『今日という今日は、待ちに待った生徒会VS模型部のバトル対決だぁぁぁっ! 実況はこのわたくし、放送部部長の
『解説の、放送部副部長こと
『ウオオオオオオオオオオ!!』
総勢六百人を越える大人数の生徒が、第さアリーナこと「体育館」に集約していた。そこには教師陣や理事長なども居り、非常に豪華な面子となっている。
そこで戦うのは言うまでもなく、模型部と生徒会。
実況担当のニイミも会場の熱に当てられ、本人もヒートアップしていた。対して解説担当のウミは冷静にしつつ、ニイミへ今回の対決がどうなるかと尋ねる。
『ニイミちゃん、今回の対決はどうなると思います?』
『そーねぇ、今年から復活した模型部には期待の
ニイミの模型部推しに、ウミもこれには苦笑いする。
『確かに、女性限定の全国大会を発足から数日で優勝してしまうだけはありますからね。……でも生徒会だって負けていません。その実力は全国トップクラスとも言われているジンナイ会長に、全国準優勝の経歴を持つシャロちゃん! ……未知数ですが期待できそうな一年生コンビも居ますから、一概には言えませんよ、ニイミちゃん』
打って変わって生徒会を推すウミを見て、ニイミは膨れっ面を見せる。だがそこは放送部部長。くるりと気分を入れ換えてか、ニイミはマイク片手に実況席から立ち上がる。
『さぁ貴方はどっちを選ぶ? 模型部かぁ! 生徒会かぁ!』
『それではいよいよ選手の出場です。まずは生徒会チームからは、ジンナイ会長、シャロちゃんにメイちゃんとシオリちゃんの生徒会メンバー全員!』
歓声の中、ウミに紹介されて現れたのは生徒会メンバー全員。ジンナイは手を振る女子達に振り返しており、シャーロットは周囲へ笑顔で大手を振っていた。対するメイは歓声が鬱陶しいと思いながら日傘をさし、シオリは相も変わらず無言で歩き続けていた。
『続きましては模型部チーム! メンバーは部長のツクモちゃんに、イケメン代表格のホウドウ君! そしてマイペースミナツちゃんに期待の新人マサキちゃんだぁぁぁっ!』
同じく歓声の中、今度はニイミに紹介されて現れたのは模型部メンバー。ツクモは笑顔でクラスメイトなどに手を振り、ユウキは腕を組みながら欠伸をしつつ入場。ミナツはマサキに抱き付きながらで、当のマサキはガッチガチに固まりながらミナツに押されて入場していた。……これで全員がアリーナ中央に揃う。
『さて、今回のルールの説明です。ルールはダメージレベルCでのトーナメントマッチ。どちらかが三セット勝ち抜けばその時点で勝利となり、四セット全てにおいて両チームが二度、もしくは一度引き分け判定となった場合は、特別ルールとして代表者一人を選び出して行う公式大会遵守の初撃決着ルールとなります』
ウミの淡々としたルール説明に会場は静かに息を呑む。ルール説明の後にはニイミがお待ちかねの対戦順を発表した。
『さて皆さんいよいよお待ちかね、対戦順の発表となります! ――まず初手となるのは……おおっと、いきなり潰しに来たかぁ!? メイ選手対ユウキ選手だぁっ!』
一番手となるメイは北叟笑み、ユウキは苦虫を潰したような顔になる。
「ユウキ様ぁ! ずっと会いとうございましたわっ!」
「俺は会いたくなかったけどな!」
ユウキにのみ笑顔を振り撒くメイに対し、ユウキは真っ向から否定する。真反対のことしか言っていないが、それさえ関係なくニイミは続ける。
『えー、次の二回戦目ではシオリ選手対マサキ選手! 通称「ターミネーター少女☆シオリちゃん」に立ち向かうマサキちゃんや如何に!? 二人の対決は見逃せない!』
