ガンダムビルドファイターズ アテナ   作:狐草つきみ

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前回の後書きに書いたことは次回に持ち越しになりそうです。申し訳ありません。
ではどうぞ。






EPISODE-38:紅姫

 生徒会との対決が急遽決まって二日が経った。そんな中、俺は昼休みの屋上に来ていた。

 何でこんな場所に、と思うとシオリの所為である。昨日の放課後にメールが来たが、何でも話したいことがあるとか何とか。

 俺も意地悪じゃないわけで、観察がてらシオリの誘いに乗ってやった。数日後には敵として戦うのだが、それでもシオリが動くのは俺でも分からない。アイツは基本、能動的に動かないからな。

 

「シオリ」

「ユー……」

 

 たった今屋上へ上がってきたらしいシオリは扉の前で俺を見つめていた。どうやら階段を走りでもしたのか、息は上がっていて頬も若干赤らめていた。

 

「何の用だ? 早くメシ食いに行かねぇと食堂が閉まっちまう」

「平気。お弁当作ってきた」

「俺の分までか」

 

 コクンと小さく頷いたシオリは、俺の傍まで寄ってきては片手にもった小さな包みとは別に、もう片手で持った弁当箱を俺に渡してくる。

 俺はありがたくそれを戴くと共にその場に座り込む。シオリも俺に倣ってか、ハンカチを床に敷いてそこに座り込んだ。

 

「……んで? 俺に何の話なんだ?」

 二度目となる質問に、小箱を開けて合掌したシオリが顔を上げる。

「想起。そうでした、ツクモ先輩のことです」

「先輩のこと……って、シオリと何に関係あんだよ」

 

 俺も合掌しては弁当箱の蓋を開け、それはそれは綺麗に作られた手料理に口笛を吹きつつ、シオリの言葉にぶっきら棒だが反応する。

 しかし、それでもシオリは眉一つ動かさずに話を続けた。

 

「コキュートス」

「……ッ!?」

 

 箸を手にとってから、シオリが小さく呟いた言葉に俺は固まってしまう。

 ……今何て言った?

 俺の聞き間違いじゃなきゃ、シオリは「コキュートス」と言った筈だ。何故シオリが()()を知ってる? ――いや、問題なのは今そこじゃない。

 

「シオリ、何で()()が出てくる」

「簡単。会長の狙いは()()だから」

 

 シオリの口から出た言葉に、俺は「出鱈目だ」と口走りそうになる。だが堪えて喉の奥へと押し込んだ。

 もしそれが本気なら、また同じ目に会わせる気かよ……正気の沙汰ってレベルじゃねえぞ、オイ。

 俺は歯軋りする思いで、シオリに聞いた。

 

()()を持ってきたとしても、先輩は使えない。何でジンナイ先輩はそこまでする?」

「無知。シャオには分からない。シャオは知らない」

「……まあ、そっか」

 

 シャオが残念そうに俯く姿を見て、俺はそれしか言えなくなる。でもシャオが言いたかったことは分かった。それでもどうすることもできない俺は、自分に最高に腹が立った。

 この催しの裏には、随分と酷いシナリオが待ってたモンだよ、全く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、気分の悪いまま俺は模型部に出向いていた。行ったところで、俺は何もする気は起きないんだろうけど。

 

「ちーっす……って誰も居ねぇのか」

 

 そう言えばマサキ達、遠征に行ったのか。何か先輩達と計画してたみたいだし。

 俺はいつも通りに入ってきたことを馬鹿馬鹿しいと思いながら、自分を嘲笑うようにケラケラと笑った。

 

「あ、先輩のインパルス」

 

 部室に備え付けのテーブルの上に、可哀想に置かれた寂しいインパルス。確か先月に作ってそれ以来ずっとだな、何て懐かしく思い出す。

 その時、前に生徒会室に行った時のことを思い出す。

 

 

 

『……あっ、アンタに何が分かるっていうのよ! 私の気も知らないで! 私だって、私だってマサキちゃんにばっか前に出させたくはないわよ! でも……でも! 今はこうでもしてないと、満足にバトルだって出来ないのよ!? もう皆に迷惑を掛けるのは嫌なのよっ!』

 

 

 

