「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
エクストリームガンダムを重装型ガンダムへと近付ける為に、キョウヤは迷いなく無重力ダッシュを繰り出した。
しかし気迫迫る姿で近付かれようと、ミナツは怖じ気も迷いもしなかった。無重力ダッシュで間合いを詰めようとするエクストリームに、容赦なく近距離でロングレンジ・ビームライフルを構える。
「この距離で撃つのか」と、予想外にも程がある行動にキョウヤは横へと避けた。――それが罠だとも知らず。
「単純、なのもお困りね」
「なにっ!?」
キョウヤは重装型ガンダムがこちらへ、ハンドグレネードを投げる姿を見て、エクストリームを身構えさせた。
「ぐっ!」
爆風に押し負けて、宙から突き飛ばされる感じで、そのまま尻餅をついてしまう。すると身構えた時に腕が一番近かったからだろうか、両腕のバンカーユニットが破損してしまっていた。それに驚く間もなく、胸部マルチランチャーから閃光弾が放たれ、視界を奪われる。
「これで、私の勝ちよ」
そんな声が聞こえた途端、キョウヤの画面は真っ暗に暗転した。
《BATTLE END》
ホログラムが溶け、六人はその場に立ち尽くす。何とも長く感じた一戦だった。勝者は聖蘭学園側。残ったのはミナツの重装型ガンダムのみ。
皆、疲れたように笑うが、中でもナギサだけ、楽しかったと言わんばかりに両腕を伸ばしていた。
「ん~~、っと! リベンジは叶わなかったけど、楽しかった!」
「そうだな、結局負けちまったけど、まさかアイドルにコテンパンにやられるとはな……」
「俺としては嬉しいけどな!」
「「ソースケだけだろ」」
ナギサの言葉にキョウヤ達も同調する。何気に楽しかったのは事実で、キョウヤ達も新しい発見が出来た。
反対にマサキとユウキは、疲れたように背中合わせで座っていた。
「あぁー、勝てなかったぁー」
「あぁー、やっぱ俺には近接向かねぇー」
二人して無気力にそんなことを言っていると、ツクモがやって来て二人を引っ張りあげる。
「そんなだらしなくしないの! ほら、次の対戦カードを決めるからこっちにいらっしゃい!」
「先輩、幾らなんでもそりゃ酷ぇって」
「問答無用! ……ミナっちゃんもこっち来てよー!」
両手がマサキとユウキで埋まっているツクモに呼ばれ、クスクスと微笑んでいたミナツは「はーい」と、間延びするようにそう言ってはゆっくりと皆の下へ歩いていった。
■
『ありがとうございました!!』
バトルシステムを挟んで、私達二校が互い挨拶する。時間は案外早く進み、予定よりも遥かに過ぎて、気付けば夕陽が沈みかける時間だった。
全員、名残惜しいように握手を交わしてから、帰る支度も整えて即座にその場を後にする。
「あーあ、もう終わっちまった。早いもんだなぁ」
キョウヤ君がふと、公共体育館を出た時にそう言った。皆もその一言で立ち止まり、「確かに」なんて言い出した。私もそうだ。今日一日を通して、つまらない、ましてや不満なんて一つも無かった。それこそ最高だって、胸張って言えるぐらい。
……偶には、こんなことも良いかなって、思っちゃったのは内緒。
「また、皆で遊べたら良いね」
「ああ、そうだな」
私の独り言に、ユー君が隣に並んでそう言ってくれた。夕陽に照らされるユー君の顔が、いつもより凛々しく、私の瞳に映った。
すると私の背中目掛けて、アイカちゃんが抱き着いてくる。驚いた私はいつもの如く「きゃっ!?」と叫ぶ。
「いつでも遊べるわよ。私達もキョウヤ君達も、知り合ってバトルしたんだから友達よ」
「友達ってそんな簡単に出来るものかなぁ」
「私の場合がそうなだけ。私がそうなんだから、マサキちゃんもそうよ」
「えへへ、そうだと良いな」
夕焼け空の下、最後まで笑いながら帰った私達聖蘭学園模型部は、長い一日に終止符を打つように、その日の活動を終わりにした。
■
――――それから一週間ぐらい経ったある日、私は全速力で部室へと走っていった。
途中、風紀委員の先輩に怒られかけたけれども、それを無視して部室へと駆ける。「こんなに走ったのは久しぶり」と思うぐらい、息を切らしながら。
部室へ辿り着くと同時に勢いよく入る。
勢いがよすぎたのもあって、部室に居た皆(ツクモ先輩、ユー君、ミナツ先輩)は目を丸くしていた。