ユウキがメイと戦うと言うことに不満げだったシオリは、真顔のままではあるが、珍しく頬を膨らませて不機嫌を示す。マサキはと言うと、未だ石像のように硬直していた。
『続く三回戦目は、意外や意外! なんとジンナイ選手対ミナツ選手だっ!』
「あらあら、ツクモちゃんに言われて警戒はしてたけど……本当にそうなるとはね」
「君とは一度戦ってみたかったのさ。お手柔らかに頼むよ」
互いに笑顔で睨み合う二人は、言葉に棘を含んでいた。それが会場にも犇々と伝播する。
『そして最後となるのは、シャーロット選手対ツクモ選手!』
「……まさか貴女と当たるなんてね」
「HEY、ツクモ! ワタシは今日という今日を楽しみにしてマシタ! ……今度こそはワタシが勝利をいただきマース!」
四組全部が発表された後、体育館中央に大型のバトルシステムが床から競り上がるようにして現れ、ニイミがアナウンスで告げた。
『それでわっ! 第一回戦目、メイ選手対ユウキ選手のバトルを行いまーす! 二人共、バトルシステムの前に立って立って~♪』
「チッ、相手がメイって分が悪すぎんぜ」
「ユウキ様、このわたくしがバトルに勝ちましたら、是非ともわたくしと付き合って貰いますわ!」
《GUNPLA BATTLE Combatmode Start up. Mode damage level set to“C”》
《Press set your GP-Base》
二人がGPベースをセットし、同時にバトルシステムから青い粒子が巻き上がる。
《Beginning [Plavesky Particle] dispersal. Field10, City》
粒子が一面に散布され、バトルシステム上にバトルフィールドが形成される。今回はその名の通り、ビル群が建ち並ぶ都市。
《Press set your GUNPLA》
ガンプラがセットされ、両者は手元に現れたコンソールを握る。これで全ての準備が整った。
『さて、準備はOK? ……それではガンプラバトル! レディィィィ、ゴォォォォォォッ!』
《BATTLE START》
「皐原芽依、クルセイドガンダム。参りますわよ!」
「芳堂木綿樹! エクストリームガンダム/ナハト! 行くぜッ!」
互いに空へと投げ出される。眼下に広がっている都市は真新しく、だが車道に車の影はない。
また空中は意外にも視界が良すぎて、ユウキは舌打ちしたい衝動に駆られる。
「メルクリウス・フェースで来て正解だったぜ……いくぜ、アクア・ドラグーン!」
背中から射出された八基のアクア・ドラグーンが、展開と同時にエクストリームの周囲を囲む。薄紫の水晶が、太陽に照らされて怪しく光った。
開戦直後に臨戦態勢を整えたユウキは、早速前方から「
「お嬢様のご到着か……!」
「あら、見たところ流石ユウキ様のガンプラですわぁ。わたくしの攻撃にどこまで
恍惚な表情を浮かべたメイは、下から上へ嘗め回すかのようにメルクリウス・フェースを眺める。その目は最早、ただの
「はぁ……お生憎様、レディファーストとかはねーからな。こっちから行かせて貰うぜ。――神椎流抜刀術“速水・牙突”ッ!!」
水旋刃をクルセイドへ向け、容赦なく放った一撃必殺の刺突攻撃。だがクルセイドは、それをどういう理屈でか
「中々お強いのですわね、ユウキ様。流石わたくしのフィアンセですわ」
「誰がフィアンセだ!」
「連れないお方――早くわたくしのものにしなくてはいけませんわね。消えてくださる?」
まるでつまらないと言いたげなメイは、あっけらかんとした表情で告げる。