 懐かしい台詞がリフレインする。

 ……あの時の先輩、泣いてたっけなぁ。何もしてやれなかった無力さに、腹が立つぜ。

 

「あぁもうクッソ!」

 

 俺は行き場を失った怒りを、思いっきり床にぶつける。硬い音と共に、地団駄を踏んだ右足にやんわりと痛覚が働いてきた。

 ……何で、先輩なんかが辛い思いしなくちゃなんねえんだよ。

 

 あの出来事は今でも覚えてる。まるで昨日かってぐらい、鮮烈に。でもそれは()()にとっては嬉しくも辛かった出来事だ。もう二度と掘り返したくない……そんな出来事。

 でも記憶ってのは正確で、そんな忘れたい思い出すら記憶しちまう。困ったモンだよ、そのお陰で先輩は乗り越えられずに、今もこうやって部活や仕事を続けながらも苦しんでる。

 明るい顔もするし、皆の前では持ち前の笑顔も見せる。でもその裏で泣いてるだなんて、誰が想像できようか。

 

「何が『紅姫(べにひめ)』だよドチクショウッ!」

 

 悔しい。

 ナニモデキナイジブンガ。

 悔しい。

 ナニモシテヤレナイジブンガ。

 

 何か奥で渦巻くように、俺の心を蝕んでいく。後悔だ、って気付いたのはその直後だ。人の弱い部分を見ていることしかできない自分。それに手を差し伸べる勇気さえない自分。

 

「……凍結の紅き姫(コキュートス)、か」

 

 ()()と同じ名前を持つその異名は、誰がどこでそう呼び出したのかは知らない。でもそれは瞬く間に広がった。……いや、異名が付いたのは先輩含め四人だったか。

 

「おかしいぜ、こんなのよ」

 

 ただ仲良くガンプラバトルがしたかったのに、ただ楽しくガンプラバトルがしたかっただけなのに、何でこんなに氷のように硬くて脆いんだ。

 

 気が付けば俺は、いつの間にか作業机に面と向かっていて、両手が動いていた。

 こんなことをしている自分が本当に嫌になってくる。でも、やっぱりジンナイ先輩に勝つには、これしかないんだと思ってしまう。

 見た目はフルスクラッチされた巨砲。(プラスチック)黄色(パテ)に塗りたくられただけのもの――だがその威力は見た目以上。最高に巫山戯た傑作(失敗作)だよ。

 間接的にジンナイ先輩の思惑を手伝っちまってるんだから、俺も同罪なんだろう。

 そんな時でさえ、笑いが出てしまう。……自嘲の笑い声が。

 

「ははっ、ハハハハハ!」

 

 何をしてんだろ、俺ってヤツ(馬鹿)は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中心街・中央区 大型ホビーショップ「フリーデン」

 

 今日は遙々(はるばる)遠出をしてここまでやって来た私達。ユー君には内緒で出てきたんだけど、きっとバレてるだろうなぁ。

 そんな中、バトルシステムを挟んで今、ヤヤちゃんのフェングファンとツクモ先輩のアストレアが対決していた。

 

「むう、ビットは厄介じゃが……だがそれまでじゃ!」

「何て切り替えのスピードよ! ビームソードかと思ったらバスターライフルだし、バスターライフルって思ったらまたビームソードだしっ!」

 

 どうやら五分五分の対決のままらしい。ツクモ先輩はビットで手数を増しているけれど、ヤヤちゃんは反面火力の高いバスターライフルとビームソードの二つで攻め入っている。

 そんなヤヤちゃんの特殊技能なのか、武器がいつの間にか切り替わっているという謎が起こっている。実際に私も気が付いてなかった。

 

「後ろ取ったり!」

「甘いぞッ!」

 

 ビットによるミスディレクションで、上手いこと視界を誘導した先輩はヤヤちゃんの背中に回り込む。でもヤヤちゃんはお構い無しに、リアスカートのヒートロッドで振り払う。

 

「尻尾!?」

 

 意外な箇所からの攻撃に、流石の先輩も後退せざるおえないみたい。けれどそれを逃さないように、そのままフェングファンはネオ・バード形態になって、先輩のアストレアを追っかける。

 