「どったのマサキちゃん? そんなに急いで。ガンプラは逃げないわよ?」
「はぁ、はぁ、はぁ……そう言う訳じゃなくて……ですね……ユー君に頼みたいことがあるの……」
ツクモ先輩に支えられつつ、私は椅子に座る。ミナツ先輩からお茶を貰って、私は湯呑みを両手で持ちながら啜る。
一息吐けた所で、私は改めてユー君に向き直る。ユー君もそんな私の態度に、後頭部を掻きながら困り顔をする。
「お前からのお願いって何だ。無理難題は押し付けてくれるなよ?」
「ううん、私はユー君にガンプラの改造をお願いしたいの。……出来れば私がやりたいんだけど、私にはちょっと難しくて」
私の言葉にユー君も納得してくれたようで、そう言うことかと呟いた。
「確かにガンプラの改造となりゃ、まだ始めて二ヶ月しか経ってないお前には難しいな。まぁ、改造は難しいだけで、手先が器用なら誰でも出来る。……指導も含めてなら、お前に付きっきりでやっても良いが?」
「ホントに!?」
驚く私の声に、ユー君は大きく頷く。「男に二言は無い」とサムズアップしながら。
ツクモ先輩もミナツ先輩と顔を見合わせながら頷いて、私の肩をそっと叩く。
「取り敢えずどんな案か、私達にも教えてくれるかしら? ……改造なら、ユーだけじゃなくてミナっちゃんも得意だし」
「そうなんですか?」
そう言われて私はミナツ先輩の方を向くと、「ちょっとだけね」と微笑みながらそう答えてくれる。これなら、私が昨日体験したことを、そのまま活かせるガンプラを作れるかもしれない。
「それじゃあ、お願いします」
「まずはコンセプトだな」
ペコリとお辞儀すると、早速ユー君がC○mpusノートを開いていた。私はまず何から言ったら良いかと考えつつ、コンセプトをそのまま伝える。
「ベースはアストレアなんだけど、えっと、クロスボーン・ガンダムX1フルクロス風にしたいの」
「フルクロス? ……なーんでまたそんなものを。お前にしては中々マニアックな所を突いてきたな」
私の出した案に、ユー君も驚きを交えながらそう言った。私も、そんな機体をコンセプトに出したのにはちゃんと理由がある。それは――
「き、昨日ね? 気になってたアーケードゲームがあって……初めてだからどうして良いのか分からなくて、そしたらキョウヤ君とソースケ君が来てね? 色々と教えてくれたんだ。その時に使った機体が偶々フルクロスだったから……ダメかな?」
私の拙い理由に、他の三人は成る程とうんうん頷きながら納得する。
「フルクロスが良いのは分かったけど、ベースは何でアストレアを?」
「そ、それはアテナのベースがアストレアでもあるから……です」
ツクモ先輩に聞かれて私は答える。アストレアとかGNドライヴを持つ機体(ユー君曰く「00系ガンダム」)は、一番慣れてるからっていうのもあるかな。トランザムも、よくある時限強化機能ながらも扱い易いし。
「アストレアを基礎としてフルクロス……な。先にアストレアをクロスボーン系みたいにするのを考えるか」
ユー君の決めた方針に、私達も異論反論は無かった。まずはデザインから、という訳でスケッチブックにデザインを描くこととなった。私じゃなくてミナツ先輩が、だけど。
「GNドライヴの周りに四基のスラスター、かしら?」
「そうだな、フェイスカバーも開閉式にするか?」
「放熱ダクトは必要ないわ。だってトランザムで間に合ってるじゃない」
「なら、額はドクロじゃなくてアストレアの“A”だな」
「ブランドマーカーはどうする?」
「付けなくて良い。余計な機能を増やすと却って使いづらいだろうからな」
もう二人に任せれば良いんじゃないか、とそんなことを思いながらお茶を啜っていた。ツクモ先輩も同様らしく、呑気にお煎餅を頬張っていた。
再びお茶を啜りつつ、二人の会話にまた耳を傾ける。
「グラビカルアンテナは襟状に……V字アンテナもいっそのこと額パーツと別パーツ化させて、黄色にするか」
「全体的な設定画はこんな感じかしら?」
「スタイリングもアテナ寄りにして、コーンスラスター型だな」
「そうしましょう」
丁度私が眼鏡を拭き終わった所で、二人の会話も終わったみたいだった。イメージイラストも完成したみたいで、早速製作に取り掛かろうと皆で動く。
予めキット自体は買ってあって、プラ板やパテと呼ばれるものも買ってある。一応これだけでも大丈夫って、お店の人は言っていたけども……。