消えて、の一言で水旋刃を受け止めた掌から、拡散する粒子の束が放出された。それは一瞬にして眼下の建物を崩し壊しては、エクストリームを吹き飛ばす。
「なぁろっ! ……何て出鱈目な威力なんだよぉ!」
泣き言のように吠えたユウキは、アクア・ドラグーン四基を水旋刃に装着させ、四つの水流を作り出す。それらは水旋刃を易々と覆い、いとも簡単に激流の槍が完成した。
「神椎流抜刀術“速水・
目の前から迫り来るクルセイドに対して、エクストリームはバックステップを踏むかのように空を蹴る。
逃げると勘違いをしたメイは、まんまとエクストリームの前に躍り出てしまう。それを見計らったユウキは機体を無理矢理前方へ押し出して、溜めに溜め込んだ水旋刃の一撃を食らわす。
「でぇりゃぁぁッ!」
「ウフフ、ここまで楽しませてくれるのは、ユウキ様が初めてですわ!」
そう言って両手を前に差し出したクルセイドは、
これには技を出したユウキも驚かざるを得なかった。流石に完敗だと。……だがこれで終わった訳ではない。
「メイのクルセイドは俺も知ってんだ。
「………ハッ、後ろ!?」
水旋刃を両手で止めていたメイは、嫌な予感と共に咄嗟に後ろを見る。そこには水流で刃を形成したアクア・ドラグーンが二基、浮遊していた。
「アクア・ブレード」
ユウキは止めだと言わんばかりにアクア・ドラグーンをクルセイドへ突き刺す。……が、突き刺さった感覚や音が一向に伝わってこない。
確かに刺さった筈。そう考えたユウキは、目の前の光景に目を見開くしかなかった。
「………ホント、ここまで楽しませてくれるのは、ユウキ様が初めてですわぁ」
いつの間にか、クルセイドの背中には粒子でできた巨大な「光の翼」が生えていた。更には登頂部に光輪まで浮かんでいる。その姿はまるで――
「天使……?」
その一言が会場全ての思いを代弁した。
周囲には光る淡い粒子が巻き上がり、クルセイドとエクストリームを包む。
メイは舌舐めずりしながら、ユウキに手を伸ばす。
「ユウキ様、来年には挙式を上げさせて貰いますわ♪」
「ひぃぃぃぃぃ!? 怖い、何か怖いよこの子!」
珍しく悲鳴を上げたユウキは、全力でその場から逃げ出す。こちらの分が悪い上に、今のメイは最高にハイテンションであった。それはもう恐ろしいぐらいに。
急いでビル群へ隠れるユウキだが、それも無駄だと一瞬で痛感する。
「ユウキ様ぁ、隠れんぼですの?」
恍惚な笑みに甘い猫撫で声で話し掛けるメイに、ユウキは謎の恐怖で支配されていた。
男なのにみっともないとか、もっと男らしく立ち向かえとか、そんな歓声の言葉すら今のユウキには届かなかい。
「全部消し飛んでしまいなさい♪」
その一言だけで、たった一言だけで数々のビルが消失した。光の翼から放たれる、雨霰のようなビームの嵐によって。
それらはエクストリームの周囲にある建物を無差別に壊し、一瞬にして瓦礫の山へと変えていった。
「何て出鱈目なんだよ、クルセイドガンダムは……」
ニイミの言葉が
一応、残った六基のアクア・ドラグーンを放ち、機体の周囲を水で囲んだ。
「アクア・ヴェール、ステルスモード」
水で覆われたエクストリームが、一瞬にして周囲と同化する。これでしばらくは安全の筈だ、そう考えながらも頭上をふわふわと優雅に飛ぶクルセイドを見上げた。
メイは一向に見付からないユウキに、段々と探す声が弱くなっていく。
「何故、何故ですの? ……わたくしはこんなにも一途に愛していると言うのに、ユウキ様はどうしてこの愛を受け取ってくださらないの?」
(いや、そんな危なっかしい攻撃的な愛なんて、真正面から受け止めるどころか、身を翻して逃げるわ!)