「儂から逃れられると思うなぁッ!」

 

 さながら獲物を追う戦闘機の如き機動で、逃げに徹し始めた先輩を追いかける。

 私はその先に罠が待ち構えていたのを見て、思わず声を漏らしてしまう。

 

「あっ」

 私が反応した時には既に数センチの距離だった。

「さあヤヤちゃん! これで終わりよ」

「負け惜しみは負けてからじゃ!」

「そのままそっくりお返ししてあげる!」

 

 ヤヤちゃんが放ったバスターライフルが何かによって防がれ、アストレアについぞ届くことはなかった。

 そして反動を伴ってタイムラグが生じたフェングファンは数秒だけその体勢のままだ。……しかしそれが仇となる。

 

「今よ! 行きなさい、ビット!」

「なっ?!」

 

 驚きを隠せないヤヤちゃんは機体を無理矢理動かしては、ビットの囲いから外れようとする。

 

「洒落臭い!」

 

 そう叫びながら個々に撃破していくがまるで切りがない。

 

「やっぱり昨日の内に増設しておいて良かったわ~」

 

 ツクモ先輩は相変わらず能天気にそう言ったけれど、今動かしているビットは全て手動操作らしい。――私も一度手動でやらせて貰ったけれど、情報処理が追い付かなくなっていたのは良い思い出かな。それ程までに難しいんだって、ビットって。

 因みに撃破された分も数えるとGNSRビットの総数は二十四基。通常の倍も増加しているのに、ヤヤちゃんを軽々と弄ぶツクモ先輩は、やっぱり凄いんだなって思う。

 

《TIME OUT》

 

 切り良く時間切れが来て、プラフスキー粒子が空気に溶けたかのように消える。

 ガチャガチャと音を立てながら、バトルシステム上にフェングファンやビット達が落ちる。ダメージレベルがBとは言え、どちらも機体は無傷で十分間戦い続けられたのは凄い。

 

「ヤヤちゃんの成長速度は早いわね~」

 パタパタと手で胸元を仰ぎながら、ツクモ先輩がそう言うと、ヤヤちゃんは謙遜気味に返した。

「まだまだじゃ。あの罠に掛かってしまうとは、力不足じゃよ。今度の生徒会との対決もあるのにのう……」

 

 激しく落ち込むヤヤちゃんは、その場に踞りながら珍しく情けない声を出していた。それに私達も驚いてしまうけど、見ていたアイカちゃんがヤヤちゃんに近付いて励ましにでた。

 

「落ち込むことないじゃない。……今回、私はカグヤちゃんと一緒に見てる側になっちゃうけど、ヤヤちゃんが頑張れば、他の皆も頑張れるのよ。笑顔笑顔!」

 

 ニッコリ笑うアイカちゃんに釣られて、私やカグヤちゃんに先輩達、そしてヤヤちゃんも笑った。

 するとヤヤちゃんは急に立ち上がって、フェングファンを片手にその手を振り上げた。

 

「アイカの言う通りじゃ! 儂も負けてられん! ――今度はミナツ先輩、相手を頼む」

「はいはーい、後輩の為にも一肌脱いじゃうわ♪」

 

 ヤヤちゃんの申し出に対してそう言っては、素なのか態となのか、本当に脱ごうとしながら笑顔でガンプラを握っていたミナツ先輩だった。

 

『ミナツ(先輩、ミナっちゃん)、取り合えず服着ようか(ましょうよ)』

 

 こうして全員から総突っ込みを受けながらも、ミナツ先輩は笑顔で疑問符を浮かべていた。

 この後ツクモ先輩の説教が始まって、お店の閉店間際まで続いたのだとか。

 

 




……え?ヤヤの出番(活躍)が少ないって?


どうもカミツです。
期待はしてましたが、GBFT アイランド・ウォーズは面白かったですね。まさかアイラとレイジの娘が出てくるとは……。チナの方にあった筈のアイラのコマンドガンダムも、いつの間にかあっち行ってるしw

眼鏡や水着、パーカーまで着て更には猫真似するシアちゃんは、幾らなんでもあざと可愛すぎたぜ……←リアルに悶絶してた人
あれこそが(ガンダム)だよ(確信

ではまた次回、ノシ
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