「プラ板の厚さは0.5ミリ。切り出すのは難しいが、HGサイズはこれぐらいが良いんだ。んじゃあ本体から入るぞ」
そう言ってユー君は手早く袋からランナーを取り出して、私に組ませる。何で素組みするんだろうと疑問に思いつつ、素組みを済ませる。
「俺の言った通り、接続は浅めだな。これで仮組みは完成だ。次はイメージ通りにクロスボーン風アストレアを作ってくぞ」
「う、うん」
大きな変更点は、頭部のV字アンテナに襟首のグラビカル……アンテナ? と、GNドライヴの周りに四基のスラスター――「Xスラスター」って言うらしい――かな。
全てユー君の補助があって、ようやくパーツが揃うと、それぞれのパーツを取り付けていく。襟首はグラビカルアンテナ取り付け用のジョイントで取り付けて、V字アンテナも同様。Xスラスターだけ、専用に作ったジョイントパーツを咬ませて、コーンスラスターを被せる形になった。こうして「クロスボーン風アストレア」の完成とはなったけれど、まだまだ完成じゃない。
今回作るのはあくまで「フルクロス」を纏ったアストレア。まだ半分しか終えていない。
次はフルクロスとその他武器を作る。フルクロスは先程ユー君の言った、厚さ0.5mmのプラ板を使うらしい。
「か、改造って中々に緊張するね」
「ハハハッ、慣れりゃ別に大したこたぁねぇよ」
「そう、なのかな?」
あまり馴染めない感覚に、少し戸惑ってしまうものの、ユー君の助けのお陰で順調に進んでいた。
やっている内にフルクロスの半分が完成する。薄いプラ板を重ねる、っていう発想に驚いたけれども、それによって強度を上げるという発想にも驚いた。更にプラ板とプラ板の間や表面には、粒子変容塗料なんていう不思議な塗料を使っているみたい。ユー君曰く「対ビームコーティングとか、そんな機能には必須なもの」なのだとか。
「まぁ、もう半分は俺がやるよ。次は武装だな、ミナツ先輩頼みます」
「はいはーい、バトンタッチね。じゃあマサキちゃん、頑張りましょうか!」
「は、はい!」
珍しくやる気に見えるミナツ先輩を見て、意外な一面を見れたなと思った瞬間なのはさて置いて、次は武装となった。基本的にゲーム基準にしたいわけで、でも再現が難しいのもまた事実。……それについて悩み始めた時、ミナツ先輩が私の肩を叩く。
「そのまま使う、っていう手もあるのよ」
「えっ!? オリジナルで作るんじゃないんですか!?」
すると、ミナツ先輩はクスクス笑う。
「別に何も、オリジナリティーを求めて作っている訳ではないわ。例えばこのムラマサブラスターだって、ドクロのレリーフを額のA字と同じにすれば良いのよ」
「な、成る程。そんな手もあるんですね」
やっぱり知らないことばっかりだ。それが当然なんだけれど、それを知らしめられた途端、自分が却って恥ずかしく思えてきてしまう。
決して教わることは恥ずべきことではない。「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」なんて言葉もあるぐらいだし。
なんやかんや経て、「フルクロス風アストレア」が出来上がった。後は塗装だけで、私はいつも通りに真っ白に塗り上げることにした。
そうして乾燥させるのに時間を要する為に、私達は再び一息吐くことになる。こうして一つ作り上げるのに、こんなに疲れるとは思わなかったなぁ。けれどそうした中での達成感は中々のものだ。初めて改造する人って、こんな気分なのかな?
その翌日、朝早くに部室へ来てみると、塗装は乾いているみたいだった。私は逸る気持ちでパーツを組み立てていって、早速完成させた。初めての改造ガンプラ。その名も―――
「よろしくね、クロスアストレアX1 ヴァイスフルクロス」
名前が長いっていう突っ込みはなし。
私は満足げにケースへ仕舞うと、早速教室へと駆けていった。
改造シーンの描写が簡素とか言わないでくださいね。もう少し書きたかったけれど、体力が保たなかったの。カミツです。
一応、今回でコラボ回は一旦終わりです。今後、コラボ回があるかどうかすら分かりませんが、取り敢えず一旦終わりです。
次回から新章に入り……ません。その前にこれまでの登場人物紹介をしてから、また新章に入っていきたいと思います!
今年初の台風が近付いてくる中、寒暖差が激しい地域もあるでしょうけれど、これから続く夏を頑張って過ごしましょう。
ではまた、ノシ