切実なメイの言葉にユウキは思わず心の中で突っ込んでしまうが、今はクルセイドの倒し方が優先だ。
クルセイドの本気を初めて見たユウキは、あれがプラフスキー粒子による高度なエフェクトなのは分かりきっていた。しかし、あれだけの大出力を長時間保っていられる筈がないのは明白だった。
それをメイ自身が理解しているかどうか分からないが、ユウキはクルセイドが短期決戦用の機体であることだけは把握しているつもりだ。その為、長期戦には向かない。
(……なら、時間との勝負か。へっ、我慢比べと行こうぜ、メイ)
アクア・ヴェールのステルスモードも、クルセイド程ではないが、粒子消費は激しい方だ。その為長くは保たないものの、防御力と隠蔽力は折り紙付き。
後は
(実質後者の方を願いたいが……粒子量は残り六十パーセントか)
案外残っていたことに驚くが、それよりもメイのクルセイドの粒子量が気になったユウキは、どう探るかと思案していた。
だがこうしている間にも、街並みは見る影もなく無惨な廃墟街――いや、それどころか爆撃機による爆撃後みたいな惨状へと変わっていく。
「辺り一面、見る影もない焦土かよ。流石と言うべきか、何と言うべきか……傍若無人なお嬢様なこった」
ユウキはスッと機体を立ち上がらせ、アクア・ヴェールを解く。機影が僅かに見えるだけ離れたクルセイドを見つつ、ユウキはアクア・ドラグーン六基を円形に並べ、その中心に水旋刃の切っ先を向ける。
「だが粒子を一気に減らしちまえばこっちのモンの筈だ」
円形に並んだアクア・ドラグーンが水旋刃の周囲を回転し始め、切っ先には青白い球状の光が作られる。
制限時間が残り五分を切った所でユウキは水旋刃のトリガーを引く。
「アクア・ブラスター!」
青白い球状の光から、一直線に水の柱が伸びていく。何処までも伸びていく水の柱はやがてクルセイドを捉え、クルセイドもそれを光の翼で防ぐ。
「攻撃……ユウキ様、そちらにいらっしゃいますの?」
エクストリームのアクア・ブラスターを防ぎ切ったクルセイドは、モニターでその姿を確認すると高速でエクストリームへと飛んで行った。
行動自体は予測していたが、スピードは遥かに想像を超えていたことにユウキは舌を巻く。だがそのスピードを出せるのも、その光の翼のお陰だと考えていた。故に――
「もう一発、アクア・ブラスター!」
同じ角度、威力でユウキは再びアクア・ブラスターを放つ。このアクア・ブラスター自体も連発が難しいのだが、ユウキは最後の賭けに出ながら水旋刃を押し上げた。
「さっきの水流? ……なら、効きませんわよ!」
「だろうな、だがお前はッ!」
エクストリームの粒子残量が三十五パーセントを切る。それ以上は危ないと、アラートが必死に訴える。それでもユウキは止めなかった。
「粒子の限界を知らねぇんだよぉぉっ!」
アラートが何度も耳に鳴り響く。
……もう後がない、だがこれで終わりだ。
ユウキはそう確信を持ってアクア・ブラスターを撃ち切った。同時にクルセイドの光輪と翼が、光の粒となって消えた。
《BATTLE END》
やっと対生徒会戦。これも数話に分けて書かねばなぁ。
さて今回はメイ専用のガンプラことクルセイドガンダムの紹介です。
クルセイドガンダム
武装:掌部ビーム砲×2
特殊機能:最大出力モード
ベース機が不明のガンプラ。シルエットからしてデスティニーに近いとされている。メイ専用に用意されており、その性格を体現したシンプル且つ強力な機体。
武装はその両手にある掌部ビーム砲のみであるが、攻撃を受け止めたり拡散させたビームを放ったりなど、応用の幅は広い模様。
しかし同時に「掌でしか攻撃できない」と言う致命的な欠点も抱えている。だが本来、短期決戦が得意であり、相手を近付かせることなく殲滅することをコンセプトとする。その為、メイ自身も余りこの機体を詳しく理解していない。
最終手段として最大出力モードを隠しており、発動後は登頂部に光輪と背部に「光の翼」が出現する。このモードでは、光の翼から無差別にビームの嵐を撃つことができ、近付くことさえ自殺行為とさせる。ユウキのエクストリームに対して初使用した。……同時に粒子消費が激しい欠点も露見していた。
以上ですね。中々に個性的になり過ぎたと思ってますw
次回はシオリ対マサキのバトル。
それではまた次回、ノシ