆に言えば、全く戦況が傾かないというのだ。

 

 

 

 そんな状態が長引けば、戦いはファイターの精神力に委ねられる。

 勿論二人とも人並み以上の精神力を持っている。でなければ剣など握りはしないだろう。……だが生憎、握っているのは球体状のコンソール。剣でも、刀でもない、実体のないコンソールだ。

 それでもコンソールを必死に動かす二人は、まさしく全力で立ち向かっていると言えるだろう。

 

「“桜華・白茨(おうか・はくし)”!」

「せいッ!」

 

 カグヤの台詞と共に、いくつもの真空波が「茨」の如くヤヤのウイングを襲う。しかしそれを寸分違わず切って躱し、更には攻勢にまで出るという大胆な行動は、ある意味見事な芸当と言えるだろう。

 

「近付いて来ましたね!“近衛・六花(このえ・りっか)”!」

「ただ向かってきたと思うでないぞ!」

 

 零に近い距離で放たれた六連もの小刻みな斬り込みを、ヤヤは手にしたビームサーベルで強引に堪えきる。

 そしていつの間にか握られていた、バスターライフルの銃口をバルバトスの頭部に殴り付け、自分への被害などお構いなしにトリガーを引いた。

 殴り付けられたバスターライフルから黄色い粒子の束が放たれ、バルバトスの頭部が吹き飛び爆発する。だがカグヤも頭部のことなど気にもせずに、太刀の柄を胴体に打ち込んで、逆手に持たれた太刀をウイングに刺す――

 

「くっ、まだぁ!」

「猪口才な!」

 

 ――筈だったが、ヤヤはコンソールを後ろへ引き込み、機体全体のバーニアを総動員させて後退した。その為、バルバトスの一撃も寸で躱される。

 互いに間を置いて、今度は読み合いへと移った。

 

 

 

 

 

 その二人の戦いに、見ていたユウキも冷や汗が出るんじゃないかと目を見張っていた。

 

「ったく、これが女子高生のする戦いかよ……」

 

 あり得ねぇ、と小さくぼやきつつ、ユウキは別のバトルシステムの方を見やる。そこではホノカがマサキにリベンジマッチを挑んでおり、バトルはまさに緊迫した雰囲気になっていた。

 砂漠を舞台に、縦横無尽に駆け回る白いガンダムと、全身に重火器を満載させた改造グシオンが地を滑っていた。

 鈍重な割りに素早く高火力なこのグシオンには、流石のマサキでも舌を巻いていることだろう……。そう思っていたユウキだが、

 

「やっぱり弾幕相手はキツいかな。……でも目眩まししてしまえば……!」

「まさか!」

 

 声を上げたユウキの予想通り、アストレアは穹高く舞い、アクロバティックに回転しながら、地面目掛けてキックの体勢をとった。

 それを見たホノカも、口をポカンと開けて唖然とするしかなかった。

 

「セイハァァァッ!」

「………はっ! た、たかだかキックだけでボクのグシオンは貫けないよ!」

 

 降下してきたところで気が付いたホノカは、慌てて全身の火器のハッチからミサイル、ガトリング、バスターアンカーと、ありとあらゆる火器をアストレアに放った。

 しかし降下するスピードが速かったのか、はたまたマサキの幸運さなのか、ダメージを負わずにグシオンを狙うわけでもなく地面に蹴りを叩きつけると、当然のように砂煙が巻き上がった。

 

「えっ、うそっ!? 何も見えないよ!」

「それが狙いだったのよっ!」

 

 (あらかじ)めグシオンの位置を把握していたマサキは、GNソード改を構えながら視界に若干映ったグシオンを叩き斬った。

 

 斬った。それは誰の目から見ても明白だろう。砂煙ごと巻き込んで、横一文字に切り裂いた。それなのに、グシオンには僅かに掠り傷が付いた程度で済んでいた。

 マサキもこれには面食らったことだろう。ホノカもだ。

(そういや、流石に防御も強めなきゃなあとか余計なことを考えながら盛り込んだんだっけ……)

 そんなグシオンを改造した当の本人はそういえば程度に思い出していた。

 しかしそんなことでめげるマサキでもない。寧ろ、ゲーマーとしての本能かなんなのかは別として、燃え上がらずにはいられなかった。ホノカにとっては傍迷惑な話なのだが。

 当然、マサキは動き出す。地面を蹴り上げ、宙へ跳び、更に宙を蹴ってGNソード改を真正面に向けて突っ込む。ホノカも胸部の装甲を開かせ大口径ガトリングを掃射する。

 

「ボクに向かって突っ込んでくるなんて、無謀だよ、マサキ姉ぇ!」

「無謀かなんて、上等よ! GNフィールド展開!」

 

 マサキの台詞と共に、アストレアの真ん前を緑色の粒子が幕を張る。高速で発射されるガトリング弾も、GNフィールドの前では無謀に過ぎず、ホノカは通用しないと踏んではグシオンが背中に手を回す。

 そして回した手が掴んだ物を前面に降り下ろして構える。降り下ろしただけでも、風圧でかなりの砂埃が周囲に散るのを見れば、当たればただでは済まないというのが一目瞭然だった。

 

 ――グシオンハンマー。その武器の名だ。単純な名前且つ単純な形状をしているが、側面四つのバーニアと本体重量により、見た目よりも凶悪な質量兵器と化している。

 

 当たれば粉々、掠れば腕や足を一本持っていかれる。そんな大槌を軽々と振り回し、グシオンは構えた。当然狙うはマサキのアストレアだ。

 

「ボクにこれを使わせるなんてね!」

 

 バーニアを点火し腰を入れてハンマーを振るう。マサキもGNフィールドを全開にして突っ込む。そしてぶつかり合う。その衝撃波は地面に亀裂を走らせ、雲を横に裂いた。

 まさに一瞬の出来事。別に針小棒大に言っているわけではない。

 しかし先に折れたのはアストレア――マサキだった。GNフィールドすら()()し、更にGNソード改まで叩き折られてはマサキも下がるしかない。そこへ追い打ちをかけんと、グシオンの砲火が火を噴く。

 アストレアはギリギリになってGNライフルによってミサイルを打ち落とし、半分になったGNソード改で弾を防いだ。マサキからすれば、九死に一生を得る、だ。

 

「危なかった……」

「だったら、これはどうかな?」

 

 肩部装甲がスライドしては砲身が迫り出て、射出されたHEAMS弾がアストレアに迫る。

 これには流石のマサキも避けきれずにGNソード改を捨てて盾にした。……そのままアストレアをソードの真下を潜らせて、GNブレードを抜刀ざまにグシオンへと当てた。しかし「ギィィィィィン」という不快な音と共に装甲を傷つけられず、マサキはアクロバットな挙動で距離を取った。

 軽く息を荒くしていたマサキは、静かに深呼吸を繰り返す。右腰のGNブレードも引き抜いて両手に持つ。その時にマサキは考え込んでいた。

(装甲がいくらなんでも堅すぎる。GNブレードでも断てないとなったら、もう――)

 思考が一瞬停止し、マサキはグシオンのある一点に視線が行った。――関節だ。マサキは思考を再開し、アニメでバルバトスがやって見せた芸当を思い出した。

(これなら……いける!)

 早速アストレアを駆って、グシオンの砲火の中を掻い潜る。目の前まで接近したところで小さく跳躍し、グシオンの両肩へ足を掛けて乗っかる。やるべきことはただ一つ。

 

「うわっ、しまった!」

「どんな機体にも弱点はあるものよ!」

 

 二本のGNブレードを胸元に突き立て、深く抉る。抉られた部分が爆発し、内側の火器に誘爆してしまう。こうなるとホノカにはどうしようもなくなってしまう。

 華麗に着地したアストレアは、勝ち誇るように高々とGNブレードを掲げていた。

 ホノカは再び敗北してしまったのだった。

 

 

 

《BATTLE END》

 

 

 

 ホログラムが解けて、ユウキが拍手しながらお疲れ様と二人を労う。ホノカは再度負けたことに拗ねて、ユウキにひしりと抱き付いていた。マサキも苦笑いしながらユウキに近付き、ありがとうと答えた。

 

「関節が弱点って、よく見抜いたな」

「アニメでバルバトスがグシオンのコックピットを太刀で潰したシーン。あれを間際で思い出したの。だから勝てたのかな~」

 照れるマサキにユウキは面食らった顔をする。

「アニメのシーンか、こりゃ予想外だった。まぁグシオンをあれ以上改造できねぇし、リベイクでリベンジだな」

「ホノカちゃんにはファイヤーアームズがあるでしょう?」

「あれは少し改良するさ。東京に持って帰って考える」

 

 ユウキは得意気に笑うと、ホノカが寂しそうな顔でユウキを見上げた。

 

「ファイヤーアームズ、離ればなれになっちゃうの?」

「別に直ぐにまた会えらぁ。どうせホノカ達もこっち来んだら? だったら心配すんなって!」

「……うん」

 

 でもやはり納得はいかない感じの顔で俯いたホノカに、今度はマサキがしゃがんでホノカの顔を見上げた。

 

「ファイヤーアームズが治ったら、またお姉ちゃんとバトルしよっ? その時まで、お姉ちゃん待っててあげるから」

「ホント……?」

「うん、本当だよ」

 マサキが頷くと、ホノカも徐々に顔を明るくさせた。

「ボク、それまでにマサキ姉ぇ倒せるように頑張る!」

「その意気だよ!」

 

 ホノカが笑顔でマサキに宣言して、マサキもニカッと笑いながらホノカを抱き締めた。そんな二人のやり取りにユウキは苦笑しつつも、今度はさっき見ていたヤヤとカグヤのバトルに目を移した。

 

 

 

 

 

 お互い、最早満身創痍といっても過言ではない程疲弊しきっていた。……それもその筈、今までの間ずっと――ガンプラバトル故の――()()()()()()()()()()()()()()()を繰り広げていたのだから。

 ヤヤは初心者と言えど、秘めたる力量と今まで養ってきた観察眼、そして夜天嬢雅家の「秘技」で戦い抜いていた。対するカグヤは初バトルなのだが、元々のセンスの高さに加えて神椎流抜刀術と機体自体の可動範囲をギリギリまで活かしてヤヤと互角に戦っていた。

 

 先程ユウキが言ったように、まさに少女達が繰り広げる戦いではない。

 

 ウイングガンダムは武器と言える武器がビームサーベルしか残っておらず、顔半分は装甲が削がれ、左肩から先は無くなり、腹部には太刀の折れた切っ先が突き刺さっていた。

 ガンダムバルバトスは僅かながら第一形態を彷彿とさせ、頭部は消滅し、両肩の装甲を失い、右前腕の装甲も失い、更には右手に持つ太刀も中折れしていた。

 ヤヤも息を荒くし、コンソールを握る手も僅かに汗ばんでいた。カグヤも下唇を噛み締めて集中力を切らさないようにしつつ、目の前のウイングを睨み付けていた。

 

「やりますね」

「お主こそ」

「これならライバルとして張り合いがあるというものです」

「同感じゃ。決着はいつでも着けてやる。じゃが今は――」

「そうですね――」

 

 二人は頷きあって、口を揃える。

 

「「休憩しよう(しましょう)」」

 

《BATTLE END》

 

 まるで空気を読んだかのようにバトルシステムが起動終了の音声と共に沈黙し、ホログラムを解除させる。すると二人ともよろけてバトルシステムに寄りかかる形で膝を付いた。

 彼女らの口許は自然と微笑んでおり、ヤヤとカグヤはふと笑っていた。

 

「良い友達(ライバル)になれそうです」

「そうかのう? ……じゃが“昨日の敵は今日の友”。まさにそうじゃろうな」

 

 クスクスと笑いあった二人は立ち上がり、ヤヤはマサキに、カグヤはユウキに肩を貸されつつも、近くのテラスで休んだ。

 するとな人に飲み物が手渡された。

 

「お前らは本当に女子かよ」

 手渡して早々手酷いことを言ったのはユウキだった。

「む、乙女に対してその言葉は聞き捨てならぬぞ!」

「ユウキさん! いくらカグヤでも、その言葉は聞き捨てなりません! 撤回を要求します!」

 言った途端に二人から集中砲火をくらい、ユウキはたじろぐも、分かった分かったと手を振って収めた。

「悪かったよ。でもな、別にお前らを化物扱いしようとは思わないさ(殺されかねないし)」

「儂らは正真正銘の乙女じゃぞ! それなのに女子かと問うとは、化物扱いしているのと同義じゃ! 同義!」

「ヤヤさんに激しく同意します! カグヤは身も心も清い巫女です! 穢らわしい妖怪と一緒にしないでください!」

 

 二人に詰め寄られ、ユウキは後方にしか退路を持てず、じりじりと後ろへ後退する。

 

「い、いやそんな意味で言ったわけじゃ……!」

 

 無論、言い分けを聞く耳など持たなそうな今の二人に、ユウキの弁解は厳しかった。

 弁護してくれる人もいるわけではなく、遂には壁際へと追いやられたユウキは、傍から見れば修羅場に発展した可哀想な人だろう。

 挙げ句には為す術もなく二人に言い包められ、大人しくユウキは謝っていた。そこで思うのは当然、先程の自分をぶん殴りたいという欲求だけだった。

 ようやく解放されて、ユウキは反省していた。乙女心はもう少し丁重に扱うのだと。そうじゃなきゃ命の瀬戸際にまで立たされることはないと。

 そこへツクモ達が戻ってきた。リリカも同行していたようで、ツクモの左手を握りながら本人の左手には大きめのぬいぐるみが抱き抱えられていた。

 

「リリカ、新しいもの買ってもらえたの~?」

「うん! ツクモ姉ぇがクレーンゲームで躍起になって取ってくれたの~!」

「ちょ、リリカちゃん?!」

 

 姉妹の会話にツクモが人差し指を口許に当てて「しーっ!」と慌てているものの、既に言い切った後ではどうしようもない。

 当然、他の皆は苦笑いするしかない。ツクモは恥ずかし気に俯いた。髪の色も合わせて真っ赤なのは言うまでもない。

 

「ツクモ先輩、取るなら私に言ってくれれば良かったのにー」

「ま、マサキちゃんだったら一発で取っちゃうじゃない! 面白味に欠けちゃうのよ!」

 ツクモの苦しい反論にマサキは何て返そうかと悩むと、そこにミナツが追い打ちをかけた。

「あら、さっきマサキちゃん呼べば良かった~なんて騒いでたのは、何処の誰かしら?」

「ぐふっ! ……ミナっちゃん、それは言わない約そ――」

「さて、アイカが迷子になる前に探してくるわね」

「ま、待ちなさいって、ミナっちゃーん!!」

 

 クスクスと陽気に笑うミナツは直ぐにその場から居なくなり、ツクモもそれを追っかけていった。やや見慣れた光景にユウキは呆れるも、他の皆は呆けていた。

 するとカグヤが缶ジュースをコトリとテーブルに置いて、テラスから覗く空を見上げて言う。

 

 

 

 

 

「私は……カグヤは何か勘違いていたみたいです。

 ただの怨敵になるかと思いましたが、ユウキさんの大切なお仲間だったのですね。今日、皆と話して分かりました。カグヤ、これなら安心してユウキさんを任せられそうです!」

 

 

 

 

 

 ユウキに向けられたその笑顔は、ユウキの見た中で最も眩しく見えた。その言葉にユウキも頷いて、「ああ」と呟いた後に続けた。

 

「今度はお前も仲間だよ、カグヤ。聖蘭学園模型部へようこそ! 俺達はお前を歓迎するさ」

 

 ユウキもカグヤが見せてくれた笑顔ぐらいに輝かしく笑って、カグヤに手を差し伸べた。

 こうして聖蘭学園模型部は、新たな仲間が増えつつも、短い休息の一時を終えたのだった。





第二章、これにて完結です。



ここまで読んでくれた皆様、お疲れ様でした。……と言いつつそこまで話数はないので、微妙な所ですが。
次回からは待ちに待ったコラボ回三連続!
三連続出来るかははっきりしてないんであくまで「予定」ですけどね!
では今回ホノカの乗っていたえげつないグシオンの説明をば。


ガンダムグシオン グラント
武装:頭部バルカン砲×2、胸部大口径ガトリング砲、バスターアンカー×4、肩部20.3cm×40口径単装砲×2、腕部3連装120mmガトリングガン×2、ワイヤーミサイル×2、ハンドグレネード×2、脚部ミサイル×2、グシオンハンマー
特殊装備:高精度センサー、高精度CICシステム
「HG ガンダムグシオン」に、なるべく武装を注ぎ込んだ超重量機体。ほぼ移動する事は考慮しておらず、移動するにしてもホバー頼りである。
全9種類もの武装を装備しており、信号弾発射など様々な用途に使える頭部バルカン砲、胸部のコックピットハッチには大口径ガトリング砲、胸部に4門備えた400mm口径火砲バスターアンカー、肩部装甲内部から迫り出す20.3cm×40口径単装砲、前腕装甲に覆われた3連装120mmガトリングガン、同じく前腕装甲に覆われたワイヤーミサイル、両腰裏にはハンドグレネード、脚部(脛部)にミサイルハッチ、背中にマウントした超重量破砕兵器グシオンハンマーをそれぞれ装備している。まさに「弾薬庫」という様相である。
また装甲も分厚く、斬っても叩いても無駄だという重装甲であり、キャノン砲でも僅かに傷が着くか怪しい程。
カラーリングはリベイクに近い象牙色。


因みにこのグシオン、今後ライ○ップして帰って来る模様。どうなるかはその時までのお楽しみ。
さて、後期試験も今日で終わりだ!モチベ上げて瑞穂を掘r……コラボ回上げていくぞー!
ではまた次回、ノシ